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情報過多の荷物持ちさん、追放される  作者: エム・エタール⁂
女神さん、追放される(魔科闘技編)
87/124

83話


 ————最終トーナメント、第二試合。


 前の試合は、あっさり終わった。


 意外と粘ったおっさんを、無駄に振り回して疲れさせて最後の一滴まで吐き出させてから潰してやった。

 まあ、どうでもいい話だ。


 それからなんか特に理由はないけど、ずっと控え室にいた。

 ああ、レコウの試合くらいは見とけばよかった、でもまあどうせ瞬殺だからいっか。

 僕なんかより、よっぽど華やかにね、


 さてと、また人の目を浴びる。

 何回やっても良いものではないな、慣れはするけど。君は、意外と心地よかったりするのかな。


 相対するは、朝も見かけた隠蔽魔法かけまくってる、枠的に多分シードの人?

 興味なくて見てなかったからな、身長的もそんなに大きくない、おそらく魔術師タイプの誰か。

 まあ僕の方が小さいけど、僕みたいに木刀持ったりしてないし、うん。


 まだ大丈夫でしょう、縛りプレイしてても、


「えー、準々決勝戦第一試合! 左コーナー、勝ち上がってきたのは、」


 実況が流れる、左は僕のことだな、なんて説明されるのか。


 ・・・・・・というか、こんなの前からあったっけ。勝ち上がって選手も少なくなってきたからかな、

 僕も相手も外見隠して、なんとも盛り上がりに欠けそうだけど。


「・・・・・・えー、これ、本当に読むのかい——、っと、こほん」


「正体不明! 謎の美剣士!! 一説には一国の王子様であるとも言われる聖なるプリンス、ジョンスミスさんでーす!!」


 わー、わー、わー・・・・・・って、

 人の素性知らないからって、勝手に脚色しすぎでしょ!?


 なんだよ聖なるプリンスって、まあ確かに男として振る舞ってはきてるけど、そんなんなるわけない・・・・・・、

 はず、なのに、なんで心当たりがあるんだろう。


 全くあの既婚者女王様め、散々言いふらすせいで僕まで変な感じになっちゃっただろ。誰が聖女の王子様だ。

 ・・・・・・あ、もしかしてこれ考えたのもレリアか!? まったく、そこまでして既成事実を、、

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?


「続きましては右コーナー、破竹の勢いで対戦相手を薙ぎ倒し、その正体を隠したまま進軍した今大会のダークホース! 遂に、その正体が判明します!!」


 ・・・・・・へー、そんなとこまで僕と同じなんだ、

 このアナウンスで少しくらい相手の正体探れると思ったけど、僕の例を見る限りそんなに期待しなくていっか。


 というかそもそも、本当に興味あったらちゃんと覗けば普通にわかるし?

 別にまあ、隠蔽魔法破るのも、それがバレないようこっちが隠蔽するのも、面倒臭いからやってないだけだ。


「・・・・・・それで、うわぁ、これ読むのかぁ、」


「————あー、心はいつでも聖なる乙女、いつまでだって憧れを待ち続け、いつも想いを伝えてきたからこそここまで強い! これは果たして誰への、神へのラブレターか!?」


「真なる、——永遠潔白の大聖女、アウレリア様ですーーー、!!」


 バッ、と、ローブ脱ぎ捨てる、

 中から現れたのは、いつも通り白く煌く金色に輝く聖女様。


 こんな視線の振り落とされる底にいてなお、その高貴さの一切を堕とさず一身に集め返してさらに輝く、正しく聖華。


 なるほど、確かに彼女が出るなら、お祭りは大いに盛り上がるだろうね、




「——って、ウソォ!?」


 え、主催者側、出ていいの??

 完全に意識の外だった、というかじゃあなんで僕のこと大会に誘ったの???


 い、いやそれよりも問題は、なんで僕が気づかなかったかだ、

 確かに興味がなくてちゃんとは見てなかったけどさ、だからと言ってこんな目の前に立ってまで僕が見逃すか!?


