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報酬と御礼

「待たせたな、今誰かと話をしてたか?」


『いや、誰もいないです』


声がしたので入り口の方を見ると、先程出て行ったマスが戻ってきた。その手には何かを持っていたが、まだ暗くてわからない


「立てるか?立てるならそこの椅子に座ってくれ」


先程起きた時にマスが座っていた椅子の、テーブルを挟んで反対側にも椅子がある


『大丈夫です、立てます』


俺は立ち上がり椅子に座った、テーブルも椅子も木のような素材で出来ており、手作りなのかと思うくらいガタガタだった


「ははは、ボロボロだろ?俺達の休憩や荷物を置くために簡素に作ったからな、この詰所も仲間と建てたからボコボコなんだぜ」


笑いながらマスという兵士はテーブルに何かを置いた、その瞬間先程までなかった感情に全てを持っていかれる


「腹減ったろ?食べ物を持ってきたから食べるといい」


『いただきますっ!』


「いただきます?」


テーブルの上に置かれた丸めでそこの深い器には、シチューのようなドロっとした液体が入っていた。そしてその横には、割れ目が入った丸いパンのような物に何かの肉だと思われるものが挟まれていた


「ははは、よく噛んでゆっくり食べろよ、喉も渇いてるだろうからこれ水な」


勢いよくパンのような物に齧り付き、シチューのような物を口に入れる。堅焼き煎餅かと思うくらい硬かった物が、多少液体のおかげで柔らかくなり飲み込めるようになる






『ぷはぁ~』


全てを胃の中に入れてから水を飲んで一息をついた、その間マスは面白そうに俺の姿を見ていた


「どうだった?そのシチューもパンに挟んだ肉も、ホーンラビットが使われているんだぜ」


(あ、シチューとかパンとか翻訳されるのか)


本来の名前がそうなのか、俺が認識しやすいように翻訳されているのかわからないが、話がしやすいので助かった


(味か、覚えてないな)


少し前に胃の中に消えたが、味は正直わからなかった。正直に言えば美味しくはない、味が薄いしパンもパサパサで堅かった


「ホーンラビットの肉は美味しかったかも」


『おおそうだろ、ホーンラビットは結構人気あるんだぜ』


シチューもパンも味が薄かったりしなかったりもしたが、ホーンラビットはその肉じたいに味が染み込んでいた


「落ち着いたか?」


俺がホーンラビットの肉の味を噛み締めていると、マスが優しそうな顔でこちらを見ていた


『何も食べてなかったので助かりました、何から何までありがとうございます』


マスは俺にとって命の恩人だ、ただ俺には返せるものがなかった


「俺がしたくてしたことだ気にするな、それでホーンラビットの討伐報酬なんだがな」


マスがテーブルの上に布で出来た袋と、橙色の人参みたいな物を置いた。布の袋の方は置いた時にじゃらっと小銭が擦れるような音がした


『これは…?』


「こっちが討伐報酬の銀貨と銅貨、あとは買取させてくれと言われたが、初めての討伐だっただろうから思い出に残るだろうと、ホーンラビットの角は買取から外して、それ以外を買い取ってもらった」


ホーンラビットの角を手に取る、大きい兎の頭に人参が付いてるようなイメージだったが、ドリルのように溝があり先も尖がっていた


『こんなものが付いていたのか、これに当たっていたら今頃は…』


「死んでるだろうな、俺の親父もさホーンラビットに殺されたんだよ」


マスは俺の持つホーンラビットの角を見ながら呟いた、話を聞くと親父さんはここの門番をしていて、人を助けようとして死んだらしい


「だから親父の仇を取ってくれたようで嬉しかったよ」


マスはそう言いながら静かに笑った


『この角はもらってくれませんか?』


「はっ!?」


マスは俺の言葉に驚いていた、俺はナイフの御礼にこの角を受け取って欲しいと思った


「いやいや受け取れねえよ、その角だけで結構な金になるんだ。それだけ価値がある物なんだよ」


『ナイフの御礼、助けてもらった御礼、食事の御礼、上げればきりが無いですよ』


手に持っていた角をマスの前に置いた。マスは最初は嫌がったが、俺が角を引っ込ませないので渋々手に取った


「本当にいいんだな」


『いいです、受け取ってください』


マスは角を手に取り、それを見た


「そうか…じゃあ家宝にするよ、ありがとうな」


マスに角を渡せたので次は布に入った袋の中身を見た、中には数枚のコインが入っているように見える


「本当ならもっと報酬が貰えるはずなんだがな、角は持ち帰ったし、魔物の死体も骨や皮も肉もズタズタな部分が多くて安くなってしまった」


『すいません、初めてで』


「仕方ないよな、俺も初めての時はさ…」


マスはホーンラビットではないが、自分が冒険者をやっていた時に倒した魔物の話を聞かせてくれた。魔物には単純に危害が加えられないように討伐する魔物と、素材を食用や装備などに利用出来る魔物がいるらしい


『冒険者をやっていたのですね』


「流石にCランクは、一度も倒せなかったけどな」


俺がしたことは凄いんだぞと褒めてくれながら、冒険者の時の話を聞かせてくれる。魔物の森だけではなく、ダンジョンと呼ばれる場所や洞窟、他の国の話もしてくれた


「そうだ、お願いがあるんですけど」


『ん?どうした』


俺は袋に入った状態の物を、そのままマスの前に置いた


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