60話
遠くから、歩いてくる、魔族が一人。
男、相変わらずぶら下げた大きな荷物のせいで、動きづらそう。
「シファ、聞いてたの?」
「アア、オレは耳はいいんだゼ? セシィほどじゃネエけどさ、」
「だろうね」
何しに来たんだろうね、君。
もう全部、終わったつもりなんだけど、
「センソウはしゅーりょー、魔王もコロせず、マオー様にも会えず。これでオワリ?」
「そうだよ。僕の友達が、終わらせたんだ」
……そこでドヤってるドラゴンちゃん、別に君だけのことを言ってるわけじゃないよ?
「アーアー、ソウカヨ、」
「……にしても、貴様もあそこにいたんじゃな、なにしてたんじゃ?」
「ハハ、どうもレコウサン。結局おいしいところはゼンブ持ってかれちまったナー、」
反抗、相変わらずそれビカビカして見づらいな、、
話す時くらい、やめればいいのに。
「デ? ドウスルンですか、ソレ。こんなナアナアで、オシマイデスカ?」
「……我の決定に、なにか文句でもじゃ?」
「アハハ。ソウデスネー。そりゃ、あるだろ。」
魔力、
ああ、まだ君は、終われないんだね。
「ナア、セシィ。用事は、終わっただろ? じゃあ、オレと一緒に、ゼンブコワソウぜ?」
そうだね、
それも、悪くなかったかもしれないね。
でもごめんね、僕が今それを選ぶ合理的な理由も、感情もないよ。
「…………アー、」
「ヤッパ、コトバジャダメカー、」
「マ、オレタチは、コウドウデシメサナキャだよな?」
「ソレジャ、コンドコソ、オレが迎えに行くぜ」
『反抗・』
「悪いの、今度もお姫様は悪いドラゴンがいただいていくぞ、
「っ、だめ! レコウ、動かないで‼︎」
くそっ、間に合うか、直接の収納は弾かれる、なら『狭間の剣』!
『下剋の刻』
「ウワ、イッテテ、ようしゃねーなー、セシィ」
……弾かれた、実体を持たない空間の隙間が、
反抗、それ、ただの斥力じゃないね。
空間魔法、それに類するものか、
「う、動いちゃダメなのじゃ??」
レコウ、いいよ、ゆっくり下がって、
なるほど、これが、君の魔法か。
空気が重い、空間が反転した、
世界の法則が、変化した。
「ハハ。レコウサン。オレもコンカイはホンキだぜ!?」
『反抗の剣』/『狭間の剣』
何者にも止められないはずの剣同士が、打ち合う。
「オ? なんだコレ、ヘンナ感触だな?」
「ちっ、あくまで互いに干渉するだけ、弾く力の分そっちが有利か、」
駄目だ、打ち負ける。
単純な力じゃない、僕と同じだ。
受け止めてちゃ負ける、だけど避けると後ろにいるのは、
「ギハッ、イイぜ、レコウサン。そのままハシッてニゲても、」
「そういうの、僕は嫌いだよ、」
「エッ、ア、しょうがねーナー。説明してやるよ」
なんで? 軽口に返しただけなのに、まいっか。
レコウ、聞いててね、そして離れて、
「下刻の刻。コレは、オレたちのためのセカイよ!!」
空間が軋む、世界が牙を向く、
彼と、僕以外に。
「早くハシれば足がオれ、強くナグれば腕がマガル、デカいやつは立ってるだけでツブレちまうゼ、」
「その上、強い魔法も使った瞬間に暴発するね。なるほど、確かに僕たちだけの空間だ、」
エンゼ、あの子をさっさと完全に隠しておいて良かった、
反作用、返ってくる力、それが強く速く重いほど、加速度的に大きなる。
空間にあの斥力と同じものを散布してるのか? いやそれにしては薄く、均等で作為的すぎる。
なにか、もっと別のカラクリがあるな、
「な! セシィ、いいだろ!! オレと一緒に、」
「『整理』。うん、まあ、時間をかければいけるかな、」
構造自体は単純だ、そのせいで先手を許してしまったが。
僕の魔法は繊細なんだ、完璧に把握しないと発動できない。
メートちゃんの時にもそうだったが、僕こういうシンプルな力押しに弱いな、
まあ、あの子ほど、奪うのは難しそうじゃないけど。
「チッ、んだよ!!」
「おっと、それ、当たったら死ぬんじゃないの?」
反抗の剣、反抗の鎧、彼は常に物理現象では突破できない法則を身に纏っている。
僕ならギリギリで干渉できるが、打ち負かすのは不可能。
幼児と大人より、力の差があるな。正面から倒すのは不可能だろう。
上等だ、いつもと変わらないさ。
「オラァ!」
「相変わらず遅いね。もしかしてその鎧、身に付けてる間は素早く動けないんじゃないの?」
「あ? ……オレ、そんな遅いの、本気なんだけど……、」
「あー、うん、早いと自分で使った魔法にも引っちゃうからね、しょうがないよ、」
それにこの速度なら、防御のできない剣を当てたとしても、殺す前に止められるのかもね。
ああ、やりづらいな、
「しっかし、君は、動くたびにゆらゆらと、」
「どこみて、……ッテ、オレだってしたくてしてる訳じゃネーヨ!」
「知ってるよ! でもイラつくんだよ‼︎」
おら、そこ、足元!
押し返すことはできなくても、君もこの剣を壊せないんだ、
足の間に挟み込んでやるよ!
