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情報過多の荷物持ちさん、追放される  作者: エム・エタール⁂
聖女さん、追放される (神聖学園編)
33/124

30話


「レコウ達……、もういないか」


 夜、なんか色々あったので、すっかり本来の目的を果たせなかった。


「いっかい空間の中に潜ったからな、しょうがないか」


 でもまあ、そんなことは些細なこと。

 一人で頑張ってるドラゴンちゃんには悪いが、こっちは既に最大の謎を捕まえましたので。


「偽勇者。さてとメート、君がなにを考えてるか知らないけど、もう隠し事はできないよ」


 これで解決。

 それじゃあさっさと、彼の記憶を読んでっとー、




「ふらぐ、」

「何かしら、それ、」

「くそぅ、」




 僕としたことが、


 僕は捕らえた彼の記憶を読もうとして、


「そんなことまでできるのね?」

「うん。さてと少年、君のムッツリなところも含めて、全て晒してもらうぞ!」


 ……巨乳好き、何だこれ、

 喧嘩売ってんのか? いやじゃなくて、


「…………っ、」

「なに、どうしたのよ?」

「消されてる。あの女に関係しそうな部分が、綺麗さっぱり」


 や、やりやがった!

 あの鎧が、最後の足掻きで持っていきやがったのか!?

 く、こんな綺麗に、綺麗すぎて少年が廃人にならなそうなのは良かったけど。


 僕以外に、こんなことできる奴がいたとは、


「じゃあ、どうするの、彼、」

「うーん、落ち着いたら、解放するしかないかなあ。本当に、今の少年は何も知らないみたいだし」


 仮にも偽勇者、さっさと擦り潰すつもりだったけど、なんかそんな気分にもなれないな。


「……そうねえ。じゃあ、私のほうで何とかしてみるわ」

「うん、任せたよー」


 はあ、なんか今日は疲れた。

 明日もまた学校? 僕も休んでやろうか、

 というか、そもそも教師一人に生徒一人、流石にまずいんじゃなかろうか。

 ま、僕には、関係、どうだろ、あるのかね……、




 んー寝不足、いや時間はたっぷりあったんだけど。

 最近、無駄に多かったせいかな。

 なんか肌寒い? 湯たんぽ、レリアーは、まあいいか。


「大変じゃー!!」

「あ、あったかいの、」

「おう!?」


 このままもう一眠り、学校なんてサボっちゃえ、ってわけにもいかないか。


 なにレコウ? 朝っぱらから、そういえば昨日なに話してたか聞かないと、


「パーティじゃ!」

「え、また? なに、また今夜?」

「もう始まっとる!!」

「ふゅ?」

「人間どもが王城を乗っ取ったぞ!!!」

「ふゃーーーー?!?!」


 ちょ、れりらりあれろれアウレリア!?

 起きて、寝てる場合じゃないって、なにセシィちゃんの匂いーって、嗅ぐな!?


「……なに、乗っ取り? 夢かしら??」

「僕もそう思いたい。え、とりあえず、それをパーティって呼ぶのやめない?」

「楽しそうじゃろ、」

「うん、確かに。でもまずは説明!」


 ドラゴンちゃん高速説明、


「王子が、王城乗っ取った? それは普通に帰省しただけなんじゃ、」

「なんでも、無理やり演説するために押し入ったらしいのじゃ」

「えぇー?」

「馬鹿だ馬鹿だとは思っていたけれど、そこまでとはね。なにが目的なのかしら」


 いや、まあ、どうなんだろ?

 アホだとは思うけど、仮にも王子。まだそこまで大きな問題にはならないのかな、


「そのついでに、そのまま王にもなるらしいのじゃ」

「いや、ついでって、」

「もう既に、前の王は説得してるらしいのじゃ、拘束しながら」

「「…………??」」


 ……もうね、絶句ですよ。


「レリアー、どう思うー?」

「私は、海の見える町に行きたいわ、」

「あ、旅行、一緒にいくー?」


 よし、次の行き先は決まったな。

 さてと、僕らの旅はまだ続く〜、


「……ふぅ。それで、あなたはそれ、誰から聞いたのかしら、」

「あ、まだ諦めてなかった」

「あの女じゃ! そうそうパーティじゃから、招待状も貰ったぞ」


 どこかで見た便箋、三枚?

