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プロローグ

『嘘だろ…なんでだよ』


俺の両腕は鎧を着た男達に掴まれていた、その俺を蔑むように見ながら目の前の男が叫ぶ


「その男を城の外に捨ててこい!」


「はっ!」


「俺が何したっていうんだよ、お前達が呼んだんじゃないか…」


男達に引き摺られて距離が離れた俺の呟きは、誰の耳にも届いてなかった


「お、おい…俺達は追放しないよな」


「勿論ですとも、勇者様達の足を引っ張らせないための処置でございます」


先程俺をゴミの様に見ていた男は、勇者と呼ばれた男達へは優しい顔をしていた


(せっかく異世界に来ることが出来たのに、こっちの世界でも結局こんなんなのかよ)


もしかしたら俺の夢と希望に溢れた異世界転移は今、幕を閉じたのかもしれない












「今日部活は〜?」


「ないよ〜、帰ろう」


「うん」


「誰かカラオケ行かね?」


「お〜行こうぜ」


(はぁ…帰るか)


放課後になり教室内が騒がしくなる、皆友人と遊びや下校に忙しく俺の存在は気にならない


勿論俺には友人などいなく、部活は幽霊部員で毎日授業が終われば帰るだけだった


「ねぇねぇ、今日はどこに行こうか」


「ん〜どうするかな」


「部活はないから皆で買い物」


「それもありなんじゃない?私も買いたいものもあるし」


帰ろうと席を立つと、すぐ近くのクラスメートが女子に囲まれていた。その男は5人の女の子と付き合っているらしく、俺の通う学校の名物になっていた


(はぁ…ハーレムなんて漫画やゲームだけの要素だろ、リアル恋愛ゲームかよ)


楽しそうに話す男女から視線を逸らし教室の出口に向かう、俺に話しかける人など皆無だった








『あ〜つまんねえ』


俺の名前は九十九…九十九無限、信じられないだろうがこれが名前だ


九十九はつくも、そして無限はむげんではなくインフィニティ、それが俺の祖父が付けた名前だ。祖父はインフィニティかマキシマムか悩んだと言っていたが、悩むところはそこじゃないだろと俺はずっと思っている


「お前には終わりも限界も感じない人生を歩んで欲しい、だからそう名付けたんだ」


祖父は死に際に笑顔でそう言っていたが、市役所で職員から止められた時に諦めて欲しかった。両親も祖父から聞かされた当初は反対していたが、初孫を喜ぶ祖父母の笑顔に譲るしかなかったらしい…てか祖母が止めろよ


(早く卒業しねえかなぁ、してもただ働くだけの人生だろうけど)


幼稚園の時に名前を馬鹿にされて喧嘩をしてからずっと友達はいない、いやクラス替えや進学のたびに馬鹿にされるので友人を作る気にはならなかった。そして気がついたら高校3年生になり、後は卒業を待つだけだった


『ただいま』


帰宅し誰もいない空間に話しかける、祖父母は数年前に失くなり、両親も2人だけで旅行に行った時に交通事故に合い、俺はただ1人この世界に残された


祖父母や両親の遺産目当ての親戚とは縁を切り、元々あった祖父母の家で死ぬまで生きていくつもりだ


『ごめんな、九十九の名前も俺の代で終わりだ』


こんな俺に彼女など出来るはずもない、世の中には1人で5人の彼女が出来るやつもいるのにな…理不尽だよな


『さて、今日もやるか』


部屋に入ってすぐに通学用のバッグをベッドに投げる、制服を脱いで軽くなった上半身を伸ばしてストレッチをし、パソコンに電源を入れた


『今日は少し稼ぐために難しいダンジョンにでも行くかな』


毎日やっているオンラインゲームを起動し、ログインするためにIDとパスワードを入力した


『パーティー募集ね、いつものことだがソロでいいか』


俺くらいの廃人になればパーティーを組んで行くダンジョンもソロで攻略出来る、だから難しいダンジョンと表現していたのだ、まぁパーティーを組んでいても普通ならきついけどな


『やっぱりこの世界観いいよなぁ』


ダンジョンに向かう前に街中を眺める。石で出来た壁や木の屋根の建物、プレイヤー達が集まる噴水やその付近には武器や防具を扱う店がある


元々はラノベと呼ばれる異世界ものの小説を読んでいて、それを出版している会社が、異世界を堪能出来るオンラインゲームを作るからと期待をして始めた


『とりあえず1潜り行くかな』


俺はゲーム内のお金を稼ぐために、今日も一人でダンジョンに突入した








『お、そろそろ飯食うかな』


気がついたら3時間が経過していた。ダンジョンの攻略中に全滅しているパーティーがいて、助けていたので予定より時間がかかったからだ。さすがにお腹が空いたので冷蔵庫を見るが、中には何もなかった


『宅配もだるいしなぁ…行くか』


部屋に戻りパーカーを羽織る、家のすぐ近くにファストフード店があるのでそこで食べることにした


「お待たせしました、ごゆっくりどーぞー」


『どうも』


注文した品を受け取り窓際の外が眺められる席に座る、ここから外を歩く人を見て人間観察をするのがちょっとした楽しみだった


「こら〜返してよ〜」


「いいじゃんいいじゃん、1本くらいくれよ」


「ちょっと、止めなさいよ」


俺の座る席の後ろにあるボックス席で、同じ学校の後輩だろうか1年と分かる男女が3人で食べていた


3人は仲が良さそうに見える、染めてるのか素なのかわからないが金髪の男の子に、黒髪で大人しそうな肩の下まである長い髪の女の子と少し赤みのかかった肩よりは少し短めの女の子の3人だ


(あれ、3人だったっけ?)


俺が席に座る時は4人いたような気もしたが、今は3人なので気にしないことにした


(楽しそうでいいですね、食べ終わったし帰るか)


席を立ち先程の男女の横を通ろうとした


「え、何これ」


「おい、足元!」


「眩しいっ」


『…は?』


気がつくと、その3人だけではなく俺の足元も光っていた


(ま、眩しい)


俺とその3人は光に包まれ、その場…いや世界から消えた

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