入浴と足湯
『ふ〜、命が洗濯される〜』
久しぶりの風呂に身体の疲れが一気に出て、眠気を感じた。足を伸ばし、首を後ろに傾けて空を眺めた。そこにはまだ青空が広がり、白い雲が浮いている
『あ〜やばい、寝そう』
「お、おい!大丈夫か?」
首を戻して正面を見ると、シゴロがこちらを見て心配をしていた。そういえば風呂に入ることを優先して、シゴロを誘うのを忘れていた
『シゴロさんも入って下さい、これがお風呂ってやつです』
「いいのか?ちょっと待ってくれ」
シゴロは一度家に戻り、着替えと器を持ってきた。そして服を脱いで、俺と同じ様に風呂の湯を桶に入れて頭から被った
「お、なかなか熱いな」
初めてで湯温が高いとは思ってなかったらしい、シゴロはゆっくりと片足から風呂に入った。そして大丈夫と判断したのか湯の中に腰を降ろし、俺と向き合うように座った
「お〜なんだろうか、身体が温まってくるな」
『どうですか?これが風呂に入ることの良さなんですよ。今は青空ですけど、夜に入って星空を眺めるのも最高だと思いますよ』
一度入浴が終わったら湯を抜いて、夜にもう一度入れるように準備をしようと思った。これが出来るようになったので、入れる時は毎日入りたいとも思う
『ヒフミさんも入れてあげたいので、後で壁を作りたいですね』
家から顔を出して、ずっとこちらを見ている女性がいる。さすがに混浴に誘うわけにはいかないので、後で1人で入れるようにしてあげたい
「ヒ、ヒフミも入るのか…」
勘違いして鼻と股を抑えている男が目の前にいるが、そういう意味では無いと教えてあげた。シゴロだけではなくヒフミのおかげでも風呂は完成したので、3人で共有出来るようにしたいのが俺の理想だ
『ヒフミさ〜ん』
「おい馬鹿、止めろ!」
ヒフミに声をかけると、シゴロが驚いて叫んだ。ヒフミは恐る恐るこちらへ近づいて来たが、まだ10メートルほど離れている
「ど、どうしたんだい!何かあったのかい?」
『この桶のお湯を渡すので、そこの椅子に座って桶の中に足を入れてみてください。足湯ってやつです』
風呂の外に、お湯を入れた桶を置いた。ヒフミは顔を隠しながら近づき、こちらを見ないようにしながらそれを持って離れた。シゴロはその間背中を向けて恥ずかしがっていたので、正直その姿が面白いと思った
(そういえば叔父さんが家の庭に、ドラム缶で風呂を作って親父に怒られてたことがあったな。あの頃は何度か叔父さんに付き合って、外で入る風呂は楽しかったな)
空を見ながら思い出す。叔父さんの話は理解出来ないことも多かったけれど、経験させてもらったことが今の風呂を作ることに繋がったのかもしれない
「九十九、これいいねぇ」
俺達に背を向けて切り株で作ったような椅子に座り、ヒフミは足湯を試していた。俺達が入り温度が下がって物足りないかと思ったが、ヒフミは足湯に満足している
『あまり長く入り続けても良くないかもしれないので、身体が温まって少ししたら足を出すようにして下さい』
「あいよ、なんだが身体が温まってきていいねぇ。あんた達が入ってる風呂ってのは、もっといいのかもねぇ」
『明日は、風呂の周りに壁を作りましょう。ヒフミさんも入ってもらえるようにしたいです』
「それはありがたいけど、あんた達も入るわけじゃないだろうね。そんな安い女じゃないよ!」
『大丈夫です、俺とシゴロさんは一緒に入るようにして、ヒフミさんは1人で入れるようにしますから』
「それならいいけど…」
俺とヒフミの話を聞いて、シゴロの鼻から赤いものが垂れ始めていた。のぼせたのか俺達の話のせいなのかはわからないが、興奮して鼻血を出す人を初めてみた
『さて…試すのは成功したので、一度お湯を抜いてまた夜に入りますか』
暫く風呂を堪能して、一度風呂から出ることにした。ヒフミには背を向けたままにしてもらい、俺達は身体を拭いて着替えた
『お湯で洗濯するのもありだな。次は入る前にお湯を桶に移して、それで服を洗うか』
忘れていたが、ここ数日の洗濯が貯まっていた。せっかくの機会なのでお湯を利用すれば、汚れも落ちて綺麗に手洗いの洗濯も出来るはずだ
『あ、ヒフミさん、後でいいのでこの桶と同じものを作ってもらえますか?』
ヒフミに風呂のお湯を入れて渡した桶は、シゴロが使っていたのか窯の近くで水が入って置かれていた。綺麗な桶だったので使わせてもらったが、ナナのお風呂に使うのに同じ物が欲しくなった
「そういえばこの桶」
「ああ、ヒフミが前にくれたやつだよ」
「ずっと、使ってくれてるんだねぇ」
「ま、まぁな」
木で出来た物なのでヒフミが関係すると思ったが、シゴロがヒフミからもらった物らしかった。ヒフミは暫くしたら作っておくと言ってくれたので、夜の風呂の時に受け取ろうと思う
『シゴロさんまた汗をかくことになりますけど、夜の風呂は最高なので一緒に頑張りましょう!』
風呂のお湯を抜く栓も問題はなく、スムーズに抜けた。抜けたお湯は流れ掘っておいた穴に貯まったので、お湯の処理は問題なさそうだった




