新たな街を目指して
『これでよしっと』
天気が良く風もあり、暫く待つと服は乾いていた。元々の素材が薄めなので、それのせいもあるみたいだ
『ロープは回収して、枝は置いていくか』
作った台のロープを解き、枝は抜いてまとめて地面に置いておく。使う人はその枝で、焚き火などをしてくれればいい
(そういえば、火を起こす手段もないのか…)
サバイバル技術などは教わっているわけもなく、火の魔法を使えるわけでもない。俺は今、本当に一人で生きていかないといけないことを自覚する
「ねえねえ、あっちに木が倒してあるよ」
『ん?』
俺の頭上を飛んで周囲を見ていたナナが、川下の方を指差す。たしかに何かが、川を渡すように倒れている
『2メートルくらいなら、深くもないし渡れるけどな』
「でも気になるから見に行こうよ」
ナナに言われて荷物を持った。100メートルほど歩くと、やはり川を渡すように木が倒されていた
『橋代わりに使ってるのかな』
太さもあるので、渡るのには問題はなさそうだ。もしかしたら、近くから誰かが運んで来たのかもしれない
『さてこの後はどうするか』
川を渡り街道が通っていた方を見るが、今のところ街などは見えない
『結構広いな、自転車とかあれば楽だったのに…』
見渡す限り平原が広がっている。多少は上下して丘みたいなところもあるが、ところどころに木が生えている以外は何もなかった
『街道まで戻る手もあるが危険だしな、あとはアレくらいか』
平原の先に、細い煙が上がっているのが見える。もしかしたら火を使っていて、そこに街があるのかもしれない
『ナナ、あっちの方の煙みたいなのは何かわかるか?』
「この距離じゃわからないわね」
ナナは上がれる高さが低く、遠くまでは確認出来ないようだ
『とりあえず目的地もないし、あっちに行ってみよう』
「わかった〜」
まずは煙の上がっている場所を目指して、向かうことにした
『う〜ん、あれは無視していいよな』
「私はどちらでもいいけど」
暫く歩いていると魔物に出会った、だがその魔物は食事中なのかこちらには興味がなさそうだ
「角がないホーンラビットね」
『マスさんが前に言ってたやつかな?』
ホーンラビットに比べると角がなく、身体も一回り小さかった
『倒しても解体は出来ないし火も起こせない、素材も手に入れられないのなら倒す理由はないな』
倒す理由があるとすれば襲って来たらなのだが、雑草を黙々と食べ続ける姿は、その魔物に敵意がないのがわかった
『いいや、行こう』
レベル上げも急いでないので倒すのは止めておく、自分のステータスも考えたらリスクもある。そしてステータス画面を念の為に開いたら、いつの間にかレベルが2つ上がり7になっていた
(この前の魔物かな)
倒すのに苦労はしたし、体力も高かった。その分はさすがに、経験値は多くもらえていたみたいだ
『川を渡ってから、随分増えたな』
「街の周辺は、冒険者に狩られていて少なかったのかもね」
先程の魔物を見て以降、歩いていると何度も魔物に出会う。だがこちらから手を出さない限りは、襲われる様子はない
『この魔物は、どれくらい強いのだろうか』
立ち止まり、魔物に集中して見る。するとすぐにステータス画面が目の前に出てきた
ステップラビット レベル 2
HP 15/15
MP 5/5
力 20
体 5
速 15
運 10
『お〜、俺よりは強いな…』
スキルは無いようだが、ステータスは素の俺よりは強そうだ
「この魔物は縄張り意識はないのね」
『あ、たしかに』
1匹でいるのもいれば、3匹で集まって食事をしていたりもする。さすがに3匹は、同時に相手は出来ないと思った
『襲われたらひとたまりもないな』
「こちらから何もしないなら大丈夫そうよね」
黙々と食べる姿は可愛いと思う、だが一度敵対したら命はないだろう
『昨日みたいに木の根元で寝るとかは、出来なさそうだな』
あれからどれくらい歩いただろうか、最低でも5キロは歩いた気がする。遠くに見えていた煙は少し大きくなったので、このまま歩き続ければ何かが見えてきそうだ
『行けるとこまで行ってみるか』
「そうね〜、何かないかなぁ」
それから暗くなるまで、休憩を取りつつ歩き続けた。空が赤くなり始めた頃に、自分の見える距離に建物らしきものが見えて、疲れた足がもう一度やる気を出した
『着いた〜!』
「街にしてはしょぼいわね」
俺達はなんとか、敷地を木の柵に囲まれた集落に着いた。そこは街ではなくもしかしたら村なのかもしれない
『と、とりあえずご飯、後は泊まれるところを…』
歩き続けて重くなった足をなんとか動かしながら、その敷地内へと進むのであった




