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情報過多の荷物持ちさん、追放される  作者: エム・エタール⁂
魔族さん、追放される(魔国戦記編)
43/124

40話


「おー、おっきい部屋じゃの。気を利かせて、一緒の部屋にしてくれたのかじゃ、」

「「じゃあ、こっちの床で」」

「……何で我が一番人間的なんじゃろうな」


 大きい部屋、でも子供部屋?

 ベットが三つ、三人兄弟??


「一つでも、いやダメなんかじゃ?」

「今さら僕は気にしないけどね、そもそもベットに慣れないし」

「オレは……。イヤ、マア、床の方が好きかも」

「……おおぅじゃ、」


 うわー、ドラゴンに変なものを見る目をされる。


「……しかし。せっかくのご厚意じゃ、一人一つ使うしかないかのー」

「うーん。まあ、二人で寝るにはそもそも小さいしね、」

「……ア、自然と二人で寝る感じなんスね」


 なんだよ、しょうがないだろ、君は男なんだから。

 僕はいいけど、レコウと一緒に寝させるわけにはいかないよ。


 そもそも、同じ部屋だって、

 そんな事を言ったら僕たちは本当に出て行ってしまうから、黙っておくけど。


「うー、また一人かー、寂しいのー、」

「大袈裟でしょ、同じ部屋なんだし」

「ウワー、そこまで、ウワー、」


 というか、さっきから君はなんなの?


「イヤ、オレは、決して二人の仲を邪魔する気は、」


 なにそれ?


 ……いや、なんだ夢? 百、花??

 ふーん、綺麗な花だね、この間に挟まったものは死ぬ? 恐ろしい花だね、


 でも、あれなら許されることもある?

 どういうこと?


「おー?? はっ、じゃ!!」


 ん、なに、レコウ、

 ちょっと、あんまりそっちに近づかないで、ただでさえ寝巻きで肌面積増えてるんだから。

 耳を近づけてなにやってるんだ? ゴニョゴニョ、


 ——あ、これは聞こえちゃうんじゃった。


 内緒話? 悪いね、できなくて、なるべく意識を向けないようにするから。


「いや、そのー、じゃのー。つまり違うんじゃシファ!!」

「エ?? …………マサカ、」

「おう! 正面から応援はできんが、別に我とセシィはそういうんじゃないんじゃ!!」

「マジで!?」


 ——ア、マア、オレは別にアイツのことなんて、タダの、

 ——もー。教えてやるが、ライバルはいるんじゃぞ、

 ——マ⁉︎ イヤ、ダカラ、オレは。


 なにやってるんだあの子達。

 もー、レコウまで楽しそうにして。

 …………むー、


「あー、レコウ? そうだ、一人で寝るのが寂しいなら、はいこれ」


 そうそう。最近完成したんだよね、プレゼント、

 事前にレコウの趣向に合わせて作った特注品だ。


 どうだシファ、君にはできない芸当だろう!


「こ、これ、我のクマさんの、」

「そう、ちっちゃい奴。金とかから糸取り出して、作ってみたんだ」


 思ったより、時間がかかってしまった。

 完全なコピーじゃなくて、金を素材にしつつ、ぬいぐるみの質感を目指してみたからね。

 人間状態で抱くなら、そっちの方がいいかなって、


「か、感激じゃーー!?!?」

「そう? なら、頑張った甲斐があったよ」


 ぎゅーっと抱きしめて、ふふ、安心しろ、

 ドラゴンの全力でも壊れないように、空間魔法全開で補強してある、

 なのに柔らかい、僕にしか作れない逸品だ、


「……うん。本当に、嬉しい。我の、一生の、一番の宝物にするのじゃ、」


 あはは、大袈裟だよ。

 ま、一番のお気に入りの模造品なら、実質一番なのかな? ならよかったね。




 ————……エ、コレ、本当に違うのカ⁇⁇








 村で一晩過ごした。

 普通の家で普通の子供のように普通に、

 この感覚は、慣れることはないんだろうな。


「……外、家の人、いるな」

「アーおん、そうだなー?」

「ふわ〜、おはよーしに行くのじゃ!」


 ……先、レコウ行ってきてもらえる?

