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与えられた禁忌の魔術で復讐を ~凛として咲く仇花~  作者: 一ノ瀬 凪
第三章 追憶のアザミ
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67. 遊戯から考える戦争の局面


 人混みに紛れて金髪の男から逃げ去ったクライアと凛は、横に長いテーブルに置いてあるグラスを手に取る。


「どうやら早速洗礼を受けたようだな」


 クライアは凛に小声で囁くようにそう言った。

凛はクライアに助けられた感謝と失態を見せてしまった不甲斐なさで複雑な気持ちになる。


「お助けいただきありがとうございます」


「まぁこういう場は多くの種類の人間がいる。

 それを知る事を楽しむ気持ちでいればそこまで苦ではないはずだ」


「肝に銘じます」


「フン、大袈裟な返事だな。

 ・・・だが、そうは言っても楽しみ方は様々ある。

 カードをプレイする者、踊りを楽しむ者、人との会話を楽しむ者。

 何か惹かれるものはないか?」


 凛は数秒悩んだ末に結論を出す。


「強いて言うのであれば・・・カードですね」


「ほう、そうか。

 ならあちらの奥に遊戯をするスペースがある。

 やり方を教えよう」


 クライアはそう言い、人の隙間を通り奥へと進んでいく。

凛もそれに置いていかれないように続いた。


 四角いテーブルを挟んで向かい合うように置いてある椅子の左側にクライアが座り、凛は右側へと座った。

クライアはテーブル中央に置いてあるカードの山を手に取り、この盤上遊戯の説明を始める。




 ――というルールだな」


 少し複雑なルール説明が十分ほど行われた。


「ある程度は理解致しました」


「これは何度やっても面白くてな。

 戦争時の戦況判断能力などが養われる感覚がある。

 そういう意味合いも含め、個人的には一番気に入っている遊戯だ」


「そうなのですね!楽しみです」


「兎にも角にも百聞は一見に如かず、試しに一度プレイしよう」


 クライアが主導でカードを盤上に配り、並べていく。

そしてゲームが始まり、所々で解説や説明を入れながらもクライアの勝利でゲームが終了した。



 ――どうだ? 意外と面白いだろう?」


「はい!今ので完全に理解したのでもう一度お願い致します!」


 凛は初めて人とのボードゲームの楽しさを知った。

この仮面舞踏会での楽しみ方の、カード、踊り、会話の三択は、正直どれにも魅力を感じていなかった。

コミュニケーションを楽しむという概念が分からない凛からすれば、強いて言うのであればカードなだけだったのだ。

しかし、いざやってみると思った以上に面白く、自分の先入観が経験の可能性を狭めてしまっていたのを痛感する。


 二回目のゲームが開始され、ルールを理解した凛は先ほどよりもかなり善戦していた。


「今日が初めてにしてはかなりセンスがいいな」

「ありがたいお言葉です」


 二人は盤上を真剣に見つめながら自分の手札を確認していく。


「このゲームは戦場や政治を暗示させて作られている」


「・・・今はその意味が、何となくですが理解できてきた気がします」


「いい傾向だ。

 ではリン、現在の四大国の関係の中で我が国の状況はどう思う?」


「・・・私は難しい事はわかりませんが、

 勝利し続けている我が国は良い状況ではないかと・・・」


「一見そう見えるだろうな。 だがそうでもない」


「・・・そうなのですか?」


 クライアは盤上のカードと駒を動かしながら一呼吸いれる。


「戦争には段階があり、今は第一段階にあたる」


「段階・・・ですか」


「そうだ、一つ問うが、

 国内には魔術を扱える人間がいるのに

 なぜ戦場に出していないと思う?」


「・・・・魔術は生活の利便性を上げるもので、

 戦いに使うものではないからでしょうか?」


「国民たちはその認識が強いだろうな。

 ・・・四神教の教本の記載にある

 『魔術は人との争いで使用するものではない』

 あの項目が今も尚、効力を成している」


「はい」


「だが、いざとなれば魔術を使う戦争も起こるだろう。

 それが第二段階だ」


 クライアの一手が終了し、凛の手番に入れ替わる。


「・・・いざというのはどの時なのでしょうか」


 凛は自分の手番の手を止めて質問をする。


「自国の戦局が一方的に悪くなった時だ。

 つまり、我々の優勢が続けば続く程

 第二段階への移行の可能性が高まってしまう」


「だから現状は良い状況ではないということですね・・・。

 しかし、我々も魔術兵団を立ち上げて対抗すれば良いのではないでしょうか?」


「そうだな・・・・・・当然対抗する準備が必要になるだろう。

 だが、本当はその段階まで私はいかせたくない」

 

