48話
「にゃ!? あれ? いま??」
「はぁ、はぁ、確かに効果的だよチクショウ」
クソ、魔王、甘くみていた、的確に僕の弱点ついてきやがった。くそ〜、
「わかった、魔王、僕の負けだ。話をしようじゃないか。ドコマデミタ?」
「え、ぜんぜ……。にゃ! もう、ぜんぶみちゃっ「た場合は君を消さなきゃいけない「てないよ!?!?」
記憶をね、でもそんなには見られてないのかな、じゃあ許してやろう。
とでも言うと思ったか?
「勇者、」
「え、なにゃ!?」
「どう思う??」
「いや、え。にぇ⁇」
……あれ? そこすら見てないの??
ま、ならいっか、アレンに関係しないことなら、そんな本気で怒ることもないよ。
「…………交渉、あいて?」
「君と? なにを?」
「…………戦闘の回避、」
ふむ? なんだろ、
まあ、僕もアレンに関することは、真面目にやるよ。
「何故? 敵だろ?」
「エンゼは、無駄な消耗を望んでいない。互いに不可侵であれば問題ない」
「でももう勇者、いや人間は魔族と戦っているよ」
「それは、エンゼの国じゃない。別の、関係ない国」
「ま、それが伝わるといいね、」
人間と共存、つまりは自分が傷つけられるのを嫌ったってところか?
別にそれでも、魔王は一人くらいいればいいか。本当は僕はどうでもいいし。
「おまえは、何だ、」
「うーん、強いて言うなら民間人?」
人権ないけど。
ここでもね? いやあこの国は僕らのことなんて、民として認めてないか。
「っ、エンゼは。……そう、だけど」
「ま、いいよ。よくないけど、僕がどうこう言うことじゃない。この国なんてね、」
たとえ滅びようがなにしようが、僕には関係ない。
彼らだって、むしろ瓦礫と自然の中の方が、生きやすいかもね。
「なら、なぜあんなに殺した! おまえは、ただの殺戮者か、」
「いや? 殺してないよ、一人しか。君と一緒にしないでくれ」
むしろ、味方の爆撃から守ってあげたくらいだから、感謝されるかな?
敵を敵の味方から、味方の敵を敵から、そして僕にはどっちでもない、うわ変なの、まあいいや。
「…………は?」
「うん。僕も、僕が何だかわかんなくなってきたよ、」
「ころして、ない?」
「ああそっち? そうだよ、ちょうど良く、君と同じように攫ったんだ」
人を詰めるだけの空間に、気持ち悪いけど人命救助の為だ、我慢してくれ。
ところで、とりあえず脳まで止めてるけど、どのタイミングで解放すればいいんだろう。
あ、君も見るかい? この空間と繋げてみよう。
「これ、なんで、……何かに使う、売りでもするの?」
「あはは、ふざけるな。。子供の冗談でも、そんなこと言わないの」
「……そう、だな。エンゼも嫌だ。…………じゃあ、なんで? 何で、殺さなかったの?」
ふむ、君がそれを聞くのか?
君にとっては、ただの敵だろ?
「違うっ、エンゼは……。こんなの、敵じゃない、」
「まあ、確かに、戦闘力的に?」
「だから、いなくなってほしい。ここから、」
……そこ、から?
「うん。エンゼは、ずっとそうしたい。」
「敵限定?」
「……違う。わかってるよね、」
うん。なるほど、理解してきたか。
お互いにね、君は、
「おまえは、エンゼと同じか、」
「まあ、そうみたいだね、魔王様」
一応、表面上は、
こだわりが無いから、やらない理由より、やる理由がある方を選ぶよ。
「でも、魔王様なら、そんなの好きにできるんじゃ無いの?」
「……おまえは、王というものを勘違いしてるな」
そう? 僕が見てきたのはみんな身勝手だったからね。
女に唆されて無理やり王座を奪った挙句、武力と伝承だけで強引に世界統一しようとした奴とか。
今は、頼れる女王様に変わってるけどね。
「そんなヤバいやついるの?」
「いるんだよねー、しかも名目上は今も王だよ?」
「……エンゼは知らない、どこの話だ、」
おっと、余計なことを言ったね。
それで、君はどんな王なんだ?
「王じゃない、」
「え?」
「これは昔の名残。この国の上は議会制、エンゼはせいぜい武力担当の一人」
「うそー!」
紛らわし! え、じゃあここなに、民主主義? というには民の扱いが、じゃあ貴族制?
王のいない代わりに、複数の貴族がトップの国か。
権力分立、いやまあ王政よりは、マシなのかな??
