66話
いいものを見せてもらった、これなら君の世界のものと比べても遜色ないかな。
どう見えるのかそれとも思い出せるのか、楽しんでもらえたら幸いだよ。
「それで、あの人は旗に上げられたのか上がったのか、話をしてみたいね」
「そうねぇ、ワタクシもそれは気になるけれど、なかなか自由に話す機会がないのよね」
「女王様でも?」
「立場上は王女様、いえ聖女として来てるの。それにそもそも、普段どこにいるのか、」
なるほど、まあ彼女はこの聖女様の目をもってしても気づけないほどの別人に演技できるからね。意識してないと横を通られても気づけないのかも、
僕はあそこまでできるかな、気づかれないのは得意だけど、性別を偽るレベルの演技なんて……、あれ?
…………そ、そう、僕は演技が得意なんだ。決して、何もしなくても男に見えるとかじゃないんだからね!?
「ははは、よし、控え室に突撃しよう、レリア」
「……それいいのかのー、」
「問題ないわ、なにせワタクシは国賓ですから。よくよく考えたら、好きに話せてなかった方がおかしいのよ、」
まあ、あの人が国の運営とか一切関係ない一般サーカス管理人だったら、凄い迷惑な行為だけど。
少なくとも、実践派の顔って部分否定せず利用してるくらいなら、有名税だ少しくらい受け入れてもらおう。
「そうねえ、それ使ってお祭り開いてるくらいだし、ワタクシも関与してるし、」
「あ、そういややっぱ、あの会場内でもプリンとか売ってんの? よく人員いたねー」
「ええ、無料でコキ使える奴らが。そうねえ、無事に専念させてあげられそうよ、」
む、悪どい顔して僕と、レコウの方も見た?
なーに考えてんだろうね、まあいいや、控え室的な場所に着いたし、
「おお、裏口って感じじゃのー。勝手に入っていいのかの?」
「普通駄目だよ、それこそ王様でもなきゃ怒られちゃうかもね、」
「ええ、女王やってて良かったわ♪」
ノックしてもしもしと、口には出さないけど、伝わらないからね。
一先ずレリアに先頭に立ってもらって交渉中、なんかこう演技を見ていたく感動したから賞賛を直接おくりたいとかそんなんで、
————ええ、例の件で話がしたくて。ちょっと人員に変更がありそうなのよ、
違った、なんか話してる、扉が開いた。
一般人は入ることの無い部屋の中には、まだ片付けられて無い小道具大道具の数々。
うん、わくわくするね? 男の子の感性かな、まあいいや、。
「あら、やっぱりいないわね……、」
レリアが部屋を見渡す、どこにいても一番に目立ちそうなクラウンは見つからず、何名かの団員が片付けを進めている。
……やっぱり、ちょっと迷惑だったかも。
「しょうがないわね。——あ、そこのあなた、エウスさんって今どこにいるか知らないかしら。要件は、さっき言った通りなのなけど、」
一番近くにいた、一番部屋の中で立場の低そうな少女に話しかける。
うん、近くにいたのもあるけれど、よりにもよって、
「え、ワタシ、ですか?」
「そう、知らないかしら?」
「えっとーー、」
「しょうがないわねえ、それなら知ってそうな人とかって、」
少女に詰め寄る、ふむ、こうしてみるとレリアより身長低いんだな。胸は大きいけど。
もしや詰め物では一抹の期待を込めて覗いてみたけど、正真正銘モノホンだよちくしょう、
しかし、暗い部屋、茶色に見える髪、低い身長、厚底ブーツでも履いてたのか、それに猫背、ふむふむ。
「……のおセシィ。レリアは、何をやっておるんじゃ?」
「うーん、でも一応外交だから、あんまり僕らが勝手に前に出るのもね、」
「そうかの?」
視線を向ける、目が合う。彼女のビー玉のような瞳。綺麗でころころ。
僕よりは年齢上かな、身長はそんなに変わんないけど、手足が長くてスタイルがいい。
いや本当に、その胸少しでいいから分けてくれない、
「なら副リーダーとか、その人の場所を知ってる人とか、」
「あー、えっと、ワタシの劇団、副座長とか決めてないんですよ、」
「そんな団体……、いや人のこと言える国じゃ無いわね……。こほん、なら、普段この時間は何してるかとか、」
「そうですねえ、ファンと会話をしたりしてますよ。アナタもエウスのファンですか?」
「え、まあ……、」
うーん、まだ話してるよレリアちゃん。
まあ別にいいけど、楽しそうだし、
「っ、いや、セシィちゃん!? 違うのよこれは! 私の王子様はいつだってただ一人、」
はいはい、既婚者ですよね王女様?