「と言いますと・・・」


「理由は二つあり、一つ目は四大国共通の認識だが、

 魔術師を対人の戦闘に送り出すという事は

 四神教の教えに反するという事になる。

 となると国民の理解を得ることがかなり難しく、内政の問題が生じるだろう。

 そして一番最悪のケースが二つ目だ、四神教の教えに反した事を餌に

 玉風の国と炎威の国に連合を組まれた場合、これが一番厄介なケースだ」


「なるほど・・・・・・。

 構図的には氷壁の国と土塊の国の

 それぞれが敵国のような扱いをされてしまい、

 連合を組んだ二つの国は

 正義の名のもとに魔術を行使することで

 国内での問題が抑えやすい・・・」


「あぁ、そういった懸念の可能性のお陰で

 世界は魔術を使った戦争は抑制されているのも事実だがな」


 クライアは少し悲しそうな表情に変化し、話を続ける。


「そしてもう一つ。

 我々の武装兵団は、武装兵同士なら敵なしかもしれないが、

 魔術兵団と武装兵団を含めた戦場となればそうはいかん。

 あいつらの中からも多くの死者がでるだろう・・・」 


 凛はその言葉で飲みの席での兵士達の笑顔が脳裏に思い浮かび、次の瞬間にはその兵士達が戦場で散っていく姿が再生された。


「それは・・・何としても阻止しなければなりません・・・!」


 凛はぐっと身体を強張らせながらそう言った。


「そうだ。

 だからこそ国境を越えて追い打ちをかけてはならない。

 敵国にむやみに大打撃を与えすぎてはならないのだ」


 凛はこの前の戦場での国境付近での引き際を思い出した。

言われてみれば敗走する兵士に追い打ちをかけた事はない。

クライア様はそこまで考えて軍を指揮していたのかと凛は感服する。


「段階を経るごとに間違いなく死者数は増えていく。

 魔術同士の戦争となれば我々も優勢とは言えん。

 本当はこの少し優勢な状態で均衡するのが一番良いのだ」


「大変勉強になりました。

 私も思慮深く考えて行動できるように精進致します」


 凛はその先の段階もあるのだろうかと疑問が浮かんだ。


「・・・ちなみにお聞きしたいのですが、

 第三段階はどうなるのでしょうか?」


「第三段階は・・・・・・戦争への勇者の参加だ。

 こうなれば死者の数は計り知れないものになるだろう。

 パワーバランスも崩壊し、

 どこかの国の勇者が亡くなればその時点でその国の敗北が決定する」


「勇者様はそれほどお強いのですね・・・」


「私も早苗以外は知らぬが、

 あの魔物軍勢を倒した人間なのだから相当強いのだろう。

 まぁ、今となっては魔術を使う事も殆どないだろうがな」


 クライアは顔を微かに横に向け、視線の奥で会話を楽しむ早苗をちらりと見る。

凛もその視線の先が気になり、その方向に目を向ける。

しかし、凛からは何も見えなかった。

それはクライアの異常な視力だから早苗を目で捉えられているだけで、通常の人間には見えない景色だ。


「早苗が酔ってしまう前にリンを紹介したいのだがな。

 まだ会話を・・・・・いや終わったようだ」


「でしたらこの勝負の続きはまた今度にしましょう」


 そう言って凛はカードを片付けだした。


「そうだな」




カードのルールを考えるほど頭は良くないので遊戯方法は割愛しております。笑


某TVゲームなどの物語の中にオリジナルのボードゲームを考えられる方は凄いなと感心します。

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