「ウオッ!? と、イデェ!?」
「うわぁ、すごい芸術的な転び方したね。とりあえずそのまろび出たのしまえや早く、」
「り、リフジンだろ、」
くそぅ、これ見よがしにひけらかしやがって、そこに突っ込んでやろうか!?
……やめよう、それで曲がりまかり間違って僕の魔法が壊されでもしたら、本格的に立ち直れない。
「うぐぅ、足のアイダ打った、」
「自分で挟んじゃった分は喰らうんだね。というかそこって……、」
レリア。
いや本当ごめん、転ばせようとしただけで、君の財宝狙ったわけじゃないんだ、
僕はあの鬼畜聖女とは違うんだ、
「イヤ、あんまイタくねえ。イタくねえからこそ、グスン、」
「…………なんで僕はその気持ちが少しだけわかっちゃうんだろうね??」
おかしいなー、僕にそれがあったことは無いはずなのにね。
でも、うん、ご愁傷さまです。
「さて、いつまで寝てんの、ほら足裏!」
「ウグー、チョットまって、」
「……ふむ、ダメか、」
隙間はないね、てっきり足元にはやってないと思ったけど。
この子がそんなところにまで斥力つけたら、転びまくるのが目に見えるし、
「クソ、ダセエ、もう油断しねえゾ!!」
「そう、万象の杖、『大光音』、」
「ギャー!? メガ、ミミガーー!?」
ちょっろ、
……しかし、効いてはいるが、すぐに復帰しちゃうな、
今は気絶させるつもりでやったのに、一定以上は自動で防御されるのか?
これ以上出力あげると下刻のなんちゃらに引っかかるし、そもそも今の僕の魔力じゃコレが限界だしな。
「そして、その間に攻撃する手段もないんだよね。もう一回、足元狙うしかないか?」
「や、ヤメロー! ク、だが、もうわかったゼ! 『反省!』」
なんじゃそりゃ、意味がわからないな、
それならもう一回、光を当ててあるよ。
「ハッ、聞かねーよ。『反論省略』、オマエが教えてくれたんだゼ? セシィ。オレに、同じ魔法は二度も
「『発光』」
「メガー?!」
うん、知ってる。
反論ねえ、あの一回で覚えられたんだ、君ってそんなに頭が良かったっけ。
でもやっぱバカでしょ、言ったでしょ、それはただの宴会芸。
少し別の魔法に変えるだけで、簡単に貫通するし、せめて一回目で防ぎなよ。
そもそも、光を防ぎたいならわざわざそんなん使うより、サングラスみたいなの作るとかのほうが、もっと一発で全部防げるのに、
「『高音』、『爆音』、『発音』、」
「イダダダー!? なんでそんなイロンナノ使えんだー!?!?」
「いいでしょ、杖のおかげだよ?」
まあこれがなくても、少し魔術の腕が良ければ簡単に方式変えて貫通されると思うよ、それ、
一発芸としても、微妙だね。
「ガァ、ツェー、」
「くすっ、そっちの方が面白いよ?」
「ウググ、ヤッパ、テヌイテ勝てるアイテじゃねーヨナ。クソッ、ちゃんと防げよ!!」
手元、なんだろうね、いつもの反抗の壁でも出すか?
あれ、予備動作がわかりやすいんだよね、直撃したらまずいけど。
しかし、常にビカビカしてるせいで読みづらい。ずっとそんなんだから、僕も結構疲れるな。ま、余裕を持って笑ってあげるけど、
君には、弱いところなんて、見せてあげないもん。
「『反撃!』」
手元、放たれるのは、空気の振動。
ある意味、僕にとって天敵な、
「音、これ僕が浴びせてあげた奴だね。なるほど、余剰分は君が溜め込んでたのか、」
『消音』っと、
あれは、喰らいたくないね、僕は耳がいいんだぞ? うるさいのは嫌いだ。
「…………チッ、『反撃!!』」
そして、一時的に音を消したせいで無防備になった僕に放たれるのは、
……手、銃の形にした? 何の意味が、
放たれるのは、鉄の匂いがしそうな真っ直ぐな衝撃。
なるほど、戦争中にたらふく溜め込んだらしい、昔のものまでお返しできるんだね、
で、それ、手を銃の形にした意味なによ??
「おっそ、自分で貼った空間に邪魔されてるじゃん。しかもわざわざ指と形状で狙いがバレバレ、何やってんの??」
「うぐがぅー、くそう、ボロクソに言われてあっさり避けられたのに。……オレは、」
なにそれ、何で安心してんの?
君も僕と同じタイプの変態なの? まったく、ただでさえ君は性癖が情報過多になってるっていうのに、
……やめろよ、やりづらいだろ、
僕は君を、最後にこ
「イヤ、飛び道具に頼るなんて男らしくネーよな!!」
「だから何でそれをいちいち口に出すのさ、」
「そっちこそな、」
いや、それは……、
うん? なんで僕は君とこんなに話しているんだろう。
黙って戦うのが、普通のはずだよね、
「……まあ、別に、いいや」
「お、じゃあもっとやろうゼ、」
「いや、どうだろね。それは君の頑張り次第だ『音光』」
「ナラ、『反抗』!」
お、今度はその壁で音と光を防いだね、
つまり、僕から視線切ったな。じゃあ、
「『整理』、『空間固定』。君がずっとその場にいてくれるから、やっと少し掌握できたよ」
本人を直接どうこうできないなら、周りのごと封じて閉じ込めてやればいい、
夢で知ったね、君との遊びでやるにはズルいかな?
「オー、そうか。オレの負けか?」
「どうだろうね、無理に出るのはオススメしないよ」
「そうか、まあイイゼ。なら次は、」
『叛逆の時間だゼ』




