57話
初めは、面白い奴だと思った。
でもすぐに、恐ろしい奴だと思った。
そして、またすぐに、
はじめて、エンゼの本当を見せた。
魔王の中身、自分の夢一つ叶えられない子供、無力なお飾り。
せめて、笑ってくれたらいいのに、おまえはただ観察してるだけだったな。
無機質で、真っ黒で、何もない、恐ろしいなにか。
なのに、おまえは優しかった。
エンゼの夢を、一緒に語ってくれた。
そんなもの、興味ないくせに。
おかしな奴、
エンゼよりずっと強いのに、エンゼよりずっと不自由。
エンゼよりずっとグチャグチャなのに、エンゼよりずっと空っぽ。
エンゼよりずっとふざけてるのに、エンゼよりずっとつまらなそう。
だから、エンゼは、おまえに、
「『エンゼは!!』」
虹の魔力が反転する。
なんでも叶う、エンゼだけの願い星。
おまえにも、くれてやる、
『 』
「…………うわ、本当に心臓くるとは思わなかった。僕これ死んだ??」
……………………。
いや、ペタペタ、うんまだ生きてるね。
なんだろ、体が熱いや、体温は変化してないと思うんだけど。
なにこれ、なにしたの? このあと僕、内側から爆発したりする。
んー、まあ、とりあえずいいか。
「……どう? 気は済んだかい?」
「……そっちこそ、」
綺麗な輝く魔法は、もう全てなくなった。
でも、まだゲームは終わりじゃない。
「いまなら、エンゼのこと、魔法がなくても殺せる」
「今なら、君の顔、目を瞑ったって見えるよ」
泣いてるのか、怒ってるのか、笑ってるのか、
やっと、もう、隠すものも無い。
「もう、エンゼに、ちからはない」
「どうかな?」
「ほんきでやった、おまえのすきにしろ」
本当に?
まだ、君には、一番強いコマが残ってるはずだけどね。
それを取られなきゃ、ゲームは終わらないよ。
「それでいいの?」
「せんたくしなんて、」
「抗えよ。結末を知ったからって途中でやめるなら、僕は君と遊びの一つもできないよ、」
じゃんけんで終わる遊びに、生まれた瞬間に終わってる世界に、意味なんてない。
だけど、だから、今を、生きているんだ。
「まだ、君の一番が残っている」
「…………、」
「そして僕はそれを取れない。千日手だね、」
この場合は、どうするんだっけ、
「……………………エンゼ、は。」
「なにもできない。戦争を終わらせることも、国を平和にすることも、魔王一人殺すことも、自分一人終わらせることも、なにも、」
「ひとりじゃ、なにも、」
「——助けて、セシィ。エンゼは、まだなにもできてない。おまえに、かえせるものもない。だから、」
僕より強いかもしれない敵?
いいじゃないか、僕と魔王の二人より強いか試してみよう。
あはは、なんて、楽しそうなんだね、?
うん、それに、可愛いエンゼの頼みなら、聞くしかないよ、
「僕として、ね。できることはしてあげよう」
同じ、家族で、仲間で、
友達の、お願いだから。
「対策、どうする、何か敵の能力は?」
「……ほんとに、たたかうきなの?」
「うん。よくよく考えたら、この城はどうでもいいけど、この国の中まで壊れたら、合理的じゃないからね」
もしかしたら支援して、
おかしな話だ、そんなことないだろ。
でも、気持ち的に、嫌な気分になるんだ。
ま、どうせ合理的に差がないなら、少しでも気が乗るほうがいいよね?
