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情報過多の荷物持ちさん、追放される  作者: エム・エタール⁂
荷物持ちさん、追放される(プロローグ)
5/124

5話


 お金が無い。

 あのトカゲちゃんマジで全額、自由に使い切りやがった。


「ほー、これが人間の甘味といやつか。良いものじゃのー」

「うぐぐ、最悪また王都に戻って、でもでかい取引は足がつくし、僕一人じゃクエストも受けられない」

「何難しい顔しとるんじゃ、ほれ、セシィも食え食え、」

「うぐぅ、う、甘い、お金の味がする、僕何人分だろう、胃もたれしそう」

「人間は胃もたれしたら、どんな炎を吐くのじゃろうな?」

「うぅ、火の車だ。もうアレンのためって名目なら、王城から直接かっぱらってきてもいいんじゃないかな、アレンに殆ど支援しない国なんて滅べばいいし」

「はー、人間は胃もたれすると強火思想を吐くんじゃなー」


 今まではこっそり裏路地とかで、ちまちま稼いでたから、即金で大量となると手段が。

 どんなにすごい財宝を手に入れても、買い取れる相手がいなくては意味がないのだ。


「人間はお宝一つとっても面倒臭いのー。我らなんて、お宝ひとつ見せ合えば、即座に奪い合いの殺し合いになるぞ」

「……絶対そっちの方が面倒臭い」

「ははは、まあ多分冗談じゃ、」


 いっそ原材料の金鉱石の方はあるわけだから、偽造してみるか?

 金そのものは本物だし、そんなに作らなければ何とか、最終手段だ。


「というか、何であんなに色んな服買ったの? 一着でいいんじゃん」

「えー、我は気に入った財宝はシリーズで揃えたい派なのじゃ」

「シリーズって、同じ人が作っただけでしょ」


 お陰で収納空間の中にキャビネットを作る羽目になった、透明の、形だけのだけど。


「まあそれにの、我のセシィの体格は同じくらいじゃからな、一着で二人分でお得じゃ」

「……まあ、それは確かに効率的かもしれないけど」

「お、それはいいのか、。と言ってもまあ、基本的に我のサイズに合わせたから、ちょっとセシィには大きいかもしれんがな」

「おいまてこらどこ見て言った」

「……骨?」

「ふぐぅ、確かに全身骨張ってるけどさー」


 確かに今着てる服も所々、肌との間に隙間が空いている。

 これはこれで需要があると夢で見た気もするが、アレンは一般的な趣向だった。緑シネ。


「まーほれほれ、いっぱい食って、さっさと肥えるのじゃー」

「まぐぅ、太らせた後に食べる気だ、この肉食動物ー」

「はっはっはっー、人間の言えたことではないなー」


 こうした平穏なひと時も、お金がなくちゃできないのだ。世知辛い。

 僕で得られたお金は、何に使われたんだろう。




「というわけで、やってきましたダンジョン」

「おー、唐突じゃったのー」


 というわけで、財宝求めていざ探索。

 このドラゴンちゃんにお金を預けると、三日と持たないことが判明したので、やっぱり自分の金、アレンの金は自分で稼がないと。


「とりあえず、アレンの食料は狼売ったお金でしばらく持ちそうだから、」

「売った時もだが、買う時も鬼のような買い叩きじゃったのー」

「おかげでこの町にいられなくなりそう」


 どうせアレンが来る前に去らないといけないから、長居はしないだろうし。


「まあ、そんなに悪い顔はしてなかったがの。子供二人でお使いだとでも、思われてたようじゃし」

「……確かに、大きい買い物はともかく、細かい買い物の時はこっちの方が効率的、かも?」

「我はオマケを貰った、美味かった」

「そして僕はもっと貰った、完全に妹扱いされてた、アレンが美味しく食べてくれてるといいけど」


 正直妹扱いには思うところもあったが、まあ実際? 年齢は負けてるし? しょうがない部分も?

 身長は同じくらいのはずなんだが、どこ見て決めやがったんだろう。


「余裕があるかじゃないか?」


 ……相変わらずこの子は、鋭いブロウを打ってくる。う、体が勝手に反応してしまいそう。


「あ、今のは態度の話であって、決して服の隙間の話ではないぞ?」

「……何でトドメ差しにきたの、うぇーん」


 単純に、なんか、悲しかったです、ばつ。




「それで、どうじゃ? お宝はありそうか? やっぱり我も、キラキラには目がないからな!」

「……カラスみたい」

「まあどっちも真っ黒じゃしな、そんなことより、財宝ちゃんはどこじゃ!?」

「……体調でも悪いの? まあいいか」


 ダンジョン内部で早速、『整理』。

 実はこれ、起動した一瞬だけ効果があるタイプの魔法で、広すぎるダンジョンだといちいち唱え直さないといけないんだけど、この程度の規模では問題ない。


「おお、何をやってるのかわからんけど、やはり凄そうじゃない、」

「……何か、使った瞬間に違和感とかないの?」

「違和感? なんじゃ?」


 ……この子、ちょっと強めの呪い魔法とか使われたら、一瞬で死にそうだな。

 魔力量は多いのに、やっぱり単純に、……単純だからか?


