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宴の始まり

「しかし、九十九あんた凄いね」


『もうそういうことにしておきますよ。俺はもう限界を突破して、気絶しそうです…』


昼から何も食べて無く、お腹がずっと鳴っている。チキンバードを村の皆と食べようということで、酒場の中には人が溢れていた。さりげなく先程の商人達もいるが、喜んでもらえるなら良いことだ


『ところでヒフミさんは、何故俺の横に?』


「あんたの傍にいれば安心って、シゴロが言うから」


『あ〜、そうですよね』


俺は酒場のいつものカウンターに座り、その横にヒフミが座っている。ヒフミを狙っている男達は、俺がいるので近寄って来ないらしい


(見世物みたくなっているけどな)


本日の主役ですみたいなタスキがあれば、俺は今身に着けることになっただろう。そして先程から、村の女性達の視線を感じる。男性からの視線もあるが、女性のそれとは感じるものが違う


「九十九は気をつけた方がいいよ。さっき村のおっさん共が、うちの娘とって話してたからね。あんたが望むならいいんだろうけど、ずっとこの村にいるわけではないんだろ?」


『そうですね…ゆくゆくは、村を出ることになると思います』


村は居心地が良いと思うが、前の街みたいなことになるのが怖い。そしてこの村は、街からはかなり近い場所にある


(そのうちまた、兵士が来そうだからな…)


落ち着いたら、安心して住める場所を探そうと思っている。だが今のところは、もう少しだけ村のお世話になるつもりだ


「九十九、これでいいか?」


マスターが、底の深い器を持ってきた。目の前に置かれたそれは、俺の要望通り勇者米の上にチキンバードの肉が乗った丼だった


『うぉぉぉぉ、いただきます!!』


渡された木のスプーンで、肉と米を掬い口の中に入れた。チキンバードの脂と勇者米が混ざり、マスターの味付けによって街で食べた時の数倍は美味い


『うっ、うっ』


「うっ?」


『うまぁぁぁぁい!!マスターおかわり!』


丼の中身を口に含み、どんどん胃へ送った。あっという間に無くなったので、おかわりをお願いする


「あいよ。ただその次からは、村のやつらに食わせたいから待っててくれ」


『わかりました、2杯目はゆっくり食べます』


2杯目が来るまでは、別の器に入った野菜サラダのような物を食べている。ドレッシングなどがなくて味が薄いが、先程のチキンバードの丼が濃かったので口直しに良かった


「ほら2杯目、後は暫く待ってくれ」


マスターや娘さんは、酒場の裏手と中を忙しく行き来をしている。村の人間全員の食事を一気に作るので、肉は外で焼き、米は酒場の中の窯を使って大量に炊いているらしい


「うぉぉぉぉ、うめぇぇぇ!」


「なんじゃこりゃぁぁぁ!」


外から男性の叫び声が聞こえる、チキンバードを外で食べ始めたのだろうか


「おっさん共は肉だけを食いながら、外で酒を飲んでるよ」


『あ、シゴロさんお疲れ様です』


外で肉を焼く手伝いをしていたシゴロが、中に入ってきた。シゴロは肉の入った器を持っていて、それをヒフミの前に置いた


「焼きたてだ、食べてくれ」


「いいのかい?あんたも食べないと」


「俺はマスターの丼ってのを待つよ、九十九が叫ぶくらいだしな。だからヒフミは先に食べてみてくれ」


「悪いねぇ、戴くよ」


シゴロが持ってきてくれた肉を、ヒフミが口の中に入れた。だがヒフミは目を大きく開けたまま、時が止まったかのように動かなくなった


「…」


「ど、どうだ?」


「これは、九十九に感謝をしないとだね…」


動きが止まるくらい、美味しかったのだろう。ただ初めて食べたらしく、驚きでリアクションが出来なかったみたいだ


「九十九」


(ん、ナナか、どうした?)


そういえば目が覚めてから、ナナの姿を見ていない。声がして思い出したが、ナナは無事だったようだ


「私も食べたい」


(わかった、待ってろ)


『シゴロさん、小さい器に肉を少しもらってきてもらえませんか?』


「お、待ってろ」


シゴロは酒場の外に行き、肉を数切れ入れた器を持ってきてくれた。それを受け取り、ナナに声をかけた


「ステータスの前に持ってきて」


(ん?ほらっ、これでいいか?)


器を出てきたステータスの前に出すと、手が出てきて肉が掴まれて消えていった。ステータスの中の空間?に、物質を入れることが出来るのは初めて知った


(てかナナの手ってあんな大きかったっけ?)


少し前に見た時はもっと小さい気がしてたのだが、今見えたものはいつもより大きいものだった。ナナからの返事が無いので、後で確認をしてみるつもりだ


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