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与えられた禁忌の魔術で復讐を ~凛として咲く仇花~  作者: 一ノ瀬 凪
第二章 邂逅するスノードロップ
56/67

56. 勇者 VS レン

 

 先に魔術を発動したのは瞬太郎だった。


「土槍・ガトリングスピア」


 瞬太郎にとって対人で先手を打つのにはこの魔術が一番使い勝手がいい。

瞬太郎の周りに土の槍が複数形成されていき、円を描くように槍たちが宙を浮く。

走る瞬太郎が目をギンっと見開くと、それを合図にレンに向けて次々と槍が発射された。


 レンはすっと右手を上げ、手のひらを飛んでくる槍へと向ける。


 フオォン


 不気味な音と共に円状の盾のような漆黒の暗黒物質が右手の前に現れた。

その盾によって土の槍はレンに届かず、盾と衝突したのちに砂塵となっていく。


 瞬太郎は槍で牽制してる内に足元で地面を隆起させ、自分をレンの方へと飛ばす。

地面を利用したその高い跳躍は、空中のレンの更に上へと飛び立っていく。

瞬太郎は、飛びながら自身の右手に土槍を形成して握り締め、レンへと向けて落下した。


「オラァァア!!!」


 宙に浮くレンに、瞬太郎は上から突っ込んでいく。

右手の槍を思い切り後ろへ引き、レンに到達するタイミングに合わせて槍を突き出そうとした次の瞬間。


「ダークマター・レッグ」


 レンは呟くように詠唱し、瞬時に形成された漆黒の脚によって突っ込んできた瞬太郎を蹴り飛ばす。


 ボゴッ!!


 鈍い音がして、瞬太郎は風を切る音を鳴らしながら勢い良く吹っ飛んでいく。


「・・・・っ!!」


 瞬太郎は痛みに悶えながらも後ろに目線を送り、自分の落下地点を予測する。

近づく地面を見つめながら、いよいよ地面へとぶつかるタイミングで土の魔術で地面を柔らかい砂へと変換させた。


 ズサァァァ!!!


 硬い地面から砂へと変えたことにより、落下の衝撃を緩和させる。


「・・・・・っ。

 へっ・・・さっきのあいつの魔術、

 喰らう直前で防御壁が間に合わなかったらやばかった。

 ・・・・・うっ!」


 瞬太郎は脇腹を抑え、前屈みに倒れ込む。

瞬太郎は、レンの魔術による蹴りの直撃を避ける事には成功している。

防御魔術で蹴りの間にクッションを挟み、地面への着地も衝撃を緩和させたのだ。


「くそっ、一撃でこれかよ・・・。

 暫く動けそうにねぇ」


 しかし、それでも身体へのダメージは大きく瞬太郎は地面に倒れ込んだ。


―――


 崩れた神殿の瓦礫に身を潜めるルカは、レンの戦闘を影から観察していた。


「・・・強い。

 あの土の勇者もかなり戦闘慣れしてそうだったが

 黒魔術が圧倒的だ・・・」


 ルカはレンが負けるはずかないと感じ、今一度状況を整理して逃げ出す算段を考える。



 凛はレンに保護されている。

つまり、凛は安全だが逆にレンの戦闘が終わるまでは身動きも取れない。

 そして今、俺、ダン、ナギ、サキは、それぞれ別の瓦礫の裏に潜んでいて、俺からの指示が出しにくい・・・。

出来る事と言えば、勇者全員の気がレンに向いている内に、俺が逃げる指示を全員に出す事だ。

・・・そしてレンの戦闘が終わるまで俺は待機し、凛を迎えにいく。



 ルカは今一度、全員の様子を見渡す。

見る限り、皆も瓦礫の隙間から戦闘の様子を伺っているようだ。

それぞれの場所から見える角度は違うだろうが、距離的にレンは見えても、残りの勇者の様子は確認しにくい。

突っ込んできた一人の姿はルカも捉えたが、それ以外の三人の勇者はまだ後方でレンの様子を見ているのであろう。


「勇者とレンはどう動くんだ・・・」


―――


 瞬太郎とレンの戦いを後方で観察していた三人の勇者は、レンに一撃で飛ばされた瞬太郎を見て戦慄していた。

この魔物討伐遠征で初めて自分が死ぬかもしれないという実感が湧き、冷や汗をかきながら気を引き締める。


 恐怖で固まる勇者達の中で、卓也が先に沈黙を破る。


「これはフリーで動いてどうこうなるレベルじゃない。

 あれだけ後ろに吹っ飛ばされた瞬太郎は

 正直生きていればラッキーだ・・・。

 もうこの三人で連携して、あいつを倒すぞ・・・!」


 早苗と舞は恐怖で引き攣った顔のまま頷く。

卓也は頭の中で戦闘を有利に進める為にできる事を模索し、二人に指示を出す。


「まず二人ともフードを被れ。

 せめて戦闘の中で誰がどの魔術を使うかを

 なるべく悟られないようにしたい・・・。

 少し勿体無いが、着ているローブに

 付いている色付きの装飾は全て無理やり外すんだ。

 これを全て外せば、全員同じ灰色のローブを着ているように見える」


 早苗と舞は、卓也の指示通りに素早く装飾を外していき、フードをなるべく深く被る。

これで三人は同じ服装でフードを深く被った見た目となった。


 卓也はこの状態で遠距離攻撃を中心に戦闘を組み立てようとしていた。

だがここで、今まで同じ位置から動かなかったレンが動き出す。


 卓也はいち早くそれに気付き振り向くが、気づいた時にはもう目の前までレンは来ており、レンはスタッと三人の立つ中心へと降り立つ。


「・・・・・!!」


 全員は一瞬時が止まったかのように感じる。

禍々しいオーラを纏う魔王がすぐ目の前に立っているのだ。

近接で戦闘を行うしかない状況になった勇者達は、唖然とした表情から覚悟を決めて歯を食いしばる。

その中で卓也が一番早く動き出し、魔術で武器を形成する。


 ボボボォオッ!!


 卓也の右手に炎で模られた日本刀が顕現し、それを卓也は強く握り締める。

だが握り締めた時には既にレンの回し蹴りは放たれており、卓也の腹に蹴りが直撃する。


「ぐはっ・・・!!」


 卓也はただの人間の蹴りを喰らったとは思えない勢いで後ろへと吹っ飛んでいき、レンの速さに慄く。


 はやすぎるっ・・・!!


 卓也に向けた回し蹴りの隙をつくように、早苗は氷の魔術でナイフのような短剣を形成し、両手で抱えるように握り締めていた。

低い姿勢でそのナイフを後ろ向きのレンに向けて突き刺そうとする。

その早苗の動作とは逆に、舞は後ろへと下がりながら風の魔術で真空の弓を形成し、弓を射る構えに入る。


 レンの回していた右足が地面に着地するくらいのタイミングで、レンの背中目掛けて早苗の氷のナイフが両手で突き出される。


 ガッ!


 だがレンは後ろに目がついているかの如く、後ろ向きのまま突き出された早苗の両手を右脇で挟み込み、左手で早苗の氷のナイフを取り上げる。


「くそっ・・・!」

 早苗は氷のナイフを取られた焦りで反射的に声が漏れた。

 

 レンは早苗の両手を脇でロックしたまま、手に取ったそのナイフを弓を構える舞に向けて左手首の力だけで投げる。

その直後に身体を左へと回転させ早苗を振り回し、右脇を緩めて早苗の両腕をレンが握る。

そのまま左回転してスイングするように早苗ごと舞へと投げ飛ばした。


 舞は弓矢を構えていたが早苗がレンに捕まっていた為、迂闊に弓を放てずにいた。

そしてどうすべきか思考する間もなく、氷のナイフが顔面を目掛けて凄い速度で飛んでくる。


「うっ!」


 舞は顔を右に逸らしてナイフを躱したが、左頬を少しだけ掠り、切り傷による赤い直線ができた。

そのナイフに気を取られた一瞬からレンに目線を戻すと、目の前には早苗が飛んできていて、咄嗟に弓矢を解除する。


「「うあ!!!」」


 舞は投げられた早苗を抱えるように重なり合って後ろへと転がっていった。


 先ほど蹴り飛ばされた卓也は足元に炎を噴き出し、飛ばされた勢いにブレーキをかけて宙に浮いていた。


 あいつ・・・体術もとんでもないレベルだ・・・。

やはり遠距離攻撃で攻めていかないと危険すぎる。


 卓也は早苗を投げ飛ばしたレンへ向けて遠距離魔術を唱える。


「灼熱駻馬・インフェルノ!!」


 卓也の周りに炎が渦を描き、馬の形を成していく。

顕現された炎の馬はレンに向けて駆け出していき、卓也はその間に早苗と舞の方へ炎を発火させて移動する。


 レンは炎の馬を横目で確認し、スッと腕を馬の方に伸ばす。


 フオォン


 再び漆黒の暗黒物質による円状の盾を召喚し、馬の行く手を阻む。

だが、炎の馬はその盾に突っ込むかと思いきや、ぶつかる直前で盾を避けるように四散し、盾を通り越した先で再び馬の形に再形成した。


 レンは無表情ながらも目がピクリと動き、初めて少しばかりの動揺を見せる。

炎の馬はレンへと突撃し、レンを中心に天高く炎が巻き上がった。


 ボオオォォォオオン!!!!


 


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