 僕たちは、ほら、もうちょっとしたら行くから、


「ん? おう、しょうがないの〜」


 ははは、僕らの社交性、ドラゴン未満。

 あの子が高いからか、頼っても大丈夫って、安心感があるな。


「オー。オレはベツに、」

「いいから、任せときなよ。僕の、ドラゴン様に」

「アーー、ソダナーー、」


 ふふ、ほら、今もレコウが完璧なコミュニケーションをして、

 昨日は食べ過ぎたから朝食はいらないですなんてまで、交渉してくれてるはず、



「魔物が出たわー!!」

「きゃーー!? なのじゃーーっ!?」



 ……まあ、こういうこともあるさ。


「た、大変じゃ二人とも、魔物が出たぞ!」

「「かくほー??」」


 お、君も乗っかってきたね、流石にわかってるじゃないか。


「なんと、火を吹くトカゲの大群が来てるらしいのじゃ!」

「確保!!」

「アー、昨日のか、」


 くそ、下手に逃すべきじゃ無かったか?

 というか、本当にレコウの遠い遠い親戚とかじゃないんだよね??


「どうするじゃ!?」

「……レコウ。君には、凄く悪いと思うけど、」

「だから関係ないじゃって、」

「ヤルしかねーかー?」


 はあ、ま、とりあえず全部捕獲に留めておくか?

 心情的に、やっぱ思うことがあるし、

 ……ん? いや、合理的に、変な恨みとか買うべきじゃないしね。


 外、村人達はみんな避難の準備。

 魔族といえど、ここに居るのは戦えない人だけらしい。

 当然、僕たちも隠れるよう言われたけど、


「ふはは! この翼を見るのじゃ! 我こそは竜、あんなトカゲになんかに負けないのじゃ!!」


 それでも、説得には時間がかかった。

 やっぱり、この外見は効率的じゃないね。


「……と、もう結構近くまで来てるな、うかうかしてられないか」

「匂いがするのー、何匹くらいじゃ?」


 三十四ってところかな、隠れてる奴はいないよ、


「ウェー?? いや、トカゲは見えたけどよ、」


 反対から来る気まぐれもいない、本当にただの野生だね。

 群れのボスとか、……あー、あれか、


「お、一斉に火吹いてくる。これちょっと全部消すのは無理かな?」


 ま、収納すればいいけど。

 しかしこう見ると、前に収納したレコウの炎より…………、

 複雑なんだけど、あれ? レコウ、このトカゲよりも単調な炎吐いてなかった??


「お? じゃあ『

「オレの出番だな! 『反抗!』」


 いや、僕の出番なんだけど?

 なんで君たち勝手に前出るの??


 まあいいや、その魔法は、昨日も見たね、


「なんじゃあ!? 炎が全部跳ね返っていくぞ!!」

「へへ、凄いだろ!? これがオレの魔法だ」


 うーん、ただの斥力、それも一方向。

 出力だけはあるけど、単純だ。

 羽もこれで無理やり飛んでたね、あんなのを生やした背中に乗ったら、吹っ飛んじゃうよ。


「ハハ! これでトカゲどもも……、ア??」

「なんじゃ? ……あれ、いないの、」

「ジブンの火で燃え尽きちまったのか?」


 いや、僕が『収納』したよ、ついでに森が燃えないよう『保護』もね、

 説明も面倒臭いし、村の人たちにはそういうことにしといとこ。


「この子が全部やってくれましたー、シファ君です。みんな感謝はこの子にねー、」

「ア、ちょ、」


 よし、これで僕は目立たない。

 このまま村を出るまでこっそりしてよう、


「いや、エ、おーー?!」


 ふふ。君もアイドルになるんだよ!

 僕はその影で、ゆっくりしてるから、



 …………ん、なに、おばあちゃん? どうも、

 ありがとう?? いえいえ僕は何も。


 え、見てた? 何を?

 …………あーーー、まじで??


 それでみんな、避難はしてたけど怯えては

は無かったんだ、なるほどねー。


 あの子をよろしく? あー、はい、

 ……ちなみに僕の正体とかってー、うん。秘密にしていただけると、幸いです。




 ……やはり魔族の村、侮れないらしい。




 というわけで、朝食を貰ったらすぐ出発することになった。

 どうせならと、普通に収納して後で食べますって言ったら受け入れられた、

 そのかわり量がさらに倍以上になった、申し訳ない。


 うかうかしてると、お昼でさらにさらに増えてしまうね、早く行こうか。


「また来るのじゃー!!」

「オ、おーう! また来ます!!」

「……まあ、もしかしたら?」


 村のみんなに見送られる、慣れない。

 いやこれはきっと、僕以外でもそう慣れてる奴なんていないな。


 悪く、ないんだろうね、多分。


「……それで、どこ向かってるんだっけ、」


 歩きながら話す、あの羽はやっぱちょっと危ないと思う。


「ああ、どこじゃったっけの」


 そもそも、僕たちがここに来たのは、


「オイオイ、しっかりしろよ? マオー様に会いに来たんだろ?」


 そうだっけ、いやまあそうなんだけど。

 よくよく考えたら、そうホイホイと王様って奴に会えるのかな?


