67話
華やかな闘技場、その裏にある薄暗い部屋。
きっとこっちが本質だな、どこに行ってもそんなんばっかだ。
そんなところに集まっているのは、とりあえず、国の最上層と言って差し支えないのが二人。
「……おや、まだお話しされていないのですか、レリア嬢」
「せっかくなら、アナタの口から説明させてあげようと思ったのよ、主催者様?」
変な感じか、いや国のトップが暗躍するのは普通なのか?
まあいいや、国を賭けた悪巧みなんて可愛いもの。ここには簡単に国を滅ぼせちゃう子もいることだしね。
「ふむ、なんじゃろうな、」
「んー、察しはつくけど、」
くるくる、丸い透き通った目に見つめられる、おかしな気分になる。
どうしようか、僕にメリットは無さそうだけど、
「ええ、そうですね。お嬢様方、お祭りはお好きですか?」
「……、」
「大好きじゃ!!」
「はい、ワタシもです。ですので、せっかく皆様に注目していただいた機会に、自分でも開いてみることにしたのですよ、」
パーティ、はは、追放されるかな。
うぐ、自分で言ってて悲しくなってきたかも、まあいいや。結果的に、
「屋台はプリンが売れそうだね、聖国産の新商品の宣伝になるかな?」
「そうですね、初めて口にしましたが、あれは良いものです。という訳で、協力して頂いていたのですが、」
まあでも、祭りの雰囲気とは合わないだろうなー。
夏祭りならともかく、だってこれ、会場はここ闘技場で、
「それで、なにする祭りなんじゃ?」
「ええ、簡潔に言いますと、この国一番の魔術師、そして戦士を決める大会です」
行うのは、血肉撒き散らす原始的なサーカス。
プリン持ち込むのはなんか、一周回って愉悦的かも?
「ほう。つまり、最強を決める大会じゃな!」
「はい。この国の伝統文化なんですよ。最近は国のゴタゴタで途絶えていましたが、こんな時世だからこそワタシの主催で復活させてみようかと」
「ふむ、悪くないのじゃ。なかなか楽しそう、まさにパーティじゃのう!!」
うん、そうだね、レコウ。
参加するのかな、だとしたら僕は精一杯応援させてもらうけど。
それにしても、魔術の国で最強を決める大会か。
なんでそんなもの伝統になったのか……、まあ、推測はできるけど。
「国内外から参加者に特別ゲストを呼んで、大きなものにしてるんですよ。祭りは、みんなで観覧する方が楽しいですからね」
「それに参加した方がの! いつから始まるんじゃ、もう締め切っちゃったかの?」
「いえ、一般参加の方はそろそろ締め切りと、予選が始まりますが、飛び入り参加も歓迎していますよ。……それに、お二人なら、」
視線が動く、聖女様、実質的な一国の主人。
レリア、彼女と僕らの関係は、まあ個人的な友人ってところかな? これ以上成長したら、家族は取り消しかも。
…………それになんか、別の意味で家族にしてきそうだし、、
「ええ。シード枠、だったかしら? ワタクシの国から、特別ゲストとして選手を選ぶことになってるのよ、」
「国の垣根を超えた交流、是非とも楽しみにしております、」
うん、レリアちゃんが凄い期待した目を隠してこっち見てる。
しかし、僕ら別に国民じゃないんだけど、君の国の代表として出ていいの? ズルくない??
まあ別に所詮は交流戦、というかお祭り。そんなガチガチに利権が絡んでくるものじゃないなら、多少ゆるくてもいいのかな?
「どうする、レコウ、」
「おお! おあつらえ向き、じゃ!!」
「うん、楽しんできてね、」
聖国に、ドラゴン投入。
……しかしうん、凄いズルいな、適当にやっても優勝間違いなしじゃん。
ま、僕が気にすることないか。
「ええ、歓迎するわ。一緒に頑張りましょう、レコウちゃん、」
「おう! どうもじゃな」
最初からそのつもり、って訳でもないか。
まあ結果的に楽しそうだし、良かったよ。
「……それで、あの、セシィちゃんは、」
「うん。応援してるね、」
「あ、はい。……ぅぅ、カッコいいところが見られると思ったのに、」
あはは、ごめんね? いや謝る必要も気もないけど。
どっちにしろ、レコウ一人でなんとでもなるでしょ、
それこそこの大会に負けたら国の行く末が大変なことにー、なんてことになっても僕が出るまでもないよ。
「そちらのお嬢様がご参加ですか?」
「ぇぇ、そうなりそうよぉ、」
「……ふふ。残念ですね、ワタシも是非、そちらのプリンスと踊ってみたかったのですが、」
誰がだ、せめてセをつけろ。
くそう、そっちこそ僕にせが抜かされそうなくせに、胸だけ大きくしやがって。
……はぁ、苦手だ、同族嫌悪? いや僕は進んで王子様ムーブとかしてないし!?
そんな男装とか、毎回する訳でもあるまいし、
「それでは、レリア様。予定に変更はありません、まだお着きになられてないゲストもいらっしゃいますが、滞りなく進行できそうですよ、」
「そうね。まあ、アナタの人となりも知れたし、一先ずは任せるわぁ、」
「ええ、光栄です。全力を持って、皆様がお楽しみいただける劇にしますよ、」
闘技場を後にする。
楽しげなサーカスの会場、だけども結局、赤に染まることを定められているのか、
「と言ってもあくまで試合よ。そんな命の取り合いにはならないわ、」
「ふーん、今は、そうなの?」
「ええ。だからこうして、ワタクシも気軽に交流できてるわけよ、」
そうか、まあ、いい事かな。
聞いてたレコウ? 相手をハンバーグの材料にしちゃダメだよ??
