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情報過多の荷物持ちさん、追放される  作者: エム・エタール⁂
女神さん、追放される(魔科闘技編)
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86話


 ————最終トーナメント、準決勝。


 僕にとってはある意味、待ちに待った試合だね。

 果たしてバレてないといいけど、びっくりしてくれるかなー?


 しかし準決勝が身内なのは、まあ大会主催者も順当に勝って準決進んでるから、別にいっか。


 うん、何とも見応えのあって無い試合だった。

 みんなは高度な攻防で盛り上がってたけど、僕にはただの演技だってわかってるし、解説なのにそれを説明するわけにもいかないしで。

 実況解説の人も、大変なんだねー。


「それで、果たして今度はどんな説明してくれるか、」


 ……あれ、そういや計画的には、エウスにも僕の正体知られちゃダメだっけ。

 まあ大衆に知られなきゃいいんだ、本人にバレても、逃げれば無理に担ぎ上げられたり、

 うーん。そもそもレリアにも知られてたし、普通に周知の事実かも。


 …………あー、まあ結局ここで説得しないと、僕がいなくなった後で同じことをするかもか。

 しょうがない、大会の後で、なんか協力したるか、

 アレンのためにね。


「うん、スッキリした。そしてそう考えたら、何で僕は今からレコウと戦うんだ?」


 まあいろいろ理由はあるけれど、

 とりあえずは、レコウに楽しんでもらうため。


「『だから、本気で行かせてもらうよ』」


 『整理』、空間を掌握。

 レコウは何故かこれ全く気づかないからね、レリアにバレた以上、もはや遠慮する必要はない。


 というか初めから全力で行かないと、あのドラゴンちゃんを楽しませるなんて、とてもできない。


 闘技場に出る、反対側には僕と同じくらいの少女の姿。

 片方男装してるとはいえ、準決勝には随分と似つかわしく無い外見だ、

 まあ決勝戦も、大して変化はないんですけどね、胸以外。くそぅ、僕と同じなのはやっぱりレコウだけだよ、制服緩いけど。


「レコウ……、なんか持ってる。あれは、剣?」


 あんな素手で強いドラゴンちゃんを武装させるなんて、いったい誰がしたんだ!?

 って、まあよく見なくてもわかるな。


 この祭りの関係者で、基本無一文のレコウに武器を渡せるのは、


「さーで、それでは始まりました準決勝。左コーナーは未だ正体不明! 素晴らしい剣技に、何と大胆にも魅力で一国の王女様を連れ去る行動力! 謎の王子様剣士、ジョンスミスさんでーす!!」


 …………改めて人から説明されると、

 僕人妻相手になにやってんだ?!


 いやまあ人妻である前に、同姓の女友達なんだけど。そもそもレリアを人妻として見たことないし、

 しかしはたから見るとこれ、一国の王女としてまずいのでは! ただでさえ聖女だってのに、推定男にお持ち帰りされたって、、


 ————セ、キ、ニ、ン♪ とってよねぇ♡


 イヤーー!? レリアはそんなこと言わないもん!! 多分、きっと、おそらく、メイビーー。


「そして右コーナー、聖国を一身に背負うは美麗なる戦士。その瞳が求めるのは果たして女王の敵討か、はたまた新たな主君の見定めか! 色彩の紅姫、レコウさんだーー!!」


「我じゃーーーー!!」


 宣言と共に出てくる紅の姫。


 ……テンション高いねレコウ。ところで、あの実況に何か思うとことかないんですか?

 えっ、これもレリアが考えたの? いつの間に!?


 もしくはエウス、貴様か!? だとしたら決勝でぶっ飛ばしてやる!!


