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情報過多の荷物持ちさん、追放される  作者: エム・エタール⁂
聖女さん、追放される (神聖学園編)
35/124

32話


 敵の動きは緩慢だ。

 激昂して、単調で、殺意が乗って、呆れるほどにストレート。


 理知的で、楽しそうに、僕に夢を語った彼はもういない。


 そりゃそうだ、死んではないとはいえ、彼の友人、つまり僕にまとわりついてきてた人たちも、もういないのだから、


「おりゃー、とどめじゃー!」

「ぐっ、……くはは、くそ、楽しかったのになあ、」


 最後の一人も、今倒れた。

 ちなみにメガネは、魔物を倒した後で疲れて座っている。


 まあ、魔法阻害されてる状態でこれなら、大したものだ。

 ……もともと、君だけ予定外で、阻害が薄かった疑惑があるけど。


「くそっ!!」

「単調、それに疲れてきてるね」


 いくら鎧が強くても、中身は結局ただの人。

 倒せなくたって、このまま疲れさせて動けなくさせることもできる。


 時間がかかってしまうのが難点だが。


「はあ、はあ、。ぐっ、そこ!!」

「ダメだよ、そんな適当に振っちゃ」


 彼の振った剣を、あえて大きく受け流す。

 ブレた体幹を戻すためにも、余計な力を使って、疲労が溜まる。

 そんなことを、相手に気取らせずに、もう何度繰り返したか。


 もう君は、自分でも自覚がないうちに限界を超えて動いてる。

 とっくにヘトヘトだろう。


「まだっ!!」

「うん。やっぱこの剣、軽いね」


 見た目だけは重厚感あるけど、

 おかげで、余計に自分の消耗がわからないんだね。

 それに受け流しやすくて助かる。


 力と速さはあるんだけどね、重さがない。

 切る為の剣。当たったら一発で死ぬけど、なんかい流しても僕は全然疲れない。

 悪いね、体力にだけは自信があるんだ。


「はぁ、はぁ、ぐっ、がっ!?」

「おっと、大丈夫?」


 ついに剣を杖にして立ち上がり、剣が鋭すぎて床突き刺さってこけた。

 あ、頭がいい位置、


 …………、


「埋まった、息してる?」

「…………!」

「あ、まだ頑張ってはいるんだ、うん、」


 そろそろ、本当に、終わらせてあげたい。

 もう、さっさと魔法使いたいのに、レリアは何してるんだ。

 いくら何でも時間がかかりすぎ……、




 ……そうだ、どのくらいたった。


 聖女の間は、そんなに離れてないんだろ、とっくに辿りついているはず、


 なのに、結界は弱まらないどころか、

 ……これ、さっきより、強さが増してる?

 なんで、気づかなかったんだ……?


「っ、レコウ! 僕たちもレリアの方に、」

「おうなの、」


「待てよ、」


 っ、誰だ、剣士君!?

 まだ君立ち上がるの? 満身創痍でしょ!?


「おおう、確実にやったと思ったんじゃけどな、」

「ははは、事前にあれに気付け薬仕込まれててよ、どんだけ酷使する気だってんだ、抜け目のねえ奴だぜ、」


 宰相君!? いや自分にも仕込んどけよ、なに優雅に一撃で寝てんだよ。


「それに、こっちもな。あーあ、楽しかったのになぁー」


 『我が身を包め』


 ああ、それ、護衛君の。

 廉価版だもんね、他にもあったんだ。

 鎧だけバージョン? 小さく纏まるもんだね。


「ま、王子もやられちまったし、しょうがねえか」


 んで、最後に、偽勇者の剣を拾うと、

 フル装備じゃん、笑える。


「……ここは任せて、先に行けじゃ、」

「前にも、同じ状況で言ったよね」


 今回は、ちゃんと敵だ、かっこつくよ。


「行けよ。お前とも、ちゃんと決着付けたかったんだがな」

「決着って、どう考えても僕の勝ちだったでしょ」

「違いねえ」


 ははは、じゃあ、

 さようなら。






 ……………………、


 私は、久しぶりに来た、慣れしたしんだ廊下を走る。


「ここね。相変わらず、無駄に豪勢だわ」


 この先に、あの女。私の敵がいる。

 でも、もう、そんなこと、済んだ話よ。


 私の敵とはこの国の敵だった。

 この国の敵で、未来の王の、私の夫の敵。


 そんなもの、全てなくなった。すっきりした、いい気分。

 ああ、あなたには、感謝したいぐらいだわ。


 おかげで私は、大切な友達で、私だけの王子様に出会えた。

 性別? 些細な話よ。


 だから、あなたは、ワタクシの敵じゃない。


 私の大事な人の敵。


 つまり、私の女としての、最大の敵よ?


「……いや、それは、向こうにいる本物の勇者なのかしら。それともレコウちゃん。あの子も、なかなか侮れないわね」


 ふふふ、私には、敵がいっぱいいるの、

 だから、あなた程度に、かまってあげる暇はないのよ。


 さて、それじゃあ、終わらせましょうか。




 ……………………。


 あ、きた。

 ひさしぶりだね、会いたかったよ?

 あなたとは、一度ちゃんとお話してみたかったんだ。


「さて、それじゃあ、終わらせましょうか」

「あれー、なんでー?」


 敵意を構えた。

 杖とかは、使わないんだね、お友達には渡してたのに。


 うーん、楽しそうだったなー、あの杖。

 わたしも、あなたとお友達になってたら、使えたのかな?


「……そんなこと、ありえないわよ」

「そんなこと、ないのになー?」


 結界に干渉される、まーいーかー、

 どれくらいかかるのかな、その間にもっと、お話しましょう?


