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情報過多の荷物持ちさん、追放される  作者: エム・エタール⁂
女神さん、追放される(魔科闘技編)
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82話


「た、大変じゃーセシィ!」

「あ、お疲れ様、」

「プリン売り泥棒じゃーー!!」

「へーー、」


 人攫いかな?

 ははは、逆に僕は冗談にしか聞こえないね、


「プリン売ってた店員がいなくなってたらしいのじゃ!」

「大変だねー、ところで今の試合見てた?」

「それどころじゃなかったのじゃ、」


 よしっ、売るのは勘弁してやろう剣士君。

 ……あでも、レコウに心配させたのは問題だな、やっぱいいや、


「ただのサボりだよ、さっき見かけた、」

「おお? なら、よかった、かの??」

「はは、後で殴り合ってくるといいよ、多分喜ぶから、」

「…………へん、いや、人のあれこれを言うもんじゃないの、うん、」


 そんなこと言って、前にやった時はレコウも楽しんでたくせに、


「わ、我は違うからの!?!?」


 まいいや。

 明日は、それに勝ったやつと戦うわけだからね、


 精々、驚かせてあげよう。

 楽しいかは、知らないけど、




 というわけで翌朝。

 今日でトーナメントは最終日、

 さーて優勝目指して頑張りますかなっと。


「……セシィちゃん?」

「なに?」

「……いえ、今日こそは、二人っきりで時間が取れそうと思ったのだけど、」


 うーん?

 また仕事忙しそうなの??

 含みがある、そんなに大変なのかな、まあそうか。


「頑張ってねー、」

「ええ。お互いに、」


「我も頑張るのじゃーー!!」


 そうだね。

 それじゃあ今日もお祭り最後まで、みんなで賑やかしていこうか、




 最後のトーナメント表を見る。

 勝ち残った十二ほど、そしてシード枠が四つ。

 端の方にジョンスミス。変な感じがするけれど、よく見ると他にも偽名っぽいのが多いか? まあ乱戦で勝ち上がれる奴は、つまり普通に強い強者側か、道理だね。


 つまり四回勝てば優勝だ、レコウと会うのは何回目だろう、シード枠のどこかではあるはずなんだけどな。


「あんまり早くてもつまんないだろうし、遅いと正体バレちゃうかも。んー、決勝で会うまで隠し通せるのが理想だけど、」


 正体不明の最終最後の最悪の敵は、なんとずっと近くにいた友でした! みたいな、

 よくある展開だよね、僕もつい最近やられたよ、あの感覚は友達としてレコウにも味合わせてあげよう。


「……それで、肝心のレコウはと、」


 朝からいない、レリアと一緒に裏に行った。

 多分、大々的にシード枠の発表をするのだろう。


 というか、僕も勝ち上がった選手なんだけど行かなくていいのかな。

 まあ見た目も経歴も名前すら伝えてないから、呼ぼうにも呼べないんだろうけど。それでいいのか祭り運営。

 飛び込み歓迎にしても限界がある、


「はーい! 盛り上がって参りましたコロッシアム。本日こそが最終決戦、今まで以上の盛り上がりをお約束しましょう!」


 壇上中央で、バニーガールが実況している。

 よく通る劇場の透き通った声、昨日も聞いたな、クソゥやっぱり結構胸大きい。


 ……あの人、運営責任者でしょ?

