31話
パーティ、それは、
戦闘の隠語だよちくしょう!!
「……やっぱり、魔法は阻害されるわね。ここは聖女の間、つまり結界の中心に近いから、私といえども簡単には主導権をとれなそう」
「レリアでも?」
「あそこ、国の中心だけあって無駄にでかいし、邪魔に出力だけはあるのよ、」
とはいえ、こっちも直接そこにいければ、聖女の実力で勝てると。
つまり、この馬鹿五人を交わして、先にレリアを聖女の間とやらに送った方が効率的か?
「それを、させてくれるならね、」
「三対五、なるほど、」
いやぶっちゃけ、こいつらなら僕かレコウのどっちか一人でも何とかなる気がするけど。
ああ、でも、王子が持ってる偽勇者の力。
あれはまずいか。前に戦ったとはいえ、ここはさらに結界がきつい。
全力でいかないと、厳しいか、
「レコウ! レリア送って!! 先そっち解除して、」
一対五、時間稼ぎに徹せれば、
王子以外は問題ない、隙を見て収納して、
「……そうか、残念だ」
王子が、鎧に包まれる。
「すまないな。これも、我が王の為だ。『我が身を超えよ、我が身を包め!』」
護衛も、鎧に包まれる。
は? 何それ、魔導具!?
確かに昨日から持ってたな、廉価版偽勇者ってところか? 偽の廉価、雑魚だと言いたいが、あれも認識阻害ついてやがる、
「はい。申し訳ありませんが、もう止められないのです。『来なさい』」
宰相君は、魔物!? 通路塞がれたよ。
あれ、ワカメがやってたんじゃなかったのか??
なになに? 忘形見です? いや死んではないけど。
本来なら共にレリアを戻すために協力していた? じゃあ邪魔するなよ手のひらドリルめ。
あ、しかも、全員に隠蔽かかったままだ、前より強く。
潜伏魔法、こっちはお前がやってたのか。
「まあなんだ。せっかくだ、楽しんでけよ」
剣士君は、そのままだね、
いつも通り、防具すらつけてない。
剣を振り、そして全身がさらに膨れ上がる、
え、筋肉ってそうなるの!!
……しかし、接近高速戦闘タイプが多い、僕の苦手な奴らじゃん。
何これ、誰か僕のこと対策してる??
ああ、結界も強くなってきた、どういう仕組み? 連絡でもしたの??
「まずいわね、質に数も揃えられたわ」
「うん。なんか、面倒臭いね」
最悪、レコウに魔法を使ってもらうのも視野か。
くそ、結界邪魔、せめて偽勇者に集中させてくれ、
「おい、待て、」
ん、ああ、メガネ君。
正直、結界が邪魔すぎて、君はあんまり関係なさそうで、
懐に手を入れて、なに、君も秘密兵器持ってきたの?
「何か、勘違いしてないか?」
うん? カード? そのピッて持ち方、世界共通なの。
……いや、あれはー、手紙?
今朝も見た、招待状、
「わたしも、招待された側だ。こいつらが何をする気なのは知らんが、ともかく」
これで四対四だ。あいつらも、卑怯ではないらしいぞ。
……ふーん。
いや多分、裏にメートいるからどっちにしろ卑怯だけどね?
「いや、彼女には、完全に平和的に解決すると約束してある。騙してしまって悪いとは思うが、このまま何も知らずに聖女でいさせてやってくれ」
「ふーん、」
王子、君は、その鎧着たまま話せるんだ。
お、走り出した、昨日より速いよ、やるねー、
剣来た、寸止めとかできるんかね、そのまま殺す気かな?
「でも動きが直線っと、つまり、僕たちを奥に進ませる気はないの?」
「ああ、彼女には、このまま穢れを知らず、表で民を守ってもらう。裏は、全て俺が引き受ける」
「なるほどねー、」
どうだか、
……しかし、まずい。
話をしてる間にも容赦なく攻撃しやがって、残りに来られたら対処しきれないぞ、
「レコウ‼︎」
「おうじゃ!」
「待てよ!」
ち、君は、剣士君改めて筋肉ゴリラ君。
でも、ただの人間で、ドラゴンパワーを止められるかな?