 ——まって、言い訳をさせてくれ。

 こっちもレコウから姿隠すために全力で隠蔽してるから、つまり外からの情報減ってるしー、

 レリアからも一応姿隠してたから、つまりレリアのこと探せてないしーー、

 それにまだ、心臓が整ってなくて本調子じゃないしーーー、

 後、他に心配事が・・・・・・、いや、別に、そんなの無いけどさ。


「・・・・・・だからと言って、」


「うふふ、驚いてくれたかしら、セシィちゃん、」


「うん。ビックリした、まさか僕の方がサプライズされるとは・・・・・・、」


 ・・・・・・って、あ。


 ・・・・・・・・・・・・やっぱり、バレてますんよね、


 僕の正体。一応隠してたんだけどなー、いつ気づいたのかなーー、、


「もう。私が、セシィちゃんのこと見逃すわけないじゃない♡」

「お、おぅ、。・・・・・・あの剣士君がゲロったか?」

「ええ。聞き分けのない駄犬はしっかり調教——、じゃないわ。私の愛よ〜〜、」


 まあ昨日の試合見てたらそりゃバレるのかな、

 まさかレコウにもバレバレか!?


「・・・・・・いえ、そっちは根回ししといたから大丈夫よぉ〜、」

「・・・・・・・・・・・・僕、そのこと君に話したっけ?」

「もう、見てればわかっちゃうわよ、誰のためにそんなことしてるか、」


 あはは、まあ確かにレリアには、最悪バレてもいいかって思ってたよ。

 だって、こうして何も言わずに信じてくれるからね。・・・・・・・・・・・・選手として出てくるのは予想外だったけど、


「もーう。そんなこと言ってぇ、」

「えへへ。それで、どうするの? 無事に僕はいつも以上に心臓がビクビク鳴って驚いたけど、目的は果たせた?」


 しかしこうなると、準々決勝から準決勝まで身内だな。なんなら僕は前の試合もその前も知り合いだったし、

 流石にないけど、これで決勝までかって知ってる相手だとしたら、お祭りとして果たして盛り上がるのか。


 八百長ではないけどさ、なんかズルい気もしちゃうのかな。


「うふふ。なに心配してるのよ、」

「ん?」

「言ったでしょう。悪いけどレコウちゃんには、仕事を押し付けてきたわ」

「えっと、僕のビックリに協力してくれるのはありがたいけどさ、あんまり除け者にするのも、」


 今ごろなにしてるんだろうね、あの子にお仕事なんて務まるのか、

 いやまあ僕なんかよりよっぽど真面目にプリン売ってたっけ、今もまたどっかでプリンじゃーって言ってるのかな。


「むぅ、良いのよ、約束してくれたから。二人っきりの時間をくれるってね」


 ・・・・・・ああ、確かにそんなこと言ってたな。

 まさか本人達も、こんな形で果たされるとは思ってなかっただろうけど。

 というかレリアは本当にこれでいいのか?


「それよりセシィ、今はワタクシが相手なのよ?」

「え、うん。・・・・・・後で普通に、」




「『よそ見してて、いいのかしら?』」





       『聖光』



 試合開始。


 気づけば、僕の周囲は聖女の魔力で満ちていた。


 というか、最初から満ち溢れていた、この会場を形成する結界として、


 それが、光をともなって、牙を向く、


「・・・・・・ずっる!?」


 先手を取られた。

 僕が、真正面からのヨーイドンで。


 この体は、基本的常に周囲に警戒のアンテナを張っている。

 それが完璧に全てを把握できているわけじゃないが、これがなくてはそもそも生き残れなかったので、それなりの信頼をおいている。


 そしてそれ故に、見えても警戒できないものや、常に見えていても問題ないものは、僕にとって致命傷となり得る。


 例えば、空気中に漂う酸素が時に人体にとって有害になる可能性があるとはいえ、常に意識を向けているなんて非合理的だろう。精々、常は濃度を把握しておくぐらいだ。


 つまりそういう、わかっていても受け入れていた、

 いや本当にズルっこだ、チーターだっ、もっとタチの悪い主催者権限だっ!?


