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情報過多の荷物持ちさん、追放される  作者: エム・エタール⁂
魔族さん、追放される(魔国戦記編)
52/124

49話


「あ、おっぱい、」

「やべ、忘れてた! 入れ直す暇ない⁉︎」


 ……人来た、呼ばれた。


 なにも言われなかったな、僕とのことも、あれのことも。


「にゃ、わざわざ触れるやつはさいてー、」

「僕の方くらいは、何かあってもいいと思うんだけどね」


 読み取ったのは、恐れ、怯え、

 まあ、下手に敵対心でも持とうものなら、

 この垂れ流された夥しい魔力。


「さっきのは、徹夜明けだったからなんだね」

「うにゃ、それにおやすみだったから、」

「尋問の鑑賞はお休みにやることじゃないよ?」

「おまえ、おもしろかった。でも、いまかんがえるとこわい、」

「だろう? 僕もだよ、」


 さて、レリアなら最悪どこからでも結界に干渉できたけど、流石にこれは国土全体のうえに相手と奪い合ってるもんね。

 それなりの設備なところに、行かなきゃいけないらしい。


 案内の人は返した、嫌がってたし、目障りだし。

 エンゼが道わかってるし、そもそも僕もこんな魔力の流れを見たら嫌でもわかる。


「やっぱ、人がいるところでは気を張ってるの?」

「べつに、あれもエンゼだ。なれたもんだ、」

「そうだね、僕はそこまで言えないけど。でもまあ慣れちゃうよね」


 まあ仮面が一つだけなら、まだマシか?

 いや僕もある意味では一つだけなんだけどね、みんなに好かれる計算尽くの顔。

 最近は全力出すの嫌だから、ちょっと適当になったりしてるけど。


 ああ、アレンと一緒にいた時は、落ち着いたな。


「そういやおまえ、なんだ、」

「あなたのお世話係ですよ、プリンセス。夜のは断固否定するけど」

「なまえだ」

「そっちか、知らないの?」

「セレン、だったか? でもどうせ、」


 そうだね、偽名だよ? そもそも本名があるのかは置いといて、僕の中ではちゃんと絶対だし。

 うーん、どうしよっか。君に呼ばれると、呼ばれた人数が、片手で足りるか足りないか、


「じゃあ、二人きりの時は、セシィって呼んでいいよ。愛称ね、」

「わかった、いいな」

「でしょ?」


 別に、聞かれても勝手にこの子が呼んでるだけだからね、僕は知りませんって。

 ……そういや、僕このままここに残ることになったけど、班のみんなはどうなるのかな。

 とりあえず、しばらくは研修受けてると思うけど、どうだろ。


「ここだ、」

「うん、そこの部屋だね」

「わかるか。」

「そりゃね?」

「だよな」


 うーん、結界よりは複雑だ、あの装置マジで魔力束ねるくらいしか使い道なかったからね。

 でもこっちは個人用。というか、


「万能の魔力。これ君にしか使えないね、」

「おまえ、セシィでも無理か、」

「そりゃね、エンゼ。僕の魔力なんて、大したことないし」

「……そうか。にゃー?」


 まあこれを元に既にあるのに干渉するくらいは。

 そういや、メートもそんな手段とってたな、もしあの子がここにいたら、


 三日でここまで籠絡しながらたどり着いて、そのままこれ使って周辺諸国まとめて消し飛ばせるか。

 あの子、本当にこっち来てないんだよね? ちゃんと探した方がいいかも。


「……に、おわった。」

「疲れる?」

「すこし、でもべつににゃ、」

「そう。なら、」


 うーん、見た感じ、足に負担がかかってる? プルプルしてるけど、

 これ、靴のせいだろ、あと無駄に服とか重いせい。

 外に出るたびこれとか、めんどくさいねー。


「にゅ? なぜ手をもつ?」

「また転ばれたら面倒だし、」

「見られたらもっとめんどう、」

「いないよ、監視もないんでしょ?」

「……みゃ、いっか、」


 さて、元の部屋に、いやそれともこのままどっかに帰る?


