見知らぬ天井 2
『知らない天井だ』
前にも、同じことを言った気がする。目を覚ますと、そこには木の板で出来たような天井がある。俺は昨日酒場の2階に案内されてから、いつの間にか寝ていたようだ
『今何時だろう…』
この世界に時計というものはないだろう。鐘も鳴らないので、街とは違うようだ
『ん〜、外で寝るよりは良かったな』
身体を起こすと、畳で言うと6畳くらいの空間に、木で出来た荷物置きのような棚と、大人2人分くらいの幅のベットが置かれている
(枕は麦の殻が入ってるのかな?布団は綿みたいな物が詰まってそうだ)
元の世界の自分のベットに比べれば快適とは言えないが、店主のこだわりなのか思ったより寝やすかった
『昨日はちゃんと鍵を閉めたよな』
ベットに座り正面を見ると、扉は閂のような棒で開かないようになっていた
「やっと起きたの〜?」
俺が起きたことに気が付きナナが出てくる。たしか寝る前に、魔麦のパンを出しておいたはずだ
「白いパンは全部食べたよ、黒いのはもう駄目かな」
『あ〜、そうだよな』
スージーからもらったパンを取り出すと、食べ残した黒い方のパンはボロボロになっていた。匂いもよくないので、もっと早めに食べるべきだったと思う
(とりあえず、ご飯でも食うか)
荷物を持って部屋を出ることにした。閂を外し部屋を出ると、目の前にはエプロンみたいなものを着けた女の子が、箒のような物で掃除をしていた
「あ、起きた?」
『あ、おはようございます』
「昨日泊まった人だよね、下でご飯食べられるからどうぞ〜」
『すいません、ありがとうございます』
俺に笑顔で挨拶した女の子は、少し茶色っぽい髪をポニーテールのようにまとめ上げ、廊下の隅までしっかり掃いていた
『おはようございます』
「おう、おはよう、よく寝てたみたいだな」
昨日部屋まで案内してくれた店主が、洗った物なのか木のコップや食器を布で拭いていた。俺は昨日と同じ、カウンターの席に座った
『マスターって呼べばいいですかね?昨日部屋に案内された時に、誰かに呼ばれてたので…』
「ああ、構わないよ、食事を用意するな」
そう言うと昨日と同じく、カウンターの奥に入って行った。何かが焼ける音と、胃をくすぐるような匂いに待ち遠しくなる
「お待たせ」
『お〜』
木の皿に昨日と同じナンのようなパンと、粘土みたいなもので作るのだろうか、陶器のような硬い皿にステップラビットの焼いた物と、何かの卵なのか大きな目玉焼きが出てきた
「味が足りなかったら、これを振りかけてくれ」
『これは?』
「山で採れた実を砕いたものだ、少し刺激があるが味を濃く感じるぞ」
小さい器に、細かく砕かれたスパイスのような物が入っていた
『あ、美味い』
ステップラビットの焼き加減も、目玉焼きの少し黄身が柔らかいところも、パンと食べるとちょうど良かった
「そうだろそうだろ、うちで人気のメニューなんだ」
マスターは満足気に頷いている、俺は先程のスパイスも試したくなった
『あ、これ…』
振りかけてから食べると、舌にピリッと刺激を感じる。だが胡椒に似たような、足りないところを埋めてくれる味だった
『ステップラビットは焼いても結構美味しいですね、この目玉焼きの卵は?』
「それは山の方に行くと、途中の木に巣を作っているウッドバードの卵だ、大きいだろう?昨日の夜採ってきたばかりだ」
『こんな大きい卵産むんですね』
俺の世界だとダチョウの卵とかじゃないと、この卵とは張り合うことは出来なさそうだ
『ふぅ、お腹いっぱいです、ご馳走様でした』
出された食事を平らげて、お腹を擦った
「いい食べっぷりだ、ところで今日はどうするんだ?」
『あ〜、どうしましょうかね…』
目的もなく、なんとかこの村にたどり着いただけだった。ここからどうするかは、まだ決まってはいない
「まだ暫くウチに泊まるか?それなら頼みがあるんだが」
『頼みですか?』
「ああ、ホーンラビットを倒せるあんたなら、大丈夫だろう」
マスターは勘違いをしているが、俺はホーンラビットしか倒したことがない。ものによってはホーンラビットしか、倒せないのだ
『とりあえず聞くだけでも…』
「そうだな、とりあえず俺の頼みは…」
俺はこの後、マスターからの依頼を受けて、また平原に戻ることになるのであった




