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第47話 グリコと漆黒の竜


「グリコ、お前もう完全回復してるだろ」


「えっ、してるけど……なんで?」


「いや、ずっとその姿のままだからさ。本当はもっと大きなお姉さんだろ?」


「僕、この姿気に入ってるんだよ。だってこの姿だと人間はみんな優しくしてくれるし可愛いって僕を褒めてくれるし」


「まぁ、いいけどさ」


「グリコ、お前には大役を担ってもらおうと思っている。あの漆黒のドラゴンを倒すという役目だ」


 グリコはテーブルの上にあったパンを齧るとニンマリと口角をあげた。


「食べてもいい?」


「パンならな?」


「違うよ、黒いドラゴン」


「食うの?」


「うん、黒いドラゴンは魔王軍について悪いやつでね。グリコたち七色のドラゴンと仲が悪いんだよね。けど、はっきりいってグリコたちよりも遥かに格下だから……ドラゴンはドラゴンを食べるともっと強くなれるんだ。みんなを傷つけたやつをグリコは許さないよ!」



 出発の前、グリコはそんなふうに笑っていた。



***


 真っ赤な空、俺たちが着陸したのは魔王が住む孤島。しかも魔王城の目の前だった。グリコの背に乗ってとんでもないショートカットをかましたのだがそれが正解だった。


「我が主は世界の神なり!」


 と唸るような声をあげて襲い掛かってきた大きな黒いドラゴン。どっしりした胴体に大きな黒い翼。赤赤と光る目、大きな牙。


 漆黒のドラゴンが大きく口を開けた時、俺たちの前に緑色の光が走った。と同時に大きな叫び声が響く。あまりの轟音に俺たちはぎゅっと耳を塞いで集まって縮こまった。


「なんだ……?」


 防護魔法を展開してやっとのことで立ち上がるとそこには……



——蹂躙


 なんて厨二病くさくて本来なら目にしないであろう光景だった。緑のゴッドドラゴンであるグリコが文字通り漆黒のドラゴンを蹂躙していた。

 火球、物理攻撃、速さ何をとってもグリコが上だ。首を咥えて叩きつけ、翼を引きちぎって喰ったかと思えば、尻尾でツノをへし折った。

 

 一方的な攻撃、一方的な暴力。


 漆黒のドラゴンを喰えば喰う程、グリコの力は増していくようだった。考えてみれば彼女は「裏ボス」なのだ。メインストーリーの中ボスである漆黒のドラゴンなど敵うはずもなかったのだ。


 そういえば、あのドラゴンの上に乗っていたのは男主人公ファイアーただ1人だった。妹の方はどうした? 転生者であろう妹の方であればこんな愚策に走ることはないだろうに。


——ドラゴンはドラゴンを食べるともっと強くなれるんだ。みんなを傷つけたやつをグリコは許さないよ!


 グリコはその言葉通り、四肢がちぎれ、尻尾も翼も無くなった漆黒のドラゴンを踏みつけ、その命乞いも聞かずに胸元に食いついた。分厚い鱗が剥がれ、真っ赤で大きな心臓が姿を現した。


「やめ……」


「みんなを傷つけた罪は消えん。死して償え」


 グリコは心臓を一気に噛み砕くとごくりと飲み込んだ。と同時に漆黒のドラゴンは息絶え、その口から一つの光の球が飛び出た。

 優しい光を携えた光の球は、くるくると彷徨ってから怯えて俺の後ろに隠れていたアマリスの胸元へ入り込んだ。


「あっ……」


 アマリスは目を閉じると胸に手をあててそっと力を受け取った。俺はその光景を見て、ある確信をした。


——裏ボスを知っていた、つまり転生者だったファイアーの妹はもうこの世にはいない


 もしも、この展開をしっている転生者がいれば漆黒のドラゴンなんかに聖女の力を守らせないだろう。その上、裏ボスを知っていたんだからもっと強いドラゴンを手に入れる方法だってあったはず。


 多分、この世界の住人である方の男主人公に殺されたのか。


 だとすれば、俺が取る方法は一つ。ゲームシナリオ通りに「魔王」を倒すことだ。


「聖女様、俺たちに聖なる力を授けてください」


「えぇ、皆さんに女神様のご加護を」


 俺たち全員に降り注ぐ力はかつてない強さだ。俺もみるみるうちに力が湧き上がってくるのを感じた。


「行きましょう、魔王の元へ」


 ユフィーの掛け声に全員が頷いた。





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