昼休憩
「しかしなぁ、この2人が九十九に懐くとはなぁ」
『いやいや、そんな動物を飼ってるみたいな言い方はしないで下さいよ』
「はぁぁ、美味えなチキンバード」
「勇者米をまた食えるなんて、贅沢だねぇ」
俺達は壺の掃除をした後、昼食を取るために酒場に来た。ヒフミもお腹が空いていたみたいで、声を掛けると一緒についてきた。酒場に着くといつものカウンターに座り俺の右にヒフミが、そして左にシゴロが座り挟まれる形になっていた
「この2人のことは、村の人間が悪いんだよ。特別扱いしてな、関わることをしなかったんだ」
『そうなのですか?』
「いや…俺達も昔からの伝統だからって、ガキの頃から数年前まではずっと修行してたから、今更村の人間と仲良くするってのも難しくてな」
「あたしらは、生まれて直ぐにスキルを持ってることがわかってから、ずっとこのスキルを使い続けてまた次の世代に繋ぐように育てられてるのさ」
千年前勇者が初めてこの村に来た時に、ヒフミとシゴロの祖先がスキルを使えることを見つけて、使い方を指導をしたらしい
「ある一定のことが出来るまでは家からも出させてもらえなくてね、いつもシゴロと競わされてたね」
「あ〜、ヒフミにだけは負けるなって言われてたな。だけどスキルの種類は違うからな、どちらが上とかわからねえよな」
2人は小さい頃から毎日起きてはスキルを使って過ごし、村の子供と遊ぶ機会もなく育ったらしい。勇者に関係のある存在だからと、村の中でも特別扱いされていたらしい
(でも…確かに言われてみれば、初めてヒフミさんの家に行った時に、案内してくれた人は声もかけずに戻って言ったな)
後は好きにしろってより、これ以上は関わらないって雰囲気を出していた
「だから初めて友達が出来た気がしたなぁ、九十九ありがとよ」
「そうだね、九十九があたしらの最初の友達かもね」
『ははは、ありがとうございます。これからも仲良くしてもらえると嬉しいです』
2人は話せば普通の人だ、勇者がどうとか言っても本人達は勇者ではない。それはこれから村の人達も、気がついていくのではないだろうか
「この村って2人と、マスター以外にスキルを使える人はいないのですか?」
「俺の知ってる限りだと、後はうちの娘くらいか。娘は俺の血筋だからな、同じスキルを使えるよ」
『ということは、火も使えるのですか?』
「あれはたまたま俺に素質があっただけで、娘は教えても使えるようにならなかったな」
スキルには元々使えるスキルと素質があれば覚えられるスキルがあるみたいだ。それがステータスだとパッシブと、アクティブの表記になっているのかもしれない
『あ、そうだ…聞きたいことがあるのですけど』
「ん、なんだ?」
『この村って、リスウ王国の領土ですか?』
少し前にふと思い出したのだが、俺は国外追放と言われていた。そうなるとこの村がリスウ王国の領土の中にあるのなら、俺は早めに逃げないといけないかもしれない
「この村か、いや…ここは中立地帯なんだ。村を出て暫く行くと橋があって、そこが境目になっている。山から水が流れているところに橋があるから、行けばわかるだろ」
『あ〜、この村に来る時に川は見ましたね。橋は通らなくて、平原を通って来ましたけど』
「ホーンラビットを倒したと言ってたしな、魔物の森の方から来たのか」
『ま、まぁそんな感じですね』
流石に街から逃げて来ましたとは言えないので、そこはマスターに合わせる。この村がリスウ王国の外なら、とりあえずは安心しても良さそうだ
「しかしなぁ、きな臭い話も聞くんだよな」
『え?』
「俺も噂で聞いただけだが、リスウ王国の領土はカゴウの街の北にある山と東の海の手前までの土地、そして南の土地は魔物の森に潰されている。その領土を取り返すために、魔王を倒そうとしているらしい」
『なるほど…』
「それだけならいいんだけどな、あの国は昔から領土を広げようとする動きがあるらしい。他の国に牽制をされているからこの村は中立を保ててはいるけど、何かの力を手に入れた時が怖いよな」
『力ですか』
「千年前に勇者が現れた時も、あの国は戦争中だったと聞いたことがある。おとぎ話ってのは、だいたい真実も混ざってるものだよな」
『なるほど…ありがとうございます』
俺達がこの世界に来た本当の理由は、魔王を倒すわけではないのかもしれない。マスターの話を聞いて、俺はそう感じてしまった
「へ〜、そういう話もあるんだな」
「ん〜!お腹いっぱい、もう少ししたらスキルが使えそうだよ」
マスターの話を聞いてる間に、ヒフミとシゴロは食事が終わっていた。俺も食事が終わったので、マスターに御礼を言って酒場を出た。
「うっし!続きをやるか」
「あたしは眠いから、少し寝るよ」
『ヒフミさんがスキルを使えるようになるまで、先程の続きをしましょう』
風呂の水を流す場所や周りの片付けなど、まだまだやることはある。なるべくなら今日中に完成させて、初風呂に入りたいところだ




