決戦、ホーンラビット
『よし、行くか』
「気合入れるわよ〜!」
昨日の夜はかかしを作った後に緊張してあまり眠れず、今日の朝は鐘の鳴る前に起きてしまった。ただお腹は空いていたので、マスの持ってきてくれた朝食を胃に入れて準備をした
『ナナ、ホーンラビットはいるか?』
「見てくる」
まずは近くにいるかどうかをナナに確認してもらう、20秒ほど待つとナナは戻り報告してくれた
「私が飛べる範囲内にはいないけど、その先の場所に見えたわよ」
『となると50メートルは離れてそうだな』
ホーンラビットのいる方向を指してもらい、そこから対角になるように、森が覆っている街の外壁へ昨日作ったかかしの1体目を立て掛ける
『最終的にはこのかかしに突っ込ませて、そのまま外壁に突き刺させる』
「ふむふむ、ここまで連れてくればいいのね」
そこからこの前のホーンラビットの動きを思い出して、自分の中でシミュレーションした場所へ、ジグザクにかかしを突き刺して行く
『距離を考えたら10メートルほどかな、こう斜めに逃げる感じで行く』
「わかった、これがラストね」
ホーンラビットを外壁まで誘導するために、1体目を地面に刺し気合を入れた。少しでもミスをしたら、俺は最初に魔物の森へ入った時に見た骨の様になるだろう
『今いる位置を確認してくれるか?』
「わかった」
ナナが俺の周りを索敵しながら飛び回った、そして先程指した方向から動いてないのを確認した
「ご飯を食べてたみたいね」
『朝だしな、動いてないならちょうどいい』
1体目のかかしを背にして、ホーンラビットがいる方へ近づいた。正面に大きな木があり、それを避けて覗くとそこに目当ての魔物がいた
(よし、まだ気がついてはいないな)
この前の白いホーンラビットは、こちらを見ずに目の前にある草を食べていた。よく見るとそれは魔麦なので、もしかしたら奥からここまで持ってきたのかもしれない
「あっ」
『気がつかれたか』
誘導する前にステータスを確認したかったのだが、それを許してはくれず、こちらを向いてすぐに走ってきた
(そちらから来てくれるなら!)
俺はすぐに1体目のかかしへ近づいて、足元へ身を伏せた。そのまま2体目のかかしへ、身を屈めたまま移動する
(来たか!)
ドンッと音がして、後ろのかかしとその後ろにあった木が吹き飛ぶ音が聞こえる。2体目のかかしに着いてすぐに、1体目のかかしがあった方へ叫ぶ
『俺はこっちだぞ!』
ガサッと音がしたので、急いで3体目の方へ移動する。移動してる間に、バキッと2体目のかかしが壊される音がする
(やはり勢いが弱くなっている)
「上手くいってるね」
『このまま5体目まで行くぞ、おい、こっちだ!』
3体目、4体目とかかしが壊される。5体目の足元へ着いてから、しゃがんだままかかしの前に見えるように手を振った
『お〜い、こっちだ!』
声をかけるとホーンラビットの風を切る音が聞こえたので、しゃがんだまま上を見ていると、かかしを突き破るように突っ込んでいった
『よし!』
「やった〜、早く早く〜!」
ガガガッと街の外壁に角がめり込み、ホーンラビットが宙に浮かんでいた。俺はすぐに立ち上がり、ナイフを構える
『付与、融合!』
ステータス画面が手元に開いたので、力に触れてスキルを発動させる。そしてそのままいつも通りに、ホーンラビットの首へナイフを二度突き刺す
『あれ?』
いつもなら二度刺すと動きが止まるが、変わらず暴れている。ただ木と違い抜けにくいのか、抑えてるのもあって角は微動だにしてない
「何してるの?」
『いつもならもう死んでるのに…』
その後何度も刺し続け、スキルが切れる頃にはホーンラビットは真っ赤になっていた。角も身体も、そして刺していた本人も真っ赤だ
『ギリギリだった…』
「化け物だったわね…」
『暫く周りを見ててもらっていいか?ちょっと動けなさそう』
スキルが切れた途端、腕が上がらなくなった。それだけ何度も刺すことになったということだ
『なんとか倒せたけど、動けねぇ…』
1本目のかかしからここまで100メートルほどだったが、身を屈めたまま走ったりもして足もガクガクだった
『ちゃんと筋トレをしよう…』
俺は仰向けのなり、空に誓うのだった




