11話
アレンの朝は早い、
多分、昨日も遅かったし、日は登ってるけと、早い方だよね?
ともかく彼はまず着替えを、は、そういえば、着替えはいつも僕が用意していたけど、今は誰が!?
まさかあの三色ども!? くそっ、だが、アレンに手間をかけさせらるよりは!!
……あれ? なんか普通に自分で用意してるな、何で?
「……いや、それくらい普通できるじゃろ。やはり、セシィが甘やかしすぎたせいで、ああなっとった部分もあるのでは」
う、ぐ、だって。少しでも楽してもらおうとっ、
「というか、そやつ着替えてるんじゃろ? 良い加減、盗み見するのはやめてあげるのじゃ」
いや、でもー。これ止めようと思ってやめられるものじゃないしー。
「あー、我、例の空間に取り出したいものがあったのー、ちょっと来てくれんかー?」
え、うん、一人で言ってきなよ。
「セシィもっ、来るのじゃ。あの中なら、見えないんじゃろ」
あー、そのー、めんどくさいしー、今ちょっと手が離せないからー、
「認めたな! 今覗き見に夢中ですって認めたな!?」
違います〜、着替え中は無防備になるから、警備を強めてるだけです〜。
「うおぅい! どうせそんなことしなくとも、ガチガチに防護策重ねてるじゃろ!! 良いからくるのじゃ!」
やーめーて〜。あー、乱暴じゃないから抵抗できないー、
「ほら行くぞ、なのじゃ!!」
あー、アレンー、あー……、お、相変わらず、おっきい、
「乙女として最低じゃ!?」
しょうがないじゃん目線合うんだから。いやほんと、臨戦態勢の時にちょうど良い高さに、
「やめろー! 我も同じ高さじゃから想像しちゃうじゃろー!?」
うぇへへ、うぇへ、うぇへー。おへそ越える、
「ぎゃー、卵生なのにヘソまで再現するんじゃなかったー!?!?」
まあ、一生、外から測る事しかできないんだけどね、
「いや、その自虐感でも、もう誤魔化しきれんぞ。良い加減ちょっと女子力が低限突破しておる」
いいもん、別に花嫁になれないのに、花嫁修行一通りマスターしてるもん。
「もー、ほんとセシィは自信があるのか無いのかわからんのー」
アレンに対してなら世界一、それ以外になら世界逆一だよ。当たり前じゃん、
「うー、ポジティブにネガティブな奴なのじゃ〜、」
……お、アレン着替え終わった。新衣装だ、肩の採寸ちょっとズレてる、あとで直しておう。
「しまった!? ついのせられてセシィの凶行を止められなかったのじゃ! 我は無力じゃ〜、」
ふふふ、満足。
「……隣の部屋、一人でうるせえな、」
眼福の朝も過ぎて、正気に戻った今日この頃。
「うぅ、僕はクズだ、ゴミクズだ、ゴミクズ変態ストーカー女だ、ドMボクっ娘サイコパスヤンデレ貧乳ロリだ」
「うわぁ、自覚あったんか、情報過多なのじゃ」
はい、僕はそんな荷物持ち(追放中)です。
「うぅぅ、僕はやっぱり、アレンの元にいちゃいけないんだー……、」
「うん、そうじゃの」
「うわぁーーーんっ」
「面倒臭いのー」
ぅう、次は遠くの町へ行こう。
そしてアレンのいない地で悟りを開いて、ただアレンを守るだけの概念となろう。
「それやったら、我のお宝を運んでくれる友達が居なくなるから、却下かのー」
「ううぅ、う、う?」
うー……、
そういえば、元々遠くのダンジョンに行こうって決めたんだっけ。お宝探すために。
そうだ、そこで何か、一生一人のために尽くして、あらゆる身の危険から完璧に守って、普段の身の回りの世話から生理的欲求まで完璧に満たせる、アレン専用の魔道具を見つけに行こう。
「そんな夢のような魔道具、あるわけないじゃろ。いや人なら、居るんじゃけどのー、」
「うー?」
「まあ、確かに、別の意味で身の危険はありそうじゃけども」
そんなものないよ、だって、僕は……、
……いや、だからこそ、探しに行くんだ、
「うぅ、でも、アレンとまた離れるなんて、」
「まあまあ、我の翼なら、いつでも会いに行けるしの」
「別に、アレンの鞄経由すれば、いつでも帰ってこれるけど」
「あー、あったなそんなの……。なのにそんなにぐちぐちしてたのか!?」
うぐぐ、駄目だ、一度再会してしまったせい、で心が弱くなってる。
本当なら、もう二度と会わない覚悟だったのに、でもアレンの方から早く来てくれたと考えると、嬉しい。
「うぁー、また変なこと考えちゃうー! もう良い、行くっ、」
「あ、ちょっと待つのじゃ、先に宿屋に挨拶して行かないと駄目なのじゃ!」
「うぎー、レコウに社会背で負けそう。あうー、こんな社会壊れてしまえー」
……はぁ、自己嫌悪におちいっているうちに、レコウは一人で行ってしまった。大丈夫だろうか。
いや、あの子は昨日も一人でチェックインができてたみたいだし、僕よりよっぽど問題ないか。
それにしても、やけに人間社会に手慣れてる。初めてみたいな態度だったけど、前にも経験が。
……あの引き篭もりドラゴンですら、立派に人間のように振る舞えているのに、本当に僕は、
僕なんて、別にいてもいなくても——、
「魔物が出たぞー!!」
「ぎゃーー!? なのじゃーーっ!?」
……、
全くあの子は、しょうがないな〜、
「た、大変じゃ、魔物が出たぞセシィ!?」
「え、うん。かくほー?」
「もうっ、今ふざけてる場合じゃないのじゃ!?」
「あ、はい。……えー?」
腕を掴んで連行しながら、宿の外に出てみる。
町全体が騒がしい、そりゃ中にドラゴンが侵入したと分かったら、そうもなりそうだが。
どうにも、そういうわけでもなさそうで?