 こんなところにいていいのか、というか仕事多いな大変そうだ。

 レリアも姿が見えないし、裏方で忙しいのかな、


「それでは、まずは映えある選手のご紹介と行きたいのですが、」


 そこに並んだ、まあ大体十三人くらいの選手たち、

 くらいというのは、なんか僕のようにローブで外見隠してる人もいるから。


 なんだあれ、隠蔽魔法? 高度だな、というか結界と似てる奴だ、レリアの魔術だろう。


「一部の選手はさらに最後までお楽しみということで、それではご紹介します。まずはこの方!!」


 僕みたいにギリギリまで正体隠したい奴のために、レリアが貸し出してる魔道具か何かかな。

 もしかしてそのせいで疲れてたのかも、だとしたらなんて傍迷惑な奴だ……、


 とは、あそこに参加しなかったせいで、明らかに人数足りてない開会式やらせるハメになっちゃった、僕が言えることじゃないな。

 …………だって、あんなのやるなんて聞いてないし、


 選手が順番に紹介されていく。

 途中偽名どころか、名乗りすらしないやついたな、どうせ後の試合でバレるのに、

 まあいいや、その他なんてどうでもいい、大切なのは、、


「はーーい! レコウじゃー!! 今日は張り切っていくのじゃーー!!!」


 パフォーマンスなのか、なんかピョンピョン跳び上がってるドラゴンちゃん。

 魔法も使わないただの身体能力で僕と目線が合う、どころかさらに上に吹っ飛んでく。


 うーん、順番的に、当たるのは準決勝だな。

 二分の一で決勝で会えたと考えると、運がいいのか悪いのか、そういやクジとかなかったから操作もできなかったな。

 まあいいや、逆にちょうどいいでしょう、決勝が友人二人はちょっと大会としてどうかとも思うし。


 ……にしても、他のシード枠って誰なんだろう。

 そこは流石に、欠席させたらまずいんじゃ?


「それでは、もう一人だけご紹介しちゃいましょう! 本日決勝からご参加されるのはこの方! みなさんご存知、元闘技場チャンピオンの剣闘士、グラディエトさんでーす!!」


 紹介されたのは、知らない筋骨隆々のいかにもな大男。みなさんと言われましても、僕はポカンとするしかない、


 …………ん、いや、どっかでは見たことあるな。

 ……あー、あれだ、前にサーカスの最後に出てきた、モンスター役のマスク被ってた人。

 流石は役者の一人、格好変わるだけだ雰囲気変わるね。今はちゃんとした装備着てるから、普通に人間守る正義の戦士って感じだ。


 ……しかしという事は、思いっきり大会運営者の身内じゃないか、いいのかそれ?

 いやまあシード枠だし、むしろそれが普通なのか??


 となると、こいつが優勝して英雄に、まかり間違って勇者になれば……。そのまま、まとめて団員連れて自由になることも可能なのか?

 なるほどこっちが本命か。確かにあの巨大なら、まあ普通に八百長なしで優勝するのも不可能じゃない。出ているのが人、だけならね、


 トーナメントの位置的に、会うのは決勝になるだろう、覚えておいてやる。


「……む、というかよくよく考えたら僕最初の試合じゃん。早くどっかに行かないとまずいかも、」


 ここまで来て不戦敗とか笑えない、

 えーっと、とりあえず大会運営の方に、いやレリアにあったらまずいけど、いっそげーーー、、




 ————最終トーナメント、第一試合。


 なんとか間に合った、レリアに注意しながら進んでいったけど、なんか見当たらなかったしセーフ。


 その代わり、係員の人にしこたま怒られて、今日は控え室から勝手に出ていくなって言われちゃった。

 ……あの、ここからだと外の試合すら見えないんですが……。はい、自業自得ですねすいません。


 よくよく考えると僕、身分情報もろもろ隠しすぎて、本人だって確認取るのも大変なんだよね。

 下手すりゃ知らない誰かが勝手に出てた可能性もあると考えると、確かにここでじっとしてた方がいいかも。

 どうせ今日はレコウも忙しいだろうし、いっそ何も言わずにここで隠れてた方が楽かな?


 ……それに僕、そもそも人が戦ってるとこ見るとか好きじゃないし。今日が一番観客多くてうるさいしね、



 でもまあ、今はその視線も声も、浴びまくってるんだけど。


「……最初の相手は、、っ、お前か!!」


 人目の集まる決戦場。

 相対するのは、


「あ、やあ久しぶり、おじさん、」

「お、おう。……まさか、本当にここまで上がってくるとはな、」


 こっちのセリフだよ、サーカスおじさん。

 この魔術師だらけの国で、よく見るからにフィジカルの人が勝ち残れたね。


 ……まあ、そもそも、この決まった距離からヨーイドンのスタイルが、戦士にとって相性がいい?

