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情報過多の荷物持ちさん、追放される  作者: エム・エタール⁂
魔族さん、追放される(魔国戦記編)
47/124

44話


 銃弾の飛び交う戦場。

 まだ機関銃が無いだけマシだけどね、


「そこ、ロンリー。勝手に行こうとすな、僕より弱い雑魚が、」

「……ちっ、」


 薄くて軽い土の壁、

 だけどこれは状態が保存された絶対の壁。

 僕の掌握した物体なら、まあ少なくとも魔術の干渉でも受けない限りは問題ない。


「おっと、傾斜防御、」


 ただこれ、衝撃までは消せないんだよね。

 迂闊に後ろにも流せないし、というかお前らちゃんと一直線になれ、なんのために壁張ってると思ってんだ、

 腕が痛い、僕一人なら完全に流せるのに。


「そこっ、早く走れ!!」

「ひーーっ!!」


 『ッ』、もー弱虫君、君いま当たってたよ?

 まあ、幸運にも、盾のおかげで相手が外したってことにしてあげる。

 銃弾直接消すのは流石に疲れるし、君の方を事前に掌握しといて良かったよ。


「あ、こら!」

「おらっ、死ねぇ!!」


 くそが、君が一番面倒臭いな短小君。

 勝手に撃つな盾から出るな、そしてその位置からは僕にも当たりかねないんだが??

 本当に、君だけ見捨ててやろうか、


 うわっ、しかもこの軌道、相手に当たっちゃうじゃん。

 ……『嫌』だよ、そんなの目の前で見るの。


「あれ?」

「おい班長の盾から勝手に出るな!!」


 さて、そろそろ敵の塹壕が見えてくるな。

 ここからが問題、どうやって綺麗に終わらせる。

 僕が全員撃ち殺す、それは簡単だ、


 それでいいなら、もっと簡単な方法なんていくらでもあるんだ。


「っ、ほら、爆弾だよ!!!」


 まずは、射撃を止めないと。

 これ以上近づいたら、流石に一方向の盾じゃどうしようもない。


 『風』


 こっそり魔法も使って、ぶん投げてやるのは、


「あれ、今のって、」

「有効活用でしょ?」


 不発弾、にしておいたものだ。

 君たちにこそ、よく見なれたものだろ? 僕の班、これ配備されてないんだよね。


 いいね、逃げてく。

 落ち着いた判断はできていない、僕達より経験は豊富かも知れないけど、所詮はお互い少年兵さ、


「入るよ。副君これ持って、あっちにずっと構えて、ゆっくり着いて来て」

「えっ、はい!」


 いいね、いい子だ。

 全員で、無理やり入る。

 『遅い』、弱虫君はまた当たったな、もう服の方だけ保護したら何とかならないかい?

 不自然な傷になるからやらないけど。


「じゃ、行ってくる。すぐ戻るよ、」

「え?」

「ああそれと君達、これは僕達みんなの戦果にしてあげるから、内緒でね」


 走る、後ろに他の人がいないと楽。

 微妙に曲がって射線の通らない塹壕を、ひたすら進む、


「なっ、かわし、」


 単発の弾丸なんて、当たるわけがない。

 これが、闇雲に乱射されたり散弾だったら、まあ生身じゃ厳しかったかもね、

 でも、その程度の腕前、ああエイム力っていうのかい? 君はやっぱり詳しいね。


「ヘルメット? いいね、僕達は貰えなかったよ、」


 でも、ちゃんと固定しとかないとダメじゃないか、角とか邪魔なのかな、

 ほら、紐が引っかかっちゃうよ?


「あ、それ構えかた変だね、君も教習受けれてないの?」


 前に構えた銃身を叩いてあげれば、後ろが顎に綺麗にストン。

 ごめんね、脳に悪いかもね、確実に気絶させるなかで、できる限り弱くやったから許して?


「おっと、待ち伏せ?」


 いや自分から飛び込んでおいてそれは変か。

 二人いるね、じゃあその間に、


「って、撃つな!!」


 もー、なにやってるんだ、僕以外への命中率は百点か? まとめて死にたいの??

 しゃがみ込んで、視線を下に向かせて、そのまま二人まとめて引っ張ってやる、

 きれいにゴッツンこ、なるべく威力は抑えたから大丈夫。魔族だし、これくらいは我慢してね?