 一枚だけ少し封じが違うか?

 というか、これ、


「私、あてよねぇ、」

「そうそう、演説は午後からなのじゃ。それまでに話がしたいと、呼んでるらしいのじゃ」

「ええ、行くの? 海行かない?」

「セシィちゃんの水着、私が選びたいわ。でもそのために、まずは邪魔なものを片付けないとね」


 レリアはさっと立ち上がる。

 まだ病み上がり、自分で立っているのを見ているだけで、ちょっと心配になる。


「行くのはワタクシだけで十分よ。あなたの目的は果たせたでしょう。後はお姉さんに任せなさい」

「……いや、君、レリア一人で行って、意味あるの?」


 呼ばれてるのは多分僕たち、

 レリアは、何だ、そもそも何故ここにいることを知っている?


 偽勇者、メート、やっぱりまだ、なにも終わってないのか??


「この国の問題よ。これ以上、巻き込むわけにわ、」

「いや、時間ないから。早く行くよ!」


 そんなん言われて、帰る奴いる!?


 というか、まだまだ僕もこの国に来た目的果たせてないんだから。

 こうなったら演説乗っ取って、アレンの講演会に変えてやる!


「……もう、」


 だから、そんな回りくどい言い方してないで、大人しく、




 ほらダッシュ、さっさと向かう、残念ながらドラゴンタクシーは一人用。

 頑張ればいけないこともないかもだけど、心情的に。


「……民衆は、まだ静かね、」

「民衆て、」

「まだ、一般には知られてないようじゃの」


 外に出た、学園と王城は、そんなに離れてない。


「民衆が静かに平和なのは、誰のおかげかしら?」

「え、なに? 急に、王子に嫌味??」

「むう、結界のおかげよ、つまり私の。ほら見てみなさい」


 空を見る。

 ……何だよもう、本当に回りくどいな君は。


『助けて』、だって、いつの間にかいたんだこれ、


 別に、元より、僕の用事もあるって言ってるのにね。

 しょうがないお姫様だよ、もう。




 王城か、入ったことが無いわけではない、ここのではないけど。

 それだけ僕は、従順に見えていたのだろう、そんなわけないのにね。


 さてと見張の兵士は、招待状で何とかなるのか、


「……誰も、居ないわねえ」

「えー? うん、ちょっと聞いてみるか、」


 ……人がいない、兵士どころか給仕すら。

 痕跡、地下か?


 ……いや、いた、これは、


「奥の大広間。五人?」

「うーむ、相変わらず獣臭い匂いもする、全員いるのかのー、」

「……何で魔法も使わずに、聖女の結界より凄いことできちゃうのかしら」


 多分これは、王の間ってやつか。

 おあつらえ向きだな、本当に僕らと話をするためだけに待っているのか、


「……やっぱり、間違いない。あの馬鹿どもだ」

「馬鹿どもって、ずいぶん仲良くなったのね、」

「なってない、あっちが勝手に擦り寄って来ただけだ、」


 でもまあ、それも今日で終わりか?

 どういう目的なのかはわからないけど、多分きっと、このお姫様に味方するなら、彼らとは相容れない。


 別に、せいせいするよね?


「あら、本当に、全員いるのね」


 ドアをくぐる、視線が五人分。

 最近のお昼は、いつもこんなんだったか、


「来て、くれたか、」


 そして、一番高いところにいるのは、というかその椅子って、

 嫌いだ、まるで権力の象徴みたい、本当にそれに座ってるんだね。


 馬鹿王子、いや、もう違うのかな?


「久しぶりね、来てやったわよ」

「……お前を、呼んだ覚えはないが、」

「あら嫌味?」


 目が合う、というかずっとこっち見てる。

 僕一人狙い、いやなんで、そっちの元婚約者と話してろよ。


「さて、セレン。どうだ?」

「え、」


 やべ、無意識にイイね、ってしそう。

 王族だからか、気持ち悪い、やな癖。

 なにがだよ、ちゃんと話しろよ、


「父上は病で療養。少し早いが、俺が王位を継ぐ。そういう筋書きだ」

「……うん。」

「だが、お前にだけは、真実を知っておいてほしかった」


 いや思いっきり他国の人間なんですけどね?

