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与えられた禁忌の魔術で復讐を ~凛として咲く仇花~  作者: 一ノ瀬 凪
第三章 追憶のアザミ
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66. 理解し合える事のない互いの立場


 自室に戻ったクライアはベッドに座り、眠る娘のクレアを微笑みながら見つめる。

すると、ドアが開く音がした。

どうやら早苗も散歩を終えて戻ってきたようだ。


「宴会お疲れ様」

 早苗は寝室の入り口前に立ち、そう声を掛ける。


「あぁ早苗、五日後の仮面舞踏会は参加する予定だったな?」 


 クライアは腰かけていたベッドから立ち上がりながらそう聞く。


「えぇ、私にとっては久々のパーティーよ?

 とても楽しみにしているわ」


 早苗は腕を組みながら壁に寄りかかり、笑顔を浮かべてそう話す。

早苗はパーティーなどの席が好きだったが、直近三年間はクレアの子育てがあった為中々参加できずにいた。


「フンッ、そうだな」


 クライアはベッドを離れ、早苗の横を通り過ぎて居間に移動していく。

早苗は通り過ぎるクライアを横目で追い、クライアの移動した先に身体を反転させた。

早苗の視線の先のクライアは、冷蔵庫から水の入った筒を取り出している。


「それがどうかしたの?」

 早苗はクライアの質問の意図が何なのかわからなく、クライアに問う。


「その日、リンに挨拶をさせる。

 リンは直近で副団長に就任させ、

 ゆくゆくは武装兵団そのものを任せるつもりだ。

 ある程度コミュニケーションを取ってやってくれ」


 クライアは早苗に背中を向け、筒に入った水をテーブルの上のコップに注ぎながらそう話した。


「・・・随分とあの子に入れ込んでいるのね?」

 

 早苗は面白くないというような表情を浮かべる。

トンッ というクライアが筒をテーブルの上に置く音が響き、数秒の沈黙が流れる。


「・・・信頼のおける弟子というだけだ。 他意はない」

 

 早苗は聞こえない程度の小さい溜息をつき、目線を外にずらす。


「まぁいいわ、仲良くすればいいんでしょ?

 私は寝るからね、おやすみなさい」


 早苗は若干不貞腐れているような態度を見せながら寝室へと戻る。

クライアは無言でコップの水を飲み、コップを握る手の平には少しだけ力が入った。


――――


 五日後、仮面舞踏会の当日。

凛はクライアに事前に贈られていた仮装の衣装を身に纏う。

それは黒と紫を基調としたビクトリアスタイルのプロムドレスだった。

下半身部分はフワッとしていて足が見えない程の丈の長さが印象的だ。

 

 凛は普段訓練用の鎧を着ている事が多いので、こういう衣装を着る自分に違和感を覚える。


「・・・・・・着慣れない」


 凛は時計を見て、舞踏会の時間がそろそろだと思い、黒猫を彷彿とさせる仮面を手に取る。

その仮面は顔の上半分が隠れる仮面で、鼻より下の半分が露出する形状だった。

凛はその仮面を装着し、鏡を見る。


「おー・・・・・貴族っぽい」


 凛は一人呟き、身体を捻らせながら様々な角度で自分を見る。

新鮮な自分の姿を見る凛は少しだけ気持ちが昂り始め、様々なポーズを取ってみる。


 ポーズを色々試しているその時、コンコンッというドアをノックする音が聞こえ、凛は慌ただしく姿勢を戻す。


「コホンッ・・・どうぞ」


「失礼します」

 その声と共にメイド服を着た女性の使用人がドアを開ける。


「初めましてリン様。

 この度クライア様よりリン様の会場までの

 ご案内を任されております、ルイーゼと申します」


 使用人はそう挨拶をし、丁寧に頭を下げる。

その姿を見た凛は、ロングの茶髪が綺麗に結ばれていて顔立ちも綺麗な人だと感じた。

王族を担当する使用人はきっと綺麗で優秀な人が多いのであろうと凛は解釈する。


「武装兵団所属、リンと申します。

 ご案内宜しくお願い致します」


 凛も挨拶を返し、使用人の案内についていく。

使用人のルイーゼは廊下を歩きながら凛に会場の説明をし始めた。


「本日の舞踏会の会場はアンデル宮殿の氷武の間にて行われます。

 宮殿内での開催の為、ご参加される方は貴族のみで、

 おおよそ120名前後の方がいらっしゃいます」


「・・・わかりました。

 本日は身分を明かさなくてもいい

 パーティーなんですよね?」


「仰る通りです。

 しかし、リン様も貴族ですから

 それほど委縮しなくてもいいかと思いますよ」


「いえ、クライア様の御慈悲で領土を頂き、

 形式上貴族にしていただいただけですから・・・」


 凛のその発言でしばし沈黙の時が流れる。

凛は気まずくさせてしまう発言をしてしまったと後悔した。

何か話題を変えようと考えていると、ルイーゼの口が先に動いた。


「・・・クライア様はリン様の事を大切にされてるのが伝わってきます。

 リン様のお話しをクライア様から聞く機会がございまして、

 その際はいつも楽しそうにお話されていらっしゃいますよ?