「ふむ、やっぱ獣臭がするのじゃ。貴様、人間じゃないだろ」
「あ? 失礼なやつだな、それがなんだよ!?」
え、止めた! うそぉ!?
しかもなんか因縁ありそうだし、あ、そうだ、レリア、メガネ!
「メガネ君って、あなたのことだったのね。伊達メガネ? 似合ってないわよ」
「ふん、伊達ではない」
「あら? 前はかけてなかったくせに、勉強漬けで視力落ちたのかしら?」
「いや、これは魔導具だ。わたしなりに、この国の真実を見るためのな」
あ、なんか向かい合いながら魔物と護衛君の相手してる。
「それよりお前こそ、しばらく見ない間に随分と殊勝になったじゃないか。何だあの空の、見つけた時には笑いを堪えるのに苦労したぞ」
「ちょ、あなたね! 私のラブレターを勝手に覗き見するんじゃないわよ!!」
「は、国民全員に見せつけといて、何を今更、」
「ふん、あなたが目ざとくなっただけよ」
え、なに、いい雰囲気??
「さて。それにしても、聖女に魔物なんて、舐められたものね」
「ああ、魔術師に剣で挑むなど。わたしは貴様の十倍は刃を出せるぞ」
『聖光!』 『水刃!』
……うわ、楽しそ。邪魔しちゃ悪いかな。
じゃなくて、レリアにはさっさと奥に行ってもらいたいんだけど、
「よそ見か?」
「おっと、」
うーん、前回と同じやり方は、学習されてるのかな?
それに、今は余計な傷を負いたくない。
「そういえば、お前は剣も上手いらしいな。俺も一度体験してみたかった。今は貸せる剣がなくて残念だ」
「ああそう、じゃあ、」
『固定』空気、剣。
軽くて頼りなくて、何より丈夫。
僕が振り回すにはちょうどいい。
「魔法か、本当に、何でもできるんだな」
「誰から聞いたの? もう、」
昨日と同じ、狭間の剣でも良かったが、相手の言うことに従って出すのもやだ。
何か対策してきて、すり抜けてそのまま切ったりしてきそうだし、
でも、盾ぐらいは出して良かったか。
剣を体験してみたいなんていうから、間違えちゃったかな?
「っ、本当に、当たらない!」
「うん、昨日より、動きが人間的」
速いだけで、もしかしたら少年のより弱いかも?
喋れる分、理性でも残ってるのか、
剣を流して、ああそこ、足元危ないよ、
頭をそのまま、いや硬いな、めり込ませた床の方が抉れたぞ、
じゃあ関節に剣を、ダメだ、全身カッチカチ、鎧としておかしいだろ。
それなら目、うわここすら開いてない、というか視線に映るのはまずいか、
「おっと、レーザーは撃たないの?」
「レーザー、何のことだ? しかし本当に。目が回る」
あれ? まああれは確かに、レーザーじゃなくて針か。
しかしこれ、三半規管、というか中身までは強化されないのか。うまいこと衝撃通す技とか効くか? 流石に持ってないや。
やっぱ、昨日と同じで空間直接削って中身と繋げるか、
「……いや、なんでだろう。やる気がしない」
「っ、行くぞ!」
「遠慮、躊躇、違う、これは、」
予感。
ここ一番で、阻害される。
昨日と同じ展開にすれば、確実に僕だけがやられるという、そんな予測。
なんだ、これ、悪意?
この空間から、僕が、恐れるほどの?