……ん? まあいいや、僕には人のこころなんて、わからないさー。
「あ、でもじゃあ報酬はもらっとくか」
「なんでも出す、エンゼか?」
「うん。ゼロ七で、いいよね。君にもうそれは必要ないさ」
素直で、楽な、本当の顔。
そっちのほうが、きっと強いよ。
「……せめて、一つよこせ」
「えー、」
「お揃いだ。おまえひとりだけに、背負わせてやるもんか、」
これは、前に掲げるものだけどね、
いいよ、そうしよっか。
少しくらい、僕も、偽物でない顔があったほうが、効果的だからね。
それに、楽、かも、ね。
「敵は、おそらく広範囲を高火力で攻撃できる」
「だろうね。それに長距離からかも」
「そのうえ、いどうもはやい、じゆう、つよい」
「どうしようもないね、」
あした、いつ来る、朝からの可能性もあるか。
相手は一日とかけずに戦場を終わらせた、きっとあまり我慢強くない性急な奴。
そのうえ、傲慢で一方的だとか、交渉で時間を稼ぐことすらできなさそうだね。
「とりあえず、せっかくこの部屋にいるんだ。この管理装置、これを使って防衛を試みよう」
「……すくなくとも、声はとどいた。どれほどこれで防げるか、わからない」
どれどれ、この装置はあくまで広げることが目的。
防衛能力はエンゼの魔法依存ってところか、
「エンゼ、もう魔力ない」
「うん。限界を超えて、出し切ってもらった。収納してある、これをぶち込もう」
いやー、感情的になったおかげで、いつもより出が良かったんじゃないの?
計画通りだ、へっへっへっ、
「おまえ……、」
「あはは、冗談だよ。今考えた、」
「それはそれで、エンゼを疲れさせてどうするつもりだったんだ」
どうだったんだろうね、合理的だったのか感情的だったのか。
ま、終わったことなんていいでしょ。どっちも、僕であることには変わりないわけだし。
……んん? んー、まあ便利だからいっか。
「疲れた? じゃあこれ食べて?」
「プリン! なのに、なんかおいしくなさそう??」
「味は変わってないよ。ただ栄養ぶち込みまくっただけで、」
魔力見えてるなら、やりすぎてドロドロに濁った七色の黒い塊に見えるかもね。
うん、エンゼ専用のプリンだよ、召し上がれ、
「んゅー、あじはおいしー、でもなんかいやー、」
「合理的じゃないね、気持ちはわかるよ。また、普通のも作ってあげるね」
「うん、おねがいだ」
「約束だね、」
さて、じゃあこの装置を借りて、僕も干渉するか。
この国全体を掌握する、そうすれば、
「……うわ、やっぱ魔族の首都だけあって、魔力持ち多いな。邪魔だ、」
……というか、この装置、なんか変だぞ?
この国の内部に、魔法を使えないようにしてある。
まるで、誰かの意思一つでこの国を自由にされたりできないように、
「やっぱ、そういうこと、エンゼ?」
「そりゃそう。きちんとした防壁すら、他の上のやつらの許可がないと使えない」
「それじゃ咄嗟の時に間に合わないだろうに!!」
くそっ、当てが外れた! なんて非効率的なんだ! やっぱ僕は合理的な方が好きだよもう!!
「ちっ、無理やり、いやどうせ掌握するのに邪魔ならちゃんと協力させた方がいいか!?」
「ひとまず、でるか。一度他のやつとも話をする」
「もう、集団運営は面倒臭いなー!!」
エンゼ、やっぱ君、王にならない?
最近も経験あるから、慣れてるよ??
「へや、でる。気をつけろよ、」
「え、何が?」
「まだ、この部屋はギリギリでエンゼの魔法が残ってるけど。外は、」
出た、うるさい。
そうだった、こいつら烏合の衆が、騒いでるんだった。
もー、今それしたって意味ないでしょうに、少しは落ち着けよ、
僕も、何を聞けばいいか
——魔王はどこだ!
——まさか逃げたんじゃ、
——くそ、だからあんなガキ、早く捕まえろ!
「……ごめん。さっきは怖くて、おまえに聞こえないようにしてた。最初からずっと、こんなのばっかだった、」
……そうか。
こいつらは、国の為に自ら死のうとした子供を、心の底から怖くてもそれでも最期まで逃げなかった王様を、
信じることすら、しないのか。
「やっぱ、どっか旅行にでも行っちゃおっか?」
「だから、いやだったの。とりあえず、城の中央。そこでみんなに演説する」
「んー、ま。魔王様がそうしたいなら、しょうがないね」
走るか、時間がないのに、
僕より小さな幼女、靴の問題がなくても、単純に歩幅が狭いな。
——あ、いたぞ!」
——見つけた、逃すな!!
