噂の冒険者
「じゃあ行って来る」
『お願いします』
今日も昼前にホーンラビットと魔麦を収穫し、マスの昼休みに合わせて納品とスージーへ渡してもらう
(今日は大量だったな)
ホーンラビットを討伐してから進んだところは、魔麦の群生地だったみたいで、袋一杯に集めることが出来た
『また食べるのが楽しみだなぁ』
「ふ〜ん、そんなに美味しかったんだ」
俺の頭に乗って休憩をしていたナナが、興味を持ったのか声をかけてきた
『次は食べてみるか?』
「そうね、戴こうかしら」
次に食べる時は一緒に味わおうと、パンが届くのを楽しみになった
「戻ったぜ、パンは夜には出来そうだ」
『わかりました、楽しみですね』
「そうだ聞いてくれよ、北の山に行ったパーティーが火鳥を捕まえたらしいんだ」
『火鳥ですか』
「ああ、それの雛らしいんだけどな、雛のステーキでも金貨2枚だってよ」
『それは凄いですね』
マスはそれの凄さを熱く語る。雛でもBランク、成鳥ならAの上位にもなるらしい
「一度は食べてみたいよなぁ」
『それなら…』
腰に手を回し袋に手をかける、どうせ使う当てがないならと手に持とうとしたが、マスがそれを制止した
「止めておけ、ただでさえ最近ホーンラビットの件で噂になってる冒険者がいるってのに、俺もたまにつけられてるんだ」
『え…』
マスが納品に行くと、帰りにその冒険者の正体を調べようと後を追いかけてくる者がいるらしい。ただ元冒険者なだけあって、今のところうまく撒いてるみたいだ
『迷惑かけてすいません』
「いやいいんだ、その冒険者に肖ろうとパーティーへの参加を希望するやつもいるけどな、断っておいたぜ」
わかってはいたが、やはり珍しいことをすると目立つということだ
『あ、スージーさんは大丈夫ですか?』
「ああ、今のところ市場には流さない、だが俺達だけだといってもどこから漏れるかわからないからな、みんなには口止めをしておくよ」
『お願いします、何かあってからじゃ遅いので』
魔麦の仕入れに関する情報を得ようと、スージーが襲われる可能性もなくはない。そうなったら俺がマス達のためにしてあげたいこととは、逆の結果になってしまう
「それにしても今日はかなりの量だったな、スージーも驚いてたぜ」
『たまたま群生地を見つけたんですよ、明日はあれほどは採れないかもしれません』
「そうか、食べられるだけでも俺達は幸せだよ」
魔麦の成長速度は早いのだろうか、あれだけの量が生えていたのに食べられている様子はなかった。この前と同じ様にラストエレファントに食べられ始めたら、あっという間に全滅だろう
「何これ!美味しいわね」
『ナナも美味しいと思うか、それなら良かった』
夜になりご飯と一緒にパンを預かった、明日の朝の分もと持ってきたうちの大半を俺に預けて、他は門番達で分けていた
「今日は、その…ちょっといいか?」
マスが申し訳なさそうに、俺に聞いてくる
『大丈夫ですよ、仲良く過ごして下さいね』
「ちょっ、おい、そんなんじゃねえよ…」
照れながら出ていくマスの姿を見て、少し幸せになれた気がした。誰もいない詰所でナナを呼び出し、パンを渡して一緒に食べた




