終わりの始まり
『やっとレベル5に上がった…』
「でも、相変わらず弱いわね」
今日もホーンラビットを倒し、少し奥に行き魔麦を採取して森から出る。湧いてくるのか他の場所から移って来るのか、今のところ森に入ってすぐの場所はホーンラビットの縄張りだった
『しかし…俺はいつまでこの生活を続ければいいのかなぁ』
「ホーンラビット狩り?」
『それもそうだけど、国外追放されたのにその国から出るどころか、街からも離れられない』
「う〜ん、明日試してみる?」
『それもありかな、ナナ頼りになっちゃうけど』
「いいわよ、その代わりちゃんと後ろについてくるのよ」
明日はナナと、魔物の森を突破してみることにした
『こ、これは…』
「何かしら、不味いわね」
次の日に起きて朝食を食べてから、準備運動をしていつも通りに森へ入ろうとした。突破を試みるつもりだが、一応荷物は置いて身軽な状態で行くことにする
『なんだろう、マスさん達はいつも通りだよな』
「そうね、こちらを見てる様子もないし、違和感を感じているのは私達だけかしら」
南門を見ると、マスは他の門番と談笑をしている。相変わらず平和な証だが、実際は魔物の森に異変が起きていた
「どうする?私がまずは見て来ようか」
『その方がいいかもしれない、お願い出来るか?』
「は〜い、ちょっと待ってなさい」
ナナが索敵に出てくれると言うので、一度森へ入ってもらう。二人で感じるということは、間違いなく何かが起きている
(今までこんなことなかったのにな)
ラストエレファントを初めて見た時でさえ、このような違和感は感じなかった
「ねえ、何か変なのがいた」
気がつくとナナが目の前まで戻ってきていた。ただ慌てる様子もなく、危険な魔物を見たとかではないみたいだ
『変なの?』
「うん、ホーンラビットみたいなんだけど…」
『歯切れが悪いな、ホーンラビットだけどホーンラビットじゃないのか』
「そう、そんな感じ」
ナナの見たものがうまく伝わって来ないので、森へ入ってみようと思った
『見に行ってみよう』
「いいけど、いつもよりは離れて見てね」
『ん?わかった』
ナナの後ろを追い魔物を探しに行く、お目当てのホーンラビットはすぐに見つかった。だが遠目からでもわかるように、その見た目や雰囲気が違った
『真っ白だな…』
「でしょ?」
いつものホーンラビットは汚れなどで黄ばんだ色をしており、長生きしているほど色が濃いらしいと聞いた。だが今見ているホーンラビットは、真っ白または青白いと言ってもいいくらい眩しく感じた
『しかもいつものより大きい』
「角も大きいね、色も赤いし」
いつも狩るホーンラビットにも多少の個体差があるが、今見ているのはあからさまにサイズが一回り以上大きかった
『あっ』
「嘘っ」
ステータスを確認しようと、そのホーンラビットに集中し始めたところで急にこちらを向かれた。そしてそのままこちらへ走って来るのが見えた
「いつも通り避けて!」
『ふっ』
ナナに言われてホーンラビットが飛んだ瞬間に伏せた。距離があったので伏せるのは間に合ったのだが、いつものようには行かなくなった
『嘘、だろ…』
「何こいつ、やばいかも」
事前に後ろに太い木を用意していたのだが、伏せて避けた後に振り向くと、そこには立っているはずの木がなかった
『ホーンラビットは!?』
「あっち!」
ナナに言われた方を見ると、ホーンラビットがゆっくりと向きを変えて、こちらへまた向かおうとしている
『これはやばいな』
「一回出よう!」
森の外へ向かいたいが、そこにはホーンラビットが構えている。こちらへまた走り出したので、俺は咄嗟にスキルを発動した
『付与、融合!』
何回か練習した動きで、ステータスの速へスキルを使う。ここ数日は午前中にホーンラビットを狩った後に、午後は他のステータスへ試して身体への変化と反動を調べたりしていた
『これは後の反動が怖いが、今はやるしかない』
速へスキルを使うのは一見様々な速度が上がるので良いように思えるが、実際は身体への反動も大きいものだった
(本来ならもっと筋肉をつけてからやりたかったけど)
マスに反動の話をした時に身体を鍛えろと言われた、身体強化は筋肉をつけたりしていると反動が少なくなるらしい。たしかにマスは細身だが、元冒険者なだけあって身体は引き締まっているのはわかった
『危ねえ』
速度は対等に近いのか、ホーンラビットの突進を見てから避けることが出来た。ただ避けた後に後ろの木を突き破っているのを見て、いつものような方法は通用しないことがわかった
「時間がないよ!」
『わかってる!』
スキルは1分ほどしか保たない、何度か避けているとホーンラビットの様子がおかしいのも確認出来た
(なるほど、さすがにそうだよな)
避けながら森の出口が見えてきたので、最後に出口側から飛んできたのを避けてそのまま外に飛び出た
『ホーンラビットは!?』
「森の外へは出ないみたいだね」
外にヘッドスライディングをするように飛び出て振り向いたが、先程のホーンラビットが追いかけてくることはなかった
『そこは他のと一緒か』
「ただ敵意は感じるわね、次森に入ったら向こうから襲って来るかも」
『うわ〜、そうなるとあれを倒さないと他のホーンラビットを狩れないのか』
暫くは安定して狩りをしたかったが、それも許されそうにない。魔麦の回収もホーンラビットのいる場所より奥に行かないと採取することが出来ない
「九十九どうした!何かあったのか」
『あ〜、暫く動けないです』
外に出ると同時に切れたスキルの反動で、全身に筋肉痛のような痛みを感じるのだった