「えへへ、メートはね、あなたと仲良くなることもできたんだよ?」

「そう。なら何でこうなったのかしら。妾の座で欲でも湧いた? 別に、私はそのくらい許したのに、」

「うーん、そんなの、どうでもいいんだけどなー、」


 ケイン君とは仲良くなった、

 でもそれだけ。


 結婚しようなんて、思ってないよ〜、


「あなた。じゃあ何のために、こんなこと、」

「なんのため? むー、そうだねー、」


 ケイン君は、この結界を広げて、みんなを守りたかったんだよね。


 じゃあ、わたしは、その逆かな〜、


「これ、ぶつりしょーへき、かたくもなれるんだよね〜。あなたがやったんでしょー?」

「逆? ええ、そうよ。これを広げるなんて、あなたには不可能でしょう?」

「どうだろうねー。でもでも、縮めることはできるよ??」


 あ、でも、ケイン君はこの国を綺麗にしたかったんだっけ。

 だったら同じかなー。それなら、わたしは騙してないよねー、


 友達に、嘘はつきたくないもんね。


「縮める? そんなことして、いったい何に、」

「うん。この国をねー、」



 グチャグチャに纏めて、ポイってするの。



 物も、人も、思い出も、

 全部全部壊れて一つになるの。



 そしたらきっと、綺麗だよ?



「…………そんな強度は、ないわよ」

「かもねー。でも、外側だけでも、きっと楽しいよ〜??」


 うーん。聖女様は、こういうことになるかもしれないって考えなかったのかなー、


 あ、そうだ。


「ねえ、一緒にやらない! きっとスッキリするよ。あなたも、この国なんて嫌いでしょ??」

「……遠慮するわ。お前と一緒に集団自殺なんて、冗談じゃない、」

「んー、ここら辺までは潰れないだろうって、自分で言ったのに。もーー、」


 残念。

 まあいいや、いまさらお友達になっても、困っちゃうからね。


「ねえねえ、何でメートは、あなたとお友達になれなかったと思う?」

「さあ、あなたの性格が最悪だからじゃないかしら」

「うん。そうだよー。メートは、あなたと仲良くすることもできたけど、いやだったからやめちゃったんだー、」


 ざんねんだよねー、それもきっと、楽しかったのに。


 あなたと友達になって、最後には、


「せいじょさま! メートはね、あなたに感謝したいことがあるの」

「聖女ねえ、皮肉かしら?」

「あったり〜。メートと家族のみんなはね、あなたのおかげで自由になれたんだー」


 うん、なつかしいなー。

 忘れられるわけないよ。


「そう、なら、こんなこと今すぐ辞めてほしいのだけど、

「それでね、メートの家族はね、みんなお前のせいで死んだんだ〜」

「…………はあ、」


 おどろいてる? サプライズせいこう!


 ん、あー、悩んでるね、

 必死で、心当たりを探してるんだ、


 良かった、じゃなかったら、さっさと殺しちゃうところだった。

 メートのおんじんに、そんなことするわけにはいかないのに。


「逆恨みじゃ、ないわよねえ?」

「どうだろ? かもねー。でもいいよ、どうせこの国、ぜんぶが嫌いだから」


 えへへ、クラスのみんなとも仲良くなったなー、


 あっちも貴族、こっちも貴族、


 みんなみんなしね、


「たのしかったなー、はじめてのがっくえ〜ん。でももうおしまーい。ざっんね〜ん」

「……あの馬鹿殿下そそのかしたのも、やっぱあなたなのね」

「んぅ? そんなことしてないよ? ただメートは話を聞いただけ。話を聞いて、ちょっと欲しい答えをあげただけ」


 みんな色んな悩みがあったねー。


 メートは、そのすべてに、綺麗な答えを返したよー。


 あの程度、浅すぎて悩む価値もない。


 そーいえば、セレンちゃんは、みんなのわざと残しといた不安定なの、解決しちゃったねー。

 おかげで、よてーよりはやくなっちゃった、ありがとー、


「メートはね、みんなから好かれるんだ」

「私は嫌いよ、気持ち悪いわ」

「でしょ? わたしはね。でもメートは、いくらでもみんなに好かれて、いくらでも警戒されなくて、いくらでもほしい言葉をあげられる。それがメートだから」


 王城のみんなも、少し話しただけで簡単に従ってくれた、王様でさえも!!


 それに、あの子でさえも、


 でも、ダメだっだ。

 結局、完全には心を開いてくれなかった、こんなの初めて、

 あの子はきっと、わたしと同じ、


 ああ、早く会いたいな。

 会って、本物のメートと、お話しましょう?


「おあいにくさま、あなたにあの子はもったいないわ? 私の、王子様よ」

「ふーん、」

「あの子にもう会うことなく、ここで今終わらせてあげる」

「そーう。」


 やっぱりあなた、嫌いだなあー。


 あの時、死んだらよかったのに、


 あー、でもでもそしたらー、ありがとうって言えなかったー。


 じゃあ、よかったねー、

 あれも、セレンくんのおかげだっけー、さすがだね〜〜。


「じゃあ、返してもらうわよ、全てを」

「ん、返せるものがまだ残ってて、よかったね、」


 結界、掌握されたかー。


 ま、こんなものかなー、まあまあ話せたしね。


 それに、あっちもそろそろ、終わりそうかな?


「悪いわね、色々溜まってるから、加減できそうにないわぁ」

「…………」


 光が集まる。


 いたそうだね、まあそれくらい。


 死んじゃうかな? やだなー、


 んーーーー、ま、いっかあ。


「ねえ、聖女様。なんであなたがせいじょなの?」

「それは、私がこの国一番の魔術師だからよ」


 ふふふ、かわいいね。


「うーそ♪ だってあなたー、」




 わたしの、魔法にすら抗えなかったくせに、〜。






         『拒絶』

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