「あっちの方から、魔物の大群が押し寄せて来たらしいのじゃ!」
「んーー、うん。見えてる」
「どんなもんじゃ?」
「強さは、大した事ない。でもこの数、動き。隠れて統率してる奴がいるな」
少なくとも、今は見えないが、
距離が離れ過ぎてるのもあるけど、下手すれば昨日の賊よりも、うまい潜伏魔法を使っている可能性があるか?
「そんな計画的な襲撃が、なぜ急にじゃ!?」
「わからない。多分、アレンが、勇者が来たからだと思うけど」
「なに! なぜ勇者がここに居るとわかって……、」
そんなこと、僕が知りたい。
僕でさえ、魔法使わないとアレンの正確な行動を外す事があると、わからされたのに。
「……あれ、じゃ。勇者の居場所がわかって、勇者が来た途端の街に襲撃が起きて、それができて一番得する……、」
「ともかく、司令塔だけは、先に潰す、」
「か、かくほーじゃ!?」
「え、うん」
確かに、ただ殺すだけじゃなくて、情報をに抜き取らないといけないか、
面倒だ、早く行かないと、だからレコウ、ひっついてこないで、
いや、何でこの子こんな腕掴んでくるの?
「つ、ついにやったんかセシィ。貴様、あのオスのためにそんなマッチポンプまで、」
「は? レコウ、今ふざけてる場合じゃないでしょ」
「あ、あれ? てっきり我は、セシィが自作自演しとるのかと、」
「何言ってるの、僕がそんなことしなくても、アレンなら自然とこういう運命的な事件が起こせるでしょ。そもそもこの一件も、アレンの光に呼び寄せられた、必然の偶然だったのかも」
「えーーー……、」
「なら納得、」
して、思考を止めるわけにもいかないから、今から捕まえに行くんだけど。
何せ、僕はアレンのパーティの、情報収集も担当していたからね。
「追放されたがの、」
「しゅん、」
「あ、傷がぶり返しとる。すまん!」
うるさい、もう耳を塞いでさっさと行こ、
「あ? 昨日の嬢ちゃん達か? ちっ、ここは危険らしいぜ、隠れてな」
「あ、勇者じゃ、」
「あれれれれれれれ、」
こけた、レコウが掴んでたか大丈夫だったけど、体幹強いな。
いや、あの、そんなことより、アレレレレレレレレレレ、
「ん、俺様の名前、名乗ったか?」
「いや、この娘はちょっと、魔物のせいで気が動転してるだけなのじゃ。……この視線の高さらしい夜の魔物に……、」
「アレレ? ナニミテンノ?」
「ナニじゃ! 怖いからその顔やめろ!?」
あー、アレンが遠ざかっていくー、乱暴じゃないから抵抗できないー、本日二度目。
でも助かる、アレンに見える位置からじゃ行動できないし。
あ、あの三色どもも出てきた、おせーよ、化粧してたんじゃないだろうな、
「……ちっ、黄色まで、赤は別にいらねーだろ、緑シネ」
「おーいセシィ!? この辺なら人もいないんじゃないか!! 行くぞ!!!!」
不自然なく離れるためしょうがないとはいえ、反対方向に来ちゃったな。
向かいたいのはあっちなのに、
「いつものワープすれば良いじゃろ、ほれ我が飛ぶから、」
「あれは駄目、あの中の間は得れる情報が極端に少なくなるでしょ。出る時が無防備で死ぬよ」
「え、でも昨日は、」
「昨日は大体の地形も先にわかってたし、時間もあったからね。今回はそうはいかない」
そうだ、人間の賊を相手にするのとは訳が違う。
魔物を率いた、おそらく魔族。
人類の敵、僕には関係ないけど、アレンの敵、
僕が勝てない可能性だって、十分にあるのだ。
「まあ、僕が死んだところで、悲しむ人なんていないけど、」
「セシィ、我は、」
「悲しむ爬虫類はいるからね、」
それにもともと夢のため、そう簡単に死ねることなんてできないし。
「行くよ! レコウ!!」
「おう! って何でおぶさるのじゃ?」
「裏路地だ、あそこを通れば人目につかない! 別の偉業も生えてきたし、最悪全員消しても良い!!」
「流石にそれはなのじゃ、見つからんように行くぞ! それで、何でおぶさるのじゃ、」
「僕は持久力には自信があっても最高速には自信がない! それに疲れる! GO!!」
「えー、もー、セシィはしょうがないのー」
その上ドラゴンライダー! 男の夢も喜ぶ。
絵面は、ちょっと、あれだけど……、
これはこれで男の夢? わかんない。




