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与えられた禁忌の魔術で復讐を ~凛として咲く仇花~  作者: 一ノ瀬 凪
第二章 邂逅するスノードロップ
55/67

55. 始まる戦い


 ルカは勇者という言葉に反応し、凛の方を見る。


 「勇者・・・!!」

 凛はそう呟き、黒目が小さく見える程に目を広げていた。


 ルカはタイミングとしては最悪だと感じた。

まだ頭も整理されていないこの状況で勇者達が現れてしまうと立ち回りが難しい。

本来の作戦なら、魔物の根源を倒し切った状態での国軍と勇者達との接触だった。

だが、魔物の根源はレンで、そもそも敵じゃない。

その時点で、異端解放団の作戦は既に破綻しているのだ。

それでいて凛のあの反応。

勇者との接敵に動き出してしまうかも知れないという懸念が頭に浮かぶ。


 全員はルカの指示を待ち、ルカの方に目線を向けていた。

何か指示を出さねばとルカが口を開けた時、レンが先に動き始める。


 ブワッ!!


 レンは黒紫のオーラに包まれ、宙へと浮く。

そしてそのまま重力を感じさせない動きで入り口の方へと飛んでいった。

凛のようなオーラを纏ったという事は勇者達とは戦うつもりだとルカは理解し、取り残されたルカは俯きながら葛藤する。


 レンとの話を続ける為に、共闘して勇者と敵対すべきか・・・。

いや、それは異端解放団が逆賊となる事を意味する。

国軍ごと全滅できれば逆賊にならずに済むが、メンバーにそんな酷な指示できるはずがない。

くそっ!! 一旦ここはバレないように引くしか・・・!


「あっ!凛!!」

 ナギのその声が聞こえ、ルカは凛の方に視線を向ける。

すると凛は、勇者達がいる方へ駆け出してしまっていた。

それに続くようにナギやダン、サキも、追いかけるように入り口側へと走り出す。


 ルカはしまったと思った。

指示を出すのが遅すぎて全員がバラバラに行動し始める。

その中でただ一人、ノアだけは黙ってルカの方を見つめていた。


「ノア、皆を追うぞ!

 ノアは戦況を確認できる後方で待機して、

 いざという時は全員が戦線離脱できるように動いてくれ!」

 

「うん」

 ノアは無機質に頷くと、駆け出すルカに付いていく。


 凛との約束は、凛と勇者の戦いに手を出さずに遠くから見守ることだった。

だが全員が動き出してしまった今、そんな事は言っていられない状況になる。

ルカはとにかく全員を無事に帰還させ、レンとの話の続きはいつか実現させると心に決めて戦場に走る。


―――


 凛は勇者達がいると分かった途端、一目でいいからまたあの四人組の顔を拝みたいと強く思った。

自分の復讐の気持ちを確かめたいという気持ちもあるが、本人でも理解しがたいような謎の執着心も生まれていた。


 やっと・・・やっと会える・・・!!


 学校の時は顔を見ただけでも吐き気がして、出会わない事を強く願っていたはずなのに、今は逆の感情を抱いている。

凛は自分のその感情を不思議に思いながら、足をもつれさせつつ前へ前へと走る。


 開けた場所に出て宙に浮くレンの後ろ姿と、その奥に神殿を覆いつくすほどの巨大な氷山が目に入った。

まだここからの眺めだと、あの四人組の姿は視界に捉えられていない。


「凛!待って!」


 後ろからナギの声が凛の耳に微かに届く。

だが凛は、今は勇者を一目見ることを渇望しており、その動きを止めるつもりはない。


 凛は辺りを見回し四人を探していると、視界に入っていたレンがこちらに振り向くのに気づき、目線をレンへと向けた。

目線の先のレンは、凛へと右腕を伸ばしていて、凛の頭の中で嫌な予感がする。


 フォォン


 刹那、凛の身体は透明な謎の膜によって包まれた。


「なに・・・これ・・・!!」


 レンはふわりと海月のように動きながら身動きの取れない凛へと近づいていく。


「ここから出して!!

