49話
「あ、おっぱい、」
「やべ、忘れてた! 入れ直す暇ない⁉︎」
……人来た、呼ばれた。
なにも言われなかったな、僕とのことも、あれのことも。
「にゃ、わざわざ触れるやつはさいてー、」
「僕の方くらいは、何かあってもいいと思うんだけどね」
読み取ったのは、恐れ、怯え、
まあ、下手に敵対心でも持とうものなら、
この垂れ流された夥しい魔力。
「さっきのは、徹夜明けだったからなんだね」
「うにゃ、それにおやすみだったから、」
「尋問の鑑賞はお休みにやることじゃないよ?」
「おまえ、おもしろかった。でも、いまかんがえるとこわい、」
「だろう? 僕もだよ、」
さて、レリアなら最悪どこからでも結界に干渉できたけど、流石にこれは国土全体のうえに相手と奪い合ってるもんね。
それなりの設備なところに、行かなきゃいけないらしい。
案内の人は返した、嫌がってたし、目障りだし。
エンゼが道わかってるし、そもそも僕もこんな魔力の流れを見たら嫌でもわかる。
「やっぱ、人がいるところでは気を張ってるの?」
「べつに、あれもエンゼだ。なれたもんだ、」
「そうだね、僕はそこまで言えないけど。でもまあ慣れちゃうよね」
まあ仮面が一つだけなら、まだマシか?
いや僕もある意味では一つだけなんだけどね、みんなに好かれる計算尽くの顔。
最近は全力出すの嫌だから、ちょっと適当になったりしてるけど。
ああ、アレンと一緒にいた時は、落ち着いたな。
「そういやおまえ、なんだ、」
「あなたのお世話係ですよ、プリンセス。夜のは断固否定するけど」
「なまえだ」
「そっちか、知らないの?」
「セレン、だったか? でもどうせ、」
そうだね、偽名だよ? そもそも本名があるのかは置いといて、僕の中ではちゃんと絶対だし。
うーん、どうしよっか。君に呼ばれると、呼ばれた人数が、片手で足りるか足りないか、
「じゃあ、二人きりの時は、セシィって呼んでいいよ。愛称ね、」
「わかった、いいな」
「でしょ?」
別に、聞かれても勝手にこの子が呼んでるだけだからね、僕は知りませんって。
……そういや、僕このままここに残ることになったけど、班のみんなはどうなるのかな。
とりあえず、しばらくは研修受けてると思うけど、どうだろ。
「ここだ、」
「うん、そこの部屋だね」
「わかるか。」
「そりゃね?」
「だよな」
うーん、結界よりは複雑だ、あの装置マジで魔力束ねるくらいしか使い道なかったからね。
でもこっちは個人用。というか、
「万能の魔力。これ君にしか使えないね、」
「おまえ、セシィでも無理か、」
「そりゃね、エンゼ。僕の魔力なんて、大したことないし」
「……そうか。にゃー?」
まあこれを元に既にあるのに干渉するくらいは。
そういや、メートもそんな手段とってたな、もしあの子がここにいたら、
三日でここまで籠絡しながらたどり着いて、そのままこれ使って周辺諸国まとめて消し飛ばせるか。
あの子、本当にこっち来てないんだよね? ちゃんと探した方がいいかも。
「……に、おわった。」
「疲れる?」
「すこし、でもべつににゃ、」
「そう。なら、」
うーん、見た感じ、足に負担がかかってる? プルプルしてるけど、
これ、靴のせいだろ、あと無駄に服とか重いせい。
外に出るたびこれとか、めんどくさいねー。
「にゅ? なぜ手をもつ?」
「また転ばれたら面倒だし、」
「見られたらもっとめんどう、」
「いないよ、監視もないんでしょ?」
「……みゃ、いっか、」
さて、元の部屋に、いやそれともこのままどっかに帰る?
