25話
さてとパーティ、
って、何すんの?
「食べるのじゃ!」
「(今日のは舞踏会、踊るのよ)」
「どっちも満足にできる気がしない」
ダンス、え、僕が?
縁が無さすぎる、しかも男性側。
もういいよ、一応軽食もあるみたいだし、そっち行って来なよレコウ。
「あ、貴様ら、邪魔じゃー」
「まっまってくれ。俺は、その、あなたに蹴られてから、何かに目覚めて、」
「えぇ?」
「よければ、俺と一曲、」
周囲、観測、模倣、完了。
よーしレコウー!?
おどろっかー!?!?
「(うふふ、いいわねぇ、これ。あ、レコウちゃん? 次はこうよ〜)」
「ほう、初めてやってみたが、こんな感じなんじゃの」
「ねー、」
何が楽しいんだろうね。
……あ、でも、アレンに振り回されるのは、きっと楽しいだろうなー。
「……楽しい?」
「(ええ、とっても)」
「うむ、悪くはないのじゃ」
「……うん。なら、僕も、楽しいかな?」
るーらー、ぐるぐると、
周囲には言葉の絡まりが渦巻いて、学生主体だからまだマシなんだろうけど。
でもいいや、僕らには、関係ないことだもんね。
「んー、ふふー、おっと足、」
「邪魔じゃーー‼︎」
——ありがとうございまーす!!
……マジでうるせえ。
あれ僕と同類? やだぁー、
ひと段落ついて、視線が自然と壇上中央に集まる。
王子と、ピンク、ちょうど踊っていたようだ。
そして、そのままそこで、いやなんでこっち見た。
ちょ、こっち近づいてくんな、良いだろそこで、巻き込まないでよ!?
「(……一応、好機よ)」
まー、そうかなー?
正直、もう帰りたいんだけど、
「今日は、重大な発表がある」
何だよ王子、いや大体みんなわかってるだろうけど。
「本来なら、前回のパーティで告げるはずだったのだがな」
それは、散々に否定されたから、お流れになったらしいね。
そこ、中で得意気に胸張るなよ。まだサイズが戻ってないから痛々しいんだよ。
「異国の友人達も祝福してくれている」
え、勝手に!?
誰が友人だ誰が達だ誰が祝福しただ!?!?
「俺たちは、今日、ここに、」
パリーンッ、
把握、魔物、ダンジョン産。
上、ガラス、被害者無し。
示し合わせたタイミング、見ていたな。
誰だ、この場にいるか、いったい、
「(流石ね、完璧なシチュエーションよ!)」
「おお、マジでやったのかじゃ」
「え、違う、僕はやってない!?」
まだ!
いやこっそり魔物は回収しといたけどさ!?
「きゃ、なにー!?」
「な、くそ、メート! 後ろに!!」
うわっ、こいつら、真っ直ぐ王子とあの女の元に向かってる!
操られているのか、完全に計画的な犯行だ!!
「(いい気味ねー)」
「ちょ、流石にそれどころではじゃ!?」
「うん、一応止めないと!」
いくら何でも本当にこの件に関与しておらず、このまま死なれたらまずい。
それに、もしこれがあの女の力を示す自作自演なのだとしたら、先に倒すのはその邪魔にもなる。
「万象の杖! 『水刃』!!」
「(あ、嬉しいわー。それにしても、本当にあなたがやったんじゃないのね)」
くそう、こっそり隠れてる魔物もいるな。
全力出し過ぎると怪しまれるか!?
「ふむ、やはりいい魔法だな、参考になる」
あ、メガネ、何ちょっと嬉しそうにしてんだよ、
「くそっ、剣がねえ、」
「私はある、」
「何でだっ!?」
「護衛だからだ、」
「わたくしが許可しました」
じゃあ離れてんなよ、
あ、やば、伏兵。
間に合わない、いや僕は間に合うけど、
この軌道、メートに当たるな。
王子は、別の魔物の相手で手一杯だ。
僕が何とかするか、いやあの女、驚いてはいるが怯えてはない?
