53話
「例の目撃者が見つかった、行くぞ、」
「お、意外といけるもんだね、」
お子様はまだ眠るまだ暗い朝。
僕らに休みは、十分に取れた。
「どこにいるんですか、魔王様」
「今は客間に通しているらしい、相手は子供だしな、昨日みたいに萎縮させるわけにもいかない」
「多分魔王ちゃんより年上……。あと僕、普通に尋問された気がするけど」
「……女性兵だからな、」
一応僕もね?
まあ、公式の扱いでは、でもやっぱ僕べつに男だとは名乗ってないはず。
勘違いした向こうが悪いってね、
「この部屋、ふむふむ、これは……、」
「入るぞ、」
「はい、魔王様。」
何か、情報がわかればいいけどね。
どうだろ、そもそも、果たして本当のことを言ってくれるのか、
「おまえが、目撃者だな。えっと、名前は、」
そこにいたのは、魔族の女だった。
幼い、だけどそれなりに胸の大きい、
……少女と、僕は呼びたいね、
「あ、はーい! みんなの癒し、戦場のにく、
「名前、偽名ですね? まあいいです、どうぞ、」
うーん、強かで、なんか懐かしい子。
つい口を出しちゃったよ、でもダメ、
「あ、そっちのお兄さん! あとで」
「僕の方が年下に見えますよね? 実際そうですよ、先に話をどうぞ」
主導権は握らせるない。
僕らは、弱者だからこそ常に隙をうかがってるだよね。
「……なるほど、わかんにゃい……。ごほ、ごほん! あー、それで、おまえは何を見た。詳しい情報、特になぜおまえだけが生き残ったのか、聞かせてもらおうか」
さて魔王様、話を聞こう。
彼女は、何を求めているか。
少なくとも、国の為に尽くす満たされた民ではないって事は、
君が、一番わかってるだろ。
「別に、あたしだけじゃないですよ?」
「にっ、そうか。他は、そしてなぜ君が報告をした、」
「んー、あたしが一番、お姉さんだったから? あ、でもでも、他の子もいい子達なんで、ぜひ使ってあげてくださいね!」
「……だから、なんで僕にいうんだ、」
せめて自分を売り込めよ、いやそれで失敗したから同年代? 面倒見がいい、いや自分の顔を広げる為、どちらにせよ、
まあいいや、他にもね、ふむ。
中央の重要な戦線だったらしいからな、そんなもんか、
全員に話を聞くべきか? いやまずは、この子からだな。
「……兵は、残っていないのか?」
「さあ、でもあたしに聞きにきたって事は、そうなんじゃないですか?」
「……だろうな、」
……うーん、魔王ちゃん、交渉下手だからなー、
僕ならもっと手っ取り早く、いやまあそんなに得意ってわけでもどうだろ。
最悪、さっさと頭から抜き出すのも手だけど、流石にね。
魔王様の意向も考えてっと。
「わかりました。あなた達の身の保証は約束しましょう。賞与も出します、最初からその予定でした。ね、魔王様、」
「んゅ、あ、そうだな。もちろんそのつもりだ。おまえたちはみな我が大切な民、生き残ってきただけでも十分だ」
値切り交渉なんてもういい、どうせ金は出してくれるだろう魔王様。
僕達には時間がないんだ、こんな不毛な戦いやってられるか。
「ふーん、さすが魔王様ですね!」
「ああ。それで、おまえは、この現場を直接見ていたという事で間違いないな」
「はい! まあ、あたし達は後ろの方にいた子も多かったですけど、」
「何か情報、そうだな。例えば、なにか外見的特徴などは無かったか。ここには書かれていないのだが、」
まずはそこ、何故ない?
伝言ゲームで消えたか、信頼度が低かったから。
君は、どうやらかなり近くにいたらしいからね。それを教えてくれるだけ、少しは信頼してくれたかい?
「遠くだったんですけどー、まあなんか、子ども、に見えたんですよね」
「……ふむ。それで書かれなかったか。他には、なにかあるか?」
少年兵ね、僕みたいな例もあるからおかしくないか。
確かに、戦場では大人の成熟した魔族が絶対。こんな報告なら、省かれる可能性もあるか。
「えっとー、ああ! すっごくカッコ良さそうな男の人でしたよ!!」
「……そうか。まあ、参考にはなるか、」
なるかなあ?
……遠目からの情報だし、そんな事わかるのか、やっぱり、
「何か、攻撃の手段とかは、」
「こうバッてやったら、ズバッて感じで、凄かったですよ!!」
「……そうだ、全員の動きが悪かったって、」
「え? そうなんですか? あたしは、わかんなかったですね、」
「そうか。……ふむ、誰か言った、」
他のその場にいた子か?
この子は、あくまで一番に話した子であって、話自体は聞いているのか。
しかし、ならなんでこれは、僕らまで届いた?
