表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/66

突然の別れ

「九十九!九十九起きろ!」


『はっ!』


寝始めてすぐにマスに起こされた。真っ暗な詰所の中で見えないが、声からマスだと分かる


「大変なことになった…」


『どうしたのですか?』


マスの息づかいから、急いで来たのは分かった


「おいっ!怪しいやつはどこだ!」


「はっ!お疲れ様です、怪しい者とはどういう者でしょうか?」


「ここに出入りしている冒険者がいるだろう、ホーンラビットを毎日のように納品しているやつだ」


南門の方で、怒鳴る声が聞こえる。マスに呼ばれて詰所から隠れて覗くと、転移初日に南門まで俺を引き摺った城の兵士達がいた


『あの人達って…』


「しっ!最近俺達の羽振りが良かったからと、怪しまれていたらしい」


『あ〜…』


今日の昼間に思った時には遅かったらしい、マスだけではなく他の門番にも、接触していた者がいるとは聞いていた


「誰かそこにいるのか!」


俺とマスが隠れている詰所に城の兵士が近づいて来る、マスは隠れていろと言って出て行った


「貴様、マスか」


「はっ!」


「貴様がホーンラビットを納品しているのは知っている、それを倒している者はどこだ!」


城の兵士の目当ては俺みたいだ。ただ兵士の探しているのが九十九という男とは、まだ確信は出来ない


「あ〜、最近自分がお世話になってる冒険者さんですかね?」


「そうだ、どこにいる」


城の兵士がマスに詰め寄る、マスは冷静に街の中を指して言った


「今日はもうお休みではないですかね?もし良かったら宿まで案内しますけど」


「ほぉ?それなら案内してもらおうか」


マスを先頭に、城の兵士が街の中へ入って行った


(とうとうこの日が来てしまったか)


目立つことをしていたので覚悟はしていた、ただ想像よりも早かった


(まだ魔物の森も突破出来てないのに…)


もし先程の兵士に見つかったら、どんな目に合わされるかわからない。勇者の盾に使えると勘違いされて、一撃であの世に送られるかもしれない


「兄ちゃんいるか?」


昼に話をした門番が、詰所へやって来る。その門番は、申し訳なさそうに謝ってきた


「すまない、俺や他のやつも目をつけられてたみたいで、酒場で飲まされて調べられていたらしい」


ここ最近は、やけに酒をご馳走しながら絡んでくるのがいたみたいだ。そうやっていい気分にさせて、情報を喋らせるつもりだったのだろう


「本当にすまない、兄ちゃんには世話になってたのに…」


『いえ、仕方ないですよ。いつかはこういう日が来ると思ってました』


謝られてももう遅い、だが自分もマスや他の門番のおかげで、少しでも良い生活が送れていた


「もしって時があればとマスと話してたんだ、来てくれ」


呼ばれて荷物を持ちついて行く。そして街の中に入れてもらうと、街の内壁を伝い西門へ向かうように言われた


「こっちを通って行けば、西門までは行けるはずだ」


『いいんですか?』


俺を街の中に入れたと知られたら、この門番達もどうなるかわからない


「捕まらないでくれよな、俺はマスのところに行くから案内出来ないが、無事に街から出てくれ」


『わかりました、ありがとうございます!』


街の中へ入れてくれた門番達へ御礼を言い、その場から離れた








『くっ、またこれか』


南門から始まり内壁すれすれを通って、西門へ向かっている。内壁と建っている家などの建物は、間隔が空いているため通るのには支障がないのだが、ところどころに木材や瓦礫などのゴミが転がっていた


『なるべく音は立てたくないのだが…』


西門へ急ぎたいが、どこで見つかるかわからない。俺は静かに進むので精一杯だった


「ねぇ、そこにいるのは九十九君?」


『えっ?』


横から声がかかり驚いた、だが俺の名前を呼んだので知り合いなのはわかった


『スージーさん…』


「やっぱり九十九君だ、良かった〜」


スージーが俺に気がついて近づいてきた。周辺をナナが確認してくれてるが、今のところ他に人はいないらしい


「マスに言われて探してたの、たぶん内壁を通って西門へ向かうだろうからって」


『危険ですよ、わざわざすいません…』


俺を探してくれていたのだろう、スージーは息が荒かった


「これ最後に焼けたパン、暫く会えないと思うから持って行って」


スージーからパンが入った袋を受け取る、スージーは笑顔でこちらを見ていた


「九十九君のおかげで、私達頑張れそうだから…ありがとうね」


『いえこちらこそ、ありがとうございました』


マスとスージーはこれからが重要だ、二人の仲が上手く行けば良いと思った


『あ、そうだ、これ…』


「えっ」


スージーに金貨を5枚入れた袋を渡す、万が一の時は渡そうと準備をしていたものだ


『2人への俺からの御礼です、これからも2人の仲を応援してます』


「え、そんな…受け取れないよ」


『パンありがとうございました!お幸せに』


逃げるようにスージーから離れて西門へ向かう。これ以上一緒にいて見つかったら、2人に迷惑がかかると思った


(正直恥ずかしいだけだけど…)


2人へのご祝儀のつもりで金貨を渡した。次に会う機会があれば、幸せな2人を見たいと思った










(う〜ん、困ったな…)


あれから暫くして、なんとか西門へ着いた。ただなるべく音を立てないように移動したので、思ったより時間がかかった


「不審者が街の中に潜伏した可能性がある、怪しいやつが来たら捕まえろ」


「はっ!」


「万が一がある、もう少ししたら門を閉めろ」


城の兵士なのか、西門の門番へ指示を出していた。早く出ないと、西門が閉まるようだ


(さてどうするか…)


「スキルを使って強行突破は?」


『スキルは使うけど、タイミングが…』


ナナがスキルを使えばと勧めてくる、それは考えているがなるべくなら見つかりたくはない


西門にいる門番のステータスを見る限りでは、速さでは負けてはいない。ただ1分ほどで、どれだけ逃げられるかってことだ


「怪しいやつがいるぞ〜!」


(えっ!?)


「どこだ!」


俺が隠れている場所の反対側から、聞いたことがある声が聞こえる。それは間違いなくマスの声だった


「こっちだ!こっちに逃げたぞ」


「行くぞ」


「おう!」


西門の門番についていた2人が、マスの声に誘われて離れて行った。俺はそれを確認してから、スキルを発動した


(付与、融合)


スキルを発動し、駆け出す。西門は今、門番が離れてもぬけの殻だった


(マスさん、ありがとう)


俺はマスに御礼を言って、西門を抜け街から出たのであった


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