その件は、突然に
『あれ?それなら見たような』
「はっ!?痛てぇ!」
マスは手に持っていた木剣を足に落とした。俺の言葉に反応していたので、まるで握力が無くなるくらい驚いたようだった
「朝だぞ〜、起きろ〜」
次の日の朝、マスが朝食を持って起こしに来た。昨日の余りで買ったと、フライングポークという魔物の肉の丼ぶり飯を2人分買ってきた
『飛べない豚はただの豚だけど、飛べる豚は…』
「フライングポークだぞ」
『あ、はい』
俺がいた世界の、とあるアニメを思い出した
『あ、美味い』
「こいつは羽根が生えた柔らかい身体の豚でな、高いところから着地すると、振動で身体の肉がぶるぶるするんだ」
『お〜』
「それを何度も繰り返すことによって肉質が変わるんだよ、切ったら中身であからさまに質がわかるから、良い肉は値段も高くなるんだ」
食べ物ではなく、そうやって本体の肉質に影響を与えるのは面白いと思った。ただ飛ぶのにも条件があり、飛ぶから捕獲も難しいので値段もそこそこするそうだ
「今日はまた森に入るのか?」
『いや今日はあなたが休みなので、色々と教わりたいです』
昨日の報酬で暫く余裕だとわかったので、今日は無理はしない。ちなみに昨日の一匹では、もうレベルは上がらなくなっていた
「よし、今日は俺と模擬戦闘をしてみるか」
『無理です、死にます』
「いやいや、手を抜いてくれればいいからよ」
(死ぬのは俺なんですけど…)
元冒険者と聞いていたので、マスはそれなりにやれるのだろうと思っていた
(う〜ん…)
マスに集中すると、ステータスが見えてきた
マス レベル 30/99 普通
HP 80/80
MP 20/20
力 30
体 25
速 70
運 50
パッシブスキル
レンジャー 回避率が上昇する
アクティブスキル
忍び足 気配消して近づく事が出来る
身体強化LV2 一時的に力と体と速を10上昇させる
(ナイフを持っていたからそうかなと思っていたが)
それだけではなく身のこなしにも雰囲気が出ていた
(このステータスだと、たしかにホーンラビットはきついか)
Dランクの魔物のステータスは見たことがないのでわからないが、圧倒的に俺よりは強いのはわかった。そもそも俺のステータスが低すぎるのだが…
「まぁまぁ、そう言うなって」
『っ!?』
少し目を逸らしているうちに、マスは俺の後ろに立っていた。これが忍び足なのかもしれない
(身体強化とかもあるのか、俺のは似てるが尖り過ぎなんだよなぁ)
1時間に1回だけ、1つのステータスが10倍になるようなものだった。最初はチートかと思ったが、反動などもあるし使い勝手が難しいと感じている
『そういえばマスさんって結婚とか家族は?』
振り向いてマスに尋ねる、マスは俺の質問に複雑な顔をしていた
「俺達の街ってよ、生まれたら冒険者や商人になったりして外に出なければ、死ぬまでずっと街で暮らすわけよ」
『はい』
マスは冒険者になり、旅に出たと言っていた
「街の兵士とかはさ、あのおっさんもそうだが小さい時に許婚じゃないけど、将来の相手を親が探して来るんだよな」
『あ〜、それでそのまま結婚をすると』
「だいたいはそうだな、たまに命を落とすやつもいるけど…」
マスは空を向いて黙っていた、マスにもそういう相手がいたのだろうか
「危ねえ、木剣じゃなかったら足に刺さっていたぞ」
マスは足に木剣が落ちて当たり、その場で膝を付いていた
『すいません、大丈夫ですか?』
「いやすまん、九十九さっきの話は本当か?」
『ええ、魔物の森に初めて入ってすぐに骨の死体があって、マスさんの言ってたバンダナのような布が引っかかってましたね』
「その場所はわかるか?」
マスは初めてみる真剣な目で俺を見ていた、先程大切な人の仇みたいな話をしていたのでそのせいだろう
『え、どうですかね?』
(ナナはわかるかな?)
「わかるわよ」
そう心で思うと、ナナが飛び出して来た
「ついてきなさい」
『え、大丈夫なのか?』
「九十九どうした、大丈夫って」
(あ、そうか見えてないのか)
ナナの姿は俺以外には見えない、大丈夫だからと索敵をナナにお願いしてマスと魔物の森へ入った
「本当だ…」
俺が初めて魔物の森に入った時に、踏みそうになった死体には縁があったらしい
「これで、あいつも」
『良かったですね』
詳しくはわからないが、マスや知り合いの人の探していたものらしい。本人達も聞いた話でしかないらしいので、この死体が本当にそれなのかはわからない
(でもそういうのって大事だよな)
マスやその人にとって心に決着をつけるためにも、必要だったのだと思う
『戻りましょうか』
「ああ、すまない」
涙を流すマスと共に、元来た道を戻り外に出た
(ナナ、ありがとうな)
「いいえ〜」
ナナに御礼を言っていると、門の方に人が待っているのが見えた
「スージー!」
「もうマスったらどこに行っていたの、きゃっ」
マスは森を出てすぐに門の方へ走り、女性を抱きしめていた