ちっ、なんだお前ら、早いて、
そういうのはせめて、時間ギリギリになってからやれよ。
なんで既に、逃げ出すこと前提なんだよ、
「おらぁ! 頭をいい位置に下げるんだよ!! 魔王様の御前だぞ!!!」
「おまえ……、やっぱあれ、じこじゃなかったのか」
ふはは、いっそ全員気絶させてやれば、邪魔なんて入らないんだよ、
明日まで寝てろ!!
「っ、うるさいなぁ、まだまだ来てる、」
「……まあ、エンゼたちがこの部屋に走ってたことは、見られていたからな」
「なら尚更、逃げたわけじゃないってわかるだろ、馬鹿どもが、」
片っ端から気絶させてくか?
——な、誰か殺されて、
——くそっ、大人しくしろ!
って、おいなに構えてんだお前、
嘘だろ? というか常識的に考えて効果あるわけないだろ、普通だったら、
パァン、、 カンッ、
「あぶねっ! くそ、今のエンゼちゃんだったらこの豆鉄砲でも喰らいかねない!!」
「おまえ、いま、じゅう? おなじの、ねらって、うちおとした???」
「こっち、部屋!」
「に、にゃ〜??」
なに宇宙を理解したみたいな顔してるの。
しかし困った、魔力吸いすぎて今のエンゼちゃんただの幼女だ。
もっとプリン食わせて、強制的に回復させるか??
「あ、魔王様ー、なにしてんのー?」
っ、見つかった!?
くそ、そのクビ差し出せ……、って、
「あれ、戦場のアイドルちゃん、」
「なにそれ? でも悪くないね、」
情報提供してくれた子じゃん、なんでこんなところにいるの?
「魔王の巡回範囲に移動してもらった。そこなら、余計な手出しをされない」
「そ。ありがとねー、魔王様!」
なるほど、仕事が早いね。
一二、三四、他の子も全員いるのかな?
「それで、魔王様。どうするの?」
どうする、とは、
……っ、いや、そうだ。
この子達も、声とやらを聞いて、
「……ずいぶん、落ち着いてるな」
「はい。そりゃあたしたちはもちろん、魔王様がなんとかしてくれるって信じてますから」
「……そう、」
…………はは、
やっぱ、こっちの方が、よっぽど強かだよ。
味方のふりして、逃げるわけないよねって釘を刺しにきたの?
それとも、本当に、なんとかできるって信じてくれてるの?
どっちにしろ、身勝手だよ、
「僕たちはまず、中央に行って混乱を収めたい。君たちは、協力してくれるかい?」
「ええ、あたしたちにできる事なら、喜んで、」
「とびっきりの褒賞を約束しよう」
「もう、貰いましたよ、」
でも、嫌いじゃない。
やっぱり僕らは、こうでなくっちゃ、
「どうするんだ?」
「変装。そしてその基本は、認識をずらすところだよっと!!」
そのツノ取っちゃえ、
かわいー、だって、僕もそう思うよ。
さて、君たち、
この部屋には、予備の洋服はあるかい?
「…………なんだ、お兄さんじゃなかったの。そりゃあたしも、相手してもらえないわけだね」
「ふふ、どっちにしろ、あの状態で手を出す奴は男じゃないさ、」
広がる大きなスカート、化粧、そしてこの限界を超えた六倍の戦闘力。
ついでだ、エンゼを真似て即興で飾りツノも作ってやる!!
「教えてやろう。誰にも覚えられない普遍とは、即ち誰からも好意的な王道だということを!」
で、エンゼちゃんはこっちの地味な、
「魔王様、そこまでちっちゃかったんだ。それならいっそ、そのスカートの中に入れるんじゃない?」
「にゃ、いける、おちつく、」
「え? じゃあ僕がここまで頑張った意味は??」
……いや、まあ、視線誘導は、どっちにしろ必要だし⁇?
この戦闘力の塊を見るんだよぉ⁉︎⁉︎
……外に出る、みんなで。
別に、ついてくるところまでは求めてないのに、
——おい、なんで貴様らが勝手に出歩いてる!
——あたしたち、魔王様に伝言を頼まれましたので、
——なっ、魔王、どこだ!?
——あっちの方に、行きましたよ。
強か、心強いね、
やーい君たち兵士、詐称能力こどもいかー、
さて、とりあえず、目的地までは辿り着けそう。
そしたら、そこからは、君の仕事だ、
みんなの魔王様、僕のエンゼ。応援してるよ。