「つまり、君の立ち位置は、何人かいる権力者の一人程度?」
「軍の作戦は通せる、だけど軍の編成はできない。戦闘行為の一部だけ、エンゼが好きにできるの」
「発言力、」
「頑張って大きく見せた、国の人気にもなった、それだけ、」
「うわぁ、」
この幼女、まじで幼女か。というか大きく見せるって物理的な話?
まあむしろ、戦闘装置として前線に送られないだけマシなのか、
「へへ、この戦争の管理装置動かせるのエンゼだけ。つまりエンゼがいなかったらこの国滅ぶ。だから多少の自由はある」
「……あれ? なんか、既視感が、」
違いがあるとすれば、まかり間違って追放でもすれば、マジでこの国一瞬で消えることくらいか。
「…………ん? そういや、そんな君を僕、拉致ってきちゃったような、」
「だいじょうぶ、一日くらいはもつ。昨日の暗くなってきたころにやったから、まだ明るいならもんだいない」
「ここ、いつも真っ白だけどね。ところで、君、途中で気絶してたけど……、」
さて、今は何時かなっと、
この世界、時間の概念が緩いけど、僕は夢のせいで自転単位で体内時計設定してるんだよね。
えっとー、僕がお城に来たのが、お昼くらいだからー、
「っ、はやくもどせ!!」
「ま、まあ、そんなに焦らなくても、」
「はやくしてぇーー!!!?」
あー、はいはい。お姫様?
うわ、正しくお姫様って感じで弄りづらいなプリンセス。
「あ、プリン食べる?」
「たべ! ないっ!!」
「あはは、じゃあ、」
多分、マジで問題になってると思うから、先行って説明してきてくれる?
「……エンゼの部屋、普段誰も来ないから、だいじょうぶ。たぶん、」
じゃ、僕も、一旦そこに出ようかな。
魔王って、意外と一人いなくなっても、何とかなるもんだね。
「監視してきたやつ、ぜんぶこわした、」
「なるほどね?」
うーん力技。魔王っぽい。
どこまでやったんだろうね、
「……まだ、そとあかるい。よかった、」
「焦らなくてもいいって言ったでしょ?」
「むぅーー!!」
しかし、ここ、誰の部屋だ?
いや、彼女の部屋だということはわかる。
ただ、内装が、実用的過ぎて遊びがない。
この部屋を見ても、思い浮かぶのは働き詰めの苦労人。
決して子供の部屋とは思わないだろう。
「……ソファ、何度も寝た後がある、」
「いがいとかいてき、近いと便利」
「ま、床よりはね?」
んー、書類の山。
人間の国より綺麗な気がするけど、いっそ魔法で一纏めにできないのかな?
「あれは、いいの?」
「いまはおやすみ、ひさしぶり、」
闇を感じる、闇幼女だ。
「おまえが事件おこしたから、おやすみになった」
「お、前線が一つ進んだから?」
「そのせいで急な仕事が増えたから、昨日はずっと起きててお昼から少しやすみ」
……うん。僕は謝らないよ?
あ、もしかして、それでさっきあんなに簡単に気絶したのかな?
……うん。やっぱごめーん。
「まあいい。それよりおまえ、エンゼに協力する?」
「……しない理由は、一応ないよ、」
僕が疲れるってこと以外、
する理由も、無いんだけどね、
「……なにが欲しい、」
「君って言ったら?」
「やる。全部終わった後で」
うん、じゃあ五、二でいいよ。最初から五が限界だと思ってたからね。
「はゃ?」
「うん、虚しいが、やはり力だ。諸刃だとしても、僕は使いこなしてみせるぞ!」
「…………ほんき?」
「七枚重ねだった君に、言われたくないねえ」
あはは、元々、僕の感情なんて無いんだ。
ゼロより一、ほんの少しでも利があるならそっちを選ぶのが、合理的だろ?
「…………おかしなやつ、」
「それ前にも言われた気がするから、やめてくれる?」
誰にだったかは、忘れたけど。
さてと、幼女の部屋、全然そんな気がしない。夢君、残念だったね? わからないけど。
「まだ、じかんあるな、」
「夕方まで、あれ動かしに行くまで?」
「うん。じゃあすこし、遊ぼうか、」
お、なに、急に子供っぽいじゃん。
仕事机、引き出しの中、ああそんなとこにおもちゃ入れてんの?
……なんか、入ってたっけな?
「はいこれ、おまえならどうする、」
「うん、こっちの兵を使って攻めるかなって、これ思いっきり仕事道具だろ」
確かにちょっとおもちゃっぽいけど!
だって地形がもろおんなじだもん。
あ、僕がいたとこ、めちゃくちゃになってる。
違うよ? 僕じゃなくてあの爆撃魔のせいだよ??