 私は勇者と会わなければならないの!」


 必死に叫ぶ凛を無表情で見つめながらレンは口を開く。


「いま君の声は外には届かない。

 そして今君を包むその膜は、君からは透けて見えるけど

 周りからは漆黒の球体として見えている。

 申し訳ないけれど、君はここからこの戦いをただ見届けてほしい」


 レンのその言い方は、感情の無い機械のように感じられた。

冷たさも哀れさも、何も感じられない虚無の言葉。


 悔しがる凛は、透明な膜をこぶしで必死に何度も叩く。

壊せそうな気配は全くしないが、この悔しさをどこかにぶつけたい気持ちが、その無意味な動きを継続させる。


 すると視界の中にナギ、ダン、サキが駆けつけてくるのが映る。

ナギはレンが凛に魔術を使い、黒い球体に閉じ込めていたのを見ていた為、怒りで顔をしかめている。


「レン!!凛を一体どうするつもり!」


 ナギはレンに向けて怒鳴り声をあげた。 


「・・・彼女が今魔術を使えないのは知っている。

 だから僕が安全な状態で保護しているだけだ」


 レンは冷静にそう返し、氷山の方へ視線を向き直す。


「ちっ、嘘だったら承知しないから・・・!」


 疑い深いナギはまだレンの事を完全に信用していなかった。

計られたように勇者達と鉢合わさせられ、それを事前にこちらに伝えていない時点で、ナギの中では信用に欠けると判断したのだ。


 その直後、ルカとノアが合流する。


「お前ら大丈夫か!」

 ルカは合流してすぐに周りを見渡し、状況を把握しようとする。

ダンはそれを察してルカに端的に説明した。


「まだ勇者の姿は見えていない。

 おそらくあの巨大な氷山の奥にいるはずだ。

 凛はレンの魔術によってあの黒い球体の中で保護されている」


 ガシャガシャガシャ!!!


 ダンが説明を終えた直後、氷山が崩れ落ち始めた。

ルカは勇者や国軍に姿を見られるのはまずいと思い、全員に指示をだす。


「全員一旦身を隠せ!!」


 凛以外の異端開放団は、ルカのその指示により神殿内の物陰へとそれぞれ身を隠した。


------------------------


 一方勇者達は、魔物を討伐しながら神殿へと辿り着き、神殿の前に立ちふさがる馬の魔物を早苗の氷山を作り出す魔術で神殿ごと貫いていた。


「このエリアの魔物は全然大したことないのばかりね」

 早苗は黒髪を左手でなびかせて氷のように冷たい表情を浮かべる。

明らかにやりすぎなその魔術は、この遠征で溜まっていた鬱憤を晴らしたいという気持ちが垣間見えた。


 神殿に容赦なく刺さる氷山の景色を見る卓也は呆れた顔をして呟く。


「いくらなんでもオーバーキルだろ・・・」


 早苗が魔術を解除して氷山が消えると同時に神殿の一部が崩れ落ちる。

その神殿を注視していた舞は、落下する瓦礫の先に浮く黒紫の光を帯びた人影を捉えた。


「ねぇあれ!魔物じゃない誰かがいる!!」


 舞がそう叫ぶと、勇者達は神殿の方を向いて戦闘態勢をとる。

瞬太郎もその異様なオーラの人影を見つけ、ニヤリと笑った。


「あいつが明らかに大将だろ」


 卓也もそれに同意し、呟く。


「あぁ、遂にラスボスのおでましだ」

 

 瓦礫によって舞った砂煙が徐々に晴れていき、黒紫のオーラを纏うレンの姿が露わになる。

早苗はその素顔を見て目がピクリと反応した。


 ちょ、普通にイケメンじゃない・・・。

顔がいいとやりにくいわね・・・。


 早苗は内心そう思いながらほろ苦い表情をする。


 

 勇者達は瞬太郎と舞の言い合いの喧嘩が発生した影響から、戦闘は連携を取らず、個人がそれぞれ自由に動くスタイルへと変化していた。

実際トカゲの魔物以降は個人でも倒せるような魔物ばかりで、各々が気が済むまで好きに討伐をした。

そしてそれが図らずも全員の鬱憤晴らしになり、連携の気遣いで神経を使わずに済んだので、結果的には空気の回復という効果が生まれている。


 血気盛んな瞬太郎は勇者達に宣言する。


「俺は好き放題やらさせてもらうぜ」


 鋭い眼光でレンを見据えながら瞬太郎はいち早く駆け出した。

それを見た舞は構えるのをやめて瞬太郎を目で追いながら呟く。


「あたしは後方で様子見から始めるね」

 

 舞は言い合い以降、明らかに瞬太郎と離れる行動を優先している。

早苗については根っこで瞬太郎を軽蔑している為、連携する気がそもそもなく、卓也は単純に瞬太郎との連携がしづらいと感じ、迂闊に近寄らなかった。

その各々の感覚により、三人は瞬太郎を餌に様子見をする形になる。


 レンは地面を駆ける瞬太郎を冷徹な目で空中から見下ろし、瞬太郎は静止するレンを鋭利な眼差しで威嚇するように見上げる。


 勇者の瞬太郎と黒魔術師のレンとの戦いが、今始まろうとしているのだ。




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