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風呂の良さ

『マスター、ご飯をお願いします』


「ああ、これから用意するから待ってな」


酒場に入ると、今日は何組かの村人がいた。テーブルに座る男女や子供を連れた家族がいて、マスターも娘さんも忙しそうだ


『俺はいつもの席でっと…』


マスターが置いてくれた果実水を飲みながら、料理が出てくるのを待つ


(そういえばこれって、何で作ってるんだろうか)


味はライチに近い気がする。色は透明で、底に実みたいな物が沈んでいる


(後でマスターに聞いてみようかな)


嗜好品が少なそうなこの世界で、こういう知識は持っておきたいと思った。知っていれば、個人でも楽しむことが出来るはずだ


「ねぇねぇ九十九」


『ん、どうした?』


「それ美味しいの?」


『お、飲んでみるか?』


酒場に入る辺りから出てきて左肩に乗っていたナナが、興味があるのか声をかけてくる。ナナはコップの縁を掴み、中に頭を突っ込んだ


「あ、美味しいかも」


ペロペロと舐めるように飲む姿が、子供の頃に飼っていた猫のことを思い出させた


「今日言ってたお風呂ってさ〜」


『ん?うん』


「どんな感じ?」


『風呂か、う〜ん…』


昼間の2人の反応を思い出す限り、これは説明するよりは体験してもらう方が早いのだろう


『後でいいか?体験した方が早いから』


「体験?わかった」


「お待たせ」


マスターが料理を持ってきたタイミングで、ナナは消えていった


『マスター、今日身体を拭く時のお湯は熱々でお願いしていいですか?あとコップに水を1杯お願いします』


「わかった、後で持って行くよ」


マスターにお願いをしたので、食後にナナに体験をしてもらうつもりだ。こればっかりはやはり、自分で経験しないとわからないだろう


「お、兄ちゃん、丁度良かった」


酒場の入り口の方から、堀を掘っていた男性達が歩いてくる。俺のすぐ後ろのテーブルに座ったので、これから食事をするようだ


「兄ちゃん明日は空いてないか?」


『明日ですか?マスターからの依頼が終われば空きますけど』


「明日くらい別にいいぞ、村の連中を手伝ってくれるなら」


マスターが、男性達のテーブルに料理を持ってきた。話に入ってきたので、俺達の会話は聞いていたようだ


「お、じゃあ頼むわ。明日の朝にここで飯食ってから出よう」


『わかりました、また明日の朝で』


自分の料理に向き直し、続きを食べる。男性達に比べて俺の料理の方が良いみたいなので、なるべく見えないようにして食べた








「これでいいか?」


『ありがとうございます、結構熱そうですね』


食後に部屋で待っていると、マスターが希望通りなのか熱々のお湯と水の入ったコップを持ってきてくれた


『熱気がやばい…』


湯気が出ていて、手をかざすと熱いのがよくわかる。俺はコップの水を半分ほど飲み、コップを一瞬お湯に沈めて水に追加で入るように入れた


『お、丁度いいかも』


指を入れて見ると少し熱いくらいなので、準備をしてナナが入る頃には良い温度になりそうだ


『ナナ〜』


「いるわよ〜」


ベッドから声が聞こえると思ったら、俺がマスターから受け取っている間に出てきていたらしい


『ちなみにその服って脱げるのか?』


ナナはエメラルドグリーンに近い、綺麗なレオタードみたいな服を着ている


「これ?」


『あ、おい!』


ナナがレオタードの胸元を引っ張ると、胸のピンクの何かが見えてしまう


『脱げるみたいだから、脱いだ方が良いかもな』


「ふ〜ん、九十九はエッチなのね」


そう言いながら脱ぎ始めるので、俺は手元に用意をしていた綺麗な服を両手に持って広げ、ナナを隠すようにした


『コップの中のお湯に触って、問題無さそうなら入ってみてくれ。肩まで浸かるのは重要だぞ』


「よくわからないから、見てもいいわよ」


『いやいや、それはちょっと』


ナナがいくら人間サイズではないとはいえ、異性の身体は俺にとっては毒だ


「いいから、これどうすればいいの?」


『え、じゃあ…見るからな』


俺とナナの間に出していた服を退けた。ナナは裸のままその場に立っている


『あ〜、その羽ってしまえるのか?』


「いけるかな?よっほっ、えいっ…出来た!』


まさかの羽は一時的に消せるらしい。ナナにはそのままコップの風呂に入ってもらう


「なんかぽかぽかしてきた〜」


ナナがコップの縁に両手を組んで、そこに顎を乗せるようにしてこちらを見てくる。ナナの様子を見ていると、徐々に気持ち良さそうな顔になっていく


「これ、良いかも〜」


『いいなぁ、俺も入りたい…』


ナナを見ていると羨ましくなった。これは1人用でいいから、早急に作ってもらおうと思う


『眠くなってこないか?』


「なる〜、これやば〜い」


ナナが気持ち良さそうにしているので、俺も温度が下がったお湯を使って身体を拭いた


『これの大きいのを作って入りたいのさ』


「良いわね、出来たら一緒に入りましょうか」


『いやいや、それはちょっと…』


ナナには、明日からコップの風呂を用意することにした。ヒフミに頼んでナナ用の風呂を作るのもありだろう


『風呂の良さが伝わって何よりだ』


「うん、良かった〜」


30分ほど浸かってから、ナナは外に出た。その身体を、綺麗な俺の服で拭くように言った


「眠くなったから寝るわね」


『ああ、俺も明日は朝からだから寝ないとな』


明日はヒフミに、1人用の風呂を頼もうと思う。お湯を沸かすための容器は、シゴロに頼んでみることにするつもりだ


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