32話
敵の動きは緩慢だ。
激昂して、単調で、殺意が乗って、呆れるほどにストレート。
理知的で、楽しそうに、僕に夢を語った彼はもういない。
そりゃそうだ、死んではないとはいえ、彼の友人、つまり僕にまとわりついてきてた人たちも、もういないのだから、
「おりゃー、とどめじゃー!」
「ぐっ、……くはは、くそ、楽しかったのになあ、」
最後の一人も、今倒れた。
ちなみにメガネは、魔物を倒した後で疲れて座っている。
まあ、魔法阻害されてる状態でこれなら、大したものだ。
……もともと、君だけ予定外で、阻害が薄かった疑惑があるけど。
「くそっ!!」
「単調、それに疲れてきてるね」
いくら鎧が強くても、中身は結局ただの人。
倒せなくたって、このまま疲れさせて動けなくさせることもできる。
時間がかかってしまうのが難点だが。
「はあ、はあ、。ぐっ、そこ!!」
「ダメだよ、そんな適当に振っちゃ」
彼の振った剣を、あえて大きく受け流す。
ブレた体幹を戻すためにも、余計な力を使って、疲労が溜まる。
そんなことを、相手に気取らせずに、もう何度繰り返したか。
もう君は、自分でも自覚がないうちに限界を超えて動いてる。
とっくにヘトヘトだろう。
「まだっ!!」
「うん。やっぱこの剣、軽いね」
見た目だけは重厚感あるけど、
おかげで、余計に自分の消耗がわからないんだね。
それに受け流しやすくて助かる。
力と速さはあるんだけどね、重さがない。
切る為の剣。当たったら一発で死ぬけど、なんかい流しても僕は全然疲れない。
悪いね、体力にだけは自信があるんだ。
「はぁ、はぁ、ぐっ、がっ!?」
「おっと、大丈夫?」
ついに剣を杖にして立ち上がり、剣が鋭すぎて床突き刺さってこけた。
あ、頭がいい位置、
…………、
「埋まった、息してる?」
「…………!」
「あ、まだ頑張ってはいるんだ、うん、」
そろそろ、本当に、終わらせてあげたい。
もう、さっさと魔法使いたいのに、レリアは何してるんだ。
いくら何でも時間がかかりすぎ……、
……そうだ、どのくらいたった。
聖女の間は、そんなに離れてないんだろ、とっくに辿りついているはず、
なのに、結界は弱まらないどころか、
……これ、さっきより、強さが増してる?
なんで、気づかなかったんだ……?
「っ、レコウ! 僕たちもレリアの方に、」
「おうなの、」
「待てよ、」
っ、誰だ、剣士君!?
まだ君立ち上がるの? 満身創痍でしょ!?
「おおう、確実にやったと思ったんじゃけどな、」
「ははは、事前にあれに気付け薬仕込まれててよ、どんだけ酷使する気だってんだ、抜け目のねえ奴だぜ、」
宰相君!? いや自分にも仕込んどけよ、なに優雅に一撃で寝てんだよ。
「それに、こっちもな。あーあ、楽しかったのになぁー」
『我が身を包め』
ああ、それ、護衛君の。
廉価版だもんね、他にもあったんだ。
鎧だけバージョン? 小さく纏まるもんだね。
「ま、王子もやられちまったし、しょうがねえか」
んで、最後に、偽勇者の剣を拾うと、
フル装備じゃん、笑える。
「……ここは任せて、先に行けじゃ、」
「前にも、同じ状況で言ったよね」
今回は、ちゃんと敵だ、かっこつくよ。
「行けよ。お前とも、ちゃんと決着付けたかったんだがな」
「決着って、どう考えても僕の勝ちだったでしょ」
「違いねえ」
ははは、じゃあ、
さようなら。
……………………、
私は、久しぶりに来た、慣れしたしんだ廊下を走る。
「ここね。相変わらず、無駄に豪勢だわ」
この先に、あの女。私の敵がいる。
でも、もう、そんなこと、済んだ話よ。
私の敵とはこの国の敵だった。
この国の敵で、未来の王の、私の夫の敵。
そんなもの、全てなくなった。すっきりした、いい気分。
ああ、あなたには、感謝したいぐらいだわ。
おかげで私は、大切な友達で、私だけの王子様に出会えた。
性別? 些細な話よ。
だから、あなたは、ワタクシの敵じゃない。
私の大事な人の敵。
つまり、私の女としての、最大の敵よ?
「……いや、それは、向こうにいる本物の勇者なのかしら。それともレコウちゃん。あの子も、なかなか侮れないわね」
ふふふ、私には、敵がいっぱいいるの、
だから、あなた程度に、かまってあげる暇はないのよ。
さて、それじゃあ、終わらせましょうか。
……………………。
あ、きた。
ひさしぶりだね、会いたかったよ?
あなたとは、一度ちゃんとお話してみたかったんだ。
「さて、それじゃあ、終わらせましょうか」
「あれー、なんでー?」
敵意を構えた。
杖とかは、使わないんだね、お友達には渡してたのに。
うーん、楽しそうだったなー、あの杖。
わたしも、あなたとお友達になってたら、使えたのかな?
「……そんなこと、ありえないわよ」
「そんなこと、ないのになー?」
結界に干渉される、まーいーかー、
どれくらいかかるのかな、その間にもっと、お話しましょう?
