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与えられた禁忌の魔術で復讐を ~凛として咲く仇花~  作者: 一ノ瀬 凪
第二章 邂逅するスノードロップ
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57. 激戦


卓也はレンが炎に包まれている間に舞と早苗の元へ辿り着き、身体を起こし立ち上がる二人に声を掛ける。


「二人ともフードを被り直せ。

 ここからは遠距離魔術で攻撃を仕掛けていくぞ」


「わかったわ」 「了解!」

 早苗と舞は返事をして外れたフードを被り直す。

二人の様子を見るに比較的軽傷のようで卓也は安心する。

もうあと一人でも欠けたらこの戦いの勝機はない。


 辺りは既に月明りに照らされ始めていた。

この薄暗さならフードを被るだけでも景色に溶け込む事が出来るだろう。


 卓也が先ほど放った魔術の炎は、キャンプファイアーのように薄暗い周りの景観を赤らめていた。

そしてその明かりが徐々に小さくなっていくのに卓也は気付く。


 ボオォ


 レンを包む炎が消えていく。

卓也はそれを遠目で見つめていたが、そこにはレンではなく漆黒の球体が姿を現す。


「やっぱりあれくらいじゃ、くたばってくれないよな・・・」


 卓也は苦笑いし、魔術がいつでも発動できるように構える。


 スゥン


 漆黒の球体が一瞬で消え失せ、無傷のレンの姿が現れる。

それを見据える三人は、お互いが動きやすい距離を保ちながら横に並ぶ。


「スゥーー」


 その中心に立つ舞は、深く息を吸い込み、ゆっくりと息を吐き出す。

静寂の時間が流れ、夜風に揺らめく木々の音が際立って聞こえる。

レンと勇者達は向かい合うようにして静かに対峙する。


 数秒が経過し、舞は覚悟を決めたかのようにフードの中でキリっとした目つきとなる。


 ボヒュゥウ!!


 舞は足元に風を巻き起こして空中へと飛び立つ。

そして真空の弓矢を手元に召喚して構えた。


 それを合図に卓也と早苗も動き出す。

早苗が氷を荒波のように召喚させていき、その荒波の上に乗りながら早苗と卓也はレンの方へと進む。

フードを被った状態で二人とも氷の上に乗れば、どちらが炎、氷を扱うのかは相手に悟られないようにできる。

氷の上に乗る二人は途中で分岐し、右と左に分かれてレンを囲うように動いていく。


 それを上空から眺める舞は、構えていた真空の弓矢を放ち始める。


「真空竜巻・エアロスパイラル!!」

 

 舞の詠唱と共に、螺旋状に捻じれた高密度の風の矢がレンに降り注ぐ。

レンは右手を掲げて漆黒の盾を召喚し、その弓を防ごうとする。


 ガキンッ!!


 真空の矢は盾に弾かれた、舞は目を細めながらその盾を凝視する。

すると、漆黒の盾に初めての異変が起きている事に気付いた。

白く細い線で、微かにひびが入っていたのだ。

 

 「・・・! エアロスパイラル!!」


 舞はそれに気づくや否や、畳かけるように二本目の弓矢を放つ。

それは再び漆黒の盾に突き刺さり、ひびが更に大きな亀裂となっていく。


 氷の上を渡る卓也は想定外のその事実に勝機を見出す。


 あの盾、鋭利な魔術だったら壊せるのか・・・?

その可能性があるなら、さっきの球体も破壊できるかも知れない・・・!

思ったよりも攻略の糸口がある! これならやれる!!


 卓也は小細工はやめて、魔術で徹底的にあの黒い物質を叩くことを決意した。

早苗に腕を振り上げて合図を送り、二人は左右からレンを挟んで魔術を唱える。


「光焔・インフィニティ・イグニッション!」


「貫く氷晶・アブソリュート・フリーズ!」


 三方向からの同時攻撃が行われ、右からは爆発の連打が襲い、左からは鋭利な氷晶が襲い、上からは真空の弓矢が襲う。

卓也は鋭利な攻撃を持ち合わせていないので爆発の魔術を試しにぶつけようとした。

レンは三方向の魔術がぶつかる瞬間、再び一瞬のうちに漆黒の球体に身を包んだ。


 様々な音が混ざり合った轟音と共に、一気に全ての景色が不透明となる。

卓也の魔術による爆発と、早苗の氷が蒸発した水蒸気が、舞の風の弓矢によって広範囲に巻き散らかり、白い夜霧に包まれたのだ。


 卓也は霧に包まれた状態のまま早苗に向かって叫ぶ。


「氷山で閉じ込めるんだ!!」


 早苗はその声を聞き、即座に動く。

右手を後ろへと引き、引いた腕を天高く振り上げて唱える。


「氷の牢獄・アイシクルプリズン!」


 ピキキキキン!!!!


 レンの居た位置を包むように周辺から氷が出現し、勢いよく氷山が形成されていく。

地面から勢いよく生え出た氷は、辺りを包む淀んだ夜霧も吹き飛ばし、勇者の目線の先に氷山の中に氷漬けされた漆黒の球体が映った。

どうやら球体にも白く細かいひびが入っているので、先ほどの魔術攻撃が全く通用しない訳ではなさそうだ。


 早苗は閉じ込められた漆黒の球体を見て、少しばかりの安堵からか微かな笑みが零れる。

だが逆に、卓也はここからどうしたものかと考え始めていた。



 一旦動きを封じる事はできたが、あいつはあの球体の中で生きている。

この状況からどう詰めていくべきか・・・。



 上空で浮遊していた舞は、卓也が何かを考えている様子を察して卓也の近くへと降り立つ。


「卓也、ここからどうする?」


 舞はまだ気の抜いていない表情で卓也に問いかける。

卓也は目を瞑り、無言のままおでこに手を当てて思考していた。


「・・・このまま球体を壊す動きを取っても正直リスクだ。

 あの男ならすぐに対策し、二度も閉じ込められるヘマはしないだろう」


 卓也は自分の頭を整理する為に言葉を口に出す。

舞に向けて話しているようで、これは自分への確認なのだ。


「これしかないか・・・」


 卓也は独り言のようにそう言い、舞の方に目を向ける。


「舞、瞬太郎が飛ばされた方向に行ってきて欲しい。

 あいつの魔術が必要だ・・・」


 舞は少し驚く表情を見せ、卓也に内容を聞こうとする。


「連れてきてどうするの?」


「あの氷山ごと地面へと沈める。 それしかない」


 卓也の作戦を聞いて舞は納得する。

確かに氷山に閉じ込めたまま地面へと沈めてしまえばこちらにリスクがない。


「わかった。

 急いであいつの様子を見てくる」


 舞は風の魔術で宙に浮き、瞬太郎が飛ばされた方向へと急いだ。


 卓也は舞を見送り、再び氷山に閉じ込めた漆黒の球体へと目を向ける。


 まだ終わりじゃない・・・。

なんなら今あの氷山を破壊して飛び出してきても不思議じゃない。

このまま警戒しながら見張るべきだ。


「早苗、舞が戻ってくるまで警戒を切らすな!」


 卓也が早苗にそう叫ぶと、早苗は気を抜いていたのか一瞬ビクっとしていたが、気を引き締め直した様子で球体へと目を向けた。


 こうして一旦戦闘は終了し、卓也と早苗は月明りが差し込む氷山を左右から睨みつけるように見張り、舞は瞬太郎を探しに行く。



―――



 神殿の瓦礫から戦闘を眺めるルカは、レンが氷漬けにされてしまったのを見て不安な気持ちが芽生え始めていた。


 レン、やられた訳じゃないよな・・・?

ただ氷漬けになっただけで、あの球体の中から機を伺ってるんだよな?

あぁくそっ。 嫌な気分だ・・・。

勇者達はどうするつもりだ?

ただあのまま見張っているつもりか?


 ルカは動揺を隠せない様子でソワソワし始める。

他のメンバーも少なからず不安を抱く表情を浮かべていたが、その中でもルカは群を抜いて落ち着きがなくなっていた。

ルカからすればずっと追いかけ続け、目指すべき憧れの存在がレンだった。

その存在が傷つくところを見ていられないのだ。



―――



 舞は上空から瞬太郎を探す。

幸い白い月は徐々に明るく冴えてきた為、夜でもまだ探しやすい。


「大体ここらへんだと思うんだけどなぁ・・・あ!」


 舞は地面が不自然に砂に変化している場所を見つけた。

あれは瞬太郎の魔術の影響だろうと考え、そこへと急降下する。


 スタッ


 地に降り立つと、倒れている瞬太郎が目に入る。



 砂の魔術をここで使った形跡があるから、きっと生きているはず・・・!



 舞はそう思い、瞬太郎の元へと駆け寄り叫ぶ。


「瞬太郎! 瞬太郎! ねぇ! 起きてっ!!」


舞は瞬太郎の肩を掴み、揺らしながら声を掛け続ける。


「・・・・うっ」


 すると瞬太郎は薄く目を開き、呻き声を上げながら意識が戻った。

舞はほっと一息つき、間髪入れずに状況を説明する。


「よく聞いて、今あの魔王みたいな奴は氷山で氷漬けにされている。

 でも、バリアみたいなのに守られたまま氷漬けになっていて倒したって訳じゃないの。

 だから瞬太郎に頼みたいのは、氷漬けのまま出てこれないくらい地面深くに沈めて欲しい」


 瞬太郎は朦朧とした意識のままだが大枠を理解し、乾いた声で笑う。


「・・・へっ。 要は俺がいなきゃトドメは刺せないって事か」


 瞬太郎は自分の魔術がなければ勝てないというこの状況で良い気分になり、優越感に浸る。

舞は瞬太郎がなにを思っているかを理解し、気持ち的には不快だが助長させて動かそうとした。


「そ、そうなの! 瞬太郎の魔術がすぐに必要!

 だから早く戦場に戻ろう! 動ける?」


 舞は急かすようにそう言い、瞬太郎はふらつきながらも立ち上がる。


「くそっ・・・頭がいてぇ」


 暫く意識を失ってたからか、瞬太郎は頭を押さえながら呟く。

だが動けないという訳ではなさそうなので、舞はてきぱきと方向を示そうとする。


 ボヒュゥウ!


「こっち! ついてきて!」


 舞は先導するように空中へ飛び立ち、低空飛行のまま滞空する。

それに合わせて瞬太郎も動き出し、足元の地面をコントロールし始める。

舞は瞬太郎が動けるのを確認し、氷山の元へと目線を向き直して飛んでいく。

瞬太郎も舞に続き、滑るように地面の上を波立たせて移動を開始した。





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