魔の王
ここはリスウ王国の遥か南、魔物の森を抜けた先には魔王が住むと言われている城があった
『娘達よ』
私は椅子に座り、自分の娘を呼び出す。暫く待つと4人の娘達が現れた
『私を随分待たせたな、娘達よ』
「お母様、四天王とお呼び下さいな」
「お母さん、ごめんなさい」
「化粧に時間がかかって…」
「…寝てた」
魔王を前にして4人の女達は、気の抜けたような顔をしている。父親の知識の影響で、四天王という名称で呼べと指示をしてきた
『はぁ、もういいわ』
「お母様のその威厳のありそうな言い方は、慣れないわね」
「お父さんが教えてくれた言い方だもんね〜」
「お母様はお父様が大好きですよね」
「お父さんに会いたい」
『私も会いたいな…』
1000年前私が恋に落ちた相手、私と娘達のために全てを捨ててくれた人、その人はもうこの世界にはいなかった
「それで私達を呼び出したのは、どうしてですか?」
凍るような瞳に蒼色の髪をした娘が発言をする
「なんか面白いことでも起きたのかな!」
紅色の髪をした娘が、燃えるように赤い目を輝かせてこちらを見ている
「せっかく化粧をしたし、お買い物にでも行こうかな」
深い緑のような瞳に明るい翠玉のような髪の娘は、興味が無さそうにこの後の予定を考えていた
「眠い…」
髪の右側が金色、そして左側が黄土色で目の色も髪の色に対応している娘が、早く部屋に戻りたそうにしていた
(全く、この子達ったら…)
4人の娘は自分の能力に合った髪色と瞳をしていた、そして性格も4人それぞれが違う
『え〜、実は魔物の森に偵察のために放った、私の使い魔が倒されました』
「へ〜、お母様の使い魔が倒されるなんて珍しいわね」
「え〜!どの子!?あの大きなやつかな」
「その子はこの前人間に、倒されたんじゃないかしら?」
「Zzz…」
私の言葉に娘達が反応をする、1人寝てるように見えるのは気のせいだろうか…
『最近人間達が勇者を召喚したと聞きました。それを調査するために、各地に私の使い魔を放っていたのですが…』
今回魔物の森に放ったのは、ホーンラビットを強化したものだった。それを北の国に行かせたのだが、自分より格上からは逃げるようにスキルと能力を改造していて、万が一相手が強くても倒せるような強化をしていた
「へ〜、勇者ね」
「勇者か〜」
「勇者ですって?」
「ゆ、ぐぅぐぅ…」
『あの子が倒されたのには驚きました。もしかしたら北の国には、本当に勇者がいるのかもしれません』
勇者の力は、1000年前にも戦ったので経験をしている。もしまた勇者と呼ばれる者が、私の命を狙うならと不安になる
「それで私達を呼び出したのは?」
蒼色の髪の娘が聞いてくる
『誰か北の国へ行ってもらえないかしら?』
人の街へ潜入する必要もあるかもしれないので、人と同じ見た目の娘達の誰かに頼もうと思った
「え〜、私が行きた〜い!」
『あなたですか』
紅色の髪をした娘が手を挙げる、子供っぽく常識が足りないのもあるので、勉強をさせるのもありかもしれないと思った
「うん!私もお母さんみたいな相手を見つけて、結婚をしたい!」
紅色の娘の本命はそこだった。勇者にされた封印が解け始めてから約15年ほどが経ち、娘達の年齢も16になるところだった
「そこら辺の人間は嫌だけど、もし本当に勇者がいるなら会ってみたいな」
「私も行きたいな」
「私も、お父様とお母様みたいな出会いがしてみたいです」
「…」(すやすや…)
娘達は私と彼とのような恋愛をして結婚をしたいと、子供の頃から言っていた
『3人も行かせるわけには行かないので、イコールあなたが行きなさい』
紅色の髪の娘へ声をかける。娘達は生まれてから城にいることが長いので、世間の常識が足りないこともある。
「わ〜い、頑張ります!」
イコールと呼ばれた紅色の髪の娘は、喜び気合を入れていた
『ただし魔物の森を通るのは禁止です。万が一魔物の森へ入れる人間に会ったら、殺されるかもしれません』
北の国にいる人間から襲われないように、魔物の森を北へ拡げ魔物を大量に放った。それを越えて来れるならば、私や娘達の命が危うい
『あなたの成長のためにも、遠回りをして旅をしながら向かいなさい。定期的に報告するのと、知らない人にはついて行かないこと』
「も〜お母さん、子供扱いしないでよ〜」
『これを使いなさい』
娘達の父親が使っていた、当時の地図を複製して渡す。1000年も経てば色々と変わっているかもしれないが、それでもないよりはいいだろう
「ありがとう、お母さん」
『他の子は旅のサポートと、出る前の準備を手伝ってあげなさい』
「わかりました」
『では、気をつけて行くのですよ』
娘達は私の前から消えていく、もし人間達が1000前と同じことを考えているのなら、今度こそ命の危険があるかもしれない