「えへへ、メートはね、あなたと仲良くなることもできたんだよ?」
「そう。なら何でこうなったのかしら。妾の座で欲でも湧いた? 別に、私はそのくらい許したのに、」
「うーん、そんなの、どうでもいいんだけどなー、」
ケイン君とは仲良くなった、
でもそれだけ。
結婚しようなんて、思ってないよ〜、
「あなた。じゃあ何のために、こんなこと、」
「なんのため? むー、そうだねー、」
ケイン君は、この結界を広げて、みんなを守りたかったんだよね。
じゃあ、わたしは、その逆かな〜、
「これ、ぶつりしょーへき、かたくもなれるんだよね〜。あなたがやったんでしょー?」
「逆? ええ、そうよ。これを広げるなんて、あなたには不可能でしょう?」
「どうだろうねー。でもでも、縮めることはできるよ??」
あ、でも、ケイン君はこの国を綺麗にしたかったんだっけ。
だったら同じかなー。それなら、わたしは騙してないよねー、
友達に、嘘はつきたくないもんね。
「縮める? そんなことして、いったい何に、」
「うん。この国をねー、」
グチャグチャに纏めて、ポイってするの。
物も、人も、思い出も、
全部全部壊れて一つになるの。
そしたらきっと、綺麗だよ?
「…………そんな強度は、ないわよ」
「かもねー。でも、外側だけでも、きっと楽しいよ〜??」
うーん。聖女様は、こういうことになるかもしれないって考えなかったのかなー、
あ、そうだ。
「ねえ、一緒にやらない! きっとスッキリするよ。あなたも、この国なんて嫌いでしょ??」
「……遠慮するわ。お前と一緒に集団自殺なんて、冗談じゃない、」
「んー、ここら辺までは潰れないだろうって、自分で言ったのに。もーー、」
残念。
まあいいや、いまさらお友達になっても、困っちゃうからね。
「ねえねえ、何でメートは、あなたとお友達になれなかったと思う?」
「さあ、あなたの性格が最悪だからじゃないかしら」
「うん。そうだよー。メートは、あなたと仲良くすることもできたけど、いやだったからやめちゃったんだー、」
ざんねんだよねー、それもきっと、楽しかったのに。
あなたと友達になって、最後には、
「せいじょさま! メートはね、あなたに感謝したいことがあるの」
「聖女ねえ、皮肉かしら?」
「あったり〜。メートと家族のみんなはね、あなたのおかげで自由になれたんだー」
うん、なつかしいなー。
忘れられるわけないよ。
「そう、なら、こんなこと今すぐ辞めてほしいのだけど、
「それでね、メートの家族はね、みんなお前のせいで死んだんだ〜」
「…………はあ、」
おどろいてる? サプライズせいこう!
ん、あー、悩んでるね、
必死で、心当たりを探してるんだ、
良かった、じゃなかったら、さっさと殺しちゃうところだった。
メートのおんじんに、そんなことするわけにはいかないのに。
「逆恨みじゃ、ないわよねえ?」
「どうだろ? かもねー。でもいいよ、どうせこの国、ぜんぶが嫌いだから」
えへへ、クラスのみんなとも仲良くなったなー、
あっちも貴族、こっちも貴族、
みんなみんなしね、
「たのしかったなー、はじめてのがっくえ〜ん。でももうおしまーい。ざっんね〜ん」
「……あの馬鹿殿下そそのかしたのも、やっぱあなたなのね」
「んぅ? そんなことしてないよ? ただメートは話を聞いただけ。話を聞いて、ちょっと欲しい答えをあげただけ」
みんな色んな悩みがあったねー。
メートは、そのすべてに、綺麗な答えを返したよー。
あの程度、浅すぎて悩む価値もない。
そーいえば、セレンちゃんは、みんなのわざと残しといた不安定なの、解決しちゃったねー。
おかげで、よてーよりはやくなっちゃった、ありがとー、
「メートはね、みんなから好かれるんだ」
「私は嫌いよ、気持ち悪いわ」
「でしょ? わたしはね。でもメートは、いくらでもみんなに好かれて、いくらでも警戒されなくて、いくらでもほしい言葉をあげられる。それがメートだから」
王城のみんなも、少し話しただけで簡単に従ってくれた、王様でさえも!!
それに、あの子でさえも、
でも、ダメだっだ。
結局、完全には心を開いてくれなかった、こんなの初めて、
あの子はきっと、わたしと同じ、
ああ、早く会いたいな。
会って、本物のメートと、お話しましょう?
「おあいにくさま、あなたにあの子はもったいないわ? 私の、王子様よ」
「ふーん、」
「あの子にもう会うことなく、ここで今終わらせてあげる」
「そーう。」
やっぱりあなた、嫌いだなあー。
あの時、死んだらよかったのに、
あー、でもでもそしたらー、ありがとうって言えなかったー。
じゃあ、よかったねー、
あれも、セレンくんのおかげだっけー、さすがだね〜〜。
「じゃあ、返してもらうわよ、全てを」
「ん、返せるものがまだ残ってて、よかったね、」
結界、掌握されたかー。
ま、こんなものかなー、まあまあ話せたしね。
それに、あっちもそろそろ、終わりそうかな?
「悪いわね、色々溜まってるから、加減できそうにないわぁ」
「…………」
光が集まる。
いたそうだね、まあそれくらい。
死んじゃうかな? やだなー、
んーーーー、ま、いっかあ。
「ねえ、聖女様。なんであなたがせいじょなの?」
「それは、私がこの国一番の魔術師だからよ」
ふふふ、かわいいね。
「うーそ♪ だってあなたー、」
わたしの、魔法にすら抗えなかったくせに、〜。
『拒絶』




