風呂を作ろう
『あれ?木が置いてある…』
ヒフミの家の前に行くと、昨日採ってきた木が積んであった。昨日は村の外に置いてあったはずだが、いつの間にか運ばれていた
「お、九十九おはよう」
『おはようございます、シゴロさん』
俺が来るのを待っていたのか、家の外でシゴロは待っていた。そしてヒフミの家の中へ、声を掛けてくれる
「ヒフミ、九十九が来たぞ」
「あいよ」
ヒフミも俺のことを待っていてくれたのか、呼ぶとすぐに外に出てきた
「それで、今日はどうするんだい?」
「俺達に出来ることなら、いくらでもするぞ」
二人は朝から気合が入っている、これなら今日中に風呂が作れそうだ
『先ずはヒフミさん、風呂を作りたいのですがこの木は使っていいのですか?』
「ああ、九十九に使ってもらおうって村の男共が持って来たねぇ」
「堀の分はまた後で採りに行くから、これは好きに使ってもらっていいぜ」
チキンバードの御礼ということらしい、それなら遠慮なく使わせてもらうつもりだ
『そうなると、どうするかな』
置いてある木を見て考える、まずは風呂の形を作るところからだろうか
「そういえば、言い忘れてたことがあるんだけど」
『はい』
「私のスキルだとこの1本の木を加工したら、暫くは出来ないからね」
『あ、一気には出来ないってことですね』
5メートルほどの木を加工したら、かなりのMPを使うのだろう。そうなると風呂のフレームは、2回に分けて作る方が良さそうだ
『この前作ってもらった、小さい型はありますか?』
「ああ、これだろ?」
手に持っていたらしく、ヒフミからこの前作ってもらった桶のような器を受け取る
『ここにある木を一本使って、これの半分の物を作ってもらう感じで、それを2つ作ったらこれの大きい物が出来ますよね?2つを接合させるのはスキルで出来るみたいなので、水が漏れないようにしてもらいたいです』
ヒフミの前で器を半分隠し、半円の容器に見せる。それを2つ作って繋げれば、この容器の大きい版になるはずだ
「こんな感じかい?」
ヒフミが木に触れて暫くすると、木が虹色に光り始め変形していく。そしてあっという間に、俺の希望した器の半分の形の物が出来る
「それの大きいやつだからね、壁と底は厚めにしといたよ」
『良いですね〜、これをもう1つ作って合わせれば良い感じになりそうです』
「これで風呂ってのが出来るのかい?私は暫く休ませてもらうよ」
ヒフミは、家の中に入って行った。そして今度は、シゴロの番になる
『シゴロさん、大きい器ってありますか?水を張って火をかけても割れない物が欲しいのですが』
「あ〜、ちょっと来てくれ」
シゴロの家の脇に行くと、加工した粘土を焼く窯がある。そこから少し離れたところに、ドラム缶サイズの壺みたいな物があった。その壺は何かの台に乗っているのか、少し高さがある
「この大きさだと、さすがにきついよな?」
『いや…これは良いですね。よく作れましたね』
「これはなぁ、俺の先祖が作ったんだ。結構昔の物らしくて、使い道がわからないからそのままにしていたんだよな」
「へぇ〜、あれ?」
壺に木の蓋がしてあるので開けると、中は空洞だった。ただ壺の底にも、木の板が入ってる様に見える
『これはもしかして…五右衛門風呂か?』
元の世界でも直接は見たことはないが、漫画やアニメで見たことがあった。木の板が底にあり、壺のような器の下の方には水を抜くための栓もある
『これって、いつからあるのですか?』
「わからないな、少なくとも俺の何個も上の先祖からあるらしい。定期的に壊れないように、補修するように言われてるのだけどよ、使い道はわからないんだよな」
(たしかに作りは五右衛門風呂っぽいけど、これを直接加熱したら壺が熱くて入れなそうだな…)
『ちょっとこの大きい壺の中に水を入れて、水を火で温めたいのですが出来ますかね?』
「ああそれなら、たしかここが…」
壺が乗っていた台の周りのゴミを退けると、その下の台は火を焚べて壺を温められる窯の造りになっていた
『あ、やっぱり…これってそのまま使えますか?』
「俺の親父が大切にしてたからな、俺の代になってからちょっとゴミ置き場にしてたけど、綺麗にすれば使えると思うぞ」
『ちょっと壺の中を掃除しましょう!水を組んで来ます!』
「わかった、俺はこの周りを片付けておくよ」
ヒフミから、大きめの取っ手がついた桶を借りて水を汲みに行った。ついでに柄杓を作ってもらい、壺の中に撒いて掃除をしやすくする
「うわ〜…」
『結構汚れはあったのですね』
中が汚れるからと蓋を作ったのは、結構最近だったらしい。蓋が新しめなのに壺の底の木がボロボロだったのは、長いこと使われていなかったのを感じた。底の木を取り栓を抜いて水をかけると、色の悪い水がどんどん出てきた
「これは1回綺麗にしないとだな…」
『ヒフミさんはまだ暫くかかるみたいなので、これの掃除から頑張りますか』
シゴロにも協力してもらい、何度も往復をして壺を綺麗にしていく。汚れが減ってからは一度栓をして水を貯め、その状態で内側の壁を擦って汚れを更に落としてから栓を抜く。栓を抜いた水が出る場所は、いつ作ったのがわからないが少し掘られていて、別の場所へ水が流れるようになっていた。
『風呂の水を捨てる、水路みたいなのを作ってたのかな?』
「あ〜前に大きな穴があったけど、埋めちまったな」
いつからこの壺が使われなくなったのかわからないが、考えられて使われていたみたいだ
『次はお湯を沸かしてから内壁を擦りますか、それが終われば綺麗なお湯が沸かせることが出来そうです』
「あいよ、終わったら飯でも行こうぜ」
壺に栓をして、水を半分くらいまで貯めた。そして俺は更に水を汲みに行き、シゴロはマスターから火を貰いに行った
「お〜、まだまだ汚れが出るのか」
『やはり熱湯は落ちますね…これで少し抜いて水を足してを繰り返して、透明になるまでやりましょう』
「おう、なんか綺麗になるのが楽しくなってきたぜ」
いつの頃の汚れなのかはわからないが、壺の中も綺麗になり風呂のお湯を沸かす準備は出来た。ただやはり火を入れると壺はかなり熱くなるので、直接五右衛門風呂として使うのは厳しそうだ
(もしかしてこれを使ってた人は、スキルとかで壺の熱さは感じなかったのかな?)
火耐性スキルとか熱耐性スキルなどが、ゲームでも存在する。調整が出来るなら、この壺で風呂に入ることも出来るのだろう
『だけどこれを作る知識…また勇者絡みかもしれないですね』
「俺達の先祖も関わっていたらしいしな、ありえるかもな」
『気にしてもしょうがないか、ただこれを作ってくれた人には感謝ですね』
シゴロに聞くと、今の技術ではこの壺を作ることが出来ないらしい。正しくはこの壺を焼けるサイズの窯と、火力が出せないらしいのだ
(これを村で使うには、そこがネックになりそうだな)
俺の最終的な目標としては、村に銭湯みたいな物を作りそれを名物にしたいと思っている。ただそれを叶えるのには、まだまだ道程は遠いみたいだ