 この試合に、勝てたらね、


「……さてと、それじゃあ、」


 お互いに、中央へと進んでいく。


 目は、合わない。


 いつも以上にフードを被り込み、歩幅や体格も変化をつけて、ギリギリまで、

 開始位置、もうお互いにだけ届く会話ができる距離。


「それじゃあジョンとやら。楽しむのじゃ!」

「……うん、」


 …………これは、バレてないかな。

 ははは、それが嘘で逆ドッキリ仕掛けられてたら困っちゃうな。

 そんな事されたら、また僕もドッキリ考えなきゃいけなくなっちゃうじゃないか。

 もうそんな機会あるかも分からないのに、


「それでは準決勝第一試合、開始です!」


 開幕、一瞬。


 もしレコウが本気なら、僕は既に三桁は殴り飛ばされてるだろう時間。

 そして僕が反撃で、何桁、


「じゃあいくぞーー! スーパーレコウファイヤースパークじゃー!!」


 剣を構え、飛び出してくるのは、光の大波。

 一つ一つは単発の魔法なのに、連なりばらけてもはや一なる壁のように押し寄せてくる、


「やっぱそれ、魔導具だよね、」


 万象の杖、魔力を単純な光の玉に変換するおもちゃ。

 レコウが使えば、一瞬で人体なんて消し飛ばせる破壊兵器、


 それをより大型な、剣の形として作り出された、恐らくレリアの最新魔導具。

 肥大化し複雑化されたその魔力の奔流は、当然元の杖より放たれたものより、


「……凄い光、これ僕じゃなかったら目が痛くなってるんじゃないの?」


 何倍も大きな音、何十倍もド派手な光、

 広がる大きな球に、複雑で多様に変化する色彩の乱舞。


 元の単純で真っ白の光と違い、鮮やかな複数色に変化し形状すら自由に変化するそれは、


「ふぅ〜。——どうじゃ! これが新しいお祭り用の武器、万賛の剣じゃーー!!」

「うん、綺麗だったよ、」

「そうじゃろー……、じゃむ?」


 うん。

 まさか君も、花見を内側から見ることはなかっただろう?

