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護衛

『ん、朝か』


窓から外の光が部屋の中に入り、俺は眩しさに目が覚めた


『あれ?』


目を開けると、目の前には可愛いお人形さんが寝ている。それがナナなのはすぐにわかったのだが何故俺の顔の前に、ナナの寝顔があるのかわからなかった


『ナナ』


「ん、朝ぁ?」


『ああ、朝だよ。どうして俺の布団で寝てるんだ?』


「なんでだろう、ぽかぽかしたかったからかな?」


昨日の風呂のおかげで温かさが癖になったのだろうか、いつものナナとは違う様子だった


『寝ても良いけど、俺に潰されないようにな』


「気をつける〜」


そう言ってナナは、ステータス画面を開いて中に消えていった。そういえばナナが普段寝ているところは、どんな場所なのだろうか


『とりあえず、下に降りるか』


俺は部屋を出て、朝食を取りに下の階へ向かった。今日も外は快晴なので、良い1日が過ごせそうだ




『おはようございます』


「おはよう九十九、すぐに飯を用意するよ」


「お、兄ちゃん、今日は頼むぞ」


『おはようございます、今日の予定を教えてもらえますか?』


下の階に降りて直ぐに村の男達と挨拶を交わす、皆はもう朝食を食べていて今日の段取りを話し合っていた


「今日は山の方に木を採りに行くんだ、だから兄ちゃんには護衛を頼みたい」


『え、護衛ですか…』


「おう、ステップラビットを倒せる兄ちゃんなら大丈夫だろ」


山の方の魔物の強さはわからないが、俺のステータスは相変わらず低く不安しかない


「まぁ猪が出た日には、逃げて良いからよ」


『ということは、出るんですね…』


逃げるだけならなんとかなるが、先に逃げるわけにはいかないので、命懸けで殿をするしかない


(断るわけにはいかないだろうしな…)


最初は気が付かなかったのだが、テーブル2つに4人ずつ座り全員がこちらを見ている。そしてその中には、昨日から付き合いのあるシゴロもいた


『シゴロさんはなんでいるんですか?』


「兄ちゃんが行くって言ったら来るって言うからよ、こいつ結構良い身体してるんだな」


シゴロは家で筋トレをしていたので、見た目と違って筋肉はしっかりついている。ただヒフミがいるのに家を離れるのは不自然に感じた


「九十九、いいか?」


『はい』


シゴロが隣に来て耳打ちをしてくる。シゴロが言うには、ヒフミを狙っている村の若い男達は皆ここにいるので、家を空けても大丈夫だそうだ


「兄ちゃんは護衛で俺達は4人1組で木を運ぶから、何往復かすることになるから頼むぞ」


『あ、はい』


期待されているしシゴロもいるので、俺の風呂という目的のためにシゴロの身の安全の確保をするしかない。俺は食事を終わらせて、村の男達と山へ向かうことにした






『そういえば村の南側は、堀は掘らないのですか?』


俺達は山へ向かうために、南東の頂点にある村の入り口から外に出た。村は山が見える方を起点に三角形の形をしているので、村を守る柵は三角形でいう辺となる北東と北西と南側に柵があり囲まれていた。現在は、猪がよく来る北東側から掘っている


「そちらは魔物の襲撃は今のところないから、堀は掘らないかな?村に来る外からの人が落ちても大変だしな」


『なるほど』


村の入り口から出て、北東の柵の前を通って山へと向かう。まだ堀り始めてすぐだが、思ったより作業は進んでいた。昨日渡した1輪車も活用されているようだ、1台は2輪なので2輪車と呼ぶ方が正しいだろう






