表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
情報過多の荷物持ちさん、追放される  作者: エム・エタール⁂
聖女さん、追放される (神聖学園編)
19/124

間話 屋敷での一日


 貴族の屋敷、うーん吐きそう。

 しかもレリアの家ですらない、誰かの家。うーんさっさと出ていきたい。


「ここ、なに。勝手に使っていいの」

「ええ、ワタクシの協力者の家。つまり好きにしていい場所ですわ」

「それもどうかと思うけど、」


 微妙に高いのかもよくわかんない、絵とか美品とかがひしめいて。うーんごちゃごちゃだ、とりあえず数揃えたって感じもする。

 あ、これは贋作だな、目利きもしてたから何となくはわかる。


「まあいいわ、とりあえず、食事にしましょうか。そこで、あなた達の顔も紹介します」

「パス。貴族の食事とか絶対合わない」

「いやパスとかないわよ、」


 ただでさえ嫌なのに、そこに何かいるんでしょ? いいよ、見たくない。


「まあまあ、ここは我がセシィの分まで食べ尽くしてくるから、それでいいじゃろ?」

「何をもってそれでいいと思ったのかしら? ……まあ、いいわ、」

「結局いいのかじゃ、」

「ええ、どうせなら、顔も知られてない方が、面白いかもしれないしね。ワタクシの方から、説明だけしときますわ」

「どうもじゃな!」


 ……あ、レコウと二人で行っちゃった。


 自分でも、合理的でない無駄な感情を述べてただけなのに。それが本当に通っちゃうと、変な気分だな。

 何だろう、落ち着かない、恥ずかしい、でも悪くない。

 子供のわがままって、こんなものなのかなって、知れた気がするよ。




「よしセシィ! 厨房に行くのじゃ!」

「あれ、レコウ、食べてきたんじゃないの?」


 ちょっと時間を空けて、レコウが帰ってきた。

 僕は何もせず、ぼーっとしていた。


 何もしないのは得意なものだ。慣れてるとは少し違うけど。

 目立たず、反応されず、何もない時間。

 それが僕にとって最もマシで、それを作るために普段は、思考を回し続けていたから。


 でも、別に、好きなものではないな。

 最近は、特に。今だって、あまりいい気分では無かったかも。


「僕はいいよ、お腹空いてない」

「むう。いやそれじゃあ、我のご飯を作ってくれじゃ!」

「……今、食べてきたんじゃ??」

「おう、食い尽くしてやったわ! 足りないと言って、もう材料から好きに食えという文言を引き出してやったのじゃ!!」

「どんだけ、食べる気なの???」


 この子、普段は食べる量減らしてるのかな。

 まあ確かにドラゴンだもんな、元のサイズから考えたら、全然食べてないか。


 いつも、気を使わせちゃってるのかな。


「それに、高い材料使いたい放題じゃぞ。愛しのオスに、いくらでもご飯を作り置きできるぞ、」


 さて、厨房はここだな、

 あれ、レコウ? まだ部屋にいるの? 早く来なよ。


 ——わ、我の目でも追えんかった、じゃと?


 もう、何ふざけてるの。


 ふふ、それにしてもここは、アレンの物がいっぱい。これは全部血肉となる、つまり実質的アレンに囲まれてるって事!!

 え、三食の分? ……いずれアレンの非常食になってもらうって事で、実質アレン? いやそれはそれでなんかやだ。


 よーし、じゃあ作りまくるぞー!!


「ふう、やっと追いついたのじゃ」

「あなた、何やってるの? 今、なんか魔法使わなかった?」


 あ、レコウと、なんか。

 途中で合流したのかな、あとこれは魔法じゃなくて、アレンへの愛がなせる技術だ。


「ほー、相変わらずうまそう、そして作るの速いの」

「まあ、ご飯出すの遅いとイラつかせちゃうからね、早い安い上手い! を全力で実現させたよ。まあ、今回は安くはないけど」


 正直、あんまり普段と変わんなかったな。

 物はいいんだけど、安い物を仕立て上げる能力を鍛えすぎて。


「あらー、本当に美味しそうね。あなた、料理人としても、やっていけるんじゃないかしら」

「料理人どころか、多分あらゆる雑事を完璧にこなすのじゃ」

「私のメイドに欲しいわね〜」


 アレンのため、世界最高峰の下僕を目指しました。まだまだ、道は半ばです。


 ……メイド服、アレンの前で、

 いや、僕が着ても、ギャグにしかならないな。


「少し、味見してもいいかしらー」

「ダメ。……そっちの、あまったやつなら、レコウに聞いたらいいけど」

「ふーん。これは全部、一人のためってことね? もう、やいちゃうわ、」

「いやー、こっちを見てるとこ悪いんじゃけど、我の分ってわけでもないんじゃよなー」


 しかし、いっぱい作ったから、その分あまり物も、いっぱいになってしまったな。

 これなら、二人で食べようが問題ないかな?