 綺麗だったね、流石にちょっとうるさかったけど、


「おおっ、なんと、無傷じゃ、」

「そりゃね、」


 光に、カラフルな色をつけて、複雑に散らばらせた魔法。

 当然それは、元の単純な光の球と比較して、何十倍も威力が低い。


 なるほど、レコウなりに、というかレリアの発案かな? 祭りを盛り上げようとしてたらしい。

 お祭りに花火はつきもの、かは知らないけど、少なくともこの世界では違うけど、

 じゃあサーカスの演出からでも発想を得たのかな、ともかく派手で楽しく、手加減するのにちょうどいい——、、


 それで、レコウは満足、するのかな。


「じゃあ次は、僕の番だ」

「お、おうじゃ!」

「記憶に残る体験をさせてもらったからね、お返しだ、」


 『整理、調整』


 空を見上げる、思い返すは火花の可憐さ、


 ではなく、

 あの、希望を埋め尽くした、ひっくり返った天地。


 天を飲み込んだ、闇夜の大海、


「はえ!? もう暗くなって、そんな時間じゃったかの??」

「違うよ、せめて雲でも疑いなよ、」


 それか日食でもってね。

 まあ、流石にそこまではできないけど、


「『魔法の鏡、空の光星、逆巻く雲海』」

「じゃ、じゃー、、」

「『堕ちろ、天蓋』」


 そして、広がった宇宙から、

 流星が、降り注いだ。




 この世界に、宇宙の概念はほぼ無い。

 天動説とか地動説とか、冗談みたいな平、いやこの説マジであれなんだっけうん。

 ともかくそれ以前の認識で、そもそも大多数の人はそこに興味を持ててない。


 精々が、まあ頭のいい人が個人で星の流れに周期を確信する程度。

 だからそうだ、思わないだろうね、まさか天から星が落ちてくることがあるなんて……、


「これは、ま、まさか、」


 暗い背景から飛来する、色とりどりの光の群れ。

 花火の様に綺麗に、だけどもいざ目の前に降るとなれば、花火と同じで呑気に眺めてなんて出来ない。


 彩色の流星群。


「…………それを、本物の竜相手に使うのは、いやまあ関係ないけど、」


 上空に空間の入り口を繋げて、直接星を呼び寄せる。

 かなり時間と労力がかかるだろうが、僕なら可能な星の導き、


 そんなもの。




 まあ面倒臭いだけだからやってないんだけど、

 そもそも隕石が凄い破壊力をともなってるのは、重力で加速されてるからだ。

 僕なら別に、その辺の石ころ固くして、下と上の入り口繋げてループさせればどこでも作れるし、

 なんかのゲームで見た。


 だからこれは、花火と同じでただの演出。

 闘技場をマジックミラーみたいな空間で覆って、外から僕らは普通に見える様に、

 そして内側は、プラネタリウムにした。


 黒い背景で宇宙を見せて、外から入ってくる光の波長いじって収束したカラフルな線に見える様に、

 まあ魔法ですらない単純な光の道筋、普通のガラスで作れる簡単な虹、科学の技って感じだね。


 だから当然、殺傷力とか特に無いんだけど。


「ぎゃ〜〜!?」


 レコウが、逃げ回ってる。

 空から降り注ぐ束ねられた光の線、でもそれだけじゃあつまらないから、ちょっと細工してみた。


 まるで本物に見える様、星の光に焦げた匂いと硫黄と硝煙と、

 あと特に関係ないけど、それっぽい臭い匂いを重ねてやった。


 レコウは鼻がいいからね、直撃したら大変だぞー?


「おおっと、どうしたのでしょうレコウ選手。なにも無いところで転げ回っています!?」

「違うわよ。……あれは、相手の殺気を感じとって、何度も位置取りを変更してるの。高水準な攻防だわ、」

「え、アウレリア嬢?? ————あ、だっ、そうです!!」


 実況と解説の声が聞こえる。

 ……ああそうか、レリアには一応何してるのか見えてるのか。結界には干渉しないよう、だいぶ気を使ったしね


 なら任せて、いっそ外の視界は閉じちゃってもいいかもな。

 その方が、こっちも自由に全力を出せる。


「うじゃー!? 何じゃこれーー?!!」

「硫クセイ群。……いや無いな、」


 センスがおっさんだ。

 こんなところまで君に引っ張られ、っと、おっさんじゃなくてお兄さんか??

 いやー、どうでしょ、まあいっか、


「もーう、とりゃーー!?」


 そんなこと考えてる暇もないってね。


 竜が剣を一振り、煌めく魔導具から、星が出る。

 本物の竜の聖軍、剣の軌道に沿って、カラフルな光の爆発が放たれる、


 虹の様な爆撃が、光を追い返し、華やかに終わらせていく。

 それが当然一度ではなく、さらに何度も剣を振り回す。


「手に持つ花火を振り回してるみたいな、いやそんな大人しくないけど、」


 少なくとも片手に四本は挟んでるより激しいな、その小さな火花ひとつ一つが大玉くらいの感覚?

 いやまあ僕自身が、この例えしてもピンときてないけど、


 ともかくあーあ、夜空が壊れちゃいそう。

 ……でもやっぱり、こんな真っ暗な闇よりも、花火の方が綺麗だな。


 うん、真っ暗は嫌いだ。

 でも真っ暗だったからこそ、より華やかに見えるのかなって。


 だとしたら、この夜空を切り裂く何より美しい花園は、僕だけの独り占めだ。

 わざわざ説明するものじゃない、


「…………ああ、たーまやー、」


 空間が、割れていく。

 元々、光を変質させるためにいじりまくった特殊な壁だったからな、光と魔力を吸い込みすぎて許容オーバーか。

 ……だとしても、普通力押しに壊せるものじゃないはずなんだけどね、


 うん、僕の負けかあ、

 ま、こんなに綺麗なもの見せられちゃ、認めるしかないね。

 レコウ、お祭りの王者は、君だよ。




「……それじゃ、今度は試合で楽しませてあげる」

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