「まちがえた、これは軍事機密」
「誤用の確信犯やめてくれる? 伝わるのかなこれ、」
「こっち、かんたんな架空のやつ」
お、まるで、
なんだろ、
「コマ、なるほど。ちなみに倒したやつは使えるの?」
「ネクロマンサーは人道的にきんし、」
「だよね??」
チェスだな、これ。
でもルールは全然違うけど。
「こいつは遠距離範囲攻撃、こいつはそれを防げる。こいつは空を飛んで地形を無視して、こいつの周りでは撃ち落とされる。なるほどね、」
「はじめて? まあおぼえろ、」
ドヤ顔、かわいいな、絶対うまいっていう自信があるよ、接待してやろうかな。
ふむふむ、まあ簡易版らしく、そんなに長くはかからないよう簡略化されてるのか。
「天候要素とかあり?」
「あそびだよ??」
「だよねー、」
なら、なんとかなるか。
これがこうで、最大何手だ?
「わかった、まあいけそう」
「お、よし。おまえがさき、みせて、」
「え?」
勝っちゃうよ??
いや、僕、全力でじゃんけん負けてあげようとしたのに、
イレギュラーの無い決まった一本道なんて、慣れっこだ。
うーん、こうなったら、縛りプレイするか。
王さえ取られなきゃいいのに、あえて無駄に見せプレイしてやる。
「よ、」
「ん、」
「ほ、」
「お、」
「あー?」
「うん。」
コマ、進める。
あれ? エンゼちゃん? 変なやり方するね??
僕と同じ手を繰り返す、わざと最善手からずらしてる僕の手と。
は、これは、ミラー戦術ってやつか。
虹色の魔力、万能の対応、なるほどね、
それ、弱くない??
「……また、同じだ、」
「うん。おんなじ、」
「これ、決着つかないよ」
「うん。そうだね、」
お互い何回もコマを進める、もう本来だったらとっくに終わってるくらい。
なのに、まだ一つも取られてない、お互いに。
まあ、全く同じ進め方してるんだから、当然だけど。
でもさあ、やっぱそれ、物凄く弱いよ?
僕が、一つも取られないよう縛りプレイしてるからいいけど、本来だったらとっくに君の王は取られてるもん。
「なんで?」
「君のせいだろ??」
「おまえのせいだよ。」
コマが取れる位置に近づいても、それをとったら取り返されるからやらない。
弱い駒で強い駒を取れる時すら、なんで頑なにずっと真似してくるんだ?
「ひとつも取れてないじゃん」
「ひとりもしんでないよ」
うーん、千日手。これ簡易版ゲームなのに。
手を早くしても全然変わんないし、というかミラーだから、僕が早くするほど君もどんどん早くなるね。
なのに盤面がほとんど変わってない、これ知らない人が見たら、何やってるかわからないよ??
……あ、わかった。
もしかして、君も縛りプレイしてる?
もー、いいのに別に、
「……これ、ずっと終わんなかったらどうなるの?」
「……にゃん、どうなるんだろうね?」
両方が滅ぶんじゃ無い??
「にゃ、そのまえにべつの国がきて、一緒に戦うことになるかも」
「いや、近い方が先にボコボコにされるだけでしょ、」
「にゃーん。じゃあ、すごく強い敵が来て、協力しないと両方死んじゃう、」
「まさに人間から見た君達だね。終わったらまた再開するだけかもよ?」
「にゃー、じゃあ、自然のものすごい力で、そんなの全部まとめてなくなっちゃう」
「ありえはするけど、結局滅んでるよね?」
……ま、そうだね。
僕がこれの結末をつけるとしたら……、
外から、おっきな手で、全部綺麗にしまっちゃうとか?
ほら、もう、暗くなってきたよ。
誰か、人きてるね。
というか僕の扱いってどうなってるの?
隠れた方がいいかな、
「おまえは、しばらくエンゼのコマ使い、」
「軍の編成はできないんじゃ?」
「ただのわがまま。それに、最初から編成されてない。ごめんなさい」
「僕にはいいよ、僕らに言って、」
じゃ、このまま、ああ髪だけ戻しとくか、
「……がいけん採用ってことにしても、あり」
「いや無しでしょ、おませさんめ、」
「だいじょうぶ。エンゼのとし、高いことにしてる」
「逆魚読みかよ、難儀だね、」
「なにそれ?」
さあ、何で魚なんだろうね。
そもそも、逆の逆だった気もするし、
なんか、ざぱーっとしてるから?
ま、いっか、多分適当なんでしょう。
「なら、よろしくね、プリンセス」
「ん。……あ、プリン! さっきのちょ〜だい?」
「いやもう人来てるから、」
「にゃ〜〜〜、」
あはは、また後で作ってあげるよ、君ようのね。エンゼ様?