そろそろ、僕たちが話しても良さそう?
「お、いいかの。——よお、そこの貴様!」
「はい、どうも?」
「なかなか悪く無い劇じゃったぞ、面白かったのじゃ!」
「それは、ありがとうございました」
おードラゴンっぽい。
流石だね、これの後なら僕がなに話しても普通に聞こえそうだ。
いっちょこれから、この国半分滅ぼしますとでも言ってみようかな、いや最終手段だけも。
「ちょっと、レコウちゃん?」
「あー、レリア、僕も話していい?」
「え、ええ、いいけれど、」
さてと、改めて初めましてなのかな、いや別に普通に初対面ではあるか。
それならまずはせっかくだし、レコウみたいに素直に賞賛でも述べてみるか。
光の入れ具合でコロコロと色の変化するのその瞳を交えて、
「こんにちは、エウスさん。とても素晴らしい演劇でした、とっても楽しかったと思いますよ」
思わず、今も拍手してしまいそうなくらい。
サインでも貰っておこうかな、なんて、
少女は、それには答えず、ただにっこりと笑った。
さてとじゃあ、あっちでまだポカンとしているレリアちゃんは置いといて、少し話しましょうか。クラウンさん、
オレンジ髪の少女は俯いて、そして地面に倒れ込んで、消える——、
「えっ、どこにっ、」
「うん、あっちの部屋がいいって、」
ように視界を外れて別のドアの前に移動している。
あ、レコウがもう付いてった、まあ別に僕も部屋にこだわりは無いから良いけど、
「行く? レリア、」
「あ、ええ。あの子が、あれが、そうだったのね、」
「ん、やっぱり気づいてなかったの?」
「いいい、いえ!? わかってて遊びに乗ってただけよ?!」
ふーん。
相手もわかってて遊んでたのかな。
あれが素の可能性も一応あるけど、どうだろ、まあ本人から聞けばいいか。
誘いに乗って、人気のない部屋。
なんの場所だろうね、狭くてあんまり良くはなさそうだ。
「やあやあ、こんにちは、お嬢さんがた、」
扉を開けると、そこには劇場のスターがいた。
不思議だ、さっきよりも薄暗い部屋なのに、くっきりと金色に全身が光っている。
もちろん本当に光を発しているわけではない、改めて堂々とした立ち振る舞いから覇気を感じるな。これも演劇の賜物なのかね、
「改めて挨拶?」
「ええ。キミには先に貰ってしまったからね。エウスとして、返さない訳にはいかないだろう?」
いったいどこで着替えたのか、いや良く見ると髪型と特徴的なクラウンを乗せただけで服装は変わってないな。
しかし印象だけで、確かに地味な少女の格好からパッサリとした王子様の格好に見えるのだから、
「おお! やっぱり面白いやつじゃのー、」
「ふふ、お褒め位預かり光栄ですねマドモワゼル。お名前をお伺いしても?」
「おう、レコウじゃ! 気軽に呼んで良いぞ〜、特別にな、」
芝居がかった自然な動き、あれが元の性格だとすると、なかなか日常生活から騒がしそうだね。
「そちらのご慧眼をお持ちのフロイライン、是非ともお聞かせ願いたいですが、」
「……あー、セシィ、です。気軽には、まあ、うん、」
「了承しましたセニョリータ。よろしくお願いいたしますね、」
「はい、どうも、」
クルクルとまわるビー玉の目、ちょっと話してると疲れるかも、
んー、さっきまでの方が話しやすかったかな。
「ちょっと、なんの話してるの?」
「おや、失礼しましたアウレリア様、」
