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お風呂が欲しい

『こういう周りが囲まれた容器をですね』


「う〜ん、それはどういうのがいいんだい?」


俺は木の職人に風呂を作って貰おうと、形を説明していた。とりあえず作れるなら、枡でも桶でも形は構わないだろう


『とりあえず先程の薪で、作ってみてもらってもいいですか?』


「ちょっと待ちな」


職人は薪を手に取り、目の前に置いた。そして手を触れて目を瞑ると、少ししてから目の前の薪が変化していく


「ほらよっと」


そして職人が手を離すと、持ち手のない木のバケツ、つまり底が深い桶のミニチュアがその場に出来る


「どうだい?」


『そうですね、イメージ的には近いと思います』


手に取ると、シンプルに丸くて縦長の器がそこにある。本来なら何枚もの木の板を並べて、それがバラバラにならないように固定するもので形を整えるものだが、この器は隙間などなく1つの木が形を作っていた


(考え方によっては、丸太をくり抜いたみたいなイメージか)


裏側を見ても接合部などはない、どうしてこんなスキルを持った人がこの村にいるのだろうか。豚に真珠や猫に小判など様々な言葉があるが、宝の持ち腐れと言うのが1番しっくり来るだろうか


(俺が元の世界の知識を使ってるだけか、新しく発想や創造するのは簡単なことではないものな)


俺のわかる限りのイメージを伝えようと思う。これが完成すれば、俺も含めて沢山の人が喜ぶはずだ


『実際の大きさで作る時は、細かい幅などは指定しますね』


「それで、これはいったい何なんだい?」


『あ、そうですね』


作ってもらうのを優先して、その用途を説明してなかった。確認ついでに、風呂というものがどういうものか説明した


「それは本当かい?」


『ええ、疲労回復や風呂に入った後は、結構気持ち良く寝れますね』


「それが本当なら凄いねぇ」


聞いてみるとやはり湯浴みの習慣はなく、マスターが村に来て火が使えることがわかるまでは、井戸の水を使って身体を拭いていたらしい


『マスターが来るまでは、どうしてたのですか?』


「村の真ん中に小屋を作ってね、そこの中に村に立ち寄った冒険者にお願いをして、火を作ってもらってたのさ。湯が欲しい人は、そこで水を温めてたねえ」


つまり火を絶やさないように雨風をしのげる建物を作り、その中で火を焚き続けたらしい。その時は火の番がいて、定期的に薪を入れていたらしい


「何度か居眠りをした馬鹿がいて、大変なことになったけどね。あっはっはっは〜!」


「いやいや、笑い事じゃないですよ」


居眠りをしている間に火が消えたり火事になったりと、村が燃えかけたことがあったらしい


『それでその風呂ってやつは、どうやって温めるんだい?さすがにあたしのスキルでも、燃えない木は作れないよ』


「そうですね、さすがにそれは厳しいですよね」


木を直接火にかけたら、燃えるのは当たり前だ。風呂の中に入れるお湯は、別に沸かさないといけない。ただ風呂の容量は大きくするつもりなので、大きい容器を使ってお湯を沸かしたいと思っている


「さっきからうるさいぞ!」


『えっ?』


不機嫌そうな声が入り口から聞こえてくる。声がした方を振り向くと、髪が長くてボサボサの男の人がいた


「こっちは寝てんだぞ、静かにしろよ」


「あんたまた昼間っから寝てたのかい、他の若いもんみたいに外で作業をしなよ」


「うるせえ!俺は俺なりにやることをやってんだよ!」


(なんか引きこもりの人みたいだな…)


元の世界の頃に、身内に似た人がいたのを思い出した。その人は暫く引きこもって、ある日いきなり働き始めた


(親戚の叔父さんってほどじゃないけど、二十歳は越えてそうだな)


その引きこもってた人は俺の叔父さんなのだが、年齢は40くらいだったはずだ。木の職人の女性とその男性は、歳が近そうに見えた


「ヒフミ、お前はいつもうるさいんだよ!」


「シゴロ、あんたは今うるさいわ!」


木の職人の女性がヒフミ、そしてこの男性がシゴロという名前なのは、この会話で理解することになった


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