24話
「た、大変じゃー!!」
色々あったけど僕たちは、無事に学園へ戻って来て、
「…………あ。レコウ、おかえり」
「おう! あのあと様子見に行ったら、全部まっさらになってたから驚いたぞ!」
……やっばあ、忘れてた。
「……あー、無事に聖女様も助けられたよ、ほら」
「あら、あなた、いたのね?」
「酷いの!? まあ、それは良かったのじゃ」
あれ? なんだ、そのことで慌ててたんじゃないのか。
「それより、大変じゃあ!!」
「うん、何が?」
「パーティじゃ!!」
「うん。何が??」
……ふむふむなるほど竜女説明中。
「つまり、あの王子達が今度パーティを主催すると」
「もう、すぐにじゃ!!」
「それで、そこで今度こそ正式に、婚姻の宣言をすると」
「するらしいのじゃ!!」
それを、さっきレコウは本人達から聞いてきたのか。
「どう思う、元お姫様?」
「一応ぎりまだ立場は姫よ。まあ別に、今更その男のことなんてどうでも良いけれど、思うところはあるわね。ワタクシが、上に立つのに邪魔そうだわ」
おー、怖。カッコいいよ。
「…………こほん。それで、そのパーティはいつやるのかしら。それまでに、何かしら弱みを握っておきたいのだけど、」
「だから、もうすぐにじゃ!」
「うん、つまりいつ? 一週間後くらいかしら、あまり時間はないようね」
「いやだがら、もうすぐにじゃってば!!」
……嫌な予感がするな。
流石にそんな大掛かりなパーティ、昨日の今日ではできないと思うんだけど。
でもこれは、元々レリアが追い出された時のでやりたかった事なのか。
となると、前々から早くにやろうと準備していたのか?
「えっと、もしかして、明日とか?」
「今日じゃ!」
「ふぇ?」
「この後すぐじゃ!!」
「ふえーーー!?!?」
マジでぇ!! じゃあ何でお前らそこら辺うろついてたの!?
な、何か、パーティの準備でもしてたのかな?? いや何してくれとんねん?!
「ど、どうしよう元姫様!?」
「レリアって呼んでよ」
「レリア!?」
「ん、そうね。……どうしましょうか???」
やばーい!?
お、落ち着け、流石にこの状態のレリアに何かさせるのは無理だ。
まずは体力を回復させるのが優先、しょうがない、今回は見送ろう。
どうせ、僕が行っても、大してできることは、
「あ、そうじゃ、招待状を渡されたのじゃ」
「うわ便箋すらも贅沢。でも、悪いけど今は、」
「是非とも、来てくれって念を押されたのじゃ。お前に一番に、俺たちの夢を祝福してもらいたいって、」
「なんでぇ!?」
あの馬鹿王子、なに考えてるんだ!?
「しょうがないわ。私のことはいいから、行って」
「ん、ぐぅー。もう、仕方がない。とりあえずレリア、これ!」
てってれー、アレンのご飯、病気中用消化吸収良好栄養満点作り置きバージョン〜、
「セシィちゃんの手作り!! ——もぐもぐ。……うわ〜ん、他の人を思って作った味がするー」
「うん、元気そうだね!?」
つい、アレン用のご飯あげてしまったよ。
でもまあ、よくよく考えたら僕がアレンを病気になんて絶対させないし、使い道が無かったものだからね。
食べ物を、無駄にするのはいけないから。
「よし! じゃあ早く、ドレスに着替えるのじゃ!!」
「うん。いや、僕は男装中だよ!」
どうしよ、タキシードなんて持ってるわけないし、
アレン用の礼服なら、準備しといたこともあるんだけど、
「そう言われると思って、これを渡せって言われたのじゃ!」
「え、なにこれいふく、サイズぴったり!」
「今日、仕立てたらしいのじゃ」
「あいつら、それで外でてたの!!」
いや、だとしても早いし自分で取りに行くなよ。貴族なんだから、人でもよこせばいいだろ。けっ?
「これ、ここの伝統的なやつだわ、上物の。あなた、本当に彼らに気に入られたのね」
「えーー、嬉しくない。本当にこれ着てくの?」
「仮にも他国の人にねえ。まあ、馬鹿だからしょうがないかしら」
この聖女様、めっちゃあいつらに辛辣だな。
まあ、自分が追放されたパーティの焼き直しなんて、イラつきもするか。
パーティ、追放、嫌いな女、
うーんしょうがない。どうにかするかあ。
「どうする、パーティ? ぶち壊す??」
「そうねえ。せっかくなら、魔物でも出現して、台無しになってくれないかしら。あの女の聖女としての能力も疑われるし、ワタクシの価値も上がりますわ」
自分で言っといて何だけど、酷いな!?
君、やっぱちょっと、悪役令嬢っぽいよ、
「いっそ、それで未来の上層部が全員消えれば、ワタクシの邪魔をするものはいない」
って、夢が言ってました。僕は言ってないです。
「でも、魔物なんてどうやって」
「あら、あなたなら、どうにでもできるのでわ?」
「うーん、できるけど、」
「ガオー、じゃー、!」
うん、とりあえず最終手段として、ダンジョンの魔物でも解き放ったろ。
「よし、着替えオッケー。制服もいいけど、やっぱこれが落ち着くのじゃー」
「うーん、僕は落ち着かない。きっちりして、いや隙間空いてるけど、」
これでもか、これだけ締め付けてもか!? くそー、
「それじゃあセシィ、我をエスコートしてくれよな」
「ああ、そうなるのか。喜んで、マドモアゼル?」
何だこれ、滑稽だ、まあ仕方ない。
……ドレス姿のレコウに、辺な男が寄ってきてもいけないからね、
消したくなっちゃう。
「むーーー、やっぱ私もパーティ出るっ」
「いや、無理しないでよ。というか普通に無理では?」
「『透過』! あなたも見破れなかった聖女お得意の術よ、これならいいでしょう?」
「いやいやいや、無茶だって、」
絶対、聖女とか関係ない本人の魔術の腕だ。
「……なるほどのお。でもそれじゃあ、どっちにしろ、ただ付いて来てるだけの人じゃないかの〜」
「……あなた、」
「ほれ、我のペンダントを貸してやろう。ここから覗けば、いい感じに気分を体験できるぞ」
「なかなか、悪い人じゃないのね」
なんだこれ?
えっとつまり、レリアを収納空間に入れおいて、その胸飾りに覗き穴をつけると。
確かに先に発動しておけば、誰かにバレることも多分ないとは思うけど。
「それなら、僕の方についた方がいいんじゃ?」
「……セシィちゃんの胸の上、それも悪くないわ、」
「でもこっちなら、目の前じゃぞ」
「そうね、そういうことよ」
なんだこいつら。
でもちょっと、胸あつかいされて嬉しい自分もいる。悔しい!
結局、そのまま会場に来てしまった。
「ああ、来てくれたか」
「どうも、殿下」
「ケインでいい。他の皆はそう呼んでいるのだろう」
……いや、別に、メガネとか剣馬鹿二人とか呼んでるけど。
「じゃあ、ケインさん?」
「呼び捨てで構わない」
「ケイン君、」
「……まあ、それでいいだろう」
くそう、こっちだってなあ、君のことなんて別に呼び捨てでも構わないんだよ!?
でも今それやると、変に目立っちゃうだろーがー!!
「じゃあ、僕はそろそろ。自分の仕事もありますので、」
「(そうよ、私のエスコートがあるのよ!)」
レリアさん!? 僕以外には聞こえないような小声とはいえ、王子が目の前にいるのに喋らないないでくれる!?
あと、レコウのエスコートだよ、一応。
「ん、ああ。またでな」
「はい。では、」
「……うん、」
ちょ、なに、近寄んな、王子じゃ無かったらぶっ飛ばしてるぞ!?
「やはりその服、似合っているな。選んだ甲斐があった、」
……耳元。めっさゾワッとした。
きっつ、耐えられた僕を褒めてほしい。
というか、そういうのは女にやれよ、いやだとしたらあってたのか? お前、婚約者を紹介しに来たんじゃ無かったのかよ。
「(——、——?! ————!!?)」
「おー、よく騒ぐペンダントじゃのー」
そしてレリア? 何を君はそんなに怒っているの、いやまあわかっちゃうけれど。
「ちなみに我もちょっとイラッとした」
あらら、不評。
残念ですが王子、ここにいる女子三人にはそのムーブ、ウケなかったようですよ。
でもまあ、そんな絵本みたいな言動が、クリティカルヒットする人も多分いるので。
ほら、例えばそこの、いつも以上に桃色に身を包んだ女子とか、
「(あの女、やっぱ苦手ね)」
「(うーんやっぱり、演技なのかなあ? レコウはどう思う?)」
「(むー、我は何故か、避けられてるからのー)」
メートちゃん、今日婚約発表されるとは聞いているのかいないのか。
いや普通、聞いて無いわけないけども、あの馬鹿殿下だとありえなくもない。
王太子の妃としては、場に慣れてないとばかりに、キョロキョロしている。
「(騙されないで。あの女、前もああやってワタクシのこと糾弾してきたのよ)」
「(ふーん、そんなことしたら、印象悪くなりそうだけど)」
「(ええ、自分の手は汚さず、周りの事を否定しなかっただけ。中々のやり手よ)」
「(うーん、そうだねえ)」
まあ、本当にただの何も知らない平民では、ないだろうけど。
そういやここにその、冤罪押し付けて来た令嬢もいるんでしょ。
まず、そっち先に捕まえた方がいいんじゃ、
「(それもどうせまとめて、ワタクシのせいにされてますわよ。まあ、落とし前は後で、きっちりつけてもらいますが)」
「(おお怖い、好きだよ、そういうとこ)」
「(んーー、もーー、)」
はは、悪い悪い。ずっとみんなの前で男装で過ごしてるせいで、ついね。
これじゃあ、王子のことを笑えなくなっちゃうよ。
「ほう、悪くないな?」
「おう、似合ってるじゃねえか」
「ああ、流石は殿下の見立て通りだ」
「よかった、無事に渡していただけたようですね、レコウ様」
あ、馬鹿、五引く一人。
お前ら、せめて前日に言えよ、
「いやー、わりぃわりぃ、サプライズってやつでよ」
「ただ、伝え忘れていただけだろう、馬鹿が、」
「全く、お前に任せたのが失敗だったな」
「ええ、そう思って、あなたにも確認するよう言ったはずなのですが」
何だこいつら、
「……ほら、姫さんが穴に落ちたとかで、王子が慌てていたし、その護衛で、」
「ああそうだ、お前も落ちたんだっけか。よく無事だったな、流石だぜ、」
「あんなもの、学生の行ける範疇には無かったはずなのだが」
「ええ、学園の方にも伝えておきましたが」
あ、そうなの。
僕としては、都合のいいイベント程度の認識で、危険とすら感じてなかったな。
いや、だとしても誰かはパーティ教えろよ。
「朝早くから部屋にもいねーしよ」
「おかげで、一日中町を探すことなってしまったぞ、まあいいが」
「結果的に、無事に見つけられたからな」
「殿下も楽しんでいらしてましたし、ええ」
……それでも、僕は悪くないからな!
もっと前からいくらでも機会は、いやこいつらと知り合ったの最近か。
うむむむむ、
「あー、そろそろ始まりますね。楽しみですー」
よし、戦略的撤退!
様々な目的が思惑する。
僕の人生、初パーティ。
いざ、開幕。