「レリアでいいわよ、お久しぶりとでもいいましょうか、エウス嬢?」
「ありがたき幸せですマダム。ぜひボクの一ファンとして、エウスと気軽にどうぞ、」
「……なんか嫌だわ、」
うーん悲報、一国の女王、劇団長に外交力で押される。
なんか相性悪いかもね、レコウが一番楽しく話せそう。
僕らがこぞって苦手な相手なんて、まあなんというか、せめて同年代の女の子くらいには負けたくない気もするよ。
「それで、お二人はご友人で、」
「ええ、とっても大切な友人で、その上、」
「うん、一緒の部屋に泊まったこともある程度だよー、それ以上なんてないよー??」
「そうねぇ、楽しかったわぁ♪」
そうやって、女王の圧力で外堀から既成事実を組み上げようとするのやめない?
仮にも既婚者ですよね? まあ指輪すらしてないけど、マダムと呼ぶにはあまりにも微妙な関係だもんね。
今頃あれなにしてんだろ、生きてんのかな。しらね、
「なるほど、お二人のどちらかが、いえ両方ですか?」
「それは、今から決めるのよ。私としては是非ともと言いたいところですから、先に話を聞いてあげてくださる?」
「ええもちろん喜んで、マドモワゼル」
視線が向く、いやずっと向けられてもいたけど。
くるくる、じゃあ話ができそうかな。
「えっと、エウス、さん?」
「お好きに、気軽にどうぞ、レディ、」
「……エウスサン。今のこの国の状態について、どう思ってるんでしょうか?」
なんか悪いけど、個人的な友人になるのは大変そう。
いやそもそも、僕は友達なんてそんな、簡単に作れる性格もしてないしね。
……とはいえ、表面上ならいくらでも好きにできるはずなんだけど、この人相手だと何故かそれもやりにくい。
ふむ、まあ相手は下手をすれば僕以上の演技の使い手だ。適当にやっても余計に面倒なことになるだけか。
「そうですね、あまりよろくしくないのは確かです。やはり人と人とは繋がりあった方が楽しいですから、」
「なるほど。ならなにか、改善策とか考えているのでしょうか」
「ええ、もちろんですとも、」
あー、何かその流れで向こうの銃ばら撒いた犯人見つけられればいいのになって、しょうがない。
「……と言いたいところですが、申し訳ない。実はボクはあまり、あの壁にやらについて問題を感じてはいないのです、」
「うん、それは、何故?」
「ええ、エウスの目指す夢は、世界にこの声を届けること! 国内なんて小さな範囲に留まるつもりはありません。とすれば、薄壁一枚の有無なんて、些細なことでしょう?」
まあそうだ、しかしそれでは使えないな。
とはいえ別に、最初から当てにしていたわけではない。最低限なにか迷惑をかけるかもしれないから、事前に挨拶をしに来ただけだ。
「つまり、この国だけに留まる気はないと、」
「ウィ。もちろん、愛すべき祖国であることに変わりはありませんが、」
ふーん、どうだろ。
まあいいや、許可は取れたかな、最悪国がなくなっても。って、それは流石にだが。
やる気もないし、アレンがここ来るのかもしれなし、聖国の交易相手でもあるし。
どっちにしろ、この個人を攻略したところで、この国が味方になってくれるわけでもなさそうだからね。
それじゃ、聞きたいことは聞けたし、後は世間話でもして帰ろうかなー、、なんて。
さてと、じゃあそろそろ、なにをコソ巧みしてたのか教えてくれるかな、レリア?