これこそ、無くなってもおかしくないような情報なのに。
「他の、魔王が褒賞すべき相手は、何人いる。場所はわかるか、漏れがないようにしたい」
「えっとー、五人くらいですね。」
「くらい?」
「気づいたら、増えたり減ったりしますし。一緒に帰ってきたのは、多分それで全員です!」
「そうか、」
これも裏取り、そして一塊でいてくれてるのか、時間がないな。
この情報、覗けば一発なのに、……まあしょうがない。
「わかった、全員のところに行こう。魔王が聞いたのなら、わざわざ別のやつが行かなくて済むからな」
「……あ、おー! みんな、魔王様に会えたら、嬉しいと思いますよ!!」
「そうか。おまえもか?」
「はい、もちろんです」
正直、まだ聞き足りないこともあるが、他からまわってきた方が早いか。
情報、君は嘘はついていなかったけど、全てを語ってくれたわけじゃないね。
合理的なことなら推測もつくけど、感情的なことなら僕じゃだめだ。報奨を約束して、それでも言ってくれないなら、何か別の理由。
今、それを悠長に聞き出している時間は、どうだろう。
少なくとも、魔王、エンゼちゃんだけだったら、丸め込まれかねないし。
僕も、最近それで一回負けてるからね。
女の戦略か、なんで僕は使う方法より攻略方法を探ってるんだ、まったく。
「……ねえ、魔王様。魔王様は、あたし達のことって、どう思ってるんですか?」
「……大切な民にして、重要な兵だ」
「そう、ですか、」
……僕は何も言えない。
心痒いが、これはエンゼ自身に説得してもらうしかないか。
そもそも、僕なんかより誰かの心を動かすのは、きっと君の方が得意なはずだ。
「そうだ! 魔王様。これは、誰にも言ってないあたしだけ見たものなんですけど、」
「そうか、聞かせてくれ。重要な情報だ、」
「……はい。あたしの見間違えじゃなければ、」
本当、これは嘘じゃない、なにか、
「空に、もう一人、誰かいたんですよね、」
結局、彼女の信頼を本当に得る事はできなかったと思う。
僕に人の心なんてわからないから、確かな事は言えないけど。
「他の子。セレン、場所わかるか、」
「……はいー、」
エンゼちゃん? 僕のことなんでも探せる便利な探知機だと思ってない?
まあ、この建物内に少女なんてそうないから、適当に探しても見つかると思うけど。
ここにレアなの二人、そして集中、感度を上げて……、
「……ん? 騒ぎ、これは、」
「何だ? 残念なことに、ここは常にうるさい。あまり気にせず、」
「副君?」
だけじゃ、ないな。
四人、つまり僕以外の僕の班。
研修地はここじゃない、そもそも僕の班は実質的に解体されたはず、何故だ?
話を聞くか、さらに集中。
しかし、よく僕はこの声、覚えてたな。
なんでだろ、
「おまえの班か? 悪いけど、時間がない。それより、」
「反逆、密偵? 処刑、ふむふむ、」
ありゃりゃ、何やらかしたの。
入ったばかりの少年兵に、そんな国外から侵入者とかいるわけ、
いるわ、なら、しょうがないか。
「……ちっ、早く行く!」
「え?」
ああそうだ、そんな事より女の子を探すんだったね。
あそこの音量でかくて気を取られた、少し待ってね、すぐ見つけるから、
「さわぎ、人が集まるとこ、こっちか!」
「いや、あっちだよ。良かった、ひとまとめでいてくれたみたいだね。いちにーさんよん、全員か?」
「聞こえた、あそこだな、なにしてるの!」
「いや、あの、はんたい、」
もー、この子、方向音痴かー?
ほら、副君達いるところに着いちゃったよ、気まずいなー。
……ま。魔王様の行動に、逆らうわけにもいかないからねー、
さて、もー、君たち。
何してるの、しょうがないから、僕が話を聞いてあげようじゃないか。
そして、さっさと終わらす、まったく。
「……ちっ、くそ、なんでこんなことに、」
「…………よりにもよってアイツらと繋がっているだと。そんなふざけたことっ、」
「……そう、だね、」
「自分たちは、全てセレン班長の指示通りに動きました。そこに問題など、あるわけがありません、」
お、やってるねー。
しかし、なんでそんなに喧嘩腰なんだ、もっと従順にいけばいいのに。そういうのは、一人で十分なんだよ。
というか、あれは僕達みんなの手柄だって言ったよね、なんでそんな、
いや、これ僕に押し付けてない? まあ、それならそれでいいよ。賢いね。何せ僕には魔王様という後ろ盾が、
「ですので、なにか不備や疑われるようなことがありましたら、全て自分の責任です。処罰するなら、自分一人をどうぞご自由に」
「——って、馬鹿か!?」
……あ、やべ、つい口出しちゃった、
えっとー、そのー、あ軍紀的にね、
おかしいって、魔王様が言ってましたー、
「せし、おまえ……。ごほん、そうだな。これは、なんの騒ぎだ、」
いやー、ごめんね、エンゼちゃん。
あとでプリン作ってあげるから、
魔王が入室、威圧感マシマシ、
お、狼狽えてる、大人の軍人。なんか気分がいい気がするね。
控えおろー、この無駄にでかいツノが見えないかー、着脱式。
さて、君たち、いったいどんな因縁つけられてるの。
えっと、なになに、外部と連絡?
指揮部に取り入ってた? 報告の詐称?
命令違反に、こっそり機密を書き写してた?
ふむふむなるほど、その程度。
いや、あのー、僕は、関係ないですよー??