 なんでこいつ、そんなに僕のこと信用してんの??


「病で療養? それに兵士も使用人も誰もいないじゃない、どうやったのよ、」

「……ああ。全員拘束してある。無辜の民には悪いが、一度全て洗い直さないと、ここは腐りすぎた」

「クーデターね。どうやっても、綺麗にはいかないわよ?」

「問題ない、彼女に手伝ってもらった」

「彼女? それって、」


 ……そういえば、いないな。

 近くにいるとしたら、この奥か、


 僕ですら覗けない部屋があるな、何だこれ。


「この国は、愚かなことに伝承が全てだ。真の聖女と真の勇者、それさえあれば、多少強引でも民の心をしたがえられる」

「おあいにくさま、真の聖女はここにいるし、真の勇者はもういないわよ?」


 レリアが、キメ顔でこっち見てくる。

 フラグ、


 そのことなんだけど、レリア、多分これ、


「ああ、問題ない。真の勇者とは真の王のことだ。これが、予言通りの結末だ」


 彼が、真の王が掲げた手に、黒い大剣が現れる。


 やっぱ、こっちが本来の持ち主か。


「なぜお前がそんな勘違いをしたかは知らないが、これは宣言だ。俺はこれより、力でもってこの国を平定する」


 剣が、突きつけられる、レリアに、

 おい僕はどうするんだよ。視線向け直すな、


「見ていてくれ、お前に応援された通り、俺はこの国を正してみせるぞ。そしてその後は他国だ、俺が必ずこの世界を、

「いや人が勝手に全肯定したことにして話進めるのやめてくれる!?」


 こ、こいつ、僕に責任押し付けようとしてないか!?

 な、なにをお前もちょっと悪いんだからな、みたいな雰囲気にしようとしてんの!?


「……そう。か」


 そして、何で君は、それで本当に傷ついたような顔してんの、


「……まあ、僕は正直、その思想についてどうこう言う気は無いけどさ……、」


 普通に、これこの国滅ぶでしょ、

 ねえ、そこの、悩んでた宰相くん?


「はい。ですが、この国は既に誰かさんのせいで個人に頼り切り。どの道、いつか限界が来たでしょう」

「あら、ワタクシのせいにするの?」

「元より、この国の技術の進歩は遅れています。他国との力の差は広がるばかりです。もし魔物が活性化していなかったら、考えるだけでも恐ろしい」


 ふーん、攻め滅ぼされるかもね。

 この国、一人だけアレンのこと認めてなかったり、魔物の被害が少なかったりで、孤立してるし。

 でも今は、少なくとも今だけは、魔物に対して強いから他の国よりも強い。


 それに加えて、勇者なんて称号も取れたら、少なくともしばらくは侵攻されないかも。どうだろ?


「それは、外交でも何でもしなさいよ。というか、本来だったらワタクシもやってたはずなんですけど?」

「あんな、腐った国々と、友好なんて結べるか、」

「それに、時間がありません。すでに、別の国から勇者が出てしまいました。なんでも、すでに魔族の領土近くまで歩みを進めているとか」


 ……いや、アレン、まだ国内にいるけどな。

 出たのは、あくまで首都からだし、


 ……というか、何だこいつら、なんやかんやアレンのこと認めてるのか、ふふふ、


 あ、でも、その上でその立場奪おうとしてんのか。やっぱ殺す。


「結界を広げる。聖女の最強の盾と、勇者の最強の剣。これがあれば、他国に負けることはない、」

「は? 正気かしら? ワタクシは協力しないわよ?!」

「ふん。元より、お前などに期待していない。ただ少し才能があっただけの、お飾り聖女が。……いや、もう聖女じゃないんだったな」

「かっちーん。もうこの国なんて知ったもんですか、あなた達だけは私が直接ぶん蹴り上げてあげるわ!」


 なにその不穏な動詞!?

 あーもう、結局こうなるの?

 僕まだ、事態把握しきれてないんだけど??


 ほら、護衛くんとかも動き出しちゃって、しょうがない、全員止めてから、改めて話し合おう。


「パーティ開始じゃー!!」

「それやめ、……もういいや。おーー!!」


 パーティは、もう止められない。

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