「じしつー、ほとんどつかってない、ものなくて不便」

「実質、仕事部屋が家かー、」


 やっぱ普段からあそこで寝泊まりしてるんだ、

 え、しかもこのあとまだ仕事ある? うわぁ、もう夜になっちゃうよ、

 何で武力担当と知力担当を一人にしたの、いや違うか。


「エンゼがちからでもぎとった。じっさいあいつらよりゆーしゅー、」

「でも戦争は終わらない、」

「……いまが、でもまたふえてしまった。エンゼは、どうすべきだ、」

「そうねえ、僕もどれくらい付き合ってあげられるかは分からないし、」


 報酬も決めたから、さすがに途中で放り出すのは多分しないと思うけど。

 やっぱ、出来るだけ早く終わらせるしかないかなー。


「……ということでひとまずは、これを早く無くそうか。この積み上がったの、全部今日まで?」

「うにゃ、一応は。重要なのは上の方。後はなるべく早くで構わない」

「ところで、僕も見ていいの?」

「今さらだ。手伝え」


 お、仕事モード。

 これ、また徹夜しちゃうんじゃないの?

 うーんしょうがない、僕もやるか。といっても、流石にこんな経験は、


「……早い。前にもやったことあるのか?」

「いや? 僕はないよ、見ていただけ、」


 自分でも驚くぐらい、鬼のように効率的に出来るな。

 これは、夢の力! 君は、ずっとこんなことをしていたのか。

 ちょっと違う気もするけど、なんだろう、初めてやった気がしないね。


「エンゼより早い。それもすっごく。にゃー……、」

「あ、これとこれとこれ、この作戦でいい?」

「だめ、それは負ける」

「そう? まあ僕は兵の練度までは知り得ないからね」

「おまえが、つよすぎただけ、普通はあんなのできない、」


 いや、そんなことさせてないよ??

 ちゃんと三班も突撃させてるじゃん、こいつら大人の魔族だし、別にでしょ。


「……なんで、ここら辺までエンゼに聞かずにできるの」

「いやまあ、見ればわかるでしょ。こっちとこっちと合わせて見れば、」

「……もはや、うたがう気すらしない。ぜんぶ見せてくる、へんたいだにゃ、」

「露出だけはしてないよ!? いや、まあ、脱がされそうになって興奮したことはあったけど」

「ぴ〜〜、」


 失敬な、誰が露出狂だ。ただアレンに見てもらうために今も頑張ってるだけだ。

 それに、この新しい力を詰めたら、服が脱げなくなるのでは? ……下だけ、ほら、マニアックだし、

 くそう、やっぱり諸刃の技だ、いざ解除した時の落差がすごい。危険な力だ。


「……こっちは、なんで拒否した、」

「ああ、前線の嗜好品? だってこれ大人用じゃん。無駄だよ、経費削減効率的にってね、」

「エンゼもそうしたい、でもそういうわけにもいかない」

「ちっ、非効率だなあ。じゃあ限界まで安くそれっぽくしてやる」

「……みゃ、いっか。後で見せて」


 ふう、そろそろ片付きそう。

 いやあ、なんだか懐かしい気持ちがすごかったね、同時にちょっと気分が悪くなったきもするけど。

 まあ全部、僕には関係ないことだ。


「……ぜんぶおわった。こんなの初めてだ」

「ま、そりゃ、単純に考えて労力二倍だからね、二倍早く終わるよ、」


 そうじゃなかったら、合理的じゃないだろ? むしろもっと早くてもいいよ。


「…………もういいや、にゃ。ならまとめて、これはこっちで、」

「あ、やっといたよ」

「…………『飛んでけー』」


 お、虹の魔法、そんなことまでできるの?