「ふっふっふっー、今なら、プリンを素手で掬い上げる事すら可能じゃぞ!!」
「うん。行儀悪いからやらないでね、」
「はーい、じゃー、」
……いやドラゴン的には、むしろ素手が普通なのかな、とうもろこしみたいに。
…………え、とうもろこしって、素手で行くのがマナーなの? へー、
ま、ドラゴンがプリンを食べるのに決まったマナーなんて、どこにもないか。
「それにしても残念ね〜、私の王子様の凄さを見せつける絶好の機会だったのに、」
「なに、国と命でもかけた絶対に負けられない戦いなの?」
「だとしたら、もっと上手く隠すわよ。私が呼んでないのに駆けつけてくれるからこそ、恋こがれちゃうんじゃない」
ふーん、まあただの遊びだよね。
そりゃ国をあげての交流戦、結果を残さないと国全体が侮られるし、外交にも影響出ると思うけど、
だとしたら、なおさら僕は向いてないと思うよ。基本能力が低いし、地味だし、外見も悪いし。
こういうのは、華やかのレコウの方がよっぽど似合ってるって。いやまあやる事はただの物理になると思うけど。
「そういや、魔術の国で肉弾戦ってどうなんだ?」
「そうね、特に問題はないはずよ。なにせ元は……、。まあ、武器も魔法も基本的には制限ないわよ、死人が出なきゃ、」
「おお、どこまでやっていいのかのー、」
「…………そして、それを調整するのは私の仕事だったりするわぁ、」
……うん。少しは自重してあげようかなドラゴンちゃん。
まあ、君が楽しめれば一番だと思うけど、。あんまりやりすぎてこれが聖国の国民性だと思われても、外交に問題がありそうだ。
……いや、どうだろ。
トップ層の馬鹿どもに、その上に立つ聖女様の国民性…………。ははは、竜の方がマシかもしれない。
「優勝賞品とか、でるのかのー、」
「そのはずよ。といっても、ワタクシもまだ詳しくは聞いてないのだけどね。とりあえずお金と権利と、」
「ふむふむまあ、勝ってからのお楽しみじゃの、」
なんだろうね、それもあのクラウンが用意してるのかな。
それこそトロフィー、金銀財宝とか。そういや結局、魔族のところ行ってもダンジョンとか探してる暇なかったし、なんかいいものあるといいねレコウ。
「ん、あー、もう別にいいんじゃがの、」
大切そうに、肩に下げた鞄を撫でる。自由な空間に繋がったもの、持ち運びに便利でしょ、
たとえ僕がいなくなっても自由に使えるから、気にせず色々詰め込んでくれていいのに。
「あら、何かしらレコウちゃん、その鞄。なんだかとっても羨ましい気がするわ?」
「ふふ、悪いの。これは我だけのじゃ、」
「む、新たなライバルの出現より、やっぱり一番の競争相手はあなたね、」
なに言ってるんだ、僕の一番は、、
って、本当になにを言わせようとしてるんだ、そういう比べる対象じゃないってのに。
なんでこの僕の友達たちは、というかレリアは頑なにそこ狙ってくるかなー。
一番、アレン、うぐぐ、あんまり考えないようにしよう。
じゃないと、だって、もう僕は、
「……さてと。こっち側の旗には会えたから、今度は向こう、」
目指すは科学に浸された、この国の片割れ。
一体どんな事になってしまっているのか、恐ろしいね、
それこそ銃社会、四方八方から銃弾の飛び交う世紀末になってる可能性もあるか。
「そんな事にはなってないわよ。一応表面上、外交では一つの国として見せられる程度よ、」
「つまり内部では完全に真っ二つじゃん、怖いねー、」
「まあ、あっちも、見た方が早いわよね。現状ワタクシはこっち派閥寄りなので、あまり大々的に向こうに行くのも憚られるのですけど、」
いいよ、勝手に行くから。
確か、壁にこっそり穴あけたんだっけ?
……うん。僕らは大人しく、一度出て外から正規の手順で入ってこようかな、
「えー、セシィちゃんと観光したいわぁ、」
「忙しくないの? 祭りの運営にも一役買ってるんでしょ?」
「あなたと交流を深める以上に大切な事なんてないわよ。この国一つとの交流より、あなた一人の方が重要だわ」
はは、それは国として、それとも個人として?
前者なら買い被りすぎだと思うし、後者ならちょっと重いかな、
……まあでも、悪い気分にはならないけど。
「うん、レコウもいるしね、」
「じゃー、みんなで観光するのじゃ! ……すまんの、二人っきりにさせてもやりたいんじゃが、」
「ええ、大丈夫よ。祭りに参加するなら、拘束時間が生まれるから、その間に、、」
「うお、そこまで計算してたとは、やりおるの、」
……あのそれ、本人の前で言わないでくれる?
確かにどうせ小声で言っても聞こえちゃうけどさ、もはや隠す気すら無くなっちゃったよ。
まあいいか、観光ね。
科学、騒動、早く問題を解決したいところではあるけど、それはそれとして。
今、時間を楽しむ事も、重要だよね。
ね、君も、そう思うかな。
…………………………。
…………………………、
…………………………。
「……………………なるほど、あれがキミの言っていた救国の王子様だね、」
「うん、お話できて光栄だったよセイントレディ。素敵なプリンセスだった、」
「ああ。次はみんなもキミも楽しませてみせるさ。ミシェルネイの名において、世界を一幕の劇にしてみせよう」