『ダチョウがいる…』


「ダチョウ?何言ってんだ、あいつはチキンバードだよ。足が速くて罠にもかからない、俺達は1回も食べたことのない魔物だよ」


「食べてみたいよな〜」


「街では食えるらしいよな、結構高いらしいけど」


「あいつの足の速さは相当だぞ、下手な冒険者じゃ触ることも出来ねぇ」


『3倍の出力はありそうですね』


俺達の先に見えるダチョウのような魔物は、身体の部分はダチョウより一回り以上大きく首は細く頭は小さい、足がかなり太く速さはかなりのものらしい。そして赤色なので、元の世界の赤い何かを思い出した


「あ、逃げちまった」


俺達の進行方向にいたので、俺達に気がつくとすぐに逃げていった。街にいた頃は食べれたので、捕まえられないこともないのだろう






「着いたぞ、ここだ」


村からは体感で、10キロほどは歩いた気がする。山はもっと先にあり、その手前には木が沢山生えている森がある


「これを切るぞ」


「おう!」


男達は持ってきた斧を取り出す。木で出来た斧の刃の部分に、鉄の様な物が着いている。そしてそれで根元の方を何度か叩いて、切れ目を入れてそれを深くしていく


(これって、俺のスキルでどうにかならないかな)


周りを見て5メートルほどある木を一本選び目の前に立つ、村の男達も同じくらいの木を選んでいるので、これを倒しても問題ないだろう


『あれをやるか』


相撲の四股を踏む時のように、足を開いて腰を落とす


『最初はグー』


片方の拳を握り、脇に引いてそこにもう片方の手を添える


『じゃんけん!』


気合を入れて、引いた拳を木へ向かって出す


『パクリのグー!』


「スキルを発動してなくない?」


『えっ、あ…』


横から声がかかり、勢い良く出そうとした拳を止めようとしたが間に合わなかった


『痛っ!』


「馬鹿ね〜、素手で木を倒せるわけないじゃない」


『ナナ、いたのか』


先程まで寝ていたのか、横に浮かぶナナを見ると欠伸をしている。拳を見たら血は出てないが、拳の皮が少し擦れてしまっていた


『元の世界で見た漫画の真似をしようとしたら、スキルの発動を忘れちまった…』


「九十九達は何をしてるの?」


『ああ、木を採りに来たんだ、俺は護衛を頼まれてる』


ナナが寝た後からここまでの流れを、簡単に説明した。ナナはそれを聞いて、呆れているようだった


「何かあったらスキルが必要なのに、無駄に使おうとしたの?」


『うっ、正論過ぎる…』


俺のスキルには色々と制限があるので、無駄に使うわけにはいかない。ただ木を倒してみたいという考えで、村の男達を危険にさらすかもしれなかった


「兄ちゃん、木を倒すから手伝ってくれ」


木の根元を結構削った木にロープを巻いて皆で引くと、木は大きな音を立てて倒れた


「よし、もう一本」


「2本倒したら、村へ運ぶぞ!」


もう一本切るらしいので、俺は周囲を警戒しつつナナにもお願いをした








「よし、もう1往復採ってこよう」


村に戻り南東の入り口近くに、持ち帰った木を置いた。そしてまた同じ流れで木を切って持ち帰るそうだ


「兄ちゃん頼むぞ」


『今のところは、問題はなさそうですね』


ナナがいつも通りに俺の頭上で周りを見てくれているので、魔物への警戒は完璧だった。村から森へ行く過程も木を切っている間も、今のところは順調だ


「よ〜し、この2本を持って帰ったら昼飯にしようや」


「う〜す!」


(そろそろ昼か)


弁当などはないので、村へ戻らないと食事は出来ない。早く戻って食べたいと、この場にいる全員が思っていた






「あ、あいつは…」


「猪だ」


「ど、どうする?」


「木を置いて逃げるか、だがあいつはどのみち村にも行きそうだな」


『こいつが、例のやつか』


2回目の村へ木を運ぶ途中で、村を襲っているという猪に出会った。村へ向かう途中だったのだろうか、俺達の姿を見つけるとこちらを目指して歩いてきた


(俺が囮になるしかないか…)


俺は前に出て、猪から村の男達を守るように立った。俺の1日は、ここから長くなるのであった


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