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情報過多の荷物持ちさん、追放される  作者: エム・エタール⁂
女神さん、追放される(魔科闘技編)
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68話


 科学の町。

 一言で表しても、想像がつかないだろう。

 君が、僕と同じ世界で生まれてたとしたらね。


「……うん。見た目上は、そんなに変わんないかも、」


 立ち上る摩天楼、見渡す全てが灰色、空すらくすんで彩度の堕ちた世界。

 まだ、そんなものは存在しないみたい。


「でも、すぐに他と違うってわかる」

「そうかの? あんまり、差はないように思えるが、」


 だってほら、飛び交う電波、広がる周波。

 僕の体すら突き抜けて、あっちこっちに撒き散らされている。


 ……思ったより、邪魔ではないな。単調で、シンプルで、魔法一発使った後の方がよっぽど騒がしい。

 なるほど、これが君の見ていた世界なんだね。


 …………え、違うか? あそう。


「……んー、なんか、独り言してる奴がいるの?」

「うん、手に板を持ってね。いったいなんだろう、皆目見当もつかないや、はは」


 あ、電波きてる。

 どうだろ、ここから内容抽出できるかな。

 まあこの距離なら直接聞き耳立てた方が早いけど。


「……ん、うん。もうちょっと調子が良くないと、魔法使えばいけるな」

「なんじゃろうなー、気になるのー、」

「それはね〜、うふふ」


 あ、レリアはもう知ってるんだ。

 まあそりゃそうか。結局君が使ってる通路で来たし、こっちにも手慣れたものだろうね。


「あれはねぇ、」

「連絡用の魔道具、遠くに離れた人ともお喋りできるおもちゃだよ。うん、射程は精々この国内だけってところかな、」


 中継地点でも立てれば変わるだろうけどね。

 しかし変な道具だ。わざわざ電波を使って通信してるのに、燃料は魔力製。凄いチグハグな感じ。


 でも、それもそうか。ここにはコンセントに、ユーエスビーだっけ? ともかく、そんな簡単に燃料補給できる仕組みも無いからね。

 ——ユニバーサルシリアルバス。

 って、なに? ああ、USBか、博識だね。それ出されても、結局なんのことかよく分かんないけど。


「セシィちゃん?」

「…………あー、ごめん。実は、君の国で前にも見たことあってね」

「いえ、それは別にいいのだけど。……いえやっぱり、ちょっとムカつくわね。こっそり輸入してたのあの馬鹿どもでしょう、なに私の楽しみ奪ってんのよ」


 帰ったらタダじゃ、いえ今すぐにでもって、

 いや、流石にそれで怒られるのは理不尽じゃない? ま、どうでも良いけど、


「ほー、遠くにいても話せる道具か、凄いのー、」

「僕なら、事前に掌握しとけば距離無視して話せるけどね」

「私も、国内結界内なら割と自由に話せるわ、」

「……我も、国内くらいなら頑張って声出せばいけるの、」


 ね、だからおもちゃでしょ。

 それこそ、君の世界では本当に玩具として遊ぶ為にできてたし?

 ……違う? だって記憶の君の画面はよく女の子とか、おっと、変な事まで思い出しちゃいそうだな。

 うん。仕事道具としても使ってるのは知ってるけど、そっちはあんまりいい思い出じゃないようだしね。


 ……しかし、本当に、子供の遊び程度。

 なんていうか、弱い、三本線が、それとも三本波マーク? またわかんないね。

 ともかくこれならいっそ、前に見た聖国の魔道具の方が、ん?

 あれは完全な魔法製だっけ、いやここのも仕様は、先鋭化小型化の関係、いやなにか、


「んー、他国に出すための採算度外視の見栄、それとも健康被害無視の実験品、はたまたここのは国内繋がればいいやで最適化、」

「むー、すまんの、なにで悩んでるかすらわからんじゃ、」

「え? ああ、うるさかった? ごめんね」

「いや、その。レリアは、何かわかったかじゃ?」


 なんだろ、まあ別にいいか。

 そうだね、一応残る可能性も考えて、これからは積極的にしてくのもありか。

 なにを、うん。まだ考えないようにしよう。


「ああそういえば、私も調査の為に一つ拾ってみたのよね、」

「お、それ? ……へー、なんかヒビ入ってるけど、動くの?」

「一応は? 相手がいないからそもそも分からないのよねぇ、」


 いるかしら? って、なんか犯罪の片棒担がされそう。

 流石だよね、いや本当にどっから取ってきたの、ああ渡されちゃった。


「……金属製、でも内部は結構単純だ、アプリの一つも入れられなさそう」


 うーん、長方形の少し分厚い板。形だけ似せただけで、ただの電話機能しかなさそう。

 いや裏に出っ張り、ふむふむこれは、


「こうして、こうすると、」

「おお! 我の顔が写ってるのじゃ!!」

「金属の板に、顔が逆向きでそのまま写ってるわね……。つまりただの鏡かしら、」

「いやほら、この反転ボタンを押すと、」

「おお! 向こう側が見えるのじゃ!!」

「……それ横にどければ、普通に自分の目で見えるじゃない」


 ……うん、後はほら、ズーム機能、

 って、倍率ひっく。これじゃただ見える範囲狭めただけじゃん、虫メガネ以下では? うん。


「そしてメモリもない、写せるだけで保存できないなこれ、」

「なに言ってるかはわからないけど、結局大したものじゃなさそうね、」


 いや、そんな事はない。なんとこれ、テレビ電話ができそうなのだ!