 最近、一応は一国の王を床にめり込ませた記憶があるけど。


「ソウダナー、じゃあそのために、まずは何かスゲーことをしなきゃなー、」


 なにそれ?

 大道芸とか??

 僕はいくつかできる、かな???


「イヤイヤ、そりゃもちろん、武勲に決まってんだろ?」


 ……なんだ、やっぱ魔族はそういう感じなんか?

 こう、暗黒闘技場とかやっぱあるんか?


「アア?? だから、おあつらえ向きのが今やってんだろ? ……まさか、本当に知らねえのか?」


 く、君に侮られるのは、なんかやだな。

 待て、少し考える。


 これ、つまり、昨日言ってたことだろ。

 この村に若者がいないわけ、そして今言った武勲とやら、

 今の、魔族の現状を考えるに……、これはつまり、


 人間との、


「戦争だよね、」

「オウ、魔族同士で戦争なんて、アホだよナー」


 ……ふーんなるほどそっかー、

 いやまあ、実質正解だよね??!


「はえ! そんな事してるのかじゃ!?」

「オ、レコウさんは知らないのか?」


 ウンソーダヨー、だからレコウのためにも詳しく説明してあげてねー。


「イヤー、なんでも、マオー様が率いる国が、別の魔王の国と戦っててな。思想の不一致とかなんとか、馬鹿だよなー」


 はえー、魔族同士で潰し合いなんて、

 人間なら好都合って思うけど、僕の場合はただただ面倒臭いかも。


「……思想? なんでそんな事になってるじゃ?」

「いや、なんでもよ。マオー様は悪くないんだけど、相手の魔王が変なこと言い出してな。向こうから、急に襲って来たらしい」


 ふーん、邪悪な魔王もあったもんだ、

 いや、魔王としては合ってるのか?

 どっちにしろ、僕には関係ないや、


「変なこと? じゃ、」

「オウ。マジで頭おかしいんだけどよー」


 なんだろうね、気になるよ。

 君にそこまで言わせるなんて、僕ちょっと興味が湧いて来たかも、




「ナンカ、人間との共存を目指すなんて言ってんだよ。おかしな奴だよなー」




 ……………………ああ、

 それは、確かにおかしな奴だ、

 だって、そうなったら、

 そうだ、アレンは、何を倒せば、




「だからオレ、マオー様のために戦って、相手の魔王も、人間も、世界も、全部全部ぶっ壊すんだ」




「オマエと一緒にナ、セシィ!!」






 屈託のない笑顔、本当に楽しそうに話すね、プレゼントを待ち切れない子供のようだ。

 ……ああ、君がそんなに嬉しそうなら、それも、悪くないかもね、




 なんて、









「ア、でも、その前に、勇者って奴も殺さなきゃな。なあセシィ、オマエは見たことあるか?」















 ……………………。


















「ふっふっふっー、すまんな、シファ。我はちょっと、我慢強くないのじゃ、」


「それに、その頭のおかしな魔王とやらに興味が湧いたぞ、」


「悪いが、先にそっちを見て来たいのじゃ、」


「それじゃあ、我は先に行っておるぞ。セシィも行く。じゃあの、」








 僕は、







「ア。待ってくれよ、オレとセシィならすぐにでもマオー様の元までいけるからよ。ちょっとくらい、」


「はっはっはっー、なにを言っておる」









 僕は、













「矮小な魔族如きが、この我に指図をするな。貴様のではない、我の友だ」














 僕は、














「『レコウサン?』」

「『頭が高いぞ、貴様』」









 僕は、









 …………………………。





 …………………………僕は、





 …………………………僕は、






 …………………………僕は、




 …………………………僕は、








 …………………………僕は、




 …………………………僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は、





 …………………………アレを、
















 こ


「着いたぞセシィ。ここが、面白い魔王とやらのいる国じゃ。……観光するのじゃ!!」

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