「ぐっ、受け流し!?」

「あらぁ、どうして光を剣で対応できちゃうのかしら、」

「まあ、光の速度でも放たれるまでは余裕あるからねっ、」


 でも流石に厳しい、

 この会場に満ちた魔力全部いっぺんにぶつけられたら、この剣一本で防ぎ切るなんて不可能だろう。

 今だって、魔法で強化された剣だからこそ弾けたが、普通だったら貫通して喰らってたな、


 光沢のほとんどない木で強引に受け流した光の矢が、地面に当たって抉って陥没させている。

 ・・・・・・殺意高くない? 普通にあれ当たったら死なないですか??


「・・・・・・いや、捻れても守るための結界の一部。人体に当たったらいい感じに軽減されるのか、」

「『ええ、そうねぇ、』」

「そしてそれ故に、」


 また、光が包囲する。

 でも、空間に存在する魔力に比べて、圧倒的に量が少ない。


 まあそりゃそうだ、なにせ結界は今も普通に存在している。これ以上無理にいっぺんにむしり取ったら、全部崩壊しちゃうのか、

 大会運営者として、それは不味いもんね。


「よっ、ふむふむ、光同士は干渉すると、」

「『・・・・・・余裕そうね、』」

「いやまあ、銃弾よりは的が大きいし? まあその分速いからそんなに変わんないけど、」


 さてと慣れたてきたし、そろそろ、

 ・・・・・・うーん、剣でどつくのも、転ばして気絶させて、あれその場合って大会の運営どうなるの?

 えっとまあ、どうしよ、


「『それじゃあ、こんなのはどうかしら。聖降!』」

「ん? これは、」


 空が明るく光る。

 まだ昼なのに、確実にいつもより明るいと断言できる真っ白に、


 正確には白くなったのは結界の天井部分だ、

 そこから、一面に光が降り注いでくる。


 先程までより殺意はない、けれども喰らえば彼女の手の中。そこから何だってできちゃうだろう、

 例えば、まあ、纏わりついて動きを止めるくらいは一瞬でかな。


「うーんと、それじゃあ流石にね、」

「ええ。その為の二人っきりよ、存分に見せてちょうだい、」


 しょうがない、剣を上に向けて振り回す。

 なるべく派手な動きは封印してたんだけどね、レコウに見られてないならまあいいか。


 僕に当たらないよう剣先で光を逸らし、それをぶつけて広げて、傘のように僕の真上にだけ光が来ないようにする。


 質量のない純粋な光そのものじゃなくて、あくまで僅かに意思を持った魔法だからこそできる芸当だね、

 まあ雨の日に傘なんて刺したことないからさ、豪雨を全て叩き落とすのよりちょっと大変くらいかな。


「むぅーー、またそれえ!」

「うん? いや、なにを期待してたのかな?」

「いいわいいもん! なら、本気にさせてあげるわ!!」


 そうして、レリアのから僕へ、微弱な魔力が流れてきて、

 うわっ、これ結界使ってるな、発動が早すぎる。

 流石に今からだと完全に防ぐのはちょっと大変か、手っ取り早く防ぐならこれ全部壊さなきゃじゃん。ずっこい。


 ・・・・・・でもそれ故に、ほとんど力はこもってない。

 敵意もない、えっとこの効果は、最近魔法以外の手段でも見かけた、


「(もし、この試合で私が勝ったなら、)」

「・・・・・・これ、電話的な。なるほど結界内なら確かにこんな簡単に繋げるんだね、」

「(あなたのことは、本当に聖国の王子様って紹介するわ、)」

「へー・・・・・・、って、ん??」

「(そして対外的には、あのダメバカ元王子は影武者だったって事にして、ワタクシの結婚相手は初めから貴女だった事にしてやるわ!!)」



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・流石に酷い⁉︎⁉︎


 いや、いくらなんでもその扱いは一人の人間として可哀想すぎる・・・・・・、のかはまあ知らんけどさ!?


 ・・・・・・それに、僕はそんな責任なんて取れないし。ともかく流石に流石だねとか言ってらんないよ⁉︎⁉︎⁉︎




「うーん、しょうがない、」


 これは、負けるわけにはいかなくなっちゃったな。

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