「さて次、そんなにじっと見て、」


 少しだけ開けた場所だ、三人、隠れてるのが一人、

 それじゃあまとめて、『光音』、


「っ、」


 スタングレネード、もどき。

 ただこれ意識奪うほどの出力にすると、後遺症残っちゃうからね、あくまで抑えて一時的に、


「よっ、とっ、ほぅ、てい!」


 首叩いて気絶させるのって、難しいんだよね。

 頑張ればできるかもしれないけど、魔族だしまだ加減がわからない。


 とりあえず全員ひとまとめに投げて、芸術的な関節の編み物をしてっと。

 あ、ベルト借りるよ、後で解放してあげるから、無理すると友達の首が取れちゃうからね?


「お。ここ榴弾あるじゃん」


 いいこと考えた、

 よし、ちょっと集中してっと、


「おらー! 爆弾だぞー!!」


 塹壕の中に等間隔、正確に爆撃してやる。


 『風』 それからそっちの『風』も相殺、


 全て、等しく、爆破で消えてしまえ。




 そして、『収納』っと、




 ……流石に、全部吹き飛びましたは無理か? 今手持ちは、魔物の血でも撒いておこう。


 うん、指揮官だけは先に逃げてたね、一番警戒してたのに、周り守れよ。


 さて。反対側もやるか、ついでに拘束しといた子達なんかも爆破したことにしてしまおう。


「っ、は、セレン班長、これ、」


 ……お、来たか。

 残念、もう気絶させた子も含めて、全員細工した後だよ。

 それじゃあ、反対側もやろっか。


「うん。みな壊しってところかな?」

「————お、はは、」


 ……ん、ショック受けてる?

 流石に、この人数を一気にやる気は無かった? それとも、単純に僕がちょっと調子乗りすぎた?


 ……何でだろうね、命を奪い合ってるはずなのに、何故かゲーム感覚になっちゃうんだ。

 ……ゲーム? …………あー、なるほど、僕の夢、そういうことだったんだ。

 平和だね。羨ましいよ、ずっと。ごめんなさい。


「ん? ああ、逃げてるね、ならいっか、」


 前線が崩壊したか、残ってるのは僅かな人。


「ちっ、はあ、もう誰もいないのかよ、」

「…………いや、まだいる。どうする、班長」

「うわっ、真っ赤……、」


 どうするってそりゃ、手榴弾よーい、


 どかーん、下手に銃撃だと『細工』できないからね。


 さてと、これで完璧にこの戦線は抑えた。

 僕なら、この戦争をこのまま勝たせることもできるかなって、なんて、






 ——————『殲滅しろ、魔導爆撃』






 あっ、やば、遠く、聞こえちゃった、


 これ、なるほど、お前ら大型戦術兵器なのか、


 戦車より速く自由で、迫撃砲より広範囲、


 歩兵の勝敗なんて、一瞬で無に帰す制圧火力、


 それが、本物の魔族。



「伏せろ!‼︎」



 無理やり全員押し込んで、土の壁を構える。

 それで、奇跡的に生還できたことにしよう。

 おい、動くな、理解しろ、僕が我慢して寄せてやってんだぞ、


 ほら、もう、まだ見えないのか?

 アカイ、クソッ、






 ——————————————ッ、






 音、意図的に感度を下げる。

 まずい、空間の掌握が乱れそう、


 もう全員しまった後だからいいけど、まだ味方もいたはずだろ? 何でそんなに全力で攻撃できるんだ?