どうする、真の聖女? 魔法を使う気配は感じないが、どう防ぐ気だ、
「たすけてっ、ゆーしゃさま!」
……は?
っ、速っ、何だ、外から!?
「————、」
……そこには、漆黒の鎧に身を包み、大剣を構えた戦士がいた。
確かに、これは、勇者と言われて納得する人もいるだろう、僕は認めないが。
背丈は、鎧に隠れてわかりづらい。
それにこれは、認識阻害? どうりで、僕がギリギリまで気づかなかったわけだ。
よくレリアは、いやそれも聖女、というか彼女の技術ってところか。つまり学生、これが?
疾い、一切の抵抗無く、魔物を切り裂いている。一連の流れに無駄がない。
隠れている魔物も全て殺して、そのまま……、消えた?
いや、高速で去っていっただけだ、僕には認識できた。
追うか、いや速すぎる、追いつこうと思ったら、僕らの正体もバレかねない。
せめて人の目が無ければ、ああ、もう把握できてる範囲外に出てしまう。
「(……見たわね)」
「ああ、あれが、」
「なるほどの、」
あっという間の出来事だった。
目の前で助けられた王子でさえ、何が起きたのか把握できていない。
「な、んだ。今、何が起こった?」
誰も見たことが無い?
なんてことはない、誰も見られないんだ。
ただでさえ速すぎるのに、それに加えて認識阻害。他の人間には、黒い何かが通ったとしか、わからなかっただろう。
これは、いつもすぐに去っていくなんて次元じゃないよ。メートちゃん。
君は、よくあれを、知っていたね。
「(やばいわね。前にきちんと確認できたのは、怪我をさせないことが目的だったからかしら)」
「ふむ、なかなかの速度じゃの」
前の、雷速の魔族より速いか?
あれは直線しか見てないうちに、弾けちゃったから参考にしづらいけど、おそらく遜色無い。むしろ速いかも。
「(……ちなみに、私の勇者様は。あれ、簡単に消せそうかしら?)」
その呼び方は本当にやめて。
……まあ、タイマンなら、何とか。
結界に全力で阻害されたら、ちょっと厳しいかも。
「(……深入りは、やめておきましょう。先に、情報を集めるわ)」
「いいの?」
「(ええ。幸いにも、流石にあのバカも、この状態で強引に宣言する気はなさそうだわ)」
……そう、か。
今回の件、傍目にはどう映ったんだろう。
ピンクの聖女が叫んで、そして、
彼女が何とかしたように、見えるのだろうか。
パーティは終わった。
というわけで、部屋に戻って作戦会議。
「あれ、本当に学生なの?」
「うーん、聖女の勘。いえ、前に見た時は、確かにそう思ったのだけどねえ」
「……ま、確かに体幹的に、そんなに大柄で筋肉質ってわけでも無さそうだったか」
魔力を帯び全身鎧は、僕でも中身が覗けなかった。
でも外側、情報は全て隠せていたわけではない。
「剣技、授業のと一致する部分があったか? 少なくともこの国の剣士の可能性」
「ああ、そういえば。あれ、少し前に改良されたらしいわ。何でも対人よりも、対魔物を想定した動きを取り入れたとか」
勇者が望まれるくらい、魔物が活性化してきてたからね。
まあ、僕にとっては都合が良かったんだけど。
「確かに、あの剣は確実にダンジョン産の魔物を殺していた。……そもそもダンジョンがそのための授業か、それに実際に潜って戦ったことがある?」
「ちなみにあのダンジョン、高学年からしか入れないわ。それに基本的には学生しか、外の人間が入るのは厳しいわね」
ふむ、王子たちは高学年、つまり同じ学年の可能性が高い?
まあ最低限、この学園の関係者である可能性は高いか。
昨日のパーティは、学園内の人のみ呼ばれていた。
そんなところで、重大発表しようとすんなよ。
「説一、あれは中身なんてないハリボテで、誰かが外側から動かしていた」
「あら、いきなりそれ?」
「あれほどの動きをする人間が、目立たないとは思えない。でも、あのパーティには主要な学生は殆ど来ていた、」
それこそ、よくわかんないチンピラまで、
あれで、一応貴族らしいね、何だそれ。
「それに、示し合わせたような完璧なタイミング。近くで見ていたと思う」
「そうね。他の学年にも、それなりの剣技の使い手や、魔法の使い手はいたけれど、その推測だと魔法使い。でも、私以上はこの学園にはいないはずよ」
「うーん自信。じゃあ力を隠していたか。それにあの剣技、魔法が得意なだけで、再現できるものじゃないよ」
さて、その場合の容疑者は、
一、メガネ君。
近くで見てて魔法も得意。
でも多分、あんな剣技は再現できないと思うな、普段の体幹ボロボロだし。
二、剣バカ君。
魔法は殆ど使えないらしいけど、嘘の可能性。
あれが? みんなを騙して? それに、剣術の種類が違っていた。
こいつのはもっと、乱雑で我流でこの国っぽくない。
三、護衛君。
魔法も剣も使える、それに護衛のくせに離れてた。怪しい。
でも、多分、あんな強くないな。
実際打ち合って、真の実力隠してたなら、あの偽勇者はさらに強いはず。
それに立場的に、隠す意味あるのかな。
四、宰相君。
うーん雑魚、だからこそ可能性? うーん、
むしろこいつなら、パーティ邪魔する方に加担してても、おかしくないんだよな、
いや、流石にやってないと思うけど。
五、王子君。
剣も魔法も使えるらしい、でも全体的に、護衛君より下。
位置的にも動機的にもありだけど、そもそも王子なら隠す必要、あるのか?
というか、僕は違うと思う。だって弱いから、本当に色んな意味で弱いから。
頭も、あ、言っちゃった。
六、先生。
そういやあの場にいたな、まあ学生だって話だし、雑魚そうだし。
七、影の薄い君。
君……、いたっけ、ごめん覚えてない。
八、チンピラ。
邪魔だー! 思考に入ってくんなー!!
九、ピンクの女、メートちゃん。
彼女が呼んだ瞬間現れて、彼女以外、そもそもその存在をほとんど知らない。
剣の腕は知らないが、意外と動けはするみたいだったし、魔法は普通に使えていた。
それに、多分本性を隠して生活している。
「やっぱり、この自作自演が一番可能性が高いか? でも、流石にあの瞬間に魔法を使ったとしたら、僕が見逃すかな、」
「私も、何も感じなかったわ。事前に唱えた魔法や、魔導具の可能性は?」
「うーん、操作しているようにも見えなかったからね。自動操作? そもそも普通に中身がいて、僕が知らない人って可能性の方が高いかも」
だとしたらお手上げだ、僕は大人数の顔と名前なんて、覚える気がしないし。
レリアが知らないとしたら、やっぱり学生でも無い?
「説二、誰かの護衛や付人。いるんでしょ? たくさん」
「可能性はあるわね。でも、その人たちはダンジョンにも、昨日のパーティにも入れてないわ」
「説三、あれは人間じゃない、魔族とかなんかそんなのが紛れ込んだ奴。それならあの動きも納得できる」
「それを勇者として崇めていたら、この国はもうお終いね。ワタクシの結界の中で、そんなものはいないって言いたいところだわ」
個人的にはこれだと、消しても何の問題もないから楽なんだけど。
正直、これで本当に聖なるパワーがーとか、神に選ばれたーとか、そんなのが出てきたら、
ちょっと本気で、自分を抑えられる自信がない。
「……駄目ね、情報が少なすぎるわ」
「やっぱり、本人に聞きに行くしかないか」
「それができないから、いえ、誰のこと?」
まあこの場合の、渦中の本人と言ったら。
「メート。彼女から聞き出すのが、どう考えたって一番手っ取り早い」
さて、いろいろあったが、すぐにまた、いつも通りの授業が始まる。
それが、学園、学生というものだ。
話を聞く機会は、いくらでもある。
「うむー、一人部屋は寂しいのー。最近まったく寝れてないぞー。……しょうがない、楽しかったが、そろそろじゃのー?」




