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宴の終わり

「ありがとうございます、ご馳走になります」


「お兄ちゃんありがとう!」


『いえいえ、好きなだけ食べて下さい』


元の世界だと小学生くらいの年齢と思われる子供を連れた夫婦が、チキンバード丼を貰ったと俺に挨拶に来た。酒場の容器だけでは足りず、各自家にある器に盛ってもらっていた。宴が始まってから3時間ほどが経ち、食事は村の全員に行き渡って行く


「なぁなぁ兄ちゃん、うちの娘を貰ってくれよ」


「いやうちの娘だ、兄ちゃんよりは年齢は上だが器量はあるぞ」


『ははは、お気持ちは嬉しいです』


酒が入ったおじさん達に囲まれて、娘の婿へと声をかけられる。離れたテーブルでは俺のことを見ている女性達がいるので、このおじさん達の娘もいるのかもしれない


『このお酒は、何で出来てるのですか?』


「ん、これか?」


話を逸らして話題を変えようと思う。果実水もそうだが、酒も何で出来てるか気にはなっていた


「これは昔からあるからな、お〜いマスター」


「これは…凄いな、ん?」


「うわ〜!美味しいね、お父さん」


食事の提供も落ち着いたのか、マスターと娘さん達もチキンバード丼に手をつけていた。マスターの奥さんは酒場の奥で米を炊いていて、先程出てきて挨拶をしてくれた


「冒険者時代にチキンバードの肉は食べたことがあるが、その時は若いやつだったからここまで美味しくはなかったな」


呼ばれたマスターは、俺にそう話しかけてくる。確かに街で食べた物とは結構味の深みが違うので、空腹のせいではなかったみたいだ


『チキンバードって逃げれば逃げるほど、味が良くなるんですっけ?』


前に、マスから聞いた話を思い出した。街で食べたチキンバードしか知らないので、このチキンバードよりは質が低いのはわかった


「雛や若いのは青色の体毛でな、それが黄色になるのは聞いたことがあるが、赤色なのは初めて見たな」


『それは結構長く逃げていた、個体なのですかね?』


「そうだろうな…これを食べられた俺達は幸運だったな、だが娘はやらんぞ」


先程の話が聞こえていたのか、マスターが鋭い目で見てくる。もうこのネタには慣れたので、笑顔で返すことにした


『ははは、わかってますよ』


「俺の娘では駄目っていうのか!」


『どうしろって言うんだ〜!』


俺の叫びが酒場の中に響く、周りは驚いてこちらを見ていた


「まぁまぁ、その話は置いといてだな」


「そうだよマスター、兄ちゃんの嫁の話は、いくらマスターでも譲れないな」


「それよりも何だっけ?酒の話か」


『そうです、酒ってどうやって作るのかなって』


「ん?酒か」


『ええ、皆さんが飲んでいるのは何で出来てるのかなと』


ビールのように泡が立ってはいない。どちらかというと透明で、日本酒に近いのだろうか


「これはうちの家に伝わる方法で作ってるのだが、山から採ってきた実を干してから、水に入れると酒になるんだ。先祖は勇者から教わったらしいぞ」


『そうなのですね、俺の飲み物も何かの実が入っていますよね』


「それが、今言った実だ。干さないでそのまま水に入れると、甘味が出るんだ。だが干すとそれが酒になる、変わった実だな」


俺は、同じものから作られた果実水を飲んでいたらしい。だが酔ったりはないので、問題はないと思う。この世界で、元の世界の成人年齢を気にするのは必要のないことかもしれないが、一応気にして手はつけないようにしている


「気になるなら、今度一緒に採りに行くか?」


『あ、行ってみたいです。どういうものか見てみたいので』


近く機会があれば、マスターと山へその実を採りに行くことになった。ただ先程の話を聞く限り、採ってすぐじゃないと果実水として利用出来ないので、そこは検討が必要だと思う。もしかしたらそのままで、酒の元にならない方法があるかもしれない


「そろそろ帰って寝るか、兄ちゃんもし良かったら娘の件を考えておいてくれよ」


「あ、うちのも頼むぜ。最悪、一夫多妻ってのも面白いかもな」


俺を囲んでいた村の男達が、笑いながら酒場を出て行った。だが俺には笑いごとでは済まないので、また言われたら断ろうと思っている。ちなみにヒフミとシゴロは、結構前にチキンバード丼を食べてから家に帰っていた


「今日は疲れただろ。俺も片付けは明日にするから、九十九も部屋で休んでくれ」


『そうですね、無事終わったみたいで良かったです』


酒場の中は徐々に人が減っていく、酒場から出る時に俺にお辞儀をしてくれる人もいた


「今日は村のためにありがとうな、明日は気にせずにゆっくり休んでくれ」


明日のステップラビットは、無しでもいいと言ってもらえた。流石に今日のこともあり、俺には休んで欲しいみたいだ


(風呂も今日は駄目だったしな…明日どうにかするかな)


「身体を拭くお湯は、後で持って行くな」


『すいません、お願いします』


身体も汗や汚れで酷いので、早く着替えたかった。そういえばナナの件もあるし、風呂にも入れてあげたい。俺は部屋に着いたら、ナナに聞いてみようと思う


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