 アツイ、熱も音も光も振動も『遮断』、どれか一つでもミスしたら全員死ぬ。




 ……とはいえ、ドラゴンの本気とは、比べるまでもないな。



「————ッァ、な、ヒッ???!」


 話すな、普通だったら喉が焼けてる。


 動くな、本来だったらとっくに死んでる。


 恐るな、今だけは僕が守ってやる。


「大丈夫、落ち着いて、」

「……ぁ、」


 一番怖がってた子を、抱き寄せて目を閉じさせる。

 流石に、心理的ダメージまでは防げないんでね。


 誰だこれ、今気にしてる暇ない、

 それより、



 お前、遠くからチマチマと、そっちがその気なら、




 ————『殲滅しろ、魔導

「『喰らえ』」



 次、放とうとしやがったな、周到なこった。

 だが、やめろ、もういっぱいだ、


 銃、僕なら当てられる、射程さえ足りれば、


 『収納』、『放出』、銃弾六発分、火力を一つに圧縮してやる。

 限界を超えて弾け飛ぶ、それすら力に、

 銃身はただの道、『固定』してやれば問題ない。

 弾速の変化、回転量が変化、その都度修正、直線、むしろ簡単だ、

 空気抵抗、摩擦、弾頭は『状態保存』、準備完了。


 狙う、視線は合わないね、こっちを見てすらいないだろう。

 僕もだよ、



 散れ。




「……っ、な、今、狙ったのか!?」

「班長! 次が!!」

「ひ、ひいー!?」


 ……命中。


「いや、終わったよ」


 射程、弾速、威力、それらは同一。


 回避することも、障壁で抑えることもなく、弾け飛んだ。




 頭だけ、うーん狙い通り、

 レコウ、まだ君のようにはいかないね。






 …………戦況が進んだ、何メートル? 興味ないや。

 どうせ僕らは、変わらず穴の中だし、


「暗くなってきたね。……お、ご飯だ。よかったね、僕らの分も用意されてたよ」


 てっきり今日死ぬ扱いだから、

 というか少年兵なんて三日に一度でいいとか、言われかねないと思ってたからね。


「見えるんですか?」

「まだ君達にとっては明るいでしょ?」


 僕は元々、ほとんど視力に頼ってないし。


「いえ、そもそも、」

「ほら、行こうか? 早くしないと貰えないかもよ?」


 そんな事になったらこっそりスってやるけど、君もできる?


「いや、俺は、」

「冗談だよ、僕一人で十分さ、」


 さてご飯。

 レーションってやつ? よくわからないや。

 ……これは、豪勢、かな?


 僕の人生の中では確実に豪華だけど、流石にそう言ったら村の人の宴とかに悪いかな、


 あと食い逃げしたレストラン、本当に悪いと思ってます。

 お金入ったら、というか僕らって給料でるの??


「さてみんな、ってあれ? またバラバラになってるの?」


 君たち本当にそれ好きだね。

 副君は、待っててくれたけど、


「あ、あいつら!? くそっ、探してきます!」

「ああいいよ、場所はわかってるし。僕が持ってくよ、」


 君まで行ったら、余計面倒臭いだろ?

 それに、夜くらい自由にしてやってもね。

 ほら、先に君も食べてなよ。


「……こんなもん、か、」

「ほら、大丈夫? 食べきれそう?」


 僕はちょっと不安かも。

 いや、最近は容量上げられたから、問題ないはず。


「え、いや……。あ。班長、これ食べますか?」

「なんで君まで僕に積もうとするの??」


 やめろよ、むしろ僕があげたいくらいだよ。


「あれ??」

「うん?? 君も少食なの?」

「あ、いや、足りないくらいで、」


 あら、そう、

 ま、確かに性別差はあるか、そりゃそうだよね。


「って違います!? 渡そうとしないでくれ、ください!!」

「んー??」


 気が引ける? 僕は本当にいいのに。

 まあ、そこまで言うなら……、


 あ、バッタだ、魔族領の虫は強いな、こんなところまで、

 ヒョイっと、


「うん、いけそう。あげるよ、」

「え、いやなんで、」

「食べないの?」

「食べませんよ!?」


 ありゃ? 調べたけど毒とかないのに、

 んじゃしょうがない、猟犬スピリット、捕まえちゃったからにはね、

 一応焼く? 火使っていいのかな? ああ隊長は使ってるけど、ま面倒臭いか。


 もぐ、ん、ここのは栄養価が高いな。

 本当にいらなかったの? 僕は足りてたんだけど、


「……セレン班長、そこまで……。くっ、俺のいた場所なんて、所詮!!」


 え、なに、君、なんで泣きながらご飯食べてんの? やっぱ食いたかったの? もう一匹捕まえてこようか?


「いえ、もう、俺が絶対にそんなことさせません!!」


 え、なんで?


 あはは、君、ちょっと変な人だね、はは??

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