スキルの使い過ぎにはご注意下さい
「あ、おい!大丈夫か」
森から出てすぐに転がった俺に、驚いたマスが近づいてきた
『あ〜、お勤めご苦労様です』
スキルが解けた途端ホーンラビットが鉄球のように重くなり、身体のバランスが保てなくなった。転んで混乱した俺は、変な挨拶をマスに返す
「お前凄いな、またホーンラビットを倒したのか」
マスは俺が両手で抱えているホーンラビットを見て、感心していた
「立てるか?」
『あ、はい…』
ホーンラビットを離し、その場に立ち上がった
『これってまたお願い出来ますかね?』
「ああいいけど、ちょっと待ってな」
マスはもう1人の門番の元へ行く
「悪い、ちょっと早いんだが昼の休みもらってもいいか?」
「ああいいぞ、あの青年は?」
「さっき話してた昨日ホーンラビットを倒した青年だ」
「お〜凄いな」
もう1人の門番に確認をしてから、マスがまたこちらへ来た
「予定より早いが、昼の休憩をもらったからギルドに預けてくるよ。何か欲しいものはあるか?」
『食べ物と水…後は着替えをお願いします』
先程転んだので着ていた服が汚れてしまった、血も多少着いているので着替えが欲しくなった
『わかった、詰所で待ってな』
マスはホーンラビットを両手で持つと、門を通り街へ入って行った
俺は言われた通りに、門の脇にある詰所へ移動した
『たしかに手作り感が凄いな』
詰所は横にある城壁と比べると、素材が全然違うのがわかった。外から見ても中を見ても壁はボコボコしている、セメントのような物を固めて壁や天井が作ってあるようで、窓枠はあるが窓はないので風が自由に行き来をしていた
『あ〜、疲れた〜』
椅子に座りテーブルに寄りかかる、スキルの反動かわからないが腕が疲れて上がらなかった
「情けないわね〜」
ナナは俺の頭に乗っていたようで、頭の上から声がする
『これなら1日に何度でも狩れそうって思ったけど、ちょっと厳しそうだな』
力だけを10倍にしたので、上がってない他のステータスに負担がかかっていたのだろう、身体の疲れを感じている
『昼ご飯を食べたら少し寝てもいいか?』
「好きにすれば〜?私はとりあえずホーンラビットを狩れたから満足よ」
ナナはそう言うと消えていった、少し眠りそうになりつつ待つとマスが来た
「お待たせ、今日は丼だ」
マスが両手に丼を持って入ってきた、背中には袋を背負っていて、テーブルに丼を置いてから荷物を降ろした
「チキンバードの肉を使った丼だ」
(チキンでバードはどちらも鳥なんじゃ…)
一瞬翻訳がおかしいと思ったが、俺の勘違いだったらしい。臆病な鳥でチキンバードみたいだ
テーブルの上の食事とは別に水の入った筒を5本渡された、中身がなくなった筒は預かると言うので朝飲んだ水の筒を渡した
「どうだ?こいつは面白くてな、逃げ回れば逃げるほど筋肉が引き締まり味が出るんだ」
俺達が食べているのはどれくらいのものかわからないが、器の中にご飯の様な物が入っておりその上に盛られていた
『あ、美味い』
味は全体的に薄いが、朝にパンを食べた程度で空腹な胃には、チキンバードの肉は美味しく感じられた
「普段はあまり食べる機会がないけど、臨時収入がもらえそうだからな、もう1人の門番にも九十九からの奢りだと食事代を渡したけどいいよな?」
マスが笑いながら言ってくる。悪意はない冗談みたいだが、自分で街の中に入れない俺にとっては有り難いことである。もう1人の門番へも賄賂ではないが、覚えを良くしておくのも悪くはないのだろう
『構いませんよ、気を使ってもらってありがとうございます』
このチキンバードも、パンに飽きただろうと考えて買ってきてくれたのだろう。暫くはマス達に世話になるだろうから、ここでお互いにWINWINの関係になっておくのは悪くはない
「そうだ、昨日着ていた服とその服、洗ってくれるところがあるから預かるよ」
食事が終わると、テーブルに新しい着替えが置かれた。昨日もらった物に近い、大きめの服で柄が違う物だった
『あ、お願いします』
服を脱いでパーカーも取り出して預ける、新しい服も素材は同じなので着心地は変わらなかった
「とりあえず昼はこんなものかな、角は今回は売って良かったか?」
『大丈夫です、そのうち槍は欲しいかもしれませんが』
ナイフだけでは不安なので後々を考えて、距離が離れていても攻撃出来る武器が欲しかった
(そうだ、石であれなら槍は…)
そのうち槍が出来たら、スキルを発動してから投げてみようと思った
「それじゃあ戻るな、もう1人がチキンバードを食べるのを楽しみにしてるからよ」
笑みを向けてマスは詰所から出て行った、先程の昼飯は一般人にとっては多少贅沢品なのかもしれないと思った
『ふぁぁ、眠い…』
荷物を置いた場所に戻り、寝袋に入って藁の上に転がった。2回目の戦いは、無事勝利して終わることが出来たのだった