 私も長年王族の使用人としてクライア様に仕えておりますが、

 あれだけ楽しそうに話すのは、今となってはリン様のお話の時くらいですね」


「そ・・・そうなのですね」


 凛は少し照れ臭い気持ちになるが、その言葉に少しの違和感を覚える。

具体的には、ルイーゼの今となってはという発言が引っ掛かった。

まるで段々と楽しみが減ってきているかのようなニュアンスにそれは聞こえ、凛は気になる。


「ちなみに以前はどんな話をしていたのですか?」


「・・・以前は早苗様やクレア様の話題が多かったですね。

 最近はあまりお聞きしませんが・・・」


 凛はルイーゼの変な間が気になったが、あまり深入りするのも失礼だと感じてそれ以上は控えた。

よく考えればクライア様の弱音やネガティブな部分は見た事がないと凛は思う。

見た事がなかったからこそ凛は考えもしなかったが、王子という立場で悩みがない方が異常だろうと思った。


 副団長になったら・・・私にその弱音を吐いてくれないだろうか。


 凛は使用人の足元をぼんやりと視界に入れ、それを考えながら足を進めた。



「到着しました」

 

 ルイーゼのその言葉で凛は顔を上げる。

そこには細かい装飾で彩られた大きい白銀の扉があった。


「では、本日はごゆっくりお楽しみください」


 ルイーゼは扉に手をかけ、頭を下げた状態のまま扉を開く。

すると楽師たちが踊りながら楽器を奏でているようで、陽気な音楽が耳に流れ込んでくる。

凛はルイーゼの開けた扉の中へとゆっくりと歩き、周りを見渡す。


 す・・・・・すごい。


 大勢の仮面を被った姿の人達がグラスを持ちながら会話を楽しんでいたり、テーブルを囲んで盤上遊戯を行っていた。

凛は想像よりも堅苦しくない雰囲気でホッとする。


 バタンッと音を立てて後ろの扉が閉まり、凛は一人になる。

凛はクライアから「着いたらまず私の元に来い」と言われていたので、探そうと動き出す。

クライアの仮装の見た目の特徴は口頭で伝えられていた。

黒と金の引き締まったコートに鷹をイメージした白い仮面を被っているそうだ。


 しかし、凛は周りを見渡すものの似たような衣装が多くて分からない。

どうやら男性は全員白い仮面、女性は黒い仮面をつけているようで、少なくとも仮面の色では性別しか選別できなかった。

凛は仕方なく特徴を良く見ようとぐるぐると会場を歩き回ることにした。


 凛が慣れないドレス姿で人を観察しながら歩いていると、一人の白い仮面の男と目が合った。

その男はこちらに向けて歩いてくる。


「こんばんは」


 黄緑色のコートに金の装飾が施されたコートを着た金髪の男は凛に挨拶をしてきた。

見た目からしてクライアではない事は分かっていたが、挨拶されてしまっては仕方がない。

凛は自分のドレスのティアードスカートをつまみながら頭を下げて同じ挨拶を返す。


「こんばんは」


 金髪の男はフフッと仮面の下から声を漏らした後、凛に話を切り出す。


「ちょっと君が気になって声を掛けさせてもらったよ」

「・・・はい」

「恐らくだけど、君は仮面舞踏会は初めてでしょ?」


 初心者をからかうようなその言い方に、凛はこの金髪の男はいけ好かないと直感で思う。


「よくお気づきになりましたね。

 何かおかしな点でもございましたか?」


「いやぁ、特におかしくはないが、

 君が扉から入ってきた時の様子と

 誰かを探しているような挙動でそう思っただけさ。

 初めての女性は心細いのかわからないが

 知り合いを探そうとする習性があるからね」


「あぁ、そういうことですね。

 というか、私がここに来た時から見ていたんですね。

 もしかして女性の人間観察がご趣味で?」


「ハハッ! その皮肉交じりな言い方は嫌いじゃないよ。

 むしろ君に対しての興味が更に湧くくらいだ。

 君がどういう女性なのかもっと知りたいなぁ」


生憎(あいにく)私はあなたに興味が持てそうにないので

 あまり長くお話はできかねますが、

 一つ私の性格をお伝えできるとすれば

 何事も好き嫌いはハッキリさせたい性格です」


「中々手厳しい言い方だな~。

 仮面を被っている事を良いことに

 他人を罵るのにまるで躊躇がないね。

 もしや、ここにはストレスを発散しにでもきたのかい?」


 凛の煽りに対して金髪の男も少し頭に血が上っているのを感じる。

最初は余裕のある口ぶりだったが先ほどの言葉は怒りを堪えた影響からか、声が震えていた。

凛は目を鋭利にさせながら仮面越しに金髪の男の目を睨みつける。

金髪の男の目は仮面で影になっているが、きっと目を充血させて凛を睨んでいる事だろう。

その睨み合いの途中、別の男が割って入る。


「おぉ~よく来たな! 向こうに飲み物を貰いに行こう」


 一際立派な黒と金のコートを身に纏い、鷹の白い仮面をつけたその男を見て、凛はすぐにクライアと気付く。

クライアは凛の肩を包み込むように腕を回し、無理やり金髪男から引き剥がすようにその場を離れた。



 金髪の男はそれを目で見送り、仮面の下でにやりと笑う。



 ふーん、そういう感じね?

ちょっと面白そうだなぁ・・・・・・。






早く続きを書きたくて堪らないのに

中々時間が取れずにもどかしい思いをしている一ノ瀬凪です。


とりあえず更新できたことが嬉しい・・・。

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