「……むぐむぐ、しかし、いつもと変わらんの」

「ええ? あなた、いつもこれ食べてるの? いいわー、羨ましいわぁ」

「ほれ、セシィも味見してみろ」

「まくぐぅ! 急に入れないでよ」


 というか、別に直接口に含まなくても、味くらい見れば、

 おい、何だその目、料理人ならみんなやってるだろ!?


「この子、いつもこうなの?」

「いつも、こうなのじゃ、」


 ちょ、おい、お前、レリア!

 なに君までスプーン近づけてくるんだ、大人しく自分の分食べてろよ、あ、やめ、


「……なかなか、楽しいわね」

「そうじゃろそうじゃろ、我は、ほぼ毎日やっとるぞ」

「いいわねー」


 まぐまぐまぐまぐ、国の中が空かないから反論もできない。

 くそぅ、一度口に入った食べ物は、カケラに至るまで消化しないといけないんだ。

 染みついた習性のせいで、まったく拒めない。ぐまぐまぐまぐま、


 結局、お腹が膨れ上がるまで、詰め込まれました。

 ポテ腹、イカ? 何の夢?

 しかし詰め込まれた食事は意地でも消化する、僕の猟犬本能は凄いな。普通、こんな急に食べたら吐いちゃうよ。


 ……そういや、最近は食事量増えてたっけ。まったく、一度増やしちゃったら、元に戻すのは大変なんだぞ。もう、


「……んー、この体型、まさしく餓鬼。メスガキって言うと、ちょっと夢が喜ぶ」

「なに言っとるんじゃ?」

「ただの夢への現状説明。それよりレコウ、僕にイタズラするのに夢中で、全然食べてなかったんじゃ?」

「んー、そうそう、ちょっと楽しくての」


 まったく、この子は。

 もうあまりものは無いよ、材料はまだあるけど。


 ……なら、レコウのためだけに、なんか作るか?

 それは……、まあ、材料も、あまってるしね。食材を無駄にしちゃ、いけないもんね。


「……まあ、確かにいくらかは捨てられるでしょうけど、元々この家の食材なのだけど」

「じゃあ、なおさら気分がいい」

「捻くれてるわねー、」


 さてと、何を作るか。

 ふむ、せっかくなら高い食材を使った、

 あ、砂糖がある。アレンはあんまり甘いもの好きじゃ無いから、殆ど使ってなかったな。

 後は、新鮮な材料でも使うか。


 混ぜてグルグル状態を変化。

 素早く掌握し、状態を編集。

 熱を『放出』し雑味を『収納』し、『苦味を僅かに挿入、余熱を収納、形状を操作、光沢をいじって、栄養を管理して、ニオイを別から植え付ければ』。


「ほら簡単に、プリンができました」

「あなた、今えげつないことしなかったかしら?」

「おお! うまそうなのじゃ!!」


 そうだろう、これが異世界の夢の力だ。

 僕の力なんて、全く関係のない、誰かの知識の塊だ!


「うっ、これはー!!!!」

「え、なに、何で吹っ飛んだのですわ!?」

「うん。いい反応。これでこそ、きっと夢も喜んでるはず」

「いや、そんな冷静に……。うっ、これはですわー!!!」


 呆れた様子で眺めていた彼女も、一口食べたら吹っ飛んだ!

 ……この人、結構ノリいいな。


「これ、量産はできるかしら、店を出しましょう。この国が取れるわ」

「いやガチの目をしないでくれる?」


 せっかくなんでレシピを渡したら、物凄い怪訝な目で見られた。

 なんだよ、自分の能力を使って時短くらい、料理人なら誰でもやってるだろ!?




「……いやー、満足したのー、」

「結局、あっちの方が、めちゃくちゃ騒いでたね」

「ま、それだけセシィが凄いってことじゃろ。我も鼻が高いのじゃー」


 ……まったく、そんなに褒めても、別の世界の遺物しか出てこないぞ。


「……あ、そうじゃ、我はそろそろ夕食を食べに行くのじゃ」

「うそー!?」

「ふふふ、何でもまた別の人が来るそうでな。セシィは部屋で休んどれ」


 …………子供扱いだ。

 別に、その程度、何も思わないのに。

 恥ずかしくて、もどかしくて、でも悪くない。そんな感じ、


「じゃあ、デザートでも作って待ってるよ」

「……いや、流石に、もういいかの、」


 あ、そうなんだ。てっきり、無限に行けるのかと、


「いけないこともないが、今は見た目相応じゃ。それじゃ、また夜にのー」

「うん」

「先に、ベットで待っておってもいいぞ」

「変な意味に聞こえる」


 というか、屋敷なんだから部屋もいっぱいあるのに、わざわざ同じ部屋に戻ってくるなんて貧乏症だな、お互いに。


「……いってらー、」

「おう、」


 …………。


 …………ふぅ、また、何もない時間だ。

 やっぱり、ちょっと苦手かもしれない、昔に戻ったみたいで、


 …………あー、何か、作業でもしてるか。

 金とか宝石とか余ってるし、加工でもしてみる? でも一から作るのって苦手なんだよな、何か参考にと。


 ……それでたまたま、ちょうどいいのがあったから、ってね。


 また、吹っ飛んだら、面白いな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