「ちっ、『『『『『整理』』』』』」
「何をしてるんだ? 隙だらけだ」
「おっと、悪いね、こっちのセリフだよ。暇があったから、別の仕事をさせてもらう」
まずい、早急にこの空間の支配権を掌握しなければ。
なんだ、この空間そのものに弾かれる、こんなの今まで、
それ以上に、実際試すまで僕がそのことに気づきもしなかった。
もし、ギリギリで、いつも通り魔法を使っていたら、死んでいた。
なんて、巧妙で、甘い、罠、
っ、もう躊躇してられない、レコウ!!
「ほう、なるほど、魔族ではないのか」
「ああ、獣人の血って奴だ、母方がな。この国じゃ、どっちにしろ人間扱いされねえらしいから隠してるけどよ、」
「それで、貴様はあいつらに従ってるのか」
「面倒だかな。だが、おかげてこうして楽しい戦いができてるぜ!!」
「おう、パーティじゃな!!」
うわ、楽しそう。
というかレコウ、わざと手を抜いてるでしょ。
さっさと倒すと本当に殺しかねないとか?
遊んでないでほしいんだけど、いや、僕が彼女の行動を決めるわけにもいかないか、
「レリア! 行って!」
君たちは、むしろキツそうだね。
まあここ、ものすごい魔法阻害されてるもんね、むしろ良くもったほうだよ。
「そうは言ってもねえ」
「はは、そういうには、何か秘策があるんだろうな、」
「ちょっと、わたしより通じ合ってますみたいなの、やめてもらえる??」
秘策? あるよ、その名も、
「『放出』、魔物には魔物をぶつけんだよ!!」
くらえ固めた質量弾!
ふはは、怖かろう、貴様らの末路だ!!
ちょっと放出に干渉されてグロテスクなのもあるけど、むしろ怖がらせてるから問題なし!
「な、こんな手段で『従いなさい!』」
はっはっは、統率が乱れてる。
そうだよな、そいつらを支配していたのはワカメであって、お前は一時的に借りてるにすぎないらしいもんな、
あ、そうだ、
「『これもくらえ!』」
「な、これ、先生!?」
元ワカメもついでにぶつけてやる!
お、運がいいね、綺麗に取り出せたよ、
頭と頭がゴッツンコ、まだ海藻が生えてたら痛く無かったかもなのにね。
宰相君とは、腹黒らしく対消滅してしまえ!!
「余裕だな! そんな、好き勝手に、」
そして、僕がレリアの方に近づいて暴れ回ってたから、王子の狙いすませた剣が振るわれる。
いや時間かかったな、驚きで硬直してたか?
まあいい、わざと隙を晒した甲斐があった、
魔物には魔物を、腹黒には腹黒を、
剣士には、
「な、殿下!?」
「っ、なに!?」
ほら、君の体験したがってた僕の剣だよ。
自分の力では何もできないから、他のあらゆるものを利用する、弱者の剣だ。
少し逸らして、押してあげれば、
ああ、あの廉価版、結構硬いね。
凹むだけですんだよ、流石に僕も、目の前でクラスメイトを真っ二つにするのは、
ま、可哀想だとぐらいは、思えるかな?
「貴様!!」
「おや、もうセレンとは呼んでくれないのかい? まあ、僕も別に、呼ばれたくもないけど」
挑発、さらに動きが直線的に。
そして、今最も逃しちゃいけない、真の聖女が駆けていく、
「ふん、統率の無くなった魔物程度、わたし一人で十分だ、」
「まかせたわよ、メガネ君!」
「誰がメガネ君だ、エインと呼べ。いや、やっぱりお前は呼ぶな」
抜けた、
聖女が奥に進んでいく、これで戦況は決まった。
レコウの方も、
「おりゃーじゃ!」
「ぐ、まだまだあ!!」
「……うぐぐ、中途半端な硬さは一番困るの。じゃがまあいい、パーティじゃ!!」
まあ、負けることはないでしょう。
さて、これで残すは勇者王子だけ、
このまま時間切れでも実力負けでも、倒してやるよ。
……本当に?
なにか忘れているような、いや警戒するほどではないか?




