帰って来なかった日常
『ふぅ、結局はいなかったな』
「そうね、あの魔物はいないわね」
次の日にナナと魔物の森へ入った。そこにはいたのは通常のホーンラビットだったので、いつも通りのやり方で倒し周辺を探索した
「飛べる範囲で見たけど、やはりあの魔物はいなかったわね」
「う〜ん、結局あの魔物はなんだったんだろうか」
正直戦いたくはないが、本当にいたことを確認はしたかった
「魔麦は取るの?」
『ああ、見に行こうか』
ナナに言われて奥に進んで行く、まずはホーンラビットをまた狩れること、そして魔麦を手に入れられることを喜ぶことにした
『少ないな…』
「こんなものだっけ?」
いつもなら結構な量が生えていたのだが、今回は見に行ける範囲では少なかった。あのホーンラビットも魔麦を食べていたので、それが原因かもしれない
『仕方ない、今日は戻ろう』
「そうね、また明日来てみましょう」
魔麦と倒したホーンラビットを持って、森の入り口へ向かった
「お、どうだった?」
『そうですね…自分が見た魔物はいなかったです』
「そうか、九十九のことを信じてはいるけど、いないものは仕方ないよな」
『そうですね…あとこれ』
マスにホーンラビットと魔麦を預けて、納品をお願いする
「お、倒せたのか、魔麦はちょっと少ないんだな」
『それがあまり生えてなくて…もしかしたらこの前の魔物が食べているのを見たので、そのせいかもしれません』
「まぁ無事九十九が戻ってきたし、少しでもあるだけでもいいだろう」
マスは渡したホーンラビットと魔麦を持って、街の中へ入っていった
「兄ちゃん相変わらず凄いな、最近ホーンラビットの納品率が上がったからと、ホーンラビットは実は弱いのではないかと聞かれたよ」
『聞かれたのですか?』
「おう、この前酒場に行ったらローブを来た男にな、顔は見れなかったけど若くはなさそうだったな」
「なるほど…」
最近詰所を利用させてもらう代わりに、マスや他の門番の懐は温めている。その分で酒場に行く回数も、増えたそうだ
(大丈夫だろうか、マスさんが一応口止めはしてくれてるはずだけど)
俺が注意をしてしまうと、せっかく築いた関係にヒビが入るかもしれない。俺はそれが怖かった
「パンも楽しみだな、うちの家族も楽しみにしてるんだ」
『そうですか、それは良かったです』
元の世界でもそうだったが、人間関係が得意ではないので、結局この時は何も言えなかった
「待たせたな、品質も問題なしだったぜ、これお金と昼はチキンバードの丼にしたぜ」
『ありがとうございます』
「魔麦のパンに慣れちゃうと、今までのパンはあまり口に入れづらいよな」
『たしかにそうですよね』
マスと2人でチキンバード丼を食べる。この世界に来て、今のところこれが一番好きだった
(さっきの件、言っておいた方が良いかな…)
先程の門番の話を思い出す、ただ個人の好みで酒場に遊びに行っているのに、それを制限するのはおかしいと思う
(まぁ大丈夫か)
その時はマスや門番達に悪く思われたくなくて言えなかったが、そのせいでこの日常が終わるとは思いもしなかった