 魔術の国で、うん、作為的なものを感じるかも。


 実践派の御旗さん、なのに開いた大会はこっそり漂う程度の戦士贔屓、そして身内の巨漢投入。

 あー、ずるいってほどでは、いややっぱちょっとちーと? 違うか、なんて使うのが正解なんだこれ、


「……まあいいや、始めようか、」

「お、おお、」


 試合開始。

 宣言した、一瞬、もう僕が魔法を気にせず使ってるなら二桁は終わらせられる時間。


 なのに、まだ彼は戸惑っている。

 確かに彼には僕の力を見せたはずなのにね、まあ向こうに結構押し付けてたけど、

 全く、昨日の僕の試合を見ていなかったのか? 見ていたからこそか、最後以外ずっと一方的にやられてただけだし。


 さてと、それじゃあどうしようか、


「えーい、」ぺちぺち、

「っ、くそっ!!」


 咄嗟に振られた腰の入ってない剣を、ギリギリで避ける。


 ……筋は悪くない。

 ただ、正直なところ、昨日の剣士君の方がよっぽど強い。


 …………彼は、僕と同じ境遇だ、

 だから、今こうして対面すれば、自分の目的のために必死になってくれると思ったんだけど。


 それこそ、こうして、


「う、うわぁ、」

「っ、おい、、。ちっ、さっさと帰んな!」


 隙を見せてやってるのに、なんだその殺意のこもってない適当な振りは、

 その程度、僕じゃなかったとしても、僕らなら簡単に避け切れるぞ。

 どうして本気にならない、どうして全力を出さない、目の前のガキなんて所詮は赤の他人だ。


 自分の生存のために、もっと必死になれよ。

 僕らは他になんて気にしてる余裕ないだろ、そんな子供だからって、踏み躙ってでもカチを取れよ。


 でないと、僕は、


「……その程度、なの?」

「……またそれか、そんな煽られてもな、、」


 剣が振られる、当たればまあ普通は死ぬ程度の速度。


 でもそんなものじゃない、彼の筋肉量を見ればわかる、この倍は少なくとも出せるだろう。


 本当に、何をさっきから躊躇って、


「お前こそ、その程度、なのか?」

「…………は?」


 なんだ、こいつ。

 僕に一撃も当てられてない分際で、まあ一発いいの貰えば沈むんですけどね、気合いで耐えるけど。


 本当に、何がしたい。


「……ここで勝ち残れるのは、一人きりだ、」

「そうだね、」

「それはつまり、俺様だ、」

「はあ、潰すよ?」


 おっと危ない危ない、本気出してバレるわけにはいかないんだった。


「わかんねえのか? つまり、お前が活躍できる機会は今だけだってことだ、」

「…………んー??」


 会話が合わない、キャッチボール苦手かー?


 いいから君がやる事は、さっさと本気を出して、サーカスでもなんでも目指すことだろ??


 いい加減、早く、、



「坊主。お前、あそこに入りたいんだろ? だったら今、自分の本気を見せなくてどうすんだ!!」



「……………………は?」



 ……………………あー、そっか、

 このおじさんの中で、僕はそんな設定になってるんだった。


 なるほどねえ、それなら、




 意味わかんない。


 それは、お前も同じだろ?


 むしろ、僕なんかが適当についた嘘と違って、君には後がないはずだ。


 こんな機会、二度とあるかなんてわからない。僕よりまだそこにいるくせに、なんで自分以外の心配なんてしてんだよ。


 僕らにそんな事されたら、僕らがそんなこと出来るんだとしたら、じゃあ、



 この国の底なんて無視して、自分のためにこの大会全部台無しにしようとしてる僕は、

 なんなんだよ。

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