 ……まあ、飛び交ってる電波的に、多分もの凄くガビガビのしか無理だろうけど。

 うーん、なんか変な発展の仕方。最低限の電話の形を求めた結果なのかな?


「……うん。でも、何かの参考にはなりそうかな、」

「うふふ。なら良かったわ、本当にね」

「じゃあはい、」


 ありがとうね、返します。


「いいのよ、きっとあなたのほうが使いこなせるわ」

「……はい、そうですね、」


 受取拒否、一方通行便。うん。そんな気はした。

 これで共犯者ですか、いやまあ壁の抜け道使った時点で色々と覚悟はしてたけど。

 ……ま、別にいいけどさ。


「……それじゃ、早速これの開発者に話を聞きに、と言いたいけどそれができれば苦労しないよね」

「そうねえ。一応、使うだけでなく、作る人がいそうな場所は知ってるけれど、」

「逆に最初が誰かわかんなくなりそうだね、」


 そして下手に探ってる事バレたら、今度こそ雲隠れされちゃうかも。やるんだったら一気にだね。

 時間かかるかな、まあいいよ。みんなで観光するほうが大事だし。

 そんなのは、後で僕一人で探せばいいや。


「それじゃ気にせず、行こっか、」

「観光じゃー!!」


 うん。あっち側では存外に興味深いものも見せてもらったし、こっち側にも良いものあるかなっと。


「レリア、何か面白いものとか知ってる?」

「……そうねぇ。今こっちで一番注目の商品は。黄色くて甘いデザートよぉ?」

「うん。事業が上手く行ってるようで何よりです、」

「単純に人口多いから、よく売れたのよ、。最近はちょっと、忙しいけれど、」


 ……で、なんか他にこの国の特産物ないの?

 科学の町、いやまあプリンとか、本来はここ発祥になるはずだったんだろうけどね。

 混ぜて熱を入れるだけのデザートに、科学が使われてるのかは知らないけど。


「お腹空いてきたのじゃ、」

「ほら、早くしないと飲食店を一つ潰す事になるよ、はは」

「なんで遠い目してるのよ。……でも、悪いわね、少なくとも私は知らないわ」


 そりゃ残念。

 なんかないの、こう、食欲をそそらない七色に輝くケミカルカレーとか、

 ゲーミング? なにそれ、食べ物で遊ぶとか僕には考えられないね。いやなら求めるなって話だけどさ。


「ふむ。まあ歩いて探してこそ観光かの、」

「事前に調べて完璧予定立てるのも観光な気がするけど、僕らは気ままな旅人だからね」


 よく考えたら、気ままに旅してた期間すごい短い気がするけど。

 いつも何かに巻き込まれてるような、まあ自分から突っ込んでった分はノーカウントかな?


「……そうねぇ、私が調べてわからなかった、少なくとも共通認識の名物は無い。でもセシィちゃんと一緒に観光できるなら、なんだっていいわ♪」

「目指すはなんか、七色に光るおもしろご飯?」

「おお! それは、全く楽しみじゃないの!! でも本当にあったら笑い転げるのじゃ!」


 そうだね、僕も、多分失笑の後に冷めた目線を向けるよ、一人なら。

 みんなで見たら、いい思い出になるよね、なーんて。

 うん。悪くは、ないかも。


「……そういや、七色に光る食べ物といえば、ここにゲーミングプリンが」

「うわっ、なにそれ、えげつないわねぇ、」

「む? 普通の美味しそうなプリンに見えるがの?」


 ゲーミング、いや通じないから、じゃあ魔王様プリンと呼ぼう。

 魔力込めまくって、あの幼女様のように七色に揺らめいた、油プリン。ヘドロとまでは言わない良心。だってそう呼んだら、必然的にあの子も、

 うん。ゲーミング幼女、凄いファンキーな感じする、意味わかんないけど。使い方合ってる?


「むぐむぐ、」

「よく食べられるわねぇ、」

「見た目はともかく、中身は幼女でも食べられるよう僕が愛情込めて作りました、」

「え、これ子供に食べさせるの。……いえ、それより、私にも食べさせなさい!」


 あ、レリアもいった。

 でもちょっと葛藤してる、まあ中身は普通なんだけどね、栄養素以外。

 だから売り出しても問題ないし、この科学の町でこそ輝く、文字通りカラフルな名物になるかもね。


「……いえ、その、セシィちゃんの愛情は独り占めよお、」

「むきゅむきゅ、普通に美味しいが、なにがそんなにダメなんじゃ?」

「強いて言うなら、断面も変わらずヌルヌルだったことかしら、」


 ははは、中までたっぷり栄養詰まってる証拠だよ。

 きっとゲーミングに慣れ親しんだ人なら、そこが面白いって大人気になるはずだよ。

 もし君の世界に行けたなら、大ヒット間違いなしだね、ホームランかな、ルール詳しく知らないけど。


 ……でもこれ、魔力見えなきゃ普通のプリンだった。残念、思わぬところに落とし穴が。僕の異世界進出の夢は敗れましたよっと。


「向こうの携帯は無事に流行ってるのにね」

「そうねぇ、輸入するかしら、いえそのお金もありませんけど、」

「ん。どうせ国内だけだし、レリアなら結界で似たようなサービス、機構を作れるんじゃない?」

「嫌よ、外貨増えないし、私が疲れるだけじゃない」


 ははは、残念。

 科学はこっちで国を割る程度には大きいのに、あっちに魔法を持って行っても大した事はできなそう。


 流石は夢の世界、しょうがないね。

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