「それよりやっぱり最初は、最奥の目玉の財宝からいくか!」

「いや、それはダメだよ。だってそれはアレンが取るものだから」

「うぇー、そういうことになってしまうのか? じゃあ、我のみたいな隠し部屋の財宝は」

「んー、それも出来ればアレンにとって欲しいかな」

「んぐぐ、じゃあ、でっかい黄金とか埋まってないのかっ、我が抱けるぐらいの!?」

「あー、あるけど……、これとったら崩落しちゃうな」

「うむむむむ、じゃあ宝石じゃ! 我の元のお目々くらい大っきいの!!」

「流石にそのサイズとなると、もっと地下に潜らないとないかな。ちっちゃいのならいっぱいあるけど」

「あーーっ、意外とままならないものなのじゃー!?」


 別に、僕としてはこの小さめ宝石をたくさん集めれば良いだけだし、少量の金もいくつかあるし、問題ないのだけど。

 生粋のトレジャーハンターとしては、ちょっと物足りないのかもしれない。


「もういい! こうなったら!!」

「こうなったら?」

「次はもっと遠くのおっきいダンジョンにいくのじゃ、そこなら何でも取り放題なのじゃ!」

「あ、ここのは諦めるんだ。何というか潔いというか諦めが早いというか、」

「我はちっちゃい宝に興味はないのじゃ! もっとでっかい宝を集めるのじゃ! ……そうしないと、せっかくシリーズで集めてたのになんか一個だけ無くしたりして、萎えて売っちゃうから」

「あ、それであれ売ったんだ。確かに元のサイズ考えると、すぐ無くしそうなぐらい小さかったしね」


 ……ということは、もしかして他にも売っていい財宝があるのだろうか。

 次に売ることがあったら、基本的には自分でやらせよう。


「そうと決まったら次じゃ次! この町もあらかた見終わったしの!」

「気が早い……。まあ、確かに、この町の表ではこれ以上お金が手に入らなそうだしね」

「ほう? つまり裏があると?」

「まあこの規模の町なら多分。でも裏ルートは、伝手がないと買い叩かれやすいから」

「ああ、そっちか。てっきりもっとわかりやすい悪党集団! みたいのかと思ったのじゃが」

「悪党集団って、まあいるだろうけど。それは別に、」


 ……、悪党集団、盗難品ならともかく、現金なら持って行っても問題ないか? つまり歩く財布?


「……ありか?」

「え、なんか目が怖いんじゃけど、」

「害獣一匹、売る手間を考えれば、獣より効率が良い?」

「我が害獣扱いするならともかく、仮にも同族としてそれでいいのか? まあ、分からんでもないけど」

「それに治安が良くなればアレンも助かる? いやでも折角ならアレンが退治した方がいいか? なら、ほどほどに力を奪って死に体にして、すぐに壊滅させられるように」

「骨まで食い尽くす気じゃの。もうそこまで行くなら、一思いに丸呑みにしてやった方が有情そうじゃ」


 そうと決まったら、早速潰そう。

 町中で大規模な整理を使うと、変に混乱を招く可能性があるから使えないのだけど。まあ、大体アジトの目星は付くし、その周辺ならいいか。

 アジトを知ってて潰そうとしている人なら、邪魔してこないし。アジトを知ってて潰そうとしない奴は、まとめて潰れてしまえ。


「まあいいのじゃ。それなら早速、また例のトンネルワープで一っ飛びなのじゃ」

「ワープって、僕が言うならともかく、レコウにとっては文字通り普通に飛んでるだけなんじゃ? というか、そんなに一日に何回もやって、疲れないの?」

「何を言うんじゃ、あの程度の距離、我にとっては散歩にもならんわ!」

「そっちじゃなくて、変身魔法。この体積の変化だと、もはや空間魔法に片足つっこんでそうだけど」

「そうなのか?」

「……まあ、別にいいけど」


 多分ドラゴンは、人間と体の作りが違うんだろう、だとしたら何でこんなに弱いのかは分からないけど。


「あ、そうだ。それならもう直接一番大きなアジトに移動しちゃうか。流石にこんな町裏に、空間魔法使いはいないだろうし。それにいたとしても、僕以上はいない」

「お、そこはちゃんと自信があるんじゃな。まあ我としても、セシィみたいな人間が何人もいては敵わんし」

「そりゃそうだよ。だって僕は、この国の勇者であるアレンの荷物持ちなんだ。つまり少なくとも、この国で一番の空間魔法使いでないといけない」

「……そんな奴を荷物持ちにって、というか追い出されとるし」

「ぐすん、別にちょっと目立たないよう言われてただけだし、ぐずぐず、」

「あーーっ、そんな凄い魔法使いなら、追い出したことを今頃後悔してるかもなー!?」


 後悔なんて、僕はあの壁にぶち当たったことのないような、自由で自信に満ち溢れた顔が好きなんだ。その表情に救われたんだ。そんなことをさせるわけにはいかない。

 でもそうすると、つまり僕はもう帰れないわけで、


「しゅん、」

「今頃はこんな凄い魔術師を追い出したことで、大変なことになっとるかもなー!!」

「うぅ、そんなことさせないもん。僕が全ての苦難から守るもん、しゅもん」

「あーもー面倒臭いのー!? いいのか!? 勇者がそんなペット扱いでいいのかじゃ!?!?」

「いいもん、だって僕がアレンのペットになるから。……うぇへへ」

「うわぁ、じゃ、」


 ならせめて、ペットとして所有されたい。

 でもそうするには、やっぱり一部の装甲が足りてないのがネックなわけで、緑潰れろ。いやきっとどうせ将来的に潰れるはず。

 これをどうにかするのは空間魔法使いでも不可能だし、何とか成長性に期待するしか、


 いやまて、


「え、ちょっ、何で急にこっちを向くんじゃ、目が血走ってるんじゃけど」


 変身魔法。


「……必ず手に入れてやるぞ、レコウ!!」

「っ、ど、どうしてそうなったのじゃ〜!?!?」


 よし決めた、旅の最終目標。

 竜の秘術を手に入れる!!

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