「じしつー、ほとんどつかってない、ものなくて不便」
「実質、仕事部屋が家かー、」
やっぱ普段からあそこで寝泊まりしてるんだ、
え、しかもこのあとまだ仕事ある? うわぁ、もう夜になっちゃうよ、
何で武力担当と知力担当を一人にしたの、いや違うか。
「エンゼがちからでもぎとった。じっさいあいつらよりゆーしゅー、」
「でも戦争は終わらない、」
「……いまが、でもまたふえてしまった。エンゼは、どうすべきだ、」
「そうねえ、僕もどれくらい付き合ってあげられるかは分からないし、」
報酬も決めたから、さすがに途中で放り出すのは多分しないと思うけど。
やっぱ、出来るだけ早く終わらせるしかないかなー。
「……ということでひとまずは、これを早く無くそうか。この積み上がったの、全部今日まで?」
「うにゃ、一応は。重要なのは上の方。後はなるべく早くで構わない」
「ところで、僕も見ていいの?」
「今さらだ。手伝え」
お、仕事モード。
これ、また徹夜しちゃうんじゃないの?
うーんしょうがない、僕もやるか。といっても、流石にこんな経験は、
「……早い。前にもやったことあるのか?」
「いや? 僕はないよ、見ていただけ、」
自分でも驚くぐらい、鬼のように効率的に出来るな。
これは、夢の力! 君は、ずっとこんなことをしていたのか。
ちょっと違う気もするけど、なんだろう、初めてやった気がしないね。
「エンゼより早い。それもすっごく。にゃー……、」
「あ、これとこれとこれ、この作戦でいい?」
「だめ、それは負ける」
「そう? まあ僕は兵の練度までは知り得ないからね」
「おまえが、つよすぎただけ、普通はあんなのできない、」
いや、そんなことさせてないよ??
ちゃんと三班も突撃させてるじゃん、こいつら大人の魔族だし、別にでしょ。
「……なんで、ここら辺までエンゼに聞かずにできるの」
「いやまあ、見ればわかるでしょ。こっちとこっちと合わせて見れば、」
「……もはや、うたがう気すらしない。ぜんぶ見せてくる、へんたいだにゃ、」
「露出だけはしてないよ!? いや、まあ、脱がされそうになって興奮したことはあったけど」
「ぴ〜〜、」
失敬な、誰が露出狂だ。ただアレンに見てもらうために今も頑張ってるだけだ。
それに、この新しい力を詰めたら、服が脱げなくなるのでは? ……下だけ、ほら、マニアックだし、
くそう、やっぱり諸刃の技だ、いざ解除した時の落差がすごい。危険な力だ。
「……こっちは、なんで拒否した、」
「ああ、前線の嗜好品? だってこれ大人用じゃん。無駄だよ、経費削減効率的にってね、」
「エンゼもそうしたい、でもそういうわけにもいかない」
「ちっ、非効率だなあ。じゃあ限界まで安くそれっぽくしてやる」
「……みゃ、いっか。後で見せて」
ふう、そろそろ片付きそう。
いやあ、なんだか懐かしい気持ちがすごかったね、同時にちょっと気分が悪くなったきもするけど。
まあ全部、僕には関係ないことだ。
「……ぜんぶおわった。こんなの初めてだ」
「ま、そりゃ、単純に考えて労力二倍だからね、二倍早く終わるよ、」
そうじゃなかったら、合理的じゃないだろ? むしろもっと早くてもいいよ。
「…………もういいや、にゃ。ならまとめて、これはこっちで、」
「あ、やっといたよ」
「…………『飛んでけー』」
お、虹の魔法、そんなことまでできるの?
んー、まとめた封筒に印があって、それごとに場所を決めてる感じか。
「ひとくるの、いやだったから」
「へー、途中で誰かに取られたりしないの?」
「そしたら死ぬ」
「なるほど、」
「うそ、倒れる程度」
これで事故りまくったせいで、一部の人に怖がられてるんじゃ。
ま、君が楽ならいいや。
ふむふむ、あの書類はこっちで、あれはこっちか。
意図せず、この城の人物構造把握しちゃったな、興味ないから忘れるけど。
「うんギリギリ残業にはならなかったね、よくわかんないけど」
「へんなかんじだ、そわそわする」
「強迫症? わかるよ」
強迫性、障害とは言いたくないね。
だって僕らには必要だったんだから。
「それで、どうする? 夜ご飯とか、」
「に、なんかてきとうにそのへん……。いや、ん、食堂に行くか」
「お、行ってらっしゃーい、」
「……やっぱいいや、」
僕は別に、昨日もご飯食べたしね。
そういや、君もゴタゴタのせいで、よく考えたら今日のお昼ご飯、
「どうぞプリンセス、」
「あ! なんでいま?」
「いや、忘れてて」
とはいえ、これだけで栄養価は、さすがにちょっといやいけなくもないけど。
「じゃあ。これ、」
「お、昨日も食べたね」
保存食、内容はちょっと違うけど。
軍の司令官自ら、前線の食糧事情を確認してるなんて流石だね。
「はやくてべんり、しんがた、」
「うん。昨日よりシンプルだ」
まあ、これくらいなら食べ切れる、かな?
軽い、硬い、小さい、うーん合理的。
「ふひょうだった、在庫を引き取った。大量に、全然減らない」
「えー? 悪くないのに、」
もぐもぐ、いやがりごり。もしゃもしゃ、
味がしない、万人受けするね、状態も確認しやすい、いいものだ。
栄養価もある、喉の水分がとられるな、つまり空気中の湿気も回収できる、一石二鳥。本当に石みたい。
消化もいい、余分なものがないから。吸収も早い、徹底的に効率的だから。
耐久性、携帯性、素晴らしい。これが技術の粋だね、これをみんな食べれば争いは減るよ。争いの道具だけど、ガキガキ。
「せめて、なんか飲め、」
「おー? まあ確かにこの部屋、書類には悪いから乾燥してるね」
「……そうだ、これ」
お。なんだ、黒い、コーヒー豆?
いや若干違う気もするけど、そもそも元を僕は実際には知らないし。
えっとー、この機材は、なんか見たことあるような、
でも違うや、これは元々、この世界でできたものなのかもね、どうだろうねー。
「そっち、水ある。つかいかたわかるか?」
「見ればね? 変に飾りとかないし、」
持ち主に似た機能美の塊。しかし、全然使った跡がないな、
さては、一度揃えて飲んでみたけど、思ったより合わなくてやめちゃったパターンだな〜。
しょうがない、仮にも食べ物を無駄にするわけにはいかないからね。
『適度』に砕いて温度も『調節』、
『さっと抽出して、余分な雑味を抑えて、苦味と酸味を適量に、匂い際立たせて、ついでに子供用に栄養もいじって』。
あとは、砂糖とミルクを加えれば〜、
「はい完成!」
「いや、エンゼは別に、、あ、いいにおい。」
「僕の特別ブレンドだよ。口に合うはずさ」
……でも、よくよく考えたら、コーヒーってもっと砂糖どーん! ミルクどばーっ、だった気もする。
もう、夢のせいだよ、君はいつもブラックで飲んでたらしいから。
ま、これはよく似た別のものだからいいか。
「おいしい。なんだこれ、」
「なんだろうね、これ?」
さて、じゃあ僕は片付けるか。
いやゴミをまとめて『収納』すればいいんだけどね、便利だな僕。
「……おまえのぶんは?」
「いや? 僕もう食べ終わっちゃったし」
水分は十分に摂取してるからね、
空気中から、やはり便利だ、僕。
「…………やっぱり、明日は食堂行く。セシィも付き合え」
「んー? まあ君の望みとあれば、エンゼ様」
でも、その場合は人がいるからこれは作れないね。
ふぇ? そうなのぉ?? って可哀想。
……ま、まあ、後でね。二人っきりの時にね。エンゼ。