 んー、まとめた封筒に印があって、それごとに場所を決めてる感じか。


「ひとくるの、いやだったから」

「へー、途中で誰かに取られたりしないの?」

「そしたら死ぬ」

「なるほど、」

「うそ、倒れる程度」


 これで事故りまくったせいで、一部の人に怖がられてるんじゃ。

 ま、君が楽ならいいや。


 ふむふむ、あの書類はこっちで、あれはこっちか。

 意図せず、この城の人物構造把握しちゃったな、興味ないから忘れるけど。


「うんギリギリ残業にはならなかったね、よくわかんないけど」

「へんなかんじだ、そわそわする」

「強迫症? わかるよ」


 強迫性、障害とは言いたくないね。

 だって僕らには必要だったんだから。


「それで、どうする? 夜ご飯とか、」

「に、なんかてきとうにそのへん……。いや、ん、食堂に行くか」

「お、行ってらっしゃーい、」

「……やっぱいいや、」


 僕は別に、昨日もご飯食べたしね。

 そういや、君もゴタゴタのせいで、よく考えたら今日のお昼ご飯、


「どうぞプリンセス、」

「あ! なんでいま?」

「いや、忘れてて」


 とはいえ、これだけで栄養価は、さすがにちょっといやいけなくもないけど。


「じゃあ。これ、」

「お、昨日も食べたね」


 保存食、内容はちょっと違うけど。

 軍の司令官自ら、前線の食糧事情を確認してるなんて流石だね。


「はやくてべんり、しんがた、」

「うん。昨日よりシンプルだ」


 まあ、これくらいなら食べ切れる、かな?

 軽い、硬い、小さい、うーん合理的。


「ふひょうだった、在庫を引き取った。大量に、全然減らない」

「えー? 悪くないのに、」


 もぐもぐ、いやがりごり。もしゃもしゃ、

 味がしない、万人受けするね、状態も確認しやすい、いいものだ。

 栄養価もある、喉の水分がとられるな、つまり空気中の湿気も回収できる、一石二鳥。本当に石みたい。

 消化もいい、余分なものがないから。吸収も早い、徹底的に効率的だから。


 耐久性、携帯性、素晴らしい。これが技術の粋だね、これをみんな食べれば争いは減るよ。争いの道具だけど、ガキガキ。


「せめて、なんか飲め、」

「おー? まあ確かにこの部屋、書類には悪いから乾燥してるね」

「……そうだ、これ」


 お。なんだ、黒い、コーヒー豆?

 いや若干違う気もするけど、そもそも元を僕は実際には知らないし。


 えっとー、この機材は、なんか見たことあるような、

 でも違うや、これは元々、この世界でできたものなのかもね、どうだろうねー。


「そっち、水ある。つかいかたわかるか?」

「見ればね? 変に飾りとかないし、」


 持ち主に似た機能美の塊。しかし、全然使った跡がないな、

 さては、一度揃えて飲んでみたけど、思ったより合わなくてやめちゃったパターンだな〜。

 しょうがない、仮にも食べ物を無駄にするわけにはいかないからね。


 『適度』に砕いて温度も『調節』、

 『さっと抽出して、余分な雑味を抑えて、苦味と酸味を適量に、匂い際立たせて、ついでに子供用に栄養もいじって』。

 あとは、砂糖とミルクを加えれば〜、


「はい完成!」

「いや、エンゼは別に、、あ、いいにおい。」

「僕の特別ブレンドだよ。口に合うはずさ」


 ……でも、よくよく考えたら、コーヒーってもっと砂糖どーん! ミルクどばーっ、だった気もする。

 もう、夢のせいだよ、君はいつもブラックで飲んでたらしいから。

 ま、これはよく似た別のものだからいいか。


「おいしい。なんだこれ、」

「なんだろうね、これ?」


 さて、じゃあ僕は片付けるか。

 いやゴミをまとめて『収納』すればいいんだけどね、便利だな僕。


「……おまえのぶんは?」

「いや? 僕もう食べ終わっちゃったし」


 水分は十分に摂取してるからね、

 空気中から、やはり便利だ、僕。


「…………やっぱり、明日は食堂行く。セシィも付き合え」

「んー? まあ君の望みとあれば、エンゼ様」


 でも、その場合は人がいるからこれは作れないね。


 ふぇ? そうなのぉ?? って可哀想。


 ……ま、まあ、後でね。二人っきりの時にね。エンゼ。

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