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情報過多の荷物持ちさん、追放される  作者: エム・エタール⁂
聖女さん、追放される (神聖学園編)
20/124

17話


 学園、授業、色々ある。

 そして次は、魔法の授業、それも実戦。


 魔導国の出身と名乗ってしまっからには、ここで失敗するわけにはいけないのだが。


「……レコウ、わかってるよね。僕達は、ここで大々的な魔法は使えない」

「そうじゃの、セシィのは、ちと凄すぎるからの」

「いや僕はむしろまともだろ。後、それ、他の人がいる前では呼ばないでよ」

「わかっておる。人前でセシィを呼ぶ時は、ちゃんと二人称で呼ぶのじゃ」

「レコウの二人称って」


 キサマー?


「普通に、セレンって呼べば良いんじゃん」

「んー、まあ、それでもいいのじゃがの。でもセシィ。こっちの方が、良いのじゃ、」

「……そう、」


 ……まあどうせ、レコウは面白キャラが定着しつつあるし、別にいっか。


 役割分担、僕はこのまま件の中心に飛び入って、レコウには外側から調べてもらうことにした。


 彼女の面白尊大言動も、小さくて可愛い外見と合わされば、たちまち一般クラスメイトの人気者だ。


「だからまあ、多少レコウが魔法あれでも、何とかっ、」

「むー、まあ、元の魔法が禁止されてるんじゃ、仕方ないかのー」


 魔法の授業では、少なくとも次の授業では、簡単な攻撃魔法で競う。

 炎、電気、氷、爆破、手段は何でも良いが、威力やら射程やら精密性やらを測って、鍛えるらしい。


 ちなみに僕は、空間魔法に脳を全振りしたから、その手の初級魔法すら使えない、


「わざわざ、それだけの為に、奪ってくる気にもならなかったしね」

「なら、どうするのじゃ?」


 ……よくぞ聞いてくれました?


「ふっ、ふっ、ふ〜。てってれー、万象の杖〜〜」


 取り出しましたは杖型の魔道具。

 小さめな指揮棒タイプ。

 仰々しい名前が付いているが、ようは魔力と魔術の腕さえあれば、誰でも色んな種類の初級魔術を作れる優れもの。


 イメージとしては、クッキーの型抜き?

 ラズベリーパイ? 何それお菓子??


「おお! なんじゃその語りは!」

「夢では何故かこうしてたんだよ。はい、レコウにはこれ。事象の杖ね」


 こっちは、魔力を流せば衝撃を持った光球が出る杖。多様性がない代わりに効率がいい、レコウでも扱えるシンプルバージョン。


「おお! なんかポコポコだせるぞ。ビームも撃てるのじゃ‼︎」

「出すのが早すぎて、繋がって見えてるだけだね。壊さないでよ?」


 壁に向かってペチペチと、

 見た目は派手だが、傷一つ付いてない。


 まあ、この子は、心配しなくても大丈夫か。


「しかし、よくこんな凄いものがあったのじゃの」

「そうだね、こんな凄いのよく作れた」

「ふむふむ作った、綺麗じゃの、新品か? こんなものを作れるなんて、人間も中々やるのー」

「うん。僕も、初めて見た」


 構造、把握、複製、しようと思えばできる。一から作れと言われたら不可能だけど。

 凄い技術、こんなの、ダンジョンの奥にあったっておかしくない。


 レリア、これ、僕達用に即席で作ったって言ってたっけ。疲れた様子すらなかったな。


 ……まあ、ありがたく使わせてもらおう。




 授業。

 複数の人間が、合同で学びを受ける。

 正直、どの程度の力を見せればいいか、わからない。

 僕の魔術の腕なんて、きちんと学習を受けた人間から見れば、大したものでもないはずだが。

 それでも、この高性能な魔道具もあることだし、あまり本気になりすぎても、


 まあ、空気を読むのは得意だ。

 別に、想像はできなくても、推測していけば自ずと、


「はい。では、せっかくですから。留学生の二人から、魔法を見せてはもらえないでしょうか。あの魔導国から、それもとてもいい成績を収めているとか」


 ……おいこらわかめ。

 お前、魔術の先生もしてるのかよ、まあ確かにそれっぽい見た目だか。

 というか、何だその設定。どっから生えた、


「ふん、あの女がいなくなって、張り合いがなくなっていたところだ。魔導国の力、さっそくお見せいただくとしよう」


 おうメガネ。

 あの女ってのは、この杖の制作者か?

 一緒になって追い出したって言ってたけど、随分と他人事だな、てかそんな自信満々なら先にやってくんない?

 そのちょうど同じくらいで、調節してやるから、


「あの的に当てればいいのじゃな、それいくのじゃー!!」


 あー、レーザー。

 これ魔法一発じゃないとダメなんじゃないかな、あれ一発にも見えるけどめちゃくちゃ連射してるし。


 しかも一発目で的ぶち抜いて、その後で周りも消し飛ばしたし。あーほらメガネ君もわ呆れてものも言えなくなってるよ。


 レコウもメガネかけてるんだから、ちょっとは知的に、まあ可愛いからいいか。


「『炎弾』、っと」


 というわけで、あのドラゴンがめちゃくちゃやらかしてくれたので、残る僕は気楽なもの。

 シンプルな炎の弾で、的の中心だけをくり抜き消し飛ばす。

 レコウみたいに無駄に奥の壁まで傷つけず、的を越えた時点でしっかり消火。


 うん、地味だ、これなら授業の範疇で、何も問題ないはず。


「……な、今の、偶然か⁉︎」


 どうしたメガネ君、君の番だぞ。

 確かにインパクトでは、レーザードラゴンには勝てないかもしれないが、人間が人外に競うもんじゃないからしょうがないさ。


「くっ、『水の刃よ、あの的を穿て!』」


 おお、水だ、水流のナイフだ。

 わざわざ構えてまでそれって、効率悪くない? まあ人体への殺傷力は高そうだけど、的の方に懐かしさを感じてしまうな。


 一発命中、中心に、まあ数ミリズレてるけど。

 的に刺さって、しかし地味だな、僕以上では? まあ向き不向きの問題か。


 ……外野が騒がしい、レコウの周りに人が集まって、あの子、満更でもない表情だな。まったく。

 僕の方には誰も、メガネとか、王子とか、先生とか、敵とかの視線は感じるけど、


「……っ、何故誰も気づかない。あの光も確かに強力だが、こちらの方がよほど精密に練られた……、」


 ……ありゃ、メガネ君。

 自分の方を誰も褒めてくれないから拗ねてるのか、

 主席だって話だったし、今までちやほやされてきたのかな、うん。

 一応、フォローしておいてあげるか、うちの子がやりすぎちゃったせいだし。


「……あー、落ち込むな、メガネ君」

「メガネ君!? わたしには、エインファール——

「あうん、エインね」


 危ない、また長々とやらせてたまるか。


「それでエイン君。あの子、レコウはちょっと、その、特殊だから。あんまり意識しても……ね、」

「……別に、あの程度。ただの力押しだ、意識などしていない」


 負け惜しみだ、まあ触れないでおいてやろう。


「わたしが興味を示しているのは、むしろ……、」

「……むしろ?」

「……いや、いい。それより聞かせろ。貴殿から観て、わたしの魔術はどうだった」


 どうって、正直な感想言っていいのか?

 命もかかってないのに、人の頭の中ズケズケと測定するのもあれだしな……、


「痛そう、」

「……は?」

「表面は鋭く整っていたけど、内部の水が乱雑に動いていた。神経を掻き回されるのは、なかなか慣れない」

「……乱雑。そう、か」


 ありゃ、駄目か?

 うぐぐ、面倒臭い、こんな男、別にどうでもいいのに、


「だけど、真っ直ぐだった。真っ直ぐ、的に向かってた」


 ちょっとズレてたけどな、とは言わないでおいてやろう。

 というか、いい加減他に褒めるとこないんだけど、


「……それは、いいことか?」

「え、そりゃ、曲がってるよりは?」


 何だ? あれか、レコウは的全部消し飛ばしたから、それに比べてこっちの方がまさってるかってことか。

 うんまあ、あれはちょっとズルだしね。


「…………ふむ。貴重な意見。感謝する」

「えっと、恐縮です?」


 ……よくわからないけど、元気になったならよしっ、

 これで、レコウに変な矛先が行くことはないでしょう。

 まあ、実際飛ばしても、かすり傷すらつかないだろうけど。


「…………、」


 視線。さて、他の人の魔法は、


 ……え、何でみんなあんな長々と詠唱してるの? 弾遅いし威力低くない? 中心ズレまくってるし、当たってない人もいるんだけど?


 ……あーそっか、測定するならゆっくりやった方が良いか。

 それにあの的、壊すようじゃなくて当てるようだったんだ、失敗した。

 命中精度は、まあ、流石に僕に勝てるのもそういないだろうし、うん。


 王子と、宰相と、そこら辺の魔法はまだマシだった。

 後は……、まあ、そのくらい。

 多分、授業って、そんな全力でやるものじゃないしね。




 お昼だ。

 昼食のために、時間をとって休む。

 うーん、慣れそうにない文化だ。


「がっくえん、おっひる〜、たっべほーだ〜い、なのじゃー♪」

「いや、お金はかかってるはずだけど。まあ、レリアのですらない貴族の金だから、別に良いか」


 ……流石に、主に貴族が通っている学園なだけあって、一番安いメニューでさえ豪華。

 パンすら、口に合わなそう。


「レコウ、後これ全部食べて良いよ」

「……水しか取ってないのじゃが」


 水すら綺麗、何で贅沢!

 でもまあ、レコウは自分の分あるし、いらないか。じゃあこれどうしよう。

 栄養バランスはちょっと偏ってるけど、材料はいいし……、

 そうだ。ちょっと手を加えて、アレンに食べてもらおうかな。


「…………おい、あれが、」

「…………ああ、あそこなんかから来た


 じゃあこれは、部屋に運んで、

 おっと、足を引っ掛けるところだった、危ないな、


 よっ、とっ、ちょっとここらへんの人、足ぐせ悪くない? もう、アレンのご飯を落としたらどうしてくれるんだ、


「……邪魔じゃ、」


 バキッっと、良い音。レコウ?

 ああもう、何やってるんだあの子は、こんな程度に引っかかって。


 ……そんな事より、早くこれをアレンに届けなきゃ、美味しく食べてくれるかな〜♪


「あっ、おお、あの人達って!」

「きゃ〜、殿下だわー! いつもながらかっこいー」


 ……食堂がざわつく、主に姦しくなる。

 何だきゃーって、そんな事、本当に言う奴がいるのか、アレンに対して以外。


 男、五人、決まったメンツ?

 そしてその中心には、もう一人、女、


 ……あー、僕、いずれあの中に近づかなきゃいけないのか?


 まあ、今日はいいや。アレンより優先することなんて、この世にないからね。キャー、


「……一人か? どこに行くんだ?」


 ……と、何だ?

 メガネ……、じゃなくてえっとー、えー、んー、いー、そうエイン君。


「うん。部屋に戻って、食べるかなって」


 アレンが。だから何か、そんな疲れた顔してないで、さっさといつものメンバーみたいなところに、戻ってくれないかな。


「そうか。折角なら、ここで一緒に食べて行ってはどうだ?」

「えっとー。まあ、それもいいけど、一人でいる時間も悪くない、からね」

「……模範生として、それはどうだ」

「いやそんなものになれとは、誰にも言われてないけど。僕は僕だ、好きにさせてくれ」

「…………、」


 だからほんと、いつまで話すつもりなんだ。

 アレンのご飯が、冷めちゃうだろうが、まあ、どうせ手を加えるからいいけど。


「あ、そうだ、これあげる」

「……デザート? 何故だ?」

「疲れた時には、甘いものがいいからね、」

「いや、わたしは、」

「それに、こういう作られた甘いもの、苦手だし、」


 アレン。そいういところも、カッコいいよねー。

 後、栄養的に観てもこれは余計だ。

 完成されてるから弄りずらいし、あげてしまった方が、手っ取り早いだろう。


「じゃあ、またね、」

「あ、おい、」


 聞こえません。

 これ以上ここにいてたまるか、僕は部屋に帰らせてもらうぞ。

 耳を塞いでダッシュだ!




「……興味深い、。いや変な、奴だな」

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