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マスターからの依頼

『うあぁぁぁぁ!!』


「九十九!九十九ったら〜!」


『な、なんだよ〜!』


「もう後ろにはいないよ!」


ナナに言われて止まり後ろを振り向くと、もう俺を追いかける魔物はいなかった


『ハァハァ…なんとか撒いたか…』


「兄ちゃん、こんなところで息を切らして何をやってんだ?」


『え?』


気がつくと俺は、村の入り口へ帰って来ていた。村を出る時に挨拶をした、入り口にいる門番のおじさんに話しかけられ、自分が村まで戻ったことに気がついた


(うわ〜、村まで戻ってしまった…)


スキルが切れ、その場に仰向けに倒れ込んだ。今日も空は青いようだ


「兄ちゃん大丈夫か?何をしてるんだ?」


『いや〜、マスターに言われてステップラビットを狩ろうと、生息地を確認して帰って来たのですよ』


本当はステップラビットに追いかけられ逃げて来たのだが、カッコつけるために嘘をついてしまった


(思ったより難しいな、どうするか)


俺は朝食後に、マスターから依頼を受けていた






『それで頼みとは、何でしょうか?』


「ああ、先程も食べたステップラビットを狩ってきてくれないか?」


『ステップラビットか…』


「ホーンラビットを倒したあんたなら大丈夫だろう、1日2匹捕まえてきてくれたら、飯と宿泊代は無料でどうだ?」


『う〜ん、それは悪くないですね…』


正直手持ちに金貨数枚や、銀貨もある程度はある。だがこの先を考えたら、手持ちが減らないのは魅力的だ。そして食事と宿の確保も出来るので、自分としては好条件だった


「俺が解体は出来るから、狩ったらそのまま持ってきてくれ、血抜きが出来ないなら早めに頼むぞ」


解体などはわからないと言ったら、そこはマスターの方でやってくれるらしい。それならと狩って早めに持ち帰ろうと思う




『そう思って来たのだが…』


村の入り口から出て真っ直ぐ平原を進むと、昨日見た土地にステップラビットはいた。だが近づいてナイフを抜くと、周辺にいた他のステップラビットも反応し群れで追いかけて来た


(とりあえずその群れからは、スキルで逃げられたんだが…)


スキルがまた使えるようになってから、今度は単体でいるステップラビットを見つけた。そして近づいてナイフを抜くとすぐに逃げたので追いかけたのだが、結局は群れの中に逃げられて、その群れに追いかけられ村の入り口に戻った




(確実に狩るなら、力にスキルを使いたいんだよなぁ)


力と速にスキルが使えれば狩るのも楽なのだろうが、現在は使うことが出来ないので、頭を使わないといけないようだ


(慣れて来たのか、反動も少ないな)


先程2回スキルを速に使ったが、初めて使った時よりは反動は少なかった。スキルのおかげで運動力も上がり、多少は筋肉がついたのかもしれない、または慣れたのかもしれないが詳細はわからない


「そっちは直ったか?」


「ああ、こっちは大丈夫だ、また材料を取って来ないとな」


村の入り口で寝転んでいると、少し離れたところで村を守るための柵を修理している人達がいた。その人達は俺の姿を見ると、気になったのか近づいて来た


「兄ちゃんそんなところに寝転んで、何をしてんだ?」


『いや〜、空を見てました…そちらは何をしてたのですか?』


普通に考えれば柵を直していたように見えるが、柵を見るのが好きな柵マニアかもしれないので、念の為に確認してみた


「猪がよ〜、村の中の作物を狙ってたまに来るんだよ」


「前に柵に槍を付けてたら、酔って刺さったやつがいてそれ以来は外したんだが、定期的に来て柵を壊されてよ」


柵を壊されている間に、村人が集まって追い返すらしい。だがそのたびに直さないといけないので、悩んでいるみたいだ


『そうですね…あ、そういえば、この村の形ってどうなってますか?柵の配置とか』


「この村か?」


身体を起こし、地面に描いてくれた村の絵を見る。この村は人口は50人くらいの村で、三角形の形に柵が置かれ、北側に村の長の家があり南東と南西の頂点の部分に村の入り口があった。


(ここは南東の入り口か)


ちなみに、俺が出入りしているのは南東の入り口だ。入り口は昼間の間だけ、門番がいるらしい


『ふむ、基本的に入り口はこことここの2箇所だけなんですね』


「ああ、それ以外は柵で囲っている」


『なるほど…それなら堀とかどうですかね?』


「堀?」


学校の授業や、祖父が好きだった戦国時代や江戸時代のドラマなどで、城を守る堀というものがあった。詳しくはないが、ないよりはマシだろうと提案してみる


『えっとですね、ここの村の入り口以外の柵の外側に穴を掘ってですね』


記憶を頼りに説明しながら、先程の村の絵の外柄に堀の絵を描いていく


「へ〜、そりゃ面白そうだな」


「暇してる若いもん呼んでやってみるか、兄ちゃんちょっと教えてくれよ」


『え、そうですね…』


マスターからの依頼は夕方までに狩ってきてくれとのことだったので、少しくらいなら大丈夫だろうと立ち上がる


『じゃあ掘る位置や形の手伝いなら…』


「おう頼むよ、ちと他のやつらも呼んでくるわ」


少し待つと五人ほど増えたので、皆で村の周りを歩いて確認する。耐久性を考えての掘り方や掘る幅、子供や酔っぱらいが落ちることも考えて水を張ることや、落ちた時に上がれるように何箇所か登れる場所を作ることなど、自分に分かることを説明していく


「なるほどな、少しずつやって行くか」


「そうだな、掘る場所は先に地面に描いておくと楽なんだな、勉強になるな」


猪も魔物なので、村人では倒すことは難しいみたいだ。元冒険者のマスターもたまには狩るらしいのだが、リスクを考えて基本的には手を出さないとその人達は言っている


(マスターでも手こずるのか)


もし村の外で会ったら逃げようと、俺は心に誓った


「それじゃ飯食ったら、掘って行くか」


「そうだな、よく壊される柵の前からやるか」


「兄ちゃんありがとうな」


『いえ、頑張って下さい』


村人達はやる気を出していた。俺の知識が役立つなら、それは喜ばしいことだ


(う〜む、罠か…)


猪に関しては、捕まえるよりは柵を壊されないことを優先した。だがステップラビットなら、動けないようにする罠を仕掛けるのもありだと思う


(そうなるとロープが欲しいな、部屋に取りに行くか)


一度マスターの店に戻り昼食を取った。そして部屋に戻り、ロープを持って部屋を出る。ちなみに部屋はそのまま使っていいらしいので、金が入った袋以外の荷物は部屋に置いている


『よしリベンジに行くか』


ステップラビットを狩るため、もう一度村の外へと向かった


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