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第23話 聖女様の過剰なお礼



「きれーなお姉さん! きれーなお部屋!」


 聖女の部屋にもどってきた俺たちは水晶をアマリスに渡し、一息ついていた。俺の膝の上では、グリコが楽しそうに天井に吊るされた照明を指差している。


「まさか、そんなことが」


 俺たちが西の洞窟での出来事を話すと、アマリスは深刻そうな表情を浮かべた後、グリコの前に両膝をついた。


「聖なるドラゴン様。人間の愚行をどうかお許しください」


「怖かったし、いたかったよ。まだ治ってないし……、けどダヴィドみたいないい人間もいるのは知ってるから、僕大丈夫!」


「寛大な御心に……最大限の感謝を」


 そういうとアマリスはグリコの額にキスをして聖女の祝福を授けた。グリコは「すごおい」と手足をパタパタさせる。どうやら聖女の力を吸収したらしい。


「そうだ、シズカさんもありがとうございました。おかげでうちのユフィーが怪我をせずにすみましたし、シズカさんがいなければ水晶を削り出すこともできなかったので。本当にありがとう」


 俺がそういうとアマリスは不思議そうに首を捻った。


「どうして、別れ際の言葉のようにいうのかしら?」


「いや、クエストは無事終了しましたし」


「何を言っているんですか。シズカはもうダヴィドさんたちの仲間入りですよ。ねぇ、シズカ」


「はい、お恥ずかしながら故郷に帰ることがまだできず。聖女様に頼んで居候をさせていただいていたのです。マゴアダヴィド教の領地開拓のお手伝いをさせていただければ……と思います」


 わかっちゃいたがやはりこの展開になるか。目を輝かせるユフィー、クルネは忍の戦闘方法に興味がありそうな雰囲気でチラチラとシズカを見ているし。


「ま、まぁうちは来るもの拒まずですから」


 俺の言葉にシズカが


「それは、忍びの国の古いコトワザ。ダヴィド様、あなたは」


 やべえ。そんな設定が……?

 シズカが小さな声で


『初めての男性ですもの、私も慣れなくちゃ』


 と呟いたのが聞こえた。初めて……? まさか馬車で抱きしめたことが彼女になにかしらの火をつけてしまったのだろうか? ウブすぎやしませんか。


「そう、赤い髪の人間というのが気になりますね。グリコちゃんの心臓を刺し、魔力を奪い取ったと言う……。そういえば、この城下町のスラム街に太陽のように真っ赤な髪をした少女がいたとか」


 ジョハンナが真剣に言うと、ピリッと空気が張り詰める。


 それは、このゲームの物語の主人公である。女主人公か……。もしも、彼女が裏ボスの一角であるグリコの魔力を奪っているのだとしたら?

 一体何が起きているんだろう。


「ドラゴンの魔力を取り込むだなんて、何を考えているのでしょうか。教祖様、警戒しておきましょう」


「あぁ、そうだなユフィー。じゃあ、俺たちはこの辺でお暇しようか。クルネ、シズカさんの荷物の準備と領地までの護衛を頼んでもいいかな?」


「はい、ダヴィド様。シズカさん行きましょうか」


 各々、部屋を出ていく。しかし、アマリスに俺は呼び止められる。なんだか、怪しい笑顔で彼女はユフィーに目配せをすると、ユフィーは俺からグリコを奪うように抱き上げると。


「教祖様は、聖女様と慈善活動についてのお話があるのでグリコちゃんは私が連れて帰りますね。クルネさんたちと一緒に帰るので心配は無用です。それでは〜、ジョハンナさんも行きますよっ」


 バタンと聖女の部屋の扉が閉められる。呆然とする俺、俺を見て微笑む聖女様。なんだかジリジリとおいつめられて再びソファーに座る俺。


「あの、お話って……」


「お茶でも飲んでゆっくりね?」


「は、はぁ」


 渡された不思議な味のお茶に口をつけ、テーブルに置く。アマリスは金色の長髪を束ねるように一度持ち上げてから右肩の方へと流した。やけに艶かしい動き、表情。唇さえツヤツヤして見える。


「ダヴィドさん、あなたは……あなたって人は予想以上の活躍をしてくださるわ」


「アマリス様?」


「聖女のキスには祝福の効果があると言われています。感じるかしら?」


 そういうと彼女は俺の手を取って指先にキスをした。すると、じんわりと聖なる力が体に入り込んでくる。聖なる力というのだろうか、全身に活力がみなぎってくる。


「ありがとうございます。で、では……」


「まだダメよ。次はここ」


 今度は手の甲に、それからもう片方の手に。アマリスの聖なる力が両手に伝わると俺の中の魔力がぐんと強くなるのがわかった。

 バブをかけられると言うのはこんな感じなんだ、不思議な感覚だ。


「ユフィーから聞いたの。あなたの教団の目的……」


「え?」


「たくさんの子孫を残すんでしょう? ダヴィドさんの優秀な」


 ソファーの上、彼女がぐっと近寄ってくる。


「やっぱり、私も入信したらダメかしら?」


「ですから……それは」


「そう。残念だわ。けれどお礼はさせてね」


 唇に唇が触れて、大量の聖なる力が流れ込んでくる。しばらくの口づけのあと、アマリスは満足げに俺から離れると


「次のクエストもよろしくね」


 と俺の胸を人差し指で突いた。聖女……もっとウブで純粋な人かと思ったけれど西洋ベースだからか結構大胆な人らしい。

 俺は唇を触ってぼうっとする